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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年8月31日金曜日

新着論文(Science#6098)

Science
VOL 337, ISSUE 6098, PAGES 1009-1136 (31 August 2012)

Editors' Choice
Unlocking the Secrets of a Lost World
失われた世界の謎を紐解く
Curr. Biol. 22, R589 (2012).
南米ギニアの砂岩でできたtable mountains(tepuis)はそのアクセスの困難さ、数百万年間の隔絶などから’lost world’と呼ばれている。そこには固有種が多数生息していると考えられている。ヘリコプターで上陸し17種の両生類の遺伝子を解析したところ、峰と峰で従来考えられていたよりも近い遺伝関係があることが分かった。地理的な障害は遺伝子を隔絶させるほどには寄与していなかったことが分かった。遺伝的な分離が起きたのはPleistoceneからHoloceneへと入る約1万年前らしい。

How Bananas Weather a Drought
どうやってバナナは乾燥を乗り切るのか
Front. Plant. Sci. 3,176 (2012).
バナナの栽培は乾燥に弱い。ただし、バナナの遺伝子組み換え技術は未だ課題となっている。最近バナナの種には従来考えられていたよりも豊かな多様性があることが分かってきた。ある程度乾燥に強いことが分かっているバナナのある特定の種の葉のプロテオームの解析から、この種は一時的に乾燥したとしても生産速度を変えずに水不足に耐えることができることが分かった。

Slide Hazards
地滑り
Geology 40, 10.1130/G33217.1 (2012).
地震や台風などと同時に発生するために地滑りの死者数を定量化することは難しい。しかしながら重要な仕事となっている。2004年から2010年にかけて起きた地震起源の地滑り発生数のデータベースから2,620回の地滑りについて調べたところ、死者数は32,322人にのぼり(ほとんどが中国とヒマラヤ地域)、従来の想定の1桁以上の数字となった。地滑りは降水量や環境破壊などの人為改変の結果生じるため、今後の気候変動と都市化によってもその死者数は増えていくと考えられる。

News of the Week
割愛。

News Focus
In the Hunt for the Red Planet's Dirtiest Secret
火星の最も汚い謎の狩りの中で
Richard A. Kerr
Curiosityが火星の生命の有機物の残りを探査するのにより大きな障害が現れ、すでに出ばなをくじかれている。
(※コメント:ちゃんと読まないと何のことを言っているのか分からないですね)

Letters
The Scientific Whaling Loophole
科学的捕鯨の抜け道
LEAH R. GERBER

Iconic CO2 Time Series at Risk
アイコン的なCO2のタイムシリーズが危機にさらされている
Sander Houweling, Bakr Badawy, David F. Baker, Sourish Basu, Dmitry Belikov, Peter Bergamaschi, Philippe Bousquet, Gregoire Broquet, Tim Butler, Josep G. Canadell, Jing Chen, Frederic Chevallier, Philippe Ciais, G. James Collatz, Scott Denning, Richard Engelen, Ian G. Enting, Marc L. Fischer, Annemarie Fraser, Christoph Gerbig, Manuel Gloor, Andrew R. Jacobson, Dylan B. A. Jones, Martin Heimann, Aslam Khalil, Thomas Kaminski, Prasad S. Kasibhatla, Nir Y. Krakauer, Maarten Krol, Takashi Maki, Shamil Maksyutov, Andrew Manning, Antoon Meesters, John B. Miller, Paul I. Palmer, Prabir Patra, Wouter Peters, Philippe Peylin, Zegbeu Poussi, Michael J. Prather, James T. Randerson, Thomas Röckmann, Christian Rödenbeck, Jorge L. Sarmiento, David S. Schimel, Marko Scholze, Andrew Schuh, Parv Suntharalingam, Taro Takahashi, Jocelyn Turnbull, Leonid Yurganov, and Alex Vermeulen
(※コメント:おそらくマウナロアにおけるCO2モニタリングの資金源の確保のことを言っているのだと思います。近いうちに解説します。)

