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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年8月9日木曜日

新着論文(Nature#7410)

Nature
Volume 488 Number 7410 pp129-246 (9 August 2012)

Research Highlights
Star dines on young planet
星が若い惑星を食らう
Astrophys. J. 755, 42 (2012)
できて間もない(~270万年)系外惑星が発見された。惑星形成プロセスの理解に繋がるかもしれない。質量は木星の5.5倍で、11時間で恒星の周りを一周している。しかし距離が近すぎるため、恒星に吸収されつつあるかもしれないという。

Plants changed water cycle
植物が水循環を変えた
Geology http://dx.doi. org/10.1130/G33334.1 (2012)
2億年前、大気中の二酸化炭素濃度が2倍になっていたことで、植物の水の摂取・排出が減っており、それは地域的な水循環をも変化させ、生物多様性の低下にも繋がった可能性がある。植物化石の気孔を調べたところ、三畳紀/ジュラ紀境界において気孔の密度と大きさが激減していたことが分かった。植物の蒸散によって大気に放出される水分量は50-60%も減少したと考えられる。水収支や浸食の変化は土壌をも変化させ、生物多様性も減少させた?

Abrupt changes in Greenland ice cycles
グリーンランド氷床の氷サイクルの急激な変化
Science 337, 569–573 (2012)
1985年前から現在にかけてのグリーンランド氷床の南東部の空中写真から、3次元の氷床モデルを構築し、過去の氷床変動を復元したところ、過去に2回の大きな氷の融解があったことが分かった(1回目:1985-1993、2回目:2005-2010年)。原因は夏の気温と海水温の上昇と考えられている。

Bats sound out frisky flies
コウモリは浮かれたハエを探る
Curr. Biol. 22, R563–R564 (2012)
コウモリの一種(Natterer’s bats;Myotis nattereri)は交尾中のハエ(Musca domestica)を選択的に狙っているかもしれない。牛小屋の天井付近を飛んでいるハエとコウモリをビデオ撮影して調査したところ、独りのハエはコウモリによってほとんど検知されず安全だが、交尾中のハエは超音波を出すためコウモリによって検知され攻撃されやすいことが分かった。この事実は「交尾が他の生物に襲われる危険を高める」という理論を初めて裏付けるものである。

Modern thinking gets older
現在の考えは古くなりつつある
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://dx.doi.org/10.1073/ pnas.1204213109; http://dx.doi. org/10.1073/pnas.1202629109 (2012)
芸術や言語などといったヒトの文化的な革命は従来考えられていたよりも数千年早く、アフリカ南部において始まっていた可能性がある。「象徴的な振る舞いは8万年前に既に見られ、その後いったん消え、2万年前には骨の彫刻や他の人工物を作る文化が現れた」というのが従来の通説であった。しかしながら南アフリカのBorder洞窟において新たに発見された貝やダチョウの卵の殻でできたビーズなどの放射性炭素年代測定から、それらが44,000年前に作られたものであることが分かった。その後のヒトに特徴的な振る舞いである、両面石刃や火打石の鏃などの製作がこの頃から始まっていたらしい。

Pregnancy alters gut microbes
妊娠が腸内細菌を変化させる
Cell 150, 470–480 (2012)
91人の妊婦の腸内細菌を調査したところ、妊娠3ヶ月までは妊娠していない女性と同じような腸内細菌が見られたが、その後変化が見られた。その変化はメタボリックシンドローム(糖尿病の兆し)のマウスの腸内細菌と類似していた。妊婦6-9ヶ月の腸内細菌をマウスに投与したところ、マウスは太り、インシュリンにより鈍感になったという。ほ乳類は腸内の生理を操作することで、胎児を育てるのに有利な状態へと変化を促すことができるのかもしれない。

Seven Days
Deforestation down
森林破壊が減った
ブラジルのNational Institute for Space Researchによって出された不確実なデータに基づくと、ブラジルのアマゾン熱帯雨林の森林破壊は20%以上低下したという。ただし非常に解像度の荒い衛星観測データに基づいているという。

