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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年5月19日日曜日

新着論文(NCC#May2013)

Nature Climate Change
Volume 3 Number 5 (May 2013)

Editorial
Fracking fracas
フラッキングの喧嘩
アメリカにおいてはシェールガスをめぐる政治学的なコンセンサスが得られつつあるものの、ヨーロッパにおいては依然としてそれに対する論争が続いている。

Commentaries
How national legislation can help to solve climate change
法律が気候変化を解決するのにどのように役に立つか
Terry Townshend, Sam Fankhauser, Rafael Aybar, Murray Collins, Tucker Landesman, Michal Nachmany & Carolina Pavese
気候変化緩和に関する国家間交渉が滞っている状況のもと、法制定はさらに進展し続けるだろう。そうした政策上の発展は何をもたらすだろうか?

Blood supply under threat
血液供給が危機に
Jan C. Semenza & Dragoslav Domanović
気候が温暖化するにつれて増加する感染症によって血液製品が汚染されないように、ヨーロッパは行動をとるべきだ。

News Feature
What now?
今度は何?
Anna Petherick
オバマ大統領は気候変化に対処すると宣言して1回目の任期を開始したが、気候変化緩和のための主要な議案は崩壊した。彼の第2回目の任期は何をもたらすだろうか?

Policy Watch
Climate saviour or spectre?
気候の救世主かそれとも不安材料か?
「EUのシェールガスに関する明確な政策はまだ登場しておらず、意見は未だ分断されている」、とSonja van Renssenは説明する。

Research Highlights
Warming seas
温暖化する海
Geophys. Res. Lett. http://doi.org/k5s (2013)
近年海洋表層水の温暖化が停止した(surface-warming hiatus)ことが話題を呼んでいた。1958-2009年における異なる深さの温暖化を再解析した研究から、海洋表層の温暖化は一時的に停止したものの、深層水が熱を吸収しており、過去10年間には30%を説明することが分かった。火山噴火や大きなエルニーニョも海の熱量を変える効果がある。
>問題の論文
Distinctive climate signals in reanalysis of global ocean heat content
Magdalena A. Balmaseda, Kevin E. Trenberth, Erland Källén
1958年〜2009年にかけての海水温の観測をもとに、温暖化の傾向と2004年以降の表層水の温暖化の停止(the recent upper-ocean-warming hiatus)の原因を評価。ここ10年間は700mよりも深い部分で温暖化が起きており、風の変化に伴う海洋鉛直構造の変化が原因と考えられる。

Disputing climate science
気候科学に異を唱える
Am. Behav. Sci. http://doi.org/k5r (2013)
1988年に気候変化が一般の関心を集めて以降、アメリカの化石燃料企業や保守的組織はこぞって人為起源の気候変化を否定するキャンペーンを行ってきた。その結果、書籍をはじめとする様々なものが作られた。2010年に発行されたそうした英語書籍108冊に対する調査から、うち78冊が自費出版であることが分かった。またその著者の国籍や背景を調べたところ、主としてアメリカの反対運動が他国に伝播しており、科学的なトレーニングを受けていない人による書籍がますます増え続けていることが示された。一般にピア・レビューはなされておらず、科学的に証明されていない・証明できない主張に基づいた議論に基づいて、気候変化に異を唱えている。ただし、科学的な信頼性は低いにも関わらず、そうした本はかなりの注意を引いている。

From past to future
過去から未来へ
Glob. Change Biol. http://doi.org/k5p (2013)
気候変化が生態系に与える影響を予想する際に広く用いられる手法は、過去において気候が生態系に与えた影響を将来にも直接当てはめることである。6つの草原に生える種を対象にした降水制限の実験が予想通りの結果になるかどうかを調べたところ、半数は期待通りの結果を示し、残り半分は示さなかった。過去の観測が十分になされ、再現性が確認されているかどうかも、将来の予測性に大きく影響すると考えられる。

Ice loss promotes cold
氷の損失が寒さを助長する
Environ. Res. Lett. 8, 014036 (2013)
北極圏の海氷は1年を通じてその量が減少しつつある。得られている観測記録から、秋の海氷量の減少が中緯度域の冬の気象に大きく影響していることが示された。異常寒波や大雪が増える傾向があるという。海氷が減るほど中緯度域の冬の異常気象は増えると予想される。

Pandora’s freezer?
パンドラの冷凍庫?
Climatic Change http://doi.org/k5q (2013)
北半球高緯度の永久凍土には大量の炭素が眠っており(約1,700 PgC)、それが融解し大気に放出されると将来の気候変化にも大きな影響を及ぼすと考えられる。しかしモデルの中には永久凍土の振る舞いはうまく組み込めておらず、その効果がどの程度及ぶかについてはよく分かっていない。フロリダ大学の研究者が中心となって、永久凍土の専門家の永久凍土の気候変化に対する脆弱性に対する姿勢を定量化したところ、RCP8.5シナリオのもとでは、2100年までに162-288PgCの炭素が放出されることが分かった。RCP2.6シナリオの場合、放出は3分の2に軽減できるという。いずれにせよ、化石燃料燃焼由来の炭素に比べれば少ない量である。

