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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年8月15日水曜日

新着論文(PNAS, EPSL)

PNAS
☆31 July 2012; Vol. 109, No. 31
Earth, Atmospheric, and Planetary Sciences
Hot days induced by precipitation deficits at the global scale
Brigitte Mueller and Sonia I. Seneviratne
温暖化によって熱波の頻度が増加すると考えられている。原因は水分量の低下と考えられているが、そうした減少が全球的かどうかを評価してみたところ、極端に暑い日の日数と降水量の減少との間に強い相関があることが分かった。土壌水分と気温との間の相関は従来考えられていたよりも普遍的かもしれない。

☆7 August 2012; Vol. 109, No. 32 
Earth, Atmospheric, and Planetary Sciences
Developed and developing world responsibilities for historical climate change and CO2 mitigation
Ting Wei et al.
2010年11月にメキシコ・カンクンにおいて行われた国連の気候変動に関する枠組みを話し合う会議では、温暖化を産業革命前の気温に比べて2℃の温度上昇に食い止めるという目標が設定されたが、今後排出されるであろう温室効果ガスの削減を各国が均等に責任を負うべきか、或いはどういった割合で負うべきかについては交渉がうまくいっていない。その理由の一つが、現在の温暖化がこれまでに先進国が排出した温室効果ガスが主な原因だからである。2つの地球システムモデルを用いてこれまでの温暖化とこれからの温暖化をモデリングしたところ、2005年までの気温上昇・海面温度上昇・海氷減少のうち、60-80%は先進国が原因であり、発展途上国は20-40%であることが分かった。カンクンにおいて定められた目標を達成すれば、温度上昇を’business as usual’モデルの温度上昇に比べて3分の1から3分の2に減らすことができると考えられる。
Wei et al. (2012)を改変。
これまでの二酸化炭素放出量とそれによる温暖化予測。下2つはモデルによる気温の偏差の予測結果で、どういった排出シナリオに基づくかで温度上昇は全く異なることが分かる。またモデル依存性もわずかながら存在する。

EPSL
☆Volumes 333–334,  Pages 1-332, 1 June 2012
Magnetotactic bacterial response to Antarctic dust supply during the Palaeocene–Eocene thermal maximum
Juan C. Larrasoaña, Andrew P. Roberts, Liao Chang, Stephen A. Schellenberg, John D. Fitz Gerald, Richard D. Norris, James C. Zachos
PETMの海洋堆積物において磁性が大きく変動することは、気温上昇に伴う風化促進と海底下のバクテリアによる磁化との関連によって説明されることがある。しかしKergulen Plateauの南部で得られた堆積物コアではPETMの前後でもこの特徴が見られる。これは南極からもたらされるダストに含まれる鉄による肥沃化→有機物沈降→鉄還元が起きやすい環境の形成→磁性バクテリアによる磁性鉱物形成という一連のプロセスによって説明される。

Uranium-236 as a new oceanic tracer: A first depth profile in the Japan Sea and comparison with caesium-137
Aya Sakaguchi, Akinobu Kadokura, Peter Steier, Yoshio Takahashi, Kiyoshi Shizuma, Masaharu Hoshi, Tomoeki Nakakuki, Masayoshi Yamamoto
1960年代の大気中核実験の結果放出された放射性核種(137Cs、236U)が海洋循環のトレーサーとして使えるかを日本海の海水について検証。236Uは深度とともに減少し、137Csと似たような分布をした。しかし、137Cs/236U比は深度2,000m以降小さくなった。堆積物の懸濁物質中の236Uは無視できる程度しか含まれていないため、236Uは海洋循環のトレーサーとして有望である。測定はAMSで行うらしい。

Calibrated prediction of Pine Island Glacier retreat during the 21st and 22nd centuries with a coupled flowline model
Rupert M. Gladstone, Victoria Lee, Jonathan Rougier, Antony J. Payne, Hartmut Hellmer, Anne Le Brocq, Andrew Shepherd, Tamsin L. Edwards, Jonathan Gregory, Stephen L. Cornford
氷床モデルとボックスモデルを組み合わせて南極Pine Islandの氷河の融解をモデリング。「A1B排出シナリオ(business as usual)」に基づいてAD1900からAD2200にわたって5,000回アンサンブルシミュレーションしたところ、融解の速度は不確実であるものの次の200年間で単調に融解することが分かった。22世紀に完全に崩壊する可能性も捨てきれない。

Timing and origin of recent regional ice-mass loss in Greenland
Ingo Sasgen, Michiel van den Broeke, Jonathan L. Bamber, Eric Rignot, Louise Sandberg Sørensen, Bert Wouters, Zdeněk Martinec, Isabella Velicogna, Sebastian B. Simonsen
ここ数十年、グリーンランド氷床は高い表面温度、氷床の融解範囲の拡大、夏に海氷の張り出す範囲の縮小などを経験している。GRACEによる重力場の観測データとInSARによる氷河の速度の観測データ、IceSATによる氷床の高度・雲・陸の高度の観測データから7つの氷河流出域について氷の流れを定量化。複雑なメカニズムが係わり合っていながら、全体としてグリーンランド氷床がここ数十年で徐々に融解していることが分かった。特に1958年・2010年に融けたらしい。
Sasgen et al. (2012)を改変。
グリーンランド氷床の各地域ごとにこれまで氷河流出によって氷床がどれほど減少したかを示した図。

Boundary scavenging at the East Atlantic margin does not negate use of 231Pa/230Th to trace Atlantic overturning
Jörg Lippold, Stefan Mulitza, Gesine Mollenhauer, Stefan Weyer, David Heslop, Marcus Christl
231Pa/230Thは氷期間氷期スケールの海洋深層水循環(特にAMOC)を復元するためのツールとして広く用いられているが、北大西洋以外の海域で上から沈降してくる231Paの影響を受けてしまう可能性がある。NamibiaとSenegalで得られた堆積物を用いて過去35kaの231Pa/230Thを復元したところ、この海域においては基本的にAMOCによって231Pa/230Thは支配されているものの、粒子フラックスにも影響されていることが分かった。少なくとも30kaから現在までは沈降してくる231Paの寄与は無視でき、231Pa/230Thの有用性は保証されるという。