Main contents

☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語、English) 7、日記(日本語、English) おまけ、Twilog
ラベル Coral Reefs の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Coral Reefs の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2014年8月11日月曜日

新着論文(Coral Reefs, GRL)

Coral Reefs
Multiple driving factors explain spatial and temporal variability in coral calcification rates on the Bermuda platform
A. Venti, A. Andersson, C. Langdon
サンゴの石灰化速度を規定する要因についてはよく分かっていない。バミューダで得られたハマサンゴ(Porites astreoides)とノウサンゴ(Diploria strigosa)の石灰化速度について評価を行ったところ、炭酸塩飽和度に非常に敏感であることが分かったが、現実には光もまた同じ位相で変動しているため、光が支配的な要因ではないかと推測される。見た目上の相関によって、「サンゴの石灰化は飽和度の低下に対してかなり敏感である」という間違った結論に導かれている可能性がある。また、季節変動に関しては温度もまた半分程度の要因になっていることが示唆された。

Historic impact of watershed change and sedimentation to reefs along west-central Guam
Nancy G. Prouty, Curt D. Storlazzi, Amanda L. McCutcheon, John W. Jenson
グアム西部から得られたハマサンゴの骨格成長速度・石灰化速度・ルミネッセンス・Ba/Ca分析から、過去100年間の土壌流入量とサンゴの成長を議論。戦後の活発な土地開発の結果、サンゴ礁への土壌流入が急激に増加した。

GRL
Reconstruction of Pacific Ocean bottom water salinity during the Last Glacial Maximum
Tania Lado Insua, Arthur J. Spivack, Dennis Graham, Steven D'Hondt, Kathryn Moran
太平洋で得られた海洋底堆積物コア中の間隙水Clイオン濃度測定から、最終氷期の深層水の塩分を推定。現在よりも4%濃度が増しており、海水準の低下による全球的な塩分上昇よりも高い値が太平洋の南北で普遍的に得られた。

Enhanced acidification of global coral reefs driven by regional biogeochemical feedbacks
Tyler Cyronak, Kai G. Schulz, Isaac R. Santos, Bradley D. Eyre
沿岸域では海洋酸性化にともなうpCO2の上昇とpHの低下は、短期間の変動(日周期・季節変動など)や様々な生物地球化学的な作用によって影響される。世界各地のサンゴ礁における平均的なpCO2の上昇速度は、外洋域のそれに比べて3.5倍早いことが分かった。人間活動に伴う栄養塩・有機物の流入量の増加が原因と考えられる。

2013年5月14日火曜日

新着論文(JGR, Coral Reefs, MEPS)

JGR-O (Journal of Geophysical Research, Oceans)
Subantarctic mode water in the southeast Pacific: Effect of exchange across the Subantarctic Front
J. W. Holte, L. D. Talley, T. K. Chereskin, B. M. Sloyan
太平洋南東部のSAFにおけるSAMWの形成メカニズムについて。混合層の下部で形成されており、大気-海間の力はあまり受けてなさそう。渦や貫入によってSAFの北にもPFZの水がエクマン輸送によって混入している。

Assessment of Southern Ocean water mass circulation and characteristics in CMIP5 models: Historical bias and forcing response
J.-B. Sallée, E. Shuckburgh, N. Bruneau, A. J. S. Meijers, T. J. Bracegirdle, Z. Wang, T. Roy
CMIP5のモデルのバイアスを南大洋の水塊に焦点を当てて評価。特に暖かく・密度を小さく見積もる傾向がある。特にモード水・中層水の気体交換層(ventilated layers)に最大のバイアスが見られる。この層はCO2や温暖化による熱の吸収という点でも非常に重要な層である。観測よりもやや強く子午面循環が再現されている。

Enhanced gas fluxes in small sea ice leads and cracks: Effects on CO2 exchange and ocean acidification
N. S. Steiner, W. G. Lee, J. R. Christian
地球システムモデルでは、海氷に覆われた海域のCO2フラックスはゼロと見なされるが、実際には小さな割れ目などを通して大気と海のCO2交換が起きていることが観測されている。そのため荒い解像度のモデルでは、将来の海氷後退と、それに続く海洋酸性化の進行を過小評価してしまう可能性がある。カナダの地球システムモデル(CanESM2)を用いて海氷後退とCO2交換を評価。北極海の中心部ではフラックスの見積もり方で21%も年間のCO2吸収量が変化し、その結果、海洋酸性化によるアラゴナイト不飽和も10-20年早く起きると考えられる。逆にCO2が放出される南極周辺では、海氷の後退は海洋酸性化を和らげる働きをすると予想される。