Comment on “Intensifying Weathering and Land Use in Iron Age Central Africa”
Jean Maley, Pierre Giresse, Charles Doumenge, Charly Favier
Bayon et al. (2012, science)は2.5kaに古代の中央アフリカ人が移植し森林を破壊したことが’熱帯雨林危機’の原因だとする主張をしているが、古生態学者の間では危機の原因は降水量の季節性が強化されたことだという共通見解がある。

Response to Comments on “Intensifying Weathering and Land Use in Iron Age Central Africa”
Germain Bayon, Bernard Dennielou,
Joël Etoubleau, Emmanuel Ponzevera, Samuel Toucanne, Sylvain Bermell
気候もある程度寄与していた可能性はあるが、依然として人間活動の影響が根源的であったに違いない。

Policy Forum
Climate Negotiators Create an Opportunity for Scholars
気候の交渉者が学者に対する機会を作る
Joseph E. Aldy and Robert N. Stavins
研究は先進国・発展途上国の両方が二酸化炭素排出削減にどのように寄与することができるかを評価しなければならない。

Perspectives
Bad News for Soil Carbon Sequestration?
土壌への炭素貯留への悪いニュース?
George A. Kowalchuk
アーバスキュラー菌根菌(Arbuscular mycorrhizal fungi)は土壌中での有機炭素の分解を促進させ、それは総じて二酸化炭素の放出源となる。

Reports
Interception of Excited Vibrational Quantum States by O2 in Atmospheric Association Reactions
David R. Glowacki, James Lockhart, Mark A. Blitz, Stephen J. Klippenstein, Michael J. Pilling, Struan H. Robertson, and Paul W. Seakins
振動によって励起された中間物質が大気中の化学反応において従来考えられていたよりも大きな役割を果たしている可能性がある。

Biogenic Potassium Salt Particles as Seeds for Secondary Organic Aerosol in the Amazon
Christopher Pöhlker, Kenia T. Wiedemann, Bärbel Sinha, Manabu Shiraiwa, Sachin S. Gunthe, Mackenzie Smith, Hang Su, Paulo Artaxo, Qi Chen, Yafang Cheng, Wolfgang Elbert, Mary K. Gilles, Arthur L. D. Kilcoyne, Ryan C. Moffet, Markus Weigand, Scot T. Martin, Ulrich Pöschl, and Meinrat O. Andreae
アマゾンの熱帯雨林において雲の凝結核として寄与している細粒の粒子はほとんどが二次的な有機物エアロゾルで構成されている。しかしそれらの起源に付いては謎のままである。熱帯雨林に生息している生物由来のカリウム塩に富んだ粒子が有機物エアロゾルの成長を促進していることが分かった。雲形成の微物理や降水過程に寄与していると考えられる。

Radiative Absorption Enhancements Due to the Mixing State of Atmospheric Black Carbon
Christopher D. Cappa, Timothy B. Onasch, Paola Massoli, Douglas R. Worsnop, Timothy S. Bates, Eben S. Cross, Paul Davidovits, Jani Hakala, Katherine L. Hayden, B. Tom Jobson, Katheryn R. Kolesar, Daniel A. Lack, Brian M. Lerner, Shao-Meng Li, Daniel Mellon, Ibraheem Nuaaman, Jason S. Olfert, Tuukka Petäjä, Patricia K. Quinn, Chen Song, R. Subramanian, Eric J. Williams, and Rahul A. Zaveri
大気中のブラックカーボンは地球の気候を暖める効果があるため、短期的な排出削減目標の中に組み込まれている。カリフォルニアの大気の直接観測からブラックカーボンの吸収促進(absorption enhancements;Eabs)と混合状態(mixing state)を推定。Eabsは想像以上に小さく、また時間とともに化学劣化反応によって減少した。またEabsは従来考えられていた理論値よりも小さく、ブラックカーボンによる温暖化は過大評価されている可能性がある。

