☆Vol. 109, No. 26 (26 June 2012)
PNAS Plus
Fluvial landscapes of the Harappan civilization
Liviu Giosan, Peter D. Clift, Mark G. Macklin, Dorian Q. Fuller, Stefan Constantinescu, Julie A. Durcan, Thomas Stevens, Geoff A. T. Duller, Ali R. Tabrez, Kavita Gangal, Ronojoy Adhikari, Anwar Alizai, Florin Filip, Sam VanLaningham, and James P. M. Syvitski
Warming accelerates decomposition of decades-old carbon in forest soils
インダス文明のハラッパー遺跡は3.9ka年頃に突如崩壊するが、その原因は謎のままである。多くの遺跡は放棄され、東に移動している。5.0ka頃から始まる乾燥化によってパンジャーブ地方の上流では河川による下刻が停止し、下流では堆積が少なくなった。河川流量の低下が4.5ka頃に始まる都市化のきっかけとなった?ヒマラヤが水を供給するインダス川とガンジス川の間のみ水が豊富にあったため、文明の中心が東へと移った可能性がある。
Warming accelerates decomposition of decades-old carbon in forest soils
Francesca M. Hopkins, Margaret S. Torn, and Susan E. Trumbore
温暖化すると土壌中の炭素分解が促進され、土壌炭素が大気へ排出されると考えられているが、その規模やフィードバックはよく分かっていない。2カ所の温帯の森林の土壌を対象に温暖化実験で二酸化炭素濃度と安定・放射性同位体を測定したところ、平均して10年程度の年代が得られ、従来のモデルと整合的であったが、さらなる温暖化とともに古い炭素の割合が増加することが分かった。生物呼吸量が増加するとともに本来安定な炭素が分解されている?世界の土壌にも当てはまるかも。
Perspectives
Earthquake triggering and large-scale geologic storage of carbon dioxide
Mark D. Zoback and Steven M. Gorelick
炭素捕獲&貯留技術(CCS)によって地下深くに石炭火力発電所などで発生した二酸化炭素を保管する技術が盛んに開発されているが、脆弱な地層への二酸化炭素注入は小型ではあるものの地震を誘発し、さらに二酸化炭素の漏れを招く可能性がある。大規模なCCSはリスクが高く、そして成功しないだろう。
Leaf fossil record suggests limited influence of atmospheric CO2 on terrestrial productivity prior to angiosperm evolution
C. Kevin Boyce and Maciej A. Zwieniecki
白亜紀を通して徐々に大気中の二酸化炭素濃度が低下したことが、被子植物の特徴である葉脈の高密度化のきっかけとなったことが示唆されている。葉脈密度と生物生産には相関があるが、今後の二酸化炭素増加とともに葉脈密度は低下し、生物生産も抑えられるとともに、葉脈密度が低い植物ほど不利な可能性がある。
☆Vol. 109, No. 27 (3 July 2012)
Letter
Temperature change vs. cumulative radiative forcing as metrics for evaluating climate consequences of energy system choices
Reply to Caldeira and Myhrvold: Radiative forcing is a useful, accepted metric to compare climate influence of alternative energy choices
Ken Caldeira and Nathan P. Myhrvold
将来の発電形式(石炭火力発電か他の炭素フリーな発電方法か)が気候に与える影響を評価する時に、温度変化で話をするのか、或いは放射強制力で政策決定者にデータを提供するかでは全く違った結果になる。Alvarez et al. (2012, PNAS)は気候が平衡状態になる時間の概念が欠落しており、間違いを招く可能性がある。
将来の発電形式(石炭火力発電か他の炭素フリーな発電方法か)が気候に与える影響を評価する時に、温度変化で話をするのか、或いは放射強制力で政策決定者にデータを提供するかでは全く違った結果になる。Alvarez et al. (2012, PNAS)は気候が平衡状態になる時間の概念が欠落しており、間違いを招く可能性がある。
Reply to Caldeira and Myhrvold: Radiative forcing is a useful, accepted metric to compare climate influence of alternative energy choices
Ramón A. Alvarez, Stephen W. Pacala, James J. Winebrake, William L. Chameides, and Steven P. Hamburg
IPCC AR4でも推薦されているように、放射強制力で話をするのは非常に便利であるし、政策決定者に有効である。放射強制力こそが気候システム(温度、降水、海水準など)に影響するからである。確かに温度で話をするのは分かりやすいが、放射強制力を温度に変換するには様々な不確実性を伴うことに注意しなければならない。
Rainfall-induced carbon dioxide pulses result from sequential resuscitation of phylogenetically clustered microbial groups
Sarah A. Placella, Eoin L. Brodie, and Mary K. Firestone
地中海地域では、乾季ののちの最初の雨が土壌中の微生物群集を刺激し、全球の土壌の二酸化炭素放出量に匹敵するほどの二酸化炭素がパルス的に放出されることが知られている。