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Research
News and Views
Dust may cool polar regions
塵が極域を冷やすかもしれない
Peter Knippertz
極域の気候変化は全球に比べて増幅されやすい。新たな研究はダストや他のエアロゾルがそれにどれほど寄与するかを記述している。Lambert et al.の解説記事。

Coral 'refugia' amid heating seas
暖まる海の真ん中のサンゴの’難民’
Ken Caldeira
主として化石燃料燃焼が原因となって、大気中のCO2濃度が蓄積するとともに地球温暖化が進行している。温度上昇がサンゴ礁を脅かしていることは広く認識されているが、そのリスクは果たしてどれくらい大きいのだろうか?Hooidonk et al.の解説記事。

Perspectives
Risk management and climate change
リスク管理と気候変化
Howard Kunreuther, Geoffrey Heal, Myles Allen, Ottmar Edenhofer, Christopher B. Field & Gary Yohe
気候変化研究では脆弱性や考えられる結果に関する確率密度のコンセンサスが得られることはほとんどなく、政策戦略を評価することが難しい。そうしたコンセンサスが手に入らない状況、出資者のリスクに対する耐性が異なる場合に対してデザインされた政策決定ツールの重要性を主張する。

Deliberating stratospheric aerosols for climate geoengineering and the SPICE project
気候工学として成層圏にエアロゾルを届けることとSPICE計画
Nick Pidgeon, Karen Parkhill, Adam Corner & Naomi Vaughan
「成層圏エアロゾル注入技術」や「提案されている野外実施」を受け入れられるかどうかに関する初の'公の関与(public engagement)'調査から、ほとんどの参加者が試みを前進させるべきだと考えていることが示された。しかしながら、中には成層圏エアロゾルを使用することに不快感を感じている人もわずかながらいる。

A global standard for monitoring coastal wetland vulnerability to accelerated sea-level rise
加速する海水準上昇に対する沿岸湿地の脆弱性をモニタリングするための全球的な基準
Edward L. Webb, Daniel A. Friess, Ken W. Krauss, Donald R. Cahoon, Glenn R. Guntenspergen & Jacob Phelps
湿地の水面高度に対する信頼度の高い測定が「海水準上昇が沿岸部の弱い生態系に与える影響」を理解し予測する上で、科学に裏付けられた管理・適応・緩和を考える上で、重要である。'rod surface elevation table'と呼ばれるシンプル・安価・ローテクな装置が世界中の脅威にさらされている沿岸湿地をモニタリングするのに使えるかもしれない。

Letters
Energy consumption and the unexplained winter warming over northern Asia and North America
アジア北部と北米全体でのエネルギー消費と説明されていない冬季の温暖化
Guang J. Zhang, Ming Cai & Aixue Hu
 2006年当時における世界のエネルギー消費量は498エクサ・ジュール程度で、おおよそ15.8TWの熱が密集地域の大気へと伝播している。こうした人為起源のエネルギー消費が地表気温に大きな影響をもたらしている。
 全球気候モデルを用いて、エネルギー消費をモデルに組み込むことで北米とユーラシアの高・中緯度のほぼ全域で確認されている秋・冬の1Kもの温暖化を説明できる可能性が示唆される。将来の気候変化を予測するにはこうしたエネルギー使用を考慮すべきである。

Projected changes in wave climate from a multi-model ensemble
複数モデルのアンサンブルによって予想される波気候の変化
Mark A. Hemer, Yalin Fan, Nobuhito Mori, Alvaro Semedo & Xiaolan L. Wang
風波による沿岸部の変化は海水準の影響を打ち消すか、或いはさらに悪化させる可能性を秘めている。しかしながら波の変化はほとんど関心を寄せられていない。気候モデルを用いたアンサンブル・シミュレーションから、全球の波の高さが25.8%低下することが示された。両半球の冬季には波は高くなることが予測され、特に南大洋を起源とするうねりが原因と考えられる。予測の不確実性はモデル内のダウンスケール法によるところが大きい。

Assessment of groundwater inundation as a consequence of sea-level rise
海水準上昇の結果としての地下水氾濫のアセスメント
Kolja Rotzoll & Charles H. Fletcher
海水準上昇の結果、沿岸部への海水の氾濫の危険が生まれる。一方で、海水準上昇は地下水位のバランスにも影響し、地下水の氾濫が起きる可能性も指摘されている。ハワイ・ホノルルにおける調査から、海水準が0.6m上昇することでも大きな氾濫が生じることが分かった。それは海水の氾濫にも匹敵する恐れがある。おそらく世界中の低地に適応できると思われる。

Projections of declining surface-water availability for the southwestern United States
アメリカ南西部に対する地表水の利用可能性の減少予測
Richard Seager, Mingfang Ting, Cuihua Li, Naomi Naik, Ben Cook, Jennifer Nakamura & Haibo Liu
Articles
温暖化の結果、亜熱帯域がより乾燥化し、極側に拡大すると予想されている。モデルシミュレーションから、アメリカ南西部においては、2021-2040年に地表水の利用可能性が減少し、土壌湿度と河川流量が低下するという予測がなされた。