Variations in the Pacific Decadal Oscillation since 1853 in a coral record from the northern South China Sea
Wenfeng Deng, Gangjian Wei, Luhua Xie, Ting Ke, Zhibing Wang, Ti Zeng, Ying Liu
南シナ海のサンゴ骨格中の地球化学分析(Sr/Ca・δ13C・δ18O)を用いて初めて1853年以降のPDO記録を得た。特にPDOは降水パターンの変化として現れているらしい。またδ13CにはSuess効果も見られた。

Coral Reefs
Light availability determines susceptibility of reef building corals to ocean acidification
D. J. Suggett • L. F. Dong • T. Lawson • E. Lawrenz • L. Torres • D. J. Smith
気候変化とともに温度や濁度が変化することで、光量も変化すると思われるが、それが海洋酸性化とともにサンゴ骨格の成長にどのような影響を与えるかについてはよく分かっていない。飼育実験からヤセミドリイシ(Acropora horrida)とユビエダハマサンゴ(Porites cylindrica)に対する影響を評価したところ、特に前者の場合、強い光の下では海洋酸性化による骨格成長阻害の影響が弱まることが分かった。これまでの研究を総括すると、ミドリイシ類への光の影響は大きいが、ハマサンゴ類にはそうでもないことが分かった。光が弱い海域は温度・光に弱いサンゴの避難場所になると考えられてきたが、我々の研究は光が弱いと海洋酸性化の影響が増幅される可能性があることを示している。

Calcification by juvenile corals under heterotrophy and elevated CO2
E. J. Drenkard • A. L. Cohen • D. C. McCorkle • S. J. de Putron • V. R. Starczak • A. E. Zicht
溶存無機栄養塩の濃度が増加することで、海洋酸性化によるサンゴ骨格の溶解が抑えられることを示す研究もある。ゴルフボールサンゴ(golf ball coral, Favia fragum)の幼生の飼育実験を通して栄養塩の有無が石灰化阻害に与える影響を評価したところ、餌を与えたサンゴの方が与えられていないサンゴよりもよく成長した。将来海洋酸性化の進行とともに骨格成長は阻害されるが、栄養が不足した海域と比較すると、栄養がある海域のほうが耐性は強いかもしれない。

Marine Ecology Progress Series (MEPS) 
Temperature affects the early life history stages of corals more than near future ocean acidification
Chia Miin Chua, William Leggat, Aurelie Moya, Andrew H. Baird
今世紀末には少なくとも海水温は2℃上昇(地球温暖化)、pHは0.2ほど低下する(海洋酸性化)と考えられている。これらは別々にはよく研究されているが、両方が同時に生物に与える影響はよく分かっていない。グレートバリアリーフのハイマツミドリイシ(Acropora millepora)とウスエダミドリイシ(Acropora tenuis)の幼生について「+2℃」と「+300μatm」の環境下で飼育実験を行い、サンゴの生存や変態に与える影響を評価。pCO2の上昇が受精・発達・生存・変態に与える影響は明確には見られなかったが、温度上昇は発達速度に大きく影響した。これらのサンゴの初期の生育段階においては海洋酸性化は大きな脅威にはならないが、温度がサンゴの種力学に影響する可能性が示唆される。

New Phytologist
Dissecting the impact of CO2 and pH on the mechanisms of photosynthesis and calcification in the coccolithophore Emiliania huxleyi
Lennart T. Bach, Luke C. M. Mackinder, Kai G. Schulz, Glen Wheeler, Declan C. Schroeder, Colin Brownlee and Ulf Riebesell
円石藻は海洋一次生産を担う重要な植物プランクトンであるが、それが海洋酸性化に伴う海水炭酸系の変化によって、生理学的にどのような影響を被るかについてはよく分かっていない。炭酸系を変えた実験から、Emiliania huxleyiは低いCO2濃度(光合成による有機物生成を阻害)、低い重炭酸イオン濃度(石灰化阻害)、低いpH(殻の溶解)に対して敏感であることが分かった。上昇したCO2というよりもむしろ低いCO2に適応してきた結果、必要な遺伝子を獲得してきたものと思われる。細胞レベルで炭素蓄積機能(carbon-concentrating mechanism; CCM)が作用していると思われる。

