Main contents


☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年7月1日日曜日

新着論文(NCC#June2012)

Nature Climate Change
June 2012 Volume 2, Issue 6

Commentaries
Greenhouse-gas emissions from tropical dams
熱帯のダムからの温室効果ガスの放出
Philip M. Fearnside &  Salvador Pueyo
熱帯域の水力発電用のダムから出てくる温室効果ガスの量は低く見積もりすぎており、時として数十年間の化石燃料燃焼による排出を上回っている。

Shale gas can be a double-edged sword for climate change
シェールガスは気候変動に対する諸刃の剣になり得る
Deyi Hou,  Jian Luo &  Abir Al-Tabbaa
シェールガスは将来の気候変動緩和に重要なものとなる可能性を秘めている(燃焼効率が良いため)。しかし、採掘が望まない影響(例えば気候変動を悪化させるなど)を環境に与えるかもしれない。

Research Highlights
Accounting for snow types
雪のタイプを説明する
J.Geophys. Res. http://doi.org/hv8 (2012)
ツンドラ・タイガなどの極域の森林には大量の炭素が土壌中に保存されており、それらの気候変動における安定性が懸念されている。土壌中の有機物分解は温度に大きく依存すると考えられるが、ツンドラやタイガでその表面を覆う雪が土壌と空気との熱交換を断熱している。最新の調査から得られた土壌温度を考慮すると、北極圏の推定炭素貯蔵量が8%減少するらしい。

Biofuel economic potential
バイオ燃料の経済的な可能性
Ecol. Econ. http://doi.org/hvz (2012)
バイオ燃料の製造にはは土地を必要とするため、作物用の土地の改変や新たな土地開発などの問題がある。熱帯・亜熱帯種の植物であるジャトルファ(Jatropha curcas)をバイオ燃料としてケニアで栽培した場合の経済・環境的な側面について調査を行ったところ、かなり有望であることが示された。

Climate and Baltic Sea nutrients
気候とバルト海の栄養塩
Clim. Dynam. http://doi.org/hv4 (2012)
バルト海は将来、工業・農業の変化とともに気候変動の影響を大きく受けると考えられている。1961 - 2099 年における変化を物理-生物地球化学モデルを通じて再現したところ、温暖化とともに水温が上昇し、集水域の降水量の増加とともに塩分濃度が低下し、さらに栄養塩の供給量も増加することが示された。富栄養化と有機物沈降量の増加に伴い、底層水の酸素濃度は減少すると考えられる。栄養塩流入を減少させるために規制を強化する必要がある。

Certainty about uncertainty
不確かさの確かさ
Environ. Res. Lett. 7, 024002 (2012)
将来大気中のCO2が増加した際に気温が何度上昇するかを推定することは不確実性が大きい。それはどれだけのCO2を我々が大気へと放出し、それが様々なリザーバーに分配され、大気中に残存するかに依存する。しかしながら我々の炭素循環に関する知識はまだ不足しているのが実情である。陸域に対象を限定して炭素フィードバックをモデルシミュレーションを通じて評価したところ、その変化幅に応じて、将来のCO2濃度も大きく変化する可能性があることが示された。つまり、植物の光合成などの応答をより理解する必要があることを示している。

Glacier speeds
氷河のスピード
The Cryosphere 6, 467–478 (2012)
人工衛星による観測から世界の6つの大きな氷河地帯において氷河の速度を求めたところ、氷河の流出速度がすべての地域において減少していることが示された。山頂付近への降雪量が減少していることが原因と考えられる。結果、氷河はより薄くなり、徐々に後退する。一方、カラコラム地域の氷河だけは流出速度が増しており、気候変動に対する氷河ごとの応答の違いが確認されている。

News and Views
Future of the Greenland ice sheet
グリーンランド氷床の未来
Gerhard Krinner &  Gaël Durand
新たな研究から、グリーンランド氷床の崩壊は「産業革命以前に比べて2℃の温暖化に食い止める」という削減目標を超えずとも起きる可能性が指摘されている。

Future impact of today's choices
今日の選択が未来に与える影響
Ronald J. Stouffer
気候変動は現在起きつつあるが、その影響がどの程度持続するかを考えている人は少ない。現在の排出量次第で将来気候変動が長期に持続することを新たな研究は強調している。

Analysing fossil-fuel displacement
化石燃料代替物を分析する
Andrew K. Jorgenson
化石燃料は代替エネルギーに置き換わると一般的に想定されている。しかし新たな研究はこの想定に疑問を呈しており、化石燃料使用量を減らすための’科学技術以外の’解決策の役割を強調する。

The drivers of human migration
人類の移動の駆動要因
Etienne Piguet
気候変動の結果、人々が移動を余儀されなくされることに対する警告が新聞の見出しを飾っている。新たな研究はこれは状況をシンプルにし過ぎだということを示している。

Flooding and the scale of migration
洪水と人類移動の規模
Allan M. Findlay
田舎に暮らす人々の生活における「気候に関連した自然災害」の影響を心配する政策決定者の注意は、人が「動けないこと」よりも「動けること」に向けるべきだ。

Perspective
Quantifying future climate change
将来の気候変動を定量化する
Matthew Collins,  Richard E. Chandler,  Peter M. Cox,  John M. Huthnance,  Jonathan Rougier &  David B. Stephenson
気候モデルの不確実性を定量化するために行われている一般的な枠組みについて。モデルは過去の気候変動と将来の気候変動予測の関係を調べるために使われているのである。

Review
Global agriculture and nitrous oxide emissions
世界の農業と窒素酸化物の排出
