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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年8月16日木曜日

新着論文(Nature#7411)

Nature
Volume 488 Number 7411 pp253-424 (16 August 2012)

World View
Why we are poles apart on climate change
何故我々は気候変動からかけ離れているのか
Dan Kahan
問題は一般大衆の理解力ではなく、歪められた科学にある。情報伝達の環境が人々を分裂させるのである。

'Positions on climate change have come to signify the kind of person one is.'
気候変動に対する立場は、個人がどういった人物であるかを示すものになりつつある。

'So whom should we ‘blame’ for the climate- change crisis? To borrow a phrase, it’s the ‘science- communication environment, stupid’ — not stupid people.'
それではいったい誰に気候変動の危機の責任をなすり付けるべきか?言葉を借りるなら、それは「愚かな人々ではなく、愚かなサイエンスコミュニケーションの環境だ」

…to apply the insights that social science has already given us, we will have to be smart enough to avoid reducing what we learn to catchy simplifications.
社会学が我々に既に教えてくれた考えを応用するためには、我々は学んだことをキャッチーな・単純化されたものへと劣化させることを回避できるくらい賢くなる必要がある。

Research Highlights
Curious hyenas crack puzzles
好奇心旺盛のハイエナがパズルを解く
Proc. R. Soc. B http://dx.doi.org/10.1098/ rspb.2012.1450 (2012)
ブチハイエナ(Spotted hyena)は高い問題解決能力を持つ。ミシガン州立大学の研究チームは餌の入った鉄柵でできた箱型パズルをケニアの草原に設置し、62匹のブチハイエナの行動を1年間観察した。彼らは様々な方法を試み、成熟したブチハイエナと若いブチハイエナの両方で、より幅広い方法を試したブチハイエナが見事パズルを解くことができた。

Sloth inner-ear diversity
ナマケモノの内耳の多様性
Proc. R. Soc. B http://dx.doi. org/10.1098/rspb.2012.1212 (2012)
ナマケモノの一種(Three-toed sloth)は驚くほど多様な半規管(内耳にあり、動感覚を司る)を持つ。通常ほ乳類は種間で半規管の構造は似ているが、ナマケモノの怠惰で動きも緩慢という性質がこうした多様化(形状、大きさ、向きなど)のきっかけとなった可能性がある。

Polymers track the Sun
太陽を追いかける高分子
Adv. Funct. Mater. http://dx.doi. org/10.1002/adfm.201202038 (2012)
太陽光発電パネルは太陽の方向を向いている時が最も効果的に発電できるが、それには余分の電力を使って向きをコントロールする必要がある。太陽の熱を吸収して形状を変える高分子をうまく利用することで、常に太陽の方向へと向きを変えられる素材が開発された。

Beetles walk underwater
昆虫は水中を歩く
Proc. R. Soc. B http://dx.doi. org/10.1098/rspb.2012.1297 (2012)
ハムシ(Leaf beetle)は脚の毛状の構造のおかげで水中を歩くことができる。この足は水中を歩くだけでなく、陸上で葉などにへばりつくのにも効果を発揮している。水中で垂直に小さなものを貼付けることのできる高分子が開発された。
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Nanofibres foster blood vessels
ナノファイバーが血管を育てる
Sci. Transl. Med. 4, 146ra109 (2012)
自ら集合するナノファイバーは心臓発作で傷ついた心臓が回復する過程で血管の修復を助けるらしい。それにはVEGFと呼ばれるタンパク質も同時に投与してやる必要がある。

Heady dog genetics
向こう見ずな犬の遺伝子
人間による人工的な犬の交配が様々な頭の形をした犬を生み出した。異なる頭の形をした犬やオオカミについて頭蓋骨の比較やDNA分析を行ったところ、5つの遺伝子が頭の形状に関与している可能性が示唆された。そのうち、BMP3と呼ばれる遺伝子の変異が頭の丸い犬(ブルドッグやペキニーズ)において確認された。他にもパグ、ボストン・テリアシーズーなどで見られたという。

News & Views
The trouble with the bubble
妄想に関するトラブル
Angelicque E. White
これまでの研究では、海洋の窒素収支では固定される窒素量が不足していることが示唆されてきている。だが、生物活動を介する窒素取り込みの速度が上方修正されたことで、この見方が変わりそうとのこと。

One of the first of the second stars
第二の星の初めのうちの一つ
John Cowan
天の川銀河の形成の比較的すぐ後に生まれた星の化学組成から、初期宇宙で星が形成された仕組みについての一般的な考え方に疑問が投げかけられることになった。

Letters
A massive, cooling-flow-induced starburst in the core of a luminous cluster of galaxies
M. McDonald et al.
X線、可視光、赤外線の観測から、極端に明るい銀河の中心で非常に早く星が形成されていることが明らかになった。銀河団内の濃いプラズマが流れ込むことによる冷却がきっかけとなって起こっているらしい。この銀河団の中心銀河にあるかなりの割合の星が、(現在考えられているように)もっぱら合体によって形成されたのではなく、銀河団内物質の降着を通して形成された可能性を示唆している。