India’s Mars hopes
インドの火星に対する希望
インド内閣は早ければ2013年11月に火星を周回する衛星を打ち上げる計画を承認した。2008年に月への探査に用いられた国産ロケット(Chandrayaan-1)を再度用いて、インド初となる惑星間の探査になる予定である。

Primate transport
霊長類の輸送
エアーチャイナ(Air China)は7/31にヒト以外の霊長類を空輸することを止めると宣言した。 動物の権利を保護する団体、People for the Ethical Treatment of Animals (PETA)のキャンペーンに支えられている。同団体はこれまでにも数多くの航空会社が霊長類の輸送を止めることに影響を及ぼしてきた。チャイナイースタン(China Eastern)のみが現在中国国内から霊長類を海外(70%はアメリカの研究所へ)へ空輸しているという。

Italian dog-breeding facility at risk
イタリアの犬を養う施設が危機にさらされている
人間用の製薬の治験を行うためのビーグル犬を提供しているヨーロッパ最大の施設の一つが、イタリア裁判所から閉鎖の要請を受け、さらにはビーグル犬の保護権が動物の権利を保護する団体へと移され、施設は生き残りをかけて奮闘している。1,400頭のビーグル犬は施設からプライベートホームへと移され、病原体を施設に持ち込むわけにはいかないため、今後施設に戻されることはないという。

Bernard Lovell dies
Bernard Lovellが死ぬ
イギリスのマンチェスター大学のJodrell Bank Observatoryを設立した、物理学者・電波天文学者であったBernard Lovellが8/6に98歳で亡くなった。観測所の望遠鏡は建設された1957年には完全に方向を変えることのできる望遠鏡としては世界最大で、世界初の人工衛星であるSputnik 1の打ち上げにも貢献した。電波天文学への貢献から1961年に騎士の称号が与えられた。

Mars landing
火星着陸
8/6にNASAは火星探査機「Curiosity」が8ヶ月の宇宙旅行と7分間の破壊的な大気突入を耐えて、Galeクレーターに着陸することに成功したと報告した。

DECLINE OF THE SINGLE AUTHOR
単独著者の減少
Thomson ReuterのScienceWatch newsletterによると、単独著者の論文数は減少傾向にある。現在全体の20%程度である。最近の論文の著者数は平均して4人ほどらしい。

News in Focus
Mars rover sizes up the field
火星の探査機がフィールドを見る
Eric Hand
火星への完璧な着陸を終え、Curiosityの研究チームはGaleクレーターへどう移動するかを熟考している。

Stem-cell pioneer banks on future therapies
幹細胞のパイオニアが将来の治療法をあてにしている
David Cyranoski
日本の研究者(山中さん)が幹細胞を臨床試験に供給するための計画を立てている。

Britain’s big bet on graphene
イギリスのグラフェンへの大きな賭け
Geoff Brumfiel
イギリス・マンチェスターの研究所が単原子の厚さの炭素シート(グラフェン)の商業的な応用に着目している。

Heatwaves blamed on global warming
地球温暖化のせいにされている熱波
Jeff Tollefson
熱波が普通に比べて頻繁すぎることが、人間の影響を疑わせる。

Comment
Let's talk about sex
性について話そう
メディアは動物の性的な振る舞いについての研究をセンセーショナルに取り上げることが好きであるため、発言には気をつけなければならない、とAndrew B. BarronとMark J. F. Brownは警告する。

News & Views
Frontier or fiction
最先端か、摩擦か
宇宙生物学(Astrobiology)は宇宙における生命を研究する学問であるが、流行に便乗して研究分野の新しいイメージを売り込んでいるとして批判されることも多い。しかしながら専門家はこの学問が生物の最先端の知見を生み、大きな枠組みを与えるとしている。生物学者と惑星科学者が彼らのものの見方を紹介してくれる。

Facing up to complexity
複雑さに直面する
3つの新たに得られた化石の解剖は「我々のホモ属には人類進化の過程で平行して進化していた血統が少なくとも2つは存在した可能性がある」という仮説を支持している。

