昨日のOFGSセミナーはJAMSTECの大河内直彦 氏による有機物の放射性炭素を用いた古環境復元のお話だった。
その後の懇親会の模様は横山研のブログの日記に譲るとして、今回はセミナーで学んだ内容をメモしておく。
◎有機物と放射性炭素年代測定
タンパク質、脂質、核酸(DNA、RNA)などをはじめとする有機物は’炭素’を多く含むため、当然’放射性炭素年代測定’が可能。
例えば海底堆積物には種々の物質で構成されるが、
・有孔虫
・アミノ酸
・クロロフィル
・アルケノン
・n-alkane
・その他の粘土鉱物など
などが堆積場まで運ばれる過程は異なり、それらの表す年代はそれぞれに異なる。
例えば、大型の浮遊性有孔虫の殻は死後すみやかに沈降して堆積物に残るが、細粒の物質は遠方から運搬されたり、再堆積の可能性もある。
そのため、有孔虫・バルク有機炭素・個々の有機物から得られた年代モデルは必ずしも一致しない。
例に挙げられていたバミューダ海台の場合、数千年もの年代の差異が見られており、堆積物の運搬過程が複雑であることを物語っている。
年代モデルはその後の考察に大きく影響するので非常に重要。それが完新世なのか退氷期なのかなど。
◎その応用例
まず生物濃集される有害化学物質が自然起源か・人為起源かの特定。
例えば、生物から抽出した臭素系ダイオキシンの放射性炭素を測定することで、それを区別することができる。
また南極周辺の堆積物からは古い炭素(南極大陸の削剝が起源)・比較的最近の炭素の流入割合を考察することができる。それは海氷の範囲や南極からの氷河流出速度などを表すと思われる。
またさらなる応用として、有孔虫が産出しない海域(高緯度域など)・湖沼などにおいては、表層に生息する生物が生成する有機物を特定し、さらに十分量の放射性炭素を抽出することができれば、従来難しかった年代モデルの構築に大きく寄与することが可能。
◎着眼+手法開発
当然ながら、発想だけではダメで、技術開発も大切
バルク堆積物は測定に十分に量が確保できるが、有機物レベルとなると非常に微量になる。
そのため、「測定に必要な試料の量の微量化」 and/or 「機器の感度の向上」も同時に達成しなければならない。