The role of mineral-dust aerosols in polar temperature amplification
極の温度増幅における鉱物ダストエアロゾルの役割
F. Lambert, J-S. Kug, R. J. Park, N. Mahowald, G. Winckler, A. Abe-Ouchi, R. O’ishi, T. Takemura & J-H. Lee
気候モデルは過去の気候記録から復元されている極域の温度変化をうまく再現できていない。観測とモデルから、完新世とLGMにおける大気中のダスト濃度を評価したところ、極域のエアロゾルの影響が過小評価されていることが示された。この過程を取り入れることでモデルを用いた高緯度域の応答の予測精度が向上すると考えられる。

Impacts of biofuel cultivation on mortality and crop yields
バイオ燃料の耕作が致死率と作物生産に与える影響
K. Ashworth, O. Wild & C. N. Hewitt
バイオ燃料に用いられる多くの植物がオゾンの前駆物質であるイソプレンを従来型の作物よりも多く放出する。モデル研究から、ヨーロッパにおける地表付近のオゾン濃度が増加することで、人間の致死率と作物生産に大きく影響することが示唆される。バイオ燃料を巡る政策は、炭素収支以外も考慮する必要がある。

The critical role of extreme heat for maize production in the United States
アメリカにおける小麦生産に対する異常熱波の決定的な役割
David B. Lobell, Graeme L. Hammer, Greg McLean, Carlos Messina, Michael J. Roberts & Wolfram Schlenker
アメリカにおける小麦生産の統計解析から、異常な熱波に対してはかなり大きな負の応答が見られ、一方で季節的な降水量には比較的小さな応答を示すことが分かった。モデルシミュレーションから、熱波による影響は生殖器に対する熱ストレスが原因というよりはむしろ、水ストレスの原因となる’水蒸気圧不足(vapour-pressure deficit)’が原因と考えられる。

Malaria epidemics and the influence of the tropical South Atlantic on the Indian monsoon
マラリア伝染病と熱帯南大西洋がインドモンスーンに与える影響
B. A. Cash, X. Rodó, J. Ballester, M. J. Bouma, A. Baeza, R. Dhiman & M. Pascual
観測記録の解析とモデルシミュレーションから、赤道大西洋が、遠くインド北西部のモンスーン性の降水や伝染病に影響していることが分かった。マラリアの発生の4ヶ月前に変化が見られるため、初期警告システムに使える可能性がある。赤道大西洋はモンスーンとENSOを仲介しているだけでなく、時間的ラグをもって降水(+マラリアの発生)の変動を支配していると思われる。

Temporary refugia for coral reefs in a warming world
温暖化した世界におけるサンゴ礁に対する一時的な待避地
R. van Hooidonk, J. A. Maynard & S. Planes
温暖化の進行とともに、高水温が一定期間維持されることがきっかけで生じるサンゴの’白化現象’がサンゴ礁生態系をより脅かすと考えられている。しかしながら、白化現象の規模は地域ごとに異なることが予想される。IPCC AR5に用いられている気候モデルのアンサンブル予測結果を用いて、RCPの排出予測に基づいた白化現象のハザードマップを作成した。年間を通して白化現象が始まるのは大気中CO2濃度が約510ppmになるころからで、RCP8.5シナリオの場合2040年頃と予想される。中には5年間、白化現象のスタートを免れる海域も存在する(インド洋西部、タイ、GBR南部、フランス領ポリネシア中央部など)。例えばRCP8.5からRCP6.0へと削減が成功した場合、約23%のサンゴ礁で20年間、白化現象のスタートを遅らせることができ、サンゴが変化に適応する可能性が高まるかもしれない。

Articles
A global assessment of the effects of climate policy on the impacts of climate change
気候政策が気候変化の影響に与える影響の全球アセスメント
N. W. Arnell, J. A. Lowe, S. Brown, S. N. Gosling, P. Gottschalk, J. Hinkel, B. Lloyd-Hughes, R. J. Nicholls, T. J. Osborn, T. M. Osborne, G. A. Rose, P. Smith & R. F. Warren
気候変化緩和策はそれが地域的。全球的に回避することのできた気候の影響という観点で評価されることは稀である。新たな研究は、温度上昇を2℃以下に抑える可能性の50%の確率に基づいた政策は将来の気候変化の影響を2100年までに20-65%も緩和できることを示している。

Atmospheric verification of anthropogenic CO2 emission trends
人為起源のCO2排出の傾向の大気的な証拠
Roger J. Francey, Cathy M. Trudinger, Marcel van der Schoot, Rachel M. Law, Paul B. Krummel, Ray L. Langenfelds, L. Paul Steele, Colin E. Allison, Ann R. Stavert, Robert J. Andres & Christian Rödenbeck
地球温暖化と海洋酸性化を制限する国際的な努力は大気中のCO2濃度の上昇速度を遅くすることを目的としている。大気観測から2010年にアジア地域のCO2排出が急増したこと、2002-2003年には排出速度が鈍化したことを示す。