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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年8月1日水曜日

新着論文(GRL)

GRL
16 May 2012 - 31 May 2012

Biological response to the 1997–98 and 2009–10 El Niño events in the equatorial Pacific Ocean
Gierach, M. M., T. Lee, D. Turk, and M. J. McPhaden
エルニーニョが赤道太平洋の東部と中部に与える影響は異なる。人工衛星による観測データと海洋の逆解析データを用いて1997/98年と2009/10年に発生したエルニーニョが中部と東部の生物に与えた影響を評価。中部では水平方向の輸送が表層のクロロフィル量(つまり植物プランクトンの一次生産量)を決めているらしい。一方で東部では鉛直方向の移流と混合が支配的な駆動力。

World ocean heat content and thermosteric sea level change (0–2000 m), 1955–2010
Levitus, S., J. I. Antonov, T. P. Boyer, O. K. Baranova, H. E. Garcia, R. A. Locarnini, A. V. Mishonov, J. R. Reagan, D. Seidov, E. S. Yarosh, and M. M. Zweng
これまでに得られた海洋観測のデータを用いて1955-2010年までの最新の海洋の熱含量と熱膨張による海水準の変化を報告する。海洋の0-2,000 m深の熱含量は24.0±1.9×10^22 Jで増加している。これは体積平均で0.09 ℃の上昇に相当する。一方で0-700 m深は0.18 ℃上昇している。1955年以来起きてきた地球温暖化のうち、93%の熱は海洋によって吸収されている。熱膨張に伴う海水準上昇の寄与は、0-2,000 m深が0.54±0.05 mm/yr、0-700m深が0.41±0.04 mm/yrと計算される。
Levitus et al. (2012)を改変。
1955年以降、海水が吸収してきた熱の変化。観測の密度もArgoの登場により飛躍的に上がってきた。

Impacts of the production and consumption of biofuels on stratospheric ozone
Revell, L. E., G. E. Bodeker, P. E. Huck, and B. E. Williamson
化石燃料に変わる代替燃料としてバイオ燃料(biofuel)が注目されている。しかしながら、バイオ燃料になる作物を育てる際の肥料から発生する大きな二酸化窒素(N2O)排出が、それ自身が温室効果ガスとして温暖化に寄与するだけでなく、成層圏にてオゾンを破壊するという問題がある。21世紀に化石燃料からバイオ燃料に社会経済が大きくシフトするというシナリオの下で、オゾン層の二酸化窒素による破壊量を推定。2つの重要なメカニズムが存在していることが分かった。一つは二酸化窒素が直接オゾンを破壊する化学反応を起こすこと(NOx-cycle)、もう一つは温暖化抑制によって成層圏の寒冷化が’逆に’抑制され、よりオゾンが破壊されやすい状態が実現すること。従って、二酸化窒素排出量を無視して二酸化炭素だけを削減するのはオゾン層を傷つける可能性がある

On the sub-decadal variability of South Atlantic Antarctic Intermediate Water
McCarthy, G. D., B. A. King, P. Cipollini, E. L. McDonagh, J. R. Blundell, and A. Biastoch
Argoの観測データから大西洋南部のAAIWの塩分変動がゆっくりと西へ伝播しており(2.3 cm/s)、さらに数十年スケールの変動が見られることが分かった。温度や密度の変化は見られない。40年間のモデルシミュレーションでもこの塩分変動の伝播は再現されることから、普遍的な事象であると考えられる。移流よりはむしろ惑星波動によってもたらされている可能性がある。

The natural greenhouse effect of atmospheric oxygen (O2) and nitrogen (N2)
Höpfner, M., M. Milz, S. Buehler, J. Orphal, and G. Stiller
大気中に多く含まれる酸素と窒素はともに温室効果ガスとしては働かないと考えられているが、地球の長波放射のうち、晴れた日には酸素と窒素がそれぞれ0.11, 0.17W/mの放射を吸収していることが分かった。これはメタンによる放射吸収の15%に相当する。一方で乾燥した南極ではそれぞれの吸収は平均してメタンによる放射吸収の38%にも達し、水蒸気の吸収バンドが干渉しない(乾燥しているため)ことが理由として考えられる。


Dynamics of east-west asymmetry of Indian summer monsoon rainfall trends in recent decades
Konwar, M., A. Parekh, and B. N. Goswami
インドにおける30年間の降水量の観測記録から、インド半島の東西で中〜小程度の降水に非対称性があることが分かっている。西部ではこうした降水はアラビア海からもたらされる水蒸気の影響で増加傾向にあるが、一方でベンガル湾では減少傾向にある。ともに低層の風速と水蒸気量が降水をコントロールしていると考えられる。

Tropical cyclone intensification trends during satellite era (1986–2010)
Kishtawal, C. M., N. Jaiswal, R. Singh, and D. Niyogi
全球の人工衛星を用いた観測データから、熱帯低気圧が強化されている傾向があることが分かった。北西太平洋と北インド洋を除いて、有為な上昇傾向が見られた。25年前に比べると、風速が64ノットから104ノットに上昇する(つまり熱帯低気圧が成長する)時間は9時間早くなっているらしい。北大西洋では20時間も早くなっているらしい。

Local and remote controls on observed Arctic warming
Screen, J. A., C. Deser, and I. Simmonds
北極は全球平均よりも2-4倍早く温暖化している。その原因として地域的な影響(海氷の後退など)と遠隔的な影響との相対的な割合が議論されている。対流圏の大気観測と大気大循環モデルとを組み合わせて温暖化の原因を調査したところ、3つの要素の関与が確認された。1)海氷量とSST変動、2)遠隔地のSST変動、3)温室効果ガス・オゾン・エアロゾル・太陽放射による直接放射強制力。1)の効果は表層付近に、2)の効果は大気上層に、3)の効果は夏の温暖化にそれぞれ寄与しているらしい。

Impact of Arctic sea-ice retreat on the recent change in cloud-base height during autumn
Sato, K., J. Inoue, Y.-M. Kodama, and J. E. Overland
Chukchi海とBeaufort海で海氷のない秋に行われた大気観測(雲高計とラジオゾンデ)のデータと、以前行われた海氷がある時期の観測(1998年)とを比較したところ、500mよりも雲頂高度が低い低層雲の出現頻度が30%低下していることが分かった。接地境界層の状態の変化が原因として考えられる。海氷後退に伴う海氷面からの高い熱輸送が対流圏下層の温暖化に貢献している可能性がある。


Estimating the contribution of monsoon-related biogenic production to methane emissions from South Asia using CARIBIC observations
Baker, A. K., T. J. Schuck, C. A. M. Brenninkmeijer, A. Rauthe-Schöch, F. Slemr, P. F. J. van Velthoven, and J. Lelieveld
夏モンスーン時にはチベット高原に中心を置く低気圧が南アジアに滞留するが、その際に深い対流が起き、大気上層で温室効果ガスであるメタンの濃度が上昇することが知られている。気象データからこの気団はインド由来だと考えられるが、メタンの発生源はよく分かっていない。2008年のモンスーン時には30.8PgCものメタンが観測されたが、うち19.7PgCは生物起源であると推定された。さらにそのうち約3.9PgCは水田由来であると予想されるが、残りの部分はうまく説明できない。湿地の微生物分解起源がかなり寄与している?