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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年5月2日木曜日

新着論文(Nature#7447)

Nature
Volume 497 Number 7447 pp5-152 (2 May 2013)

EDITORIALS
Plan for the future
未来への計画
 アメリカの宇宙探査に充てられる予算は次第に削減されつつある。それは地球観測衛星についても同じで、2020年までに地球の気候変化・気象・自然災害をモニタリングする衛星の数もまた減少する。長期的に考えると、政府に後押しされる地球観測の未来は暗い。そうした中、市民による地球観測は重要である。
 またEUでも2018年に打ち上げが予定されている気候変化をモニタリングする人工衛星「Earth Explorer 8」の予算も大幅に削減され、打ち上げは延期される可能性が出ている。

[以下は引用文]
The number of US probes is likely to dwindle from 23 to just 6 by 2020, threatening to degrade scientists’ ability to track climate change, forecast weather and monitor natural disasters.
アメリカの宇宙探査機の数は現在の23から2020年にはたったの6へと徐々に減少すると思われ、科学者が気候変化や気象予測、自然災害をモニタリングする能力を脅かしている。

Researchers who warned for years of this slow-moving disaster are now left to watch it unfold. And it comes at a time when concern is growing about the pace of climate change and the pressure that the world’s burgeoning population is placing on limited natural resources.
長年このゆっくりと進行する災害(気候変化)について警告を出していた研究者は現在それが明らかになるのを見るのを任されている。そして気候変化の速度に対する関心が高まり、世界の急増する人口が限られた自然資源に対して過度に負担をかける時代がやってきた。

Progress depends on the United States making hard decisions about what Earth observations it needs and how best to provide them. For scientists, and society, the dilemma is clear: we cannot manage what we cannot measure.
進展があるかどうかはアメリカが何の地球観測を必要とし、どのようにしてそれを実行するかについて強固な決断を下せるかどうかに依る。科学者と社会にとってのジレンマは明らかである:私たちは測定できないものには対処できないのである。

Fields of gold
金の農場
当初の目的を果たすためにも、遺伝子組み換え作物に関する研究は産業とは別に発展しなければならない。

RESEARCH HIGHLIGHTS
The shape of cities to come
都市の来るべき形
Environ. Res. Lett. 8, 024004 (2013)
人工衛星による夜間の光やマイクロ波の反射などの観測から、世界の100の巨大都市が1999〜2009年にかけてどのように成長したかを調べた。中国の都市部は地価の高騰を受けてより高層建築が増え、インドとアフリカの都市は逆に高さの制限から郊外へと進出する傾向が見られた。

Monkeys make their mark
猿がその痕跡を残す
J. Archaeol. Sci. http://dx.doi.org/10.1016/j.jas.2013.03.021 (2013)
石や木を使ってヤシの実を割ることで知られる猿の一種(Bearded capuchin monkeys; Sapajus libidinosus)の3年間にわたる観察から、彼らが割った後の破片をその場に数年間残すことが分かった。古代の猿や人類の道具使用の記録が残っている可能性があるという。

Bigger is better for protecting seas
海を守るにはより大きいほど良い
Bioscience http://dx.doi. org/10.1525/bio.2013.63.5.13 (2013)
インド洋のサンゴ礁保護区における調査から、漁獲が禁止されている10km2ほどの限られた地域よりも、640,000km2もの広大な原生地帯であるChagos群島のほうが単位面積あたりの魚のバイオマス量が少なくとも6倍ほど大きいことが示された。

Winged raptor dined on fish
羽の生えた猛禽類は魚を食べていた
Evolution http://dx.doi. org/10.1111/evo.12119 (2013)
木に住む生物を食べていたと考えられていた、120Maに生きていた4つの羽を持つ恐竜(Microraptor gui)の腹の中に、半分消化された魚の骨があることがカナダの地層の化石から見つかった。

SEVEN DAYS
Bomb test detected
爆弾実験が検出された
北朝鮮が2/12に行った核実験による放射性物質をCTBT機関が検出したと公表した。ただし、まだ原子炉などから放出された可能性も無視できないという。

Arctic research lab opens for business
北極の研究施設が企業向けに開かれた
シベリア地域にドイツとロシアによる研究基地が新たに建設された。それにより年中、永久凍土などの調査が可能になる。