2013年1月9日水曜日

新着論文(Coral Reefs, GRLほか)

ちょっと前(2012年10-11月くらい?)の新着論文たちを消化。

Coral Reefs
Ocean acidification does not affect the physiology of the tropical coral Acropora digitifera during a 5-week experiment
A. Takahashi, H. Kurihara
コユビミドリイシ(Acropora digitifera)を5週間にわたってpCO2が高い状態(477, 2142 ppm)で飼育したところ、成長速度の変化は特に見られず、海洋酸性化に対して生理学的に適応していると考えられる。

GRL
Stability of the Atlantic meridional overturning circulation: A model intercomparison
Andrew J. Weaver, Jan Sedláček, Michael Eby, Kaitlin Alexander, Elisabeth Crespin, Thierry Fichefet, Gwenaëlle Philippon-Berthier, Fortunat Joos, Michio Kawamiya, Katsumi Matsumoto, Marco Steinacher, Kaoru Tachiiri, Kathy Tokos, Masakazu Yoshimori and Kirsten Zickfeld
25のAOGCMsとESMs、EMICsを用いて21世紀のAMOCの強度変化を予測。すべてのモデルでAMOCの急激な停止は予測されなかった。

The extreme melt across the Greenland ice sheet in 2012
S. V. Nghiem, D. K. Hall, T. L. Mote, M. Tedesco, M. R. Albert, K. Keegan, C. A. Shuman, N. E. DiGirolamo and G. Neumann
3つの観測手法に基づいてグリーンランド氷床の2012年の大規模な融解を評価。全体の98.6%で融解が起きており、頂上付近の乾燥した場所でも観察された。アイスコアからは1889年とMWPに大きな融解が起きていたことが分かっている。

Temperature-induced marine export production during glacial period
M. O. Chikamoto, A. Abe-Ouchi, A. Oka and S. Lan Smith
モデルシミュレーションを通して、氷期へと向かう際の温度低下が一次生産性と有機炭素再結晶化の変化を通し粒子状有機物て(export production)にどのように影響したかを調査。温度低下によって粒子状有機物が増加することが示され、深海への炭素輸送量が増加することが分かった。南大洋表層で残った栄養塩はAAIWの輸送を通して低緯度域の一次生産を強化させることも示された。

Can the Last Glacial Maximum constrain climate sensitivity?
J. C. Hargreaves, J. D. Annan, M. Yoshimori and A. Abe-Ouchi
PMIP2の結果を用いてLGMにおける気候感度を推定。「2.5℃」という推定値が得られた。

Decadal time evolution of oceanic uptake of anthropogenic carbon in the Okhotsk Sea
Yutaka W. Watanabe, Jun Nishioka, Takeshi Nakatsuka
オホーツク海の1993年から2006年にかけての人為起源炭素の吸収量を見積もったところ、表層は16%増加しているのに対し、中層は14%低下していることが分かった。近年の温暖化に伴う海洋の成層化によって深層水と大気とのガス交換が抑えられていることが原因と考えられる。

Stability of the Kuroshio path with respect to glacial sea level lowering
Kyung Eun Lee, Ho Jin Lee, Jae-Hun Park, Yuan-Pin Chang, Ken Ikehara, Takuya Itaki, Hyun Kyung Kwon
LGMの海水準低下時期における東シナ海における黒潮の変化をモデルと堆積物コアから調査。氷期においても流路の大きな変化は見られず、Mg/Caに基づいた古水温と浮遊性有孔虫δ18Oも同程度の値を示した。

JGR-Oceans
Historical changes in El Niño and La Niña characteristics in an ocean reanalysis
Sulagna Ray and Benjamin S. Giese
海洋観測の再解析データから1870-2002年のENSOの持続期間、現象が伝播する方向、周期などを解析。現象間の期間は数ヶ月の場合もあれば、10年間に及ぶこともある。また持続期間も5〜27ヶ月と大きく変化していた。過去140年間の間の各ENSOイベントの際の亜表層水の変位は表層水の変位とよく相関することが示された。この期間中、温暖化によるENSOの変化は特に確認されなかった。

