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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年7月16日月曜日

新着論文(Science#6091)

Science
VOL 337, ISSUE 6091, PAGES 125-256 (13 July 2012)

Editors' Choice
It’s All About the Sulphides
それが硫黄酸化物のすべてだ
Geochim. Cosmochim. Acta 90, 47 (2012).
火星の表面では硫黄水酸化物と炭酸塩の両方が観測されている。しかし通常これら二つの鉱物は同時に存在しにくいはずである。硫黄水酸化物は酸性状態を必要とするが、これは火星全体が酸性状態であるというよりは、硫黄に富んだ玄武岩の中で局所的に酸化状態が実現されているのが原因である可能性がある。

News of the week
NSF Finds Icebreaker To Reach McMurdo
NSFはMcMurdoに到達するための砕氷船を見つけた
NSFは南極のMcMurdo米軍基地への通路を作るためにロシアの砕氷船(Vladimir Ignatyuk)をチャーターしたと発表した。今期は利用可能だが、来期は利用不可能だという。

New World Heritage Site Spans Three Countries
新しい世界遺産は3つの国々にまたがる
UNESCOは7/2にコンゴ・カメルーン・中央アフリカ共和国の3つの国にまたがる世界遺産を登録した。Sangha River Tri-National Protected Area (TNS)と呼ばれる領域で、野生動物(ゴリラ・チンパンジー・象)がもとの状態で保存されている、中央アフリカのなかで数少ない地域に当たる。

Putting Zoonotic Diseases on the Map
動物由来感染症を地図上に落とす
動物と人間の垣根を越えて、新しい病気は常に発生している。家畜が密集しているアメリカとヨーロッパは以前ホットスポットであるが、発展途上国もそれに追いつきつつある。食料・乳製品の需要増加が主な原因らしい。密集した空間で家禽や豚を飼育することで病気の危険性が高まり、動物由来感染症が原因で毎年2,700万人もの人が死んでいる(特にエチオピア・ナイジェリア・タンザニア・トーゴ・インド)。

South Korea Considers ‘Scientific’ Whaling
韓国が’科学的な’捕鯨を考えている
韓国は先週開かれた国際捕鯨委員会の年会において’科学的な’捕鯨を考えていると公表した。目視だけでは十分な情報が得られないため、特に韓国半島を回遊するミンククジラを捕獲し、生態調査や漁業への影響を評価するという。クジラ保護の国際協定で’科学的な調査’に限って捕鯨は認められているものの、日本は’科学的な調査’として、1986年以降16,000頭ものミンククジラを捕獲している。

Revised Sea Level Rise Bill Goes To Governor
改訂された海水準上昇の法案が州知事へ
海水準上昇が指数関数的に上昇することをいっさい考慮せずに沿岸部の適応政策を決定するという法律がノースカロライナの州議会で可決された。あとは州知事がゴーサインを出せば法律として制定されることになる。2016/7/1まで有効であるという。

News & Analysis
Commission Spreads Blame for ‘Manmade’ Disaster
’人的な’災害だと委員会は責任を広める
Dennis Normile
日本の議会が設立した事故調査委員会は福島第一原発のメルトダウンの事故はいわゆる’人災’であるとして、東京電力と政府の取り締まり委員会を糾弾している。

Earth and Planetary Scientists Search for Common Ground
地球科学者と惑星科学者は同じ地面を探している
Eli Kintisch
NASAの別々の部門が協賛となって開かれた4日間のミーティングにおいて、地球科学と惑星科学のコミュニティーを融合する計画が模索された。

News Focus
Rising Acidity Brings an Ocean of Trouble
上がる酸性度がトラブルの多い海をもたらす
Robert F. Service
二酸化炭素放出は世界の海の化学を変えており、殻を作る生物に既に悪影響を及ぼしているとともに、海洋生態系に大きな影響を及ぼすと考えられる。

Letters
Canada's Weakening Aquatic Protection
カナダの弱い水環境保全
Brett Favaro, John D. Reynolds, and Isabelle M. Côté
予算削減を受けて、カナダ政府は汚染生態学の研究施設や水環境の研究施設を閉鎖した。さらに「Fish Act」と呼ばれる淡水・海水のすべての水に生息する魚を保護するための条例も改定され、漁業対象の魚のみに適応されることに。

Policy Forum
Challenges to the Future Conservation of the Antarctic
将来の南極保全に向けた挑戦
S. L. Chown, J. E. Lee, K. A. Hughes, J. Barnes, P. J. Barrett, D. M. Bergstrom, P. Convey, D. A. Cowan, K. Crosbie, G. Dyer, Y. Frenot, S. M. Grant, D. Herr, M. C. Kennicutt II, M. Lamers, A. Murray, H. P. Possingham, K. Reid, M. J. Riddle, P. G. Ryan, L. Sanson, J. D. Shaw, M. D. Sparrow, C. Summerhayes, A. Terauds, and D. H. Wall
環境の変化と資源需要が南極の保全を脅かしている。

Perspectives
Amazonian Extinction Debts
アマゾンの絶滅の負債
Thiago F. Rangel
ブラジルの熱帯雨林で過去とこれからの森林破壊によってどれだけの種が絶滅に向かうのだろうか?