Satellite launch
人工衛星の打ち上げ
中国は民間の地球観測衛星’Gaofen-1’を打ち上げた。災害や環境モニタリングなどを行う。後続機がさらに6基打ち上げられる予定となっている。

GM salmon
遺伝子組み換え鮭
アメリカの食料雑貨店に遺伝子組み換えの鮭が並ぶ日が近づいている。Food and Drug Administrationは現在一般人から寄せられたコメントを精査している。

NEWS IN FOCUS
Global carbon dioxide levels near worrisome milestone
全球の二酸化炭素濃度が気がかりなレベルに近づく
Richard Monastersky
大気中のCO2濃度はまもなく400ppmに達する。少なくとも過去300万年間は経験したことのない濃度である(※補足すると、その上昇速度は地球史上前例がない)。海や陸上植生をはじめとする吸収源(sink)の吸収能が低下していると報告する研究者もいれば、それを否定する研究者もいる。
 予算削減などが原因で、主に熱帯域の観測は不足している。人工衛星からのモニタリングも試みられている。マウナロアにおける最長の観測もまた予算逼迫を受けて困窮しているという。

>参考:NOAAの公表している大気中CO2濃度の推移


[以下は引用文]
Near the moonscape summit of the Mauna Loa volcano in Hawaii, an infrared analyser will soon make history. Sometime in the next month, it is expected to record a daily concentration of carbon dioxide in the atmosphere of more than 400 parts per million (p.p.m.), a value not reached at this key surveillance point for a few million years.
ハワイのマウナロア火山の月のような頂上付近で、赤外分析器がもうまもなく歴史を作ろうとしている。来月の未明、大気中の二酸化炭素濃度が400ppm以上を記録すると予想されている。過去数百万年間においてこの重要な観測拠点で達したことのない数値である。

There will be no balloons or noisemakers to celebrate the event. Researchers who monitor greenhouse gases will regard it more as a disturbing marker of humanity’s power to alter the chemistry of the atmosphere and by extension, the climate of the planet.
そのイベントを祝う風船や騒がしい音はないだろう。温室効果ガスをモニターする研究者は、それを「人類が大気組成を変え、さらには惑星の気候すらも変えてしまう力」の現れとしてより捉えるようになるだろう。

“It’s a time to take stock of where we are and where we’re going,” says Ralph Keeling.
"我々が「今どこにいて」、そして「どこに向かうのか」について吟味する時が来ている"と、Ralph Keelingは語る。

“The real question now is: how will the sinks behave in the future?” says Gregg Marland. (...) But climate models suggest that the land and ocean will not keep pace for long.
"現在の真の疑問は、そうした(CO2の)吸収源(海や陸上の植生)が将来どのように振る舞うか、ということだ"とGregg Marlandは語る。(中略)しかし、気候モデルは陸と海は(人間のCO2放出に)長くは追いついていけないことを示唆している。

“At some point the planet can’t keep doing us a favour, particularly the terrestrial biosphere,” says Jim White. (…) As the sinks slow down and more emitted CO2 stays in the atmosphere, levels will rise even faster.
"どこかで地球は我々に親切にしてくれなくなるだろう。特に陸上の生物圏は"とJim Whiteは語る。(中略)吸収が遅くなるにつれて、より多くの排出されたCO2が大気中に留まることになり、さらに濃度上昇は加速するだろう。

Transgenic salmon nears approval
遺伝子組み換え鮭の承認がもう間もなく下りる
Heidi Ledford
アメリカの取り締まりプロセスは非常に遅く、遺伝子組み換えされた動物性食物が食卓に並ぶまでのハードルの高さが目立つ。

FEATURES
'遺伝子組み換え作物' 特集

Tarnished promise
傷つけられた約束
遺伝子組み換え作物は過大広告や嫌悪感を生み出す。それを巡る物語について特集を組んだ。

A story in numbers
数に現れる物語

A hard look at GM crops
遺伝子組み換え作物に対する厳しい見方
Natasha Gilbert
超雑草?自殺?秘密の遺伝子?遺伝子組み換えに対する真実・ウソはまだよく分かっていない。

A new breed
新しい栽培
Daniel Cressey
遺伝子組み換え作物の次の波はそれを市場に提供し、'フランケン・フード(人造食物)'に対する心配を緩和することである。

