2012 1 May 2012- 21 August 2012
Salinity thresholds of Acropora spp. on the Great Barrier Reef
R. Berkelmans, A. M. Jones and B. Schaffelke
2010-2011年にかけて起きた大洪水によるサンゴ礁への淡水流入を利用して、グレートバリアリーフのKeppel Islandsに生息するミドリイシの塩分耐性を調査。塩分22で3日間、塩分28で16日間は耐えることができるらしい。
Pole-ward range expansion of Acropora spp. along the east coast of Australia
A. H. Baird, B. Sommer and J. S. Madin
ここ50年間で全球の海水温は約0.35℃上昇し、サンゴ礁の生物もより極側(熱帯→温帯)に移動しつつある。例えばオーストラリア東岸では冬の最低水温が上昇した結果、これまで熱帯にしか生息できなかった熱帯魚が温帯でも生息できるようになっている(Figueria and Booth 2010)。また日本でも熱帯性ミドリイシの一種が1930年代以降より北上しつつある(Yamano et al. 2011)。2011年12月に、これまでオーストラリアのSolitary Islandsで確認されていなかったサンゴの種が初めて確認された。同地では冬の平均水温は1975年以来0.5℃上昇している(Figueria and Booth 2010)。オーストラリア東岸全体でこうしたサンゴの生息域の北上が温暖化によって起きている可能性がある。
Potassium and other minor elements in Porites corals: implications for skeletal geochemistry and paleoenvironmental reconstruction
T. Mitsuguchi and T. Kawakami
ハマサンゴ骨格から得た粉中のK/Ca, Na/Ca, Mg/Ca, Sr/Caが化学処理によってどう変化するかを調査。処理の順番としては(1)脱イオン水、(2)過酸化水素水(H2O2)、(3)0.004 mol/L硝酸。K/Ca, Na/Ca, Mg/Caは(1)と(2)の処理で減少し、(3)後は増加。一方Sr/Caは(1)(2)(3)を通して減少した。つまりK, Na, Mgは骨格の表面や石灰化中心(COC)に濃集しており、一方でSrは骨格中に均質に存在していると考えられる。続いて成長線に沿って2mmごとに削って粉を採取し、種々の濃度比を測定したところ、支配要因は特定できないものの、K/CaとNa/Caにも季節変動が見られ、また最低値を示す部分は密度バンドが濃い部分に相当していることが分かった。もしかすると骨格中の不均質性を拾っている??プロキシの解釈に必要な知見。
Pulsed 86Sr-labeling and NanoSIMS imaging to study coral biomineralization at ultra-structural length scales
C. Brahmi, I. Domart-Coulon, L. Rougée, D. G. Pyle, J. Stolarski, J. J. Mahoney, R. H. Richmond, G. K. Ostrander and A. Meibom
海水中の元素の同位体比を変化させることで、サンゴ骨格に同位体のラベリングを行う技術が進展してきた。86Srでラベリングされた骨格をNanoSIMSを使って詳細に(数μmスケール)分析し、ハナヤイシサンゴ(Pocillopora damicornis)の骨格成長速度を推定。Rapid Accretion DepositsとThickening Depositsという2つの重要な構成成分に分けることができ、前者は後者の4.5倍の成長速度であることが分かった。86Srのラベリングは生理学プロセスにも影響しないことが分かったため、広く炭酸塩を形成する生物の石灰化を調べるのに有効。
Large-scale stress factors affecting coral reefs: open ocean sea surface temperature and surface seawater aragonite saturation over the next 400 years
K. J. Meissner, T. Lippmann and A. Sen Gupta
世界のサンゴ礁の3分の1が既に消滅し、残りの3分のⅠが危機に瀕している。脅威の原因としては表層水温(SST)と炭酸塩の不飽和度(Ωarag)の変化が主要因とされている。3つの二酸化炭素排出シナリオ(RCP 3PD/4.5/8.5)に基づいて、EMICs(UVic Earth System Climate Model)を用いて将来400年間のSSTやΩaragの変化をシミュレーション。RCP 4.5と8.5というシナリオではΩaragが3.3(※サンゴの石灰化に対する閾値と考えられている)を下回るのは今世紀の中頃と推定される。2030年までには66-85%のサンゴ礁で10年に1回の頻度で白化現象が起きる可能性がある。また2050年までにはすべてのシナリオにおいてSSTに対する閾値を超えると考えられ、Ωaragの低下がSSTの上昇よりも先に訪れると予測される。
Meissner et al. (2012)を改変。 モデルシミュレーションに用いられた将来の二酸化炭素排出シナリオ。 |
Detecting coral bleaching using high-resolution satellite data analysis and 2-dimensional thermal model simulation in the Ishigaki fringing reef, Japan
A. P. Dadhich, K. Nadaoka, T. Yamamoto and H. Kayanne
2007年には温度上昇が原因の大規模なサンゴの白化現象が石垣島で確認された。白化現象の前後で撮影されたQuickbirdの衛星画像データを用いて2次元的な範囲を調査。0.6mという空間解像度を有する。観測水温を詳細に分析したところ、「積算された1日ごとの水温(daily accumulated temperature)」は白化現象を予測する上で重要な指標となることが分かった。