The X factor
X要素
フィンランドの森林の大気の化学分析から、森林の硫酸の発生源として振る舞う未知の酸化物が発見された。硫酸はエアロゾルや雲の形成に重要な先駆体の一つである。

Articles
Gut microbiota composition correlates with diet and health in the elderly
Marcus J. Claesson et al.
腸内微生物コミュニティーの変化は、肥満や炎症性疾患などのいくつかの慢性疾患に関連している。高齢者の微生物コミュニティーは、若い成人よりも個人間の変動が大きい。178人の高齢者を対象にした調査から、食事、微生物コミュニティーおよび健康状態の間に関係性があることが分かった。食事による微生物相コミュニティーの変化が老化に伴う健康の衰えの早さも決めている

Letters
A new atmospherically relevant oxidant of sulphur dioxide
R. L. Mauldin III, T. Berndt, M. Sipilä, P. Paasonen, T. Petäjä, S. Kim, T. Kurtén, F. Stratmann, V.-M. Kerminen & M. Kulmala
大気中の酸化反応は世界的な課題である環境問題(気候変動、成層圏のオゾン消失、土壌と水の酸性化、空気の質の健康への影響など)と大気化学を関連付ける重要な現象である。オゾン、ヒドロキシルラジカル、硝酸ラジカルは、汚染物質を含む微量気体の除去反応を駆動する主要な酸化剤であると一般的に考えられている。フィンランドの森林においてなされた大気観測から、もう一つ別の化合物(おそらく’クリーギー中間体’、カルボニル酸化物の一種)もしくはその誘導体が検出され、この化合物は二酸化硫黄を酸化させる能力を持ち、ほかの微量気体も酸化できる可能性があることが分かった。大気中エアロゾルの形成を促進する役割を担っていると考えられる。この新たな酸化経路は、少なくともヒドロキシルラジカルの濃度が中程度である場合には、ヒドロキシラジカルによる酸化に関して重要であることを示唆している。さらに、この化合物の酸化反応は、生物起源のアルケンの存在とも密接に関連しているらしい。

Water balance of global aquifers revealed by groundwater footprint
Tom Gleeson, Yoshihide Wada, Marc F. P. Bierkens & Ludovicus P. H. van Beek
地下水は生命を支える資源であり、何十億人もの人々に水を供給して、灌漑農業において中心的役割を果たし、多くの生態系に影響を及ぼす。全球の水資源評価のほとんどは地表を流れる水に重点を置いているが、地下水の持続不可能な枯渇が地域・全球規模の双方で最近報告され出している。しかしながら、全球の地下水枯渇の速度と、自然回復速度や生態系を維持するために必要な供給量をどのように比較すべきかは、よくわかっていない。地下水フットプリント(地下水利用と地下水に依存した生態系への供給を維持するのに必要な面積)の大きさの計算から、農業にとって重要な大規模な帯水層(特にアジアと北米)の多くで、人類が地下水を過剰開発していることが分かった。地下水フットプリントは、地下水の利用、回復、生態系の要求を帯水層のスケールで一貫して評価するのに適した最初の手段である。これと、ウォーターフットプリントと仮想水の計算とを組み合わせれば、回復可能な地下水により農業の収穫高が増加する可能性を評価するのに用いることができる。さらにこの方法を修正して、漁場、森林、土壌などの回復速度が遅く空間的に不均質なほかの資源も評価できる可能性がある。

New fossils from Koobi Fora in northern Kenya confirm taxonomic diversity in early Homo
Meave G. Leakey, Fred Spoor, M. Christopher Dean, Craig S. Feibel, Susan C. Antón, Christopher Kiarie & Louise N. Leakey
1972年の発見以来、頭蓋骨の化石標本KNM-ER1470は、更新世初期のアフリカ東部に存在した初期ヒト属(Homo)の種数をめぐる議論の中心となってきた。KNM-ER1470は、初期ヒト属のものとされる他の標本と比較して大きく、上顎骨の頬骨根(zygomatic root)が前方に位置し、顔面が平らで鼻下の顎が前方に突き出ていない点が際立っている。こうした特異な形態および不完全な保存状態のため、KNM-ER 1470は、初期ヒト属の単一種に組み入れられるのか、それとも、種の多様性の証拠となるのかどうかに関して、さまざまな見解を生んでいる。新たに発見された195万~178万年前の化石にはこれまで知られていなかった形態が保存されている。更新世初期のアフリカ東部には、ホモ・エレクトゥス(Homo erectus)のほかに2つの初期ヒト属種が同時期に存在していたことを示している。