COMMENT
Africa and Asia need a rational debate on GM crops
アフリカとアジアは遺伝子組み換え作物を巡る冷静な議論を行う必要がある
「発展途上国の政策決定者は、ヨーロッパで現在巻き起こっている政治に目覚めた人たちによる遺伝子組み換えを巡る主義・主張に揺らいではいけない」と、Christopher J. M. Whittyほかは語る。

An experiment for the world
世界のための実験
「中国の研究者は現在、作物生産を増加させ、環境への影響が少なくて済むような様々な方策をとっている」と、Fusuo Zhang、Xinping Chen、Peter Vitousekの三氏は語る。

CORRESPONDENCE
Thirty years of transgenic plants
遺伝子組み換え植物の30年間
Wim Grunewald, Jo Bury & Dirk Inzé

Journals should be clear on misconduct
科学雑誌は不正に対して明らかになるべきだ
Xavier Bosch

Don't judge research on economics alone
経済という観点だけで研究を判断しないで
Thomas E. DeCoursey

Open-access boom in developing nations
発展途上国におけるオープン・アクセスのブーム
Jagadeesh Bayry

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Small differences in sameness
同じであることの中の小さな違い
Alex N. Halliday
地球のケイ質岩の鉄の同位体記録は、地球のコアの形成は従来考えられていたよりも高温でなく、さらに形成の際に宇宙へ物質が失われることがなかったことを物語っている。
>問題の論文
Abyssal peridotites reveal the near-chondritic Fe isotopic composition of the Earth
Paul R. Craddock, Jessica M. Warren, Nicolas Dauphas
Earth and Planetary Science Letters 365 (2013) 63–76

Seeing the world through an insect's eyes
虫の眼を通して世界を見る
Alexander Borst & Johannes Plett
電子工学と伸縮可能な素材のエレガントな組み合わせによって、虫の眼を真似た小さな視覚センサーが作られてきた。小さな飛行物体の自動ナビゲーションシステムに装置が使えるかもしれない。

PERSPECTIVES
Globally networked risks and how to respond
全球的にネットワーク化された危険性とそれにどのように対処するか
Dirk Helbing
強く結合し、依存し合うネットワークは全球スケールでの壊滅的な機能停止へと繋がる危険性を作り出す。そうしたリスクをもっと管理できるものにするためにも、‘Global Systems Science’を創設する必要がある。

Using membrane transporters to improve crops for sustainable food production
膜輸送体を用いて持続的な食料生産のための作物を改良する
Julian I. Schroeder, Emmanuel Delhaize, Wolf B. Frommer, Mary Lou Guerinot, Maria J. Harrison, Luis Herrera-Estrella, Tomoaki Horie, Leon V. Kochian, Rana Munns, Naoko K. Nishizawa, Yi-Fang Tsay & Dale Sanders
植物の膜輸送体の発展が目覚ましい。それは作物生産量、栄養価、環境ストレスへの耐性を改善することに使えると考えられている。

LETTERS
Digital cameras with designs inspired by the arthropod eye
節足動物の眼にインスピレーションを得たデジタルカメラのデザイン
Young Min Song
エラストマーの光学物質」と「変形可能な薄いシリコンの光検出器」とを組み合わせることで、虫の半球状の眼にインスピレーションを受けたデジタル・カメラが開発された。

Long-term sedimentary recycling of rare sulphur isotope anomalies
稀な硫黄同位体異常の長期的な堆積物リサイクル
Christopher T. Reinhard, Noah J. Planavsky & Timothy W. Lyons
 およそ23.2億年前に非質量依存の硫黄同位体分別(MIF; NMD)がなくなったことは、それまでに大気中にほとんど存在しなかった酸素が地球に現れ、大気中の光化学反応が変化したことを物語っている。
 モデル研究から、地表におけるリサイクル過程の結果(地殻メモリー効果;crustal memory effect)、同位体異常は大気中の酸素濃度が増加してから1億年もの時間が経過してから堆積物に記録された可能性が指摘された。

Linking the evolution of body shape and locomotor biomechanics in bird-line archosaurs
Vivian Allen, Karl T. Bates, Zhiheng Li & John R. Hutchinson

The catalytic mechanism for aerobic formation of methane by bacteria
バクテリアによる嫌気的メタン生成の酵素メカニズム
Siddhesh S. Kamat, Howard J. Williams, Lawrence J. Dangott, Mrinmoy Chakrabarti & Frank M. Raushel