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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2012年7月6日金曜日

新着論文(Nature#7405)

Nature
Volume 487 Number 7405 pp5-134 (5 July 2012)

Research Highlights
Future ozone from planes and boats
飛行機や船から出てくる未来のオゾン
Geophys. Res. Lett. http://dx.doi. org/10.1029/2012GL052008 (2012)
地上付近では船や飛行機から排出されるオゾンが呼吸器系の健康被害を起こしていることが予想されている。2050年までの排出をモデルシミュレーションしたところ、航空機や船からの排出量は増加し、一方で車からの排出は抑制されるという結果が得られた。

Lopsided warming north to south 
南に比べて北に寄った温暖化
Geophys. Res. Lett. http://dx.doi. org/10.1029/2012GL052116 (2012)
北半球の方が南半球に比べて温暖化しやすい。スクリップス海洋研究所のモデルで近年の気候を再現したところ、うまく表現できたらしい。1910-1940、1975-2005の温暖化、1940-75の寒冷化も。さらに干ばつやインドモンスーンの強化なども再現できたらしい。

Illuminating invertebrate habitats 
無脊椎動物の生息域に光をあてる
Biol. Lett. http://dx.doi.org/10.1098/ rsbl.2012.0216 (2012)
イギリスの街灯に集まる虫を調べ、その生態学的な関係性を調査。街灯には虫だけでなく、種々の無脊椎動物(特に捕食者や腐肉食者)も多いことも分かった。単に光に寄せられているだけではなく、動物同士が複雑に関係し合っているらしい。

Seven Days
Carbon tax
炭素税
オーストラリアは炭素税の導入を7/1に開始した。1トンあたり約23ドルとのこと。2015年まで年間に2.5%ずつ引き上げられるらしい。しかし抗議運動も激しく、2013年の選挙に勝てば炭素税を失くすと主張する政治家も現れている。

Nuclear restart
核の再開

7/1に大飯原発の一つが再稼働した。日本の残り48基の原発は依然止まったままである。

OIL-PRODUCTION SURGE
石油生産の沸き上がり
近年の石油価格の高騰を受けて、石油生産もすさまじい勢いで上昇している。石油生産能力は2011年で1日あたり9300万バレルであるが、2020年には11060万バレルに増加すると見込まれている。増加の原因は新たなシェール石油などの採掘にあるらしい。
緑が2011年、黄色が2020年の石油の生産量。単位は1日あたり何百万バレルか。
News in Focus
Laser plant offers cheap way to make nuclear fuel
レーザー型のプラントは核燃料を作るための安い方法を提供する

専門家はウラン濃縮技術が核兵器を作るために使われるのではないかと心配する。

Comment
A call for global nuclear disarmament
世界的な核の軍備縮小の要請
核兵器の恐怖が日に日に増している。弾道ミサイルが必要のない未来を作るために、核燃料生産サイクルをしっかりコントロールしなければならない、とScott D. Saganは語る。
世界各国に散らばる核兵器の歴史と保有数。現在核保有国は9国。
Correspondence
Take direct action on climate inaction 
気候変動に対する怠惰に対して直接行動を起こせ
カナダの二酸化炭素排出量削減に対する姿勢の低さにしびれを切らして科学者が抗議運動を行ったが、その結果逮捕されてしまった。NASAの著名な気候学者であるJames Hansenも同じく抗議運動によって過去3年間で3度逮捕されている。このまま二酸化炭素が放出され続けると2℃の温度上昇という閾値を超えてしまうと分かっていながら、カナダやアメリカをはじめとする多くの国が排出削減に繋がる運動を起こしていない。市民の抗議運動は権力を握った人間が行動を起こさない場合に有効な手段だ。

Doubt in Australia’s emissions scheme
オーストラリアの排出計画の嘘
オーストラリアはEUと比較して非常に重い炭素税を導入した。7/1に始まった炭素税の導入では1トンあたり23ドルであるが、二酸化炭素を多く排出している事業者にアンケート調査を行ったところ、多くが将来炭素税が低下することを期待している。しかし将来の炭素税がいくらになるか、予想することは難しいし、世界情勢にも左右されるだろう。

Trade threat could be even more dire
貿易の脅威はもっと酷い可能性がある
先日Natureにて「国際貿易が生物絶滅の原因の3割を占めている」という結果が出されたが、我々はその数字はまだ低く見積もっていると感じている。中国、インド、ブラジル、インドネシアをはじめとして大国の国際貿易は拡大し続けている。全球的に脅威にさらされている種よりも、地域的に脅威にさらされている種というのは非常に多い。従って、国際貿易の生物多様性に与える影響を評価するためには双方の視点が必要だ。

News & Views
The ancestral dinner table
祖先の夕飯の食卓
Margaret J. Schoeninger
南アフリカの新規な遺跡から出土した化石は、現在の霊長類の大半が食べているのと同じように、ヒトの祖先が果物や木の葉を食べていたことを明らかにしている。この知見は、現存する類人猿の祖先からヒト系統がどういう訳で、どのようにして分岐したのかという問題についてのさまざまな考え方に異論を唱えるものだ。

The importance of being rare
希少であることの重要性
Kevin J. Gaston
希少種の生態系への寄与を明らかにすることは、生物多様性の消失の影響を予測するうえで重要である。このような種は、近縁のありふれた種とは、生態学的に大きく異なっていることがあるようだが、それは一部の場合だけである。

Warm dust makes a fast getaway
暖かい塵が早く逃げられる逃げ道を作る
Margaret Moerchen
太陽に似た星からの赤外線放出の迅速な減少は、急激に起こった事象によって、細かな塵でできた星周円盤がきれいになくなったことを示している可能性がある。こうした塵は惑星を形成する材料となる。

Letters
The diet of Australopithecus sediba
Amanda G. Henry, Peter S. Ungar, Benjamin H. Passey, Matt Sponheimer, Lloyd Rossouw, Marion Bamford, Paul Sandberg, Darryl J. de Ruiter & Lee Berger
南アフリカのマラパ地方の遺跡で見つかったアウストラロピテクス・セディバ(Australopithecus sediba)の歯(約200万年前のもの)の摩耗度と歯石のd13C分析からかつて食べていた植物組成を推定。ほとんどC4植物だけを摂食していた。広く入手可能であったのはどちらかというとC4植物で、この食餌パターンはこの地域やほかの地域に住んでいたほかのヒト族について得られているデータとは対照的である。