A transitional snake from the Late Cretaceous period of North America
Nicholas R. Longrich, Bhart-Anjan S. Bhullar & Jacques A. Gauthier
ヘビ類は爬虫類有鱗目の中でもきわめて多様な分類群だが、移行段階の形態が不足しているため、起源および初期進化の解明は進展していない。起源が海洋環境なのか陸上環境なのか、独特の摂餌機構はどのように進化したのかなど、重要な問題がいくつか未解決のまま残されている。最初に発見された中生代ヘビ類の1つである白亜紀のConiophis precedensはこれまでに椎骨の一部しか記載報告されていなかったが、新しく上顎、歯骨、およびさらなる椎骨などの化石が得られた。Coniophisは従来考えられていたようにパイプヘビ上科ではなく、ヘビ亜目の系統分析を見直した結果、知られるうちで最も原始的なヘビであることがわかった。化石は大陸の氾濫原環境で見つかり、そのことは海洋ではなく陸上を起源とすることを示唆している。さらに、体が小型で神経棘(neural spines)が小さいことは地中に穴を掘る習性を示しており、ヘビ類が地中に棲むトカゲ類から進化したことが示唆される。頭蓋骨はトカゲ類とヘビ類との中間形態である。鉤状の歯および下顎内関節は、 Coniophisが比較的大型で体の軟らかい獲物を捕食していたことを示唆している。しかし、上顎は頭蓋と固く結合しており、このことから下顎は非可動性であると考えられる。Coniophisは進化的移行段階にあるヘビであり、ヘビ様の胴体とトカゲ様の頭部とを併せ持っている。ヘビ類は、細長くて曲がりくねる胴体および肉食性の進化に続き、高度に特殊化した可動性の頭蓋を進化させ、その後に白亜紀初期の大規模な適応放散(adaptive radiation)が起こった。このパターンは、可動性の頭蓋骨が重要な発明となり、それによってヘビ類の多様化が可能になったことを示唆している。

Atmospheric CO2 forces abrupt vegetation shifts locally, but not globally
Steven I. Higgins & Simon Scheiter
人為的な気候変動によって地球のシステムが全く異なる状態へと遷移することは可能である。しかしながら様々な不確実性が我々のリスク評価の妨げとなっている。地球システム科学者は小さな擾乱によって異なる状態への遷移を起こし得る構成要素が何であるかを探っている。その中で、植生の大きな変化がそうした要因になり得るかどうかはよく分かっていない。熱帯の草原、サバンナ、森林の生態系が地球システムに大きな影響を与え、異なる状態へと変移する可能性があることを示す。特に大気中の二酸化炭素濃度が駆動力となるらしい。ただし変移が起きるタイミングは場所ごとに異なり、さらに温度の上昇率や森林火災・降水の発生率にも依存する。しかしながら陸上生態系の変移は地域的な規模では起きると考えられるものの、地域ごとのタイミングが同調しないことが全球への影響を鈍化させるらしい。

The banana (Musa acuminata) genome and the evolution of monocotyledonous plants
Angélique D’Hont et al.
デザート用と調理用が含まれるバナナ(バショウ属 Musa 種;)は、ショウガ目に属する巨大な多年生単子葉類の植物である。ショウガ目は、詳しく研究されているイネ目(穀類が含まれる)の姉妹分類群である。バナナは、多くの熱帯、亜熱帯諸国の食料確保に不可欠な食物となっており、先進工業国では最も人気のある果物である。しかし近年、害虫や病気がしだいに適応してきており、世界のバナナ生産には危機が迫っている。バナナの遺伝子の解読が遺伝改良の重要な足がかりとなる可能性がある。イネ目以外の単子葉類では初めての遺伝子解読らしい。