Nature
Volume 488 Number 7413 pp557-690 (30 August 2012)
RESEARCH HIGHLIGHTS
Jagged jaws identify mollusc
ギザギザの口がそれが軟体動物だと特定する
Proc. R. Soc. B http://dx.doi. org/10.1098/rspb.2012.1577 (2012)
505Maの口の部分の化石は軟体動物の一部であることが分かった。世界で最も古い証拠らしい。カンブリア大爆発で有名なBritish ColumbiaのBurgess頁岩から得られた化石とのこと。
Rodent that cannot gnaw
齧ることのできないげっ歯類
Biol. Lett. http://dx.doi. org/10.1098/rsbl.2012.0574 (2012)
臼歯がなく、前歯の形が異常なshrew-rat(東南アジアの高地に生息する)は他のげっ歯類とは進化的に異なる位置づけになるらしい。他のげっ歯類は物を齧るために歯を進化させたが、このネズミはミミズなど齧る必要のない餌を選択的に探すのに特化して進化したものと思われる。
SEVEN DAYS
割愛。
NEWS IN FOCUS
Calorie restriction falters in the long run
カロリー制限は長生きを阻害する
Amy Maxmen
霊長類を扱った一連の実験や観察から、カロリー制限は寿命を縮める効果があることが分かった。人間に対しても同じことが言えるかどうかはまだ分からない。遺伝子や健康な食事がどうやら寿命と深く関わっていそう。
Brazil unveils tool to track emissions
ブラジルが排出を追跡するための手段を公表する
Jeff Tollefson
ブラジルにおける熱帯雨林の森林破壊はこの7年間で77%減少したが、一方で衛星観測やモデルのデータからは二酸化炭素の排出量はそれほど大きくは減少していない。その一つの原因は森林に蓄えられた炭素(落ち葉、木、根など)が腐食し大気中に二酸化炭素として排出されるまでの時間的な遅れの存在である。単純に失われた森林量を二酸化炭素に換算すると、2004年には11億トンであった排出量は2011年には2億9800万トンへと「74%減」したことになるが、実際にはこの計算は間違っており、森林破壊量から排出量を計算するのは未だ課題となっている。ブラジルのNational Institute for Space Research (INPE)による最新の推定値では「57%減」と推定されている。また森林破壊はより’密度の濃い’森林へと向かっている。ここで、密度が濃いとは、単位ヘクタールあたりの排出量が多いということを意味する。周期的に伐採される二次林の成長による二酸化炭素吸収の効果は推定値にはほとんど影響しないらしい。もし伐採されることなく成長するなら大きな効果が見込めるという。
Comments
Time to raft up
こぎ上がるとき
気候学者は気候変動に対して強く否定的な人々から学び、伝えたいことを伝えるために協力すべきだ、とChris Rapleyは言う。
Correspondence
Biomass energy holds big promise
バイオマス燃料は成功のカギを握っている
Andrew Lang, Heinz Kopetz & Albert Parker
オーストラリアは再生可能エネルギーに対して積極的であるものの、バイオ燃料については未だコストが高い段階にある。もし既存の海外の技術が取り入れられれば森林維持や廃棄物から出されるバイオマスを利用して1次エネルギーの20%を賄うことができるほどである。’オーストリア’はオーストラリアの国土面積の1%程度しかないが、バイオ燃料を用いた1次エネルギーは全体の30%の再生可能エネルギーのうちの半分程度を占めている。こうした国を見習う必要がある。
Institute to continue climate monitoring
気候のモニタリングを続けるための機関
Olaf Morgenstern, Richard McKenzie & Vanessa Sherlock
ニュージーランドのNational Institute of Water and Atmospheric Research (NIWA)の気候モニタリング体制について。
NEWS & VIEWS
Scorecard for the seas
海の健康診断の結果
Derek P. Tittensor
海洋の健全性を評価する指標の1つでは、世界全体の海に対する採点として100点満点の60点という値が出た。だが、1つの数字で環境状態と海が人間に与える恩恵の両方を包括できるという考え方は、議論を呼ぶかもしれない。
Ancient burial at sea
古代の海への埋没
Heather Stoll
太平洋の深海底への生物源カルサイトの沈殿率は43-33Maの間周期的に変化していたらしい。この期間、地球は温暖化した状態が終わり極に氷床が発達した状態へと寒冷化していった。
Collision course
衝突への道
R. Brent Tully
今から40億年後に、アンドロメダ銀河は天の川銀河と接近遭遇すると予想される。これら2つの銀河は崩壊に向かうダンスを踊り始め、そのさらに20億年後には2つが完全に一体化するだろう。
Antibiotics and adiposity
抗生物質と動物性脂肪
Harry J. Flint
ある種の抗生物質を少量投与されているマウスは体重が増え、脂肪が蓄積する。これは、腸内細菌の一部がほかの細菌よりも抗生物質の投与に耐えて生き残りやすく、消化をエネルギー供給が増える方向にシフトさせるためらしい。