JGR-Atmosphere
Atmospheric carbon dioxide retrieved from the Greenhouse gases Observing SATellite (GOSAT): Comparison with ground-based TCCON observations and GEOS-Chem model calculations
A. J. Cogan, H. Boesch, R. J. Parker, L. Feng, P. I. Palmer, J.-F. L. Blavier, N. M. Deutscher, R. Macatangay, J. Notholt, C. Roehl, T. Warneke and D. Wunch
日本の人工衛星Greenhouse gases Observing SATellite (GOSAT)による地球の短波放射の後方散乱データを利用して大気中のCO2濃度を宇宙空間から推定。2年間のデータを地上の観測記録と比較較正したところ、その差はわずかに1ppm程度であることが示された。モデルシミュレーションの結果とも整合的(R2=0.61)だが、サハラや中央アジアなどでは2~3ppmの差異が確認された。

GBC
Contributions of natural and anthropogenic sources to atmospheric methane variations over western Siberia estimated from its carbon and hydrogen isotopes
Taku Umezawa, Toshinobu Machida, Shuji Aoki and Takakiyo Nakazawa
シベリア西部の地上から1-2km上空のメタンの水素・炭素同位体を2006年から2009年にかけて測定し、その起源を推定。地上に近いほど軽い同位体を示し、地上に放出源があることを示唆。季節変動が大きく、夏は湿地、冬は人為起源のメタンが大多数を占めていると考えられる。

High-resolution estimates of net community production and air-sea CO2 flux in the northeast Pacific
Deirdre Lockwood, Paul D. Quay, Maria T. Kavanaugh, Lauren W. Juranek and Richard A. Feely
2008年の8-9月における北太平洋の表層水のO2/Sr、pCO2測定値から総一次生産量とCO2フラックスを推定。亜寒帯と亜寒帯-亜熱帯変移帯では生物ポンプとCO2吸収によって効果的に炭素が深層に輸送されていると考えられる。

Journal of Climate
Critical role of northern off-equatorial sea surface temperature forcing associated with central Pacific El Niño in more frequent tropical cyclone movements toward East Asia
Jin, Chun-Sil, Chang-Hoi Ho, Joo-Hong Kim, Dong-Kyou Lee, Dong-Hyun Cha, and Sang-Wook Yeh
太平洋中央部のエルニューニョ(CP-El Niño)の際には、赤道太平洋中央部からやや離れた海域のSSTと東アジアの台風の数との間に正の相関があることが分かった。東アジアの沿岸部(中国東部、台湾、韓国、日本など)に台風が近づく傾向があるらしい。

Weakened interannual variability in the tropical Pacific Ocean since 2000
Zeng-Zhen Hu, Arun Kumar, Hong-Li Ren, Hui Wang, Michelle L'Heureux, and Fei-Fei Jin
赤道太平洋においてはここ10年間に温度躍層の傾きが急になっており、赤道西太平洋におけるSSTの正の偏差・蒸発の正の偏差(つまりラニーニャ的状態)が確認されている。これはウォーカー循環が強化されていることを示している。モデルシミュレーションから、温度躍層の傾きの強化と貿易風の強化によって、暖水が東へと伝播するのが妨げられ、ENSOの振幅が減少するというメカニズムが提唱される。

2012年8月29日水曜日

新着論文(Coral Reefs)

Coral Reefs
2012 1 May 2012- 21 August 2012
Salinity thresholds of Acropora spp. on the Great Barrier Reef
R. Berkelmans, A. M. Jones and B. Schaffelke
2010-2011年にかけて起きた大洪水によるサンゴ礁への淡水流入を利用して、グレートバリアリーフのKeppel Islandsに生息するミドリイシの塩分耐性を調査。塩分22で3日間、塩分28で16日間は耐えることができるらしい。

Pole-ward range expansion of Acropora spp. along the east coast of Australia
A. H. Baird, B. Sommer and J. S. Madin
ここ50年間で全球の海水温は約0.35℃上昇し、サンゴ礁の生物もより極側(熱帯→温帯)に移動しつつある。例えばオーストラリア東岸では冬の最低水温が上昇した結果、これまで熱帯にしか生息できなかった熱帯魚が温帯でも生息できるようになっている(Figueria and Booth 2010)。また日本でも熱帯性ミドリイシの一種が1930年代以降より北上しつつある(Yamano et al. 2011)。2011年12月に、これまでオーストラリアのSolitary Islandsで確認されていなかったサンゴの種が初めて確認された。同地では冬の平均水温は1975年以来0.5℃上昇している(Figueria and Booth 2010)。オーストラリア東岸全体でこうしたサンゴの生息域の北上が温暖化によって起きている可能性がある。