Reports
A Reduced Organic Carbon Component in Martian Basalts
A. Steele, F. M. McCubbin, M. Fries, L. Kater, N. Z. Boctor, M. L. Fogel, P. G. Conrad, M. Glamoclija, M. Spencer, A. L. Morrow, M. R. Hammond, R. N. Zare, E. P. Vicenzi, S. Siljeström, R. Bowden, C. D. K. Herd, B. O. Mysen, S. B. Shirey, H. E. F. Amundsen, A. H. Treiman, E. S. Bullock, and A. J. T. Jull
火星の隕石から芳香族炭化水素が検出された。マグマ鉱物と同時に産出することから、マグマの結晶化の際に選択的に有機物が沈殿した?過去の火星の炭素循環と生命存在を調べるのに重要な知見が得られた。

Ice Volume and Sea Level During the Last Interglacial
A. Dutton and K. Lambeck
将来の海水準上昇を予測するためにも過去の氷床の安定性(特に西南極氷床)を評価することは重要である。最終間氷期(MIS5, ~125ka)の海水準をサンゴ(U/Thで年代決定)やアイソスタシーを組み込んだモデルを用いて求めたところ、現在よりも5.5 - 9.0 m 高かったことが分かった。グリーンランドと南極の氷床はともに縮小していた可能性がある。放射強制力の増加に対して、両氷床の感度は高いかもしれない(温室効果ガス濃度増加で融けるということ)。
Dutton & Lambeck (2012)を改変。
生息深度が既知のサンゴは海水準の指標になり得る。この場合、テクトニクス的に比較的安定な地域から得られた化石サンゴの年代をU/Th法により得て、最終間氷期の海水準を推定している。

Rapid Progression of Ocean Acidification in the California Current System
Nicolas Gruber, Claudine Hauri, Zouhair Lachkar, Damian Loher, Thomas L. Frölicher, and Gian-Kasper Plattner
カリフォルニア海流系は既に海洋酸性化によって大きな影響を受けている地域の一つである。渦を改造できるモデルシミュレーションを用いてA2・B2排出シナリオに基づいて将来の酸性化を予測。30年後には表層60mは夏の間中、アラゴナイトに対する不飽和が実現すると考えられる。また2050年までにはアラゴナイトに対する飽和度が1.5を超す海域はなくなり、一年中不飽和な状態が実現する海域が半数に達し、底性の生態系に重大な悪影響を及ぼすと考えられる
Gruber et al. (2012)を改変。
カリフォルニア海流系ではすでに酸性化が顕著に進行しており、将来も拡大することが予測されている。2050年にはアラゴナイトに関して未飽和(飽和度が1を切ると殻が溶けると考えられている)の海水はほとんどなくなることが予想される。

Clovis Age Western Stemmed Projectile Points and Human Coprolites at the Paisley Caves
Dennis L. Jenkins, Loren G. Davis, Thomas W. Stafford Jr., Paula F. Campos, Bryan Hockett, George T. Jones, Linda Scott Cummings, Chad Yost, Thomas J. Connolly, Robert M. Yohe II, Summer C. Gibbons, Maanasa Raghavan, Morten Rasmussen, Johanna L. A. Paijmans, Michael Hofreiter, Brian M. Kemp, Jodi Lynn Barta, Cara Monroe, M. Thomas P. Gilbert, and Eske Willerslev
アメリカ・オレゴン州のPaisley洞窟から発見された古代人の遺物と糞の化石の放射性炭素年代測定から、鏃をもつ文化がClovisと呼ばれる別の文明と同時期かやや早く(~11,000 14Cage)登場していることが分かった。2つの文化は平行して進化してきた可能性が高い。

Extinction Debt and Windows of Conservation Opportunity in the Brazilian Amazon
Oliver R. Wearn, Daniel C. Reuman, and Robert M. Ewers
いつ生物が絶滅するかを予測するのはこれまで困難であったが、我々が新しく開発した方法では絶滅のタイミングや生息地の喪失の規模を推定することができる。この手法をアマゾンの熱帯雨林に応用したところ、2008年までに絶滅した脊椎動物は全体のわずか1%で、2050年までに16種が絶滅すると予想される。このモデルから得られる知見はどの種を優先的に保護すべきかを考える上で非常に重要である。