Arbuscular Mycorrhizal Fungi Increase Organic Carbon Decomposition Under Elevated CO2
Lei Cheng, Fitzgerald L. Booker, Cong Tu, Kent O. Burkey, Lishi Zhou, H. David Shew, Thomas W. Rufty, and Shuijin Hu
陸上生態系がどれほど多くの炭素を吸収することができるかが気候変動緩和のための議論の的となっている。アーバスキュラー菌根菌(Arbuscular mycorrhizal fungi; AMF)は大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると土壌への炭素の蓄積を促進させる(有機物分解を抑える)と考えられてきた。しかしながら、野外における実験から二酸化炭素の増加がAMFの活動を促進し、土壌中の有機炭素量を大きく減少させることが分かった。これは将来の二酸化炭素濃度が増加した世界で「AMFが有機物分解を抑える」という予想に反するとともに、陸域生態系の炭素バランスの将来予測に疑問を投げかけるものである。

How the Cucumber Tendril Coils and Overwinds
Sharon J. Gerbode, Joshua R. Puzey, Andrew G. McCormick, and L. Mahadevan
植物の螺旋状の巻きは何世紀もの間、科学者を魅了し続けてきた。キュウリがツタを巻くメカニズムについて。

Synthesis of Methylphosphonic Acid by Marine Microbes: A Source for Methane in the Aerobic Ocean
William W. Metcalf, Benjamin M. Griffin, Robert M. Cicchillo, Jiangtao Gao, Sarath Chandra Janga, Heather A. Cooke, Benjamin T. Circello, Bradley S. Evans, Willm Martens-Habbena, David A. Stahl, and Wilfred A. van der Donk
海水中のメタンは大気に対して過飽和の状態にあるが、重要な温室効果ガスの一つであるメタンの放出源は謎のままである。海水中の微生物によるメチルホスホン酸の異化が原因として考えられてきたが、メチルホスホネートは自然界で生産されるものではないし、自然界で検出されたこともない。古細菌のNitrosopumilus maritimusはメチルホスホネートの生合成のパスをエンコードし(?)、メチルホスホネートエステルを合成できることが分かった。海の微生物の中では一般的に行われている生合成であるかもしれず、メタン生成の謎を解くカギになるかも?

Technical Comments
Comment on “Intensifying Weathering and Land Use in Iron Age Central Africa”
K. Neumann, M. K. H. Eggert, R. Oslisly, B. Clist, T. Denham, P. de Maret, S. Ozainne, E. Hildebrand, K. Bostoen, U. Salzmann, D. Schwartz, B. Eichhorn, B. Tchiengué, and A. Höhn
Bayon et al. (2012, science)は大西洋で採取された堆積物コアのAl/K比の異常を2.5kaのアフリカにおける人為起源の森林破壊と結びつけたが、森林破壊を証拠づける陸域の記録は得られておらず、気候変動が主要因であると思われる。

Comment on “Intensifying Weathering and Land Use in Iron Age Central Africa”
Jean Maley, Pierre Giresse, Charles Doumenge, and Charly Favier
Bayon et al. (2012, science)は2.5kaのいわゆる’熱帯雨林危機’は気候変動ではなく人為起源の森林破壊だと主張しているが、古生態学者の共通見解では、降水量の季節差が強化したことによる地形と風化速度の変化が主要因であると考えられている。

Response to Comments on “Intensifying Weathering and Land Use in Iron Age Central Africa”
Germain Bayon, Bernard Dennielou, Joël Etoubleau, Emmanuel Ponzevera, Samuel Toucanne, and Sylvain Bermell
Newman et al.は陸域の記録は我々の解釈を支持していないと主張しており、Maley et al.は風化の間接指標に関する疑問点を挙げている。存在する古気候のデータを考慮し、誤解を紐解くと、人類が植生の変化に根本的に寄与していたという結論になる。