ARTICLES
A Cenozoic record of the equatorial Pacific carbonate compensation depth
Heiko Pälike, Mitchell W. Lyle, Hiroshi Nishi, Isabella Raffi, Andy Ridgwell, Kusali Gamage, Adam Klaus, Gary Acton, Louise Anderson, Jan Backman, Jack Baldauf, Catherine Beltran, Steven M. Bohaty, Paul Bown, William Busch, Jim E. T. Channell, Cecily O. J. Chun, Margaret Delaney, Pawan Dewangan, Tom Dunkley Jones, Kirsty M. Edgar, Helen Evans, Peter Fitch, Gavin L. Foster, Nikolaus Gussone, Hitoshi Hasegawa, Ed C. Hathorne, Hiroki Hayashi, Jens O. Herrle, Ann Holbourn, Steve Hovan, Kiseong Hyeong, Koichi Iijima, Takashi Ito, Shin-ichi Kamikuri, Katsunori Kimoto, Junichiro Kuroda, Lizette Leon-Rodriguez, Alberto Malinverno, Ted C. Moore Jr, Brandon H. Murphy, Daniel P. Murphy, Hideto Nakamura, Kaoru Ogane, Christian Ohneiser, Carl Richter, Rebecca Robinson, Eelco J. Rohling, Oscar Romero, Ken Sawada, Howie Scher, Leah Schneider, Appy Sluijs, Hiroyuki Takata, Jun Tian, Akira Tsujimoto, Bridget S. Wade, Thomas Westerhold, Roy Wilkens, Trevor Williams, Paul A. Wilson, Yuhji Yamamoto, Shinya Yamamoto, Toshitsugu Yamazaki & Richard E. Zeebe
大気中の二酸化炭素濃度は地質学的時間スケールにおいては火山と変質による二酸化炭素放出と風化による除去によってバランスされている。こうした影響は新海底への炭酸塩の保存度(炭酸塩補償深度;CCD)として記録される。赤道太平洋の深度方向に沿って堆積物を採取し、過去5300万年間のCCDの変化を復元したところ、CCDは新生代を通して3.0-3.5kmから現在の4.6kmへと徐々に深まっており、風化が促進してきたという事実とも整合的である。またEoceneの初期〜中期にはCCDが周期的に変動することが確認され、地球システムを用いてメカニズムを明らかにしたところ、「風化」と「有機炭素輸送量」の2つが重要な因子であることが分かった。
An index to assess the health and benefits of the global ocean
Benjamin S. Halpern et al.
海洋は、食料、暮らし、およびレジャーの機会の提供から地球全体の気候の調節まで、人類の幸福を支える重要な役割を果たしている。海洋から広汎な恩恵の享受を維持することをめざして持続可能な管理を行うには、結合された人類–海洋系の健全度を測定および監視するための、包括的で定量的な方法が必要である。我々は、健全な結合された人類–海洋系に関して、多様な10項目の公共的目標からなる指標を作成し、海洋に接するすべての沿岸国に関してこの指標を計算した。世界全体で見ると、この指標の総合スコアは100点中60点(36~86点の範囲)となり、概して先進国のほうが開発途上国よりも高かったが、明らかな例外もあった。スコアが70点を超えた国は5%しかなかったが、50点に満たない国は32%にも上った。この指標は、一般社会の意識向上、資源管理の方針決定、政策の改善、および科学研究の優先順位付けのための強力な手段となる。
LETTERS
Potential methane reservoirs beneath Antarctica
J. L. Wadham, S. Arndt, S. Tulaczyk, M. Stibal, M. Tranter, J. Telling, G. P. Lis, E. Lawson, A. Ridgwell, A. Dubnick, M. J. Sharp, A. M. Anesio & C. E. H. Butler
南極においてはこれまで生命はほとんど存在しないと考えられてきたが、最近ではメタン分解古細菌(methanogenic archaea)が氷の下で有機炭素分解を行っていると考えられているが、これまで評価がされて来なかった。南極氷床の下には21,000PgCもの有機炭素が埋没している。他の氷河における実験によって氷床の下でメタン生成に繋がる有機物分解があることを示し、数値モデルから南極におけるメタンハイドレートの埋没量を推定。西南極氷床の下には300m深に、東南極氷床の下には700m深にメタンハイドレート形成に適した温度・圧力条件が実現していることが分かった。北極周辺の永久凍土に匹敵する埋蔵量かも?南極氷床融解時には温室効果に正のフィードバックをもたらす重要なメタンの放出源となる可能性がある。