Doubling of marine dinitrogen-fixation rates based on direct measurements
Tobias Großkopf, Wiebke Mohr, Tina Baustian, Harald Schunck, Diana Gill, Marcel M. M. Kuypers, Gaute Lavik, Ruth A. Schmitz, Douglas W. R. Wallace & Julie LaRoche
生物学的な窒素固定は、海洋への窒素の最大の供給源であり、したがって海洋の窒素貯蔵量や一次生産力に大きな影響を及ぼす。海洋堆積物から得られる窒素同位体データは、海洋窒素の貯蔵量は過去3000年間均衡がとれていることを示唆している。しかし、窒素の損失は窒素固定による増加を約200 TgN/yr 上回っており、直接測定に基づいて均衡のとれた海洋窒素収支を示すことは、これまで困難とされてきた。大西洋から得られたデータから、最も広く用いられている海洋の窒素固定速度の測定法は、新しく開発された方法に比べて窒素を固定する微生物(ジアゾ栄養生物; diazotrophs)の寄与を過小評価していることを示す。大西洋の海盆全体の窒素固定速度を計算すると、従来法では14 ± 1 TgN/yr、新しい方法では24 ± 1 TgN/yr となる。Trichodesmium 以外の窒素固定微生物の寄与がこれまでに考えられていたよりもはるかに重要であることが分かった。

More extreme swings of the South Pacific convergence zone due to greenhouse warming
Wenju Cai, Matthieu Lengaigne, Simon Borlace, Matthew Collins, Tim Cowan, Michael J. McPhaden, Axel Timmermann, Scott Power, Josephine Brown, Christophe Menkes, Arona Ngari, Emmanuel M. Vincent & Matthew J. Widlansky
南太平洋収束帯(SPCZ)は南半球において最も広大かつ持続性のある降雨帯であり、赤道西太平洋から南東方向に、フランス領ポリネシアまで広がっている。その降雨勾配が大きいため、SPCZの位置のわずかな変位が、水文気候条件や、その領域極端な気象現象の頻度に大きな変化をもたらす(例えば脆弱な島国における干ばつ・洪水・熱帯低気圧など)。SPCZの位置は、ENSOに伴って気候学的平均の位置から変動する。中程度のエルニーニョ現象が起きている場合は北方へ、ラニーニャ現象が起きている場合は南方へ数度移動する。しかし、強いエルニーニョ現象が起きると、SPCZは極端に揺れ動いて緯度にして最大10度赤道方向に移動し、崩れてより帯状の構造になり、気象に厳しい影響をもたらす。したがって、変化しつつある気候においてSPCZの特性がどう変化するかを解明することは、科学的にも社会経済的にも広く関心を集めている。本論文では、ENSOがどのように変化するかについて共通理解がなくても、地球温暖化に応答して、1891~1990年と、1991~2090年との間で、帯状のSPCZ現象の発生がほぼ倍増することを裏付ける気候モデルによる証拠を示す。我々は、結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP3とCMIP5)のマルチモデルデータベースの中の、SPCZのような現象をシミュレートできる気候モデルを集めて、SPCZ現象の増加を見積もっている。この変化は、予測されている赤道太平洋の温暖化の強化によって生じ、帯状のSPCZ現象の影響を最も受けやすい太平洋の島国全体にわたって、極端な気象現象の発生頻度を増加させる可能性がある。

Reconstructing Native American population history
David Reich et al.
南北アメリカ大陸の人類定住に関しては、遺伝学、考古学、および言語学の面から幅広く研究が行われてきたが、重要ないくつかの問題が解決されていない。意見が分かれているものの1つに、アメリカ大陸への定住が、シベリアからの1回の移動で成立したのか、それとも移動が複数回起こって成立したのかという問題がある。アメリカ先住民の52集団およびシベリアの17集団からDNAを採取し分析したところ、アメリカ先住民がアジアからの少なくとも3本の遺伝子流動に由来することが明らかになった。アメリカ先住民の多くは、我々が「ファースト・アメリカン」と呼ぶ単一の祖先集団を唯一の起源としている。しかし、北極圏のエスキモー・アレウト語族は、系統のほぼ半分をアジアからの第二の遺伝子流動から受け継ぎ、カナダのナデネ語族であるチペワイアン族は、系統の約10分の1を第三の遺伝子流動から受け継いでいる。また南アメリカでは分岐後の遺伝子流動がほとんど起こらなかったことがわかった。大きな例外の1つはパナマ地峡の両側に住むチブチャ語族で、南北両方のアメリカ大陸の系統を受け継いでいる。