Potassium and other minor elements in Porites corals: implications for skeletal geochemistry and paleoenvironmental reconstruction
T. Mitsuguchi and T. Kawakami
ハマサンゴ骨格から得た粉中のK/Ca, Na/Ca, Mg/Ca, Sr/Caが化学処理によってどう変化するかを調査。処理の順番としては(1)脱イオン水、(2)過酸化水素水(H2O2)、(3)0.004 mol/L硝酸。K/Ca, Na/Ca, Mg/Caは(1)と(2)の処理で減少し、(3)後は増加。一方Sr/Caは(1)(2)(3)を通して減少した。つまりK, Na, Mgは骨格の表面や石灰化中心(COC)に濃集しており、一方でSrは骨格中に均質に存在していると考えられる。続いて成長線に沿って2mmごとに削って粉を採取し、種々の濃度比を測定したところ、支配要因は特定できないものの、K/CaとNa/Caにも季節変動が見られ、また最低値を示す部分は密度バンドが濃い部分に相当していることが分かった。もしかすると骨格中の不均質性を拾っている??プロキシの解釈に必要な知見。

Pulsed 86Sr-labeling and NanoSIMS imaging to study coral biomineralization at ultra-structural length scales
C. Brahmi, I. Domart-Coulon, L. Rougée, D. G. Pyle, J. Stolarski, J. J. Mahoney, R. H. Richmond, G. K. Ostrander and A. Meibom
海水中の元素の同位体比を変化させることで、サンゴ骨格に同位体のラベリングを行う技術が進展してきた。86Srでラベリングされた骨格をNanoSIMSを使って詳細に(数μmスケール)分析し、ハナヤイシサンゴ(Pocillopora damicornis)の骨格成長速度を推定。Rapid Accretion DepositsとThickening Depositsという2つの重要な構成成分に分けることができ、前者は後者の4.5倍の成長速度であることが分かった。86Srのラベリングは生理学プロセスにも影響しないことが分かったため、広く炭酸塩を形成する生物の石灰化を調べるのに有効。

Large-scale stress factors affecting coral reefs: open ocean sea surface temperature and surface seawater aragonite saturation over the next 400 years
K. J. Meissner, T. Lippmann and A. Sen Gupta
世界のサンゴ礁の3分の1が既に消滅し、残りの3分のⅠが危機に瀕している。脅威の原因としては表層水温(SST)と炭酸塩の不飽和度(Ωarag)の変化が主要因とされている。3つの二酸化炭素排出シナリオ(RCP 3PD/4.5/8.5)に基づいて、EMICs(UVic Earth System Climate Model)を用いて将来400年間のSSTやΩaragの変化をシミュレーション。RCP 4.5と8.5というシナリオではΩaragが3.3(※サンゴの石灰化に対する閾値と考えられている)を下回るのは今世紀の中頃と推定される。2030年までには66-85%のサンゴ礁で10年に1回の頻度で白化現象が起きる可能性がある。また2050年までにはすべてのシナリオにおいてSSTに対する閾値を超えると考えられ、Ωaragの低下がSSTの上昇よりも先に訪れると予測される。
Meissner et al. (2012)を改変。
モデルシミュレーションに用いられた将来の二酸化炭素排出シナリオ。

Detecting coral bleaching using high-resolution satellite data analysis and 2-dimensional thermal model simulation in the Ishigaki fringing reef, Japan
A. P. Dadhich, K. Nadaoka, T. Yamamoto and H. Kayanne
2007年には温度上昇が原因の大規模なサンゴの白化現象が石垣島で確認された。白化現象の前後で撮影されたQuickbirdの衛星画像データを用いて2次元的な範囲を調査。0.6mという空間解像度を有する。観測水温を詳細に分析したところ、「積算された1日ごとの水温(daily accumulated temperature)」は白化現象を予測する上で重要な指標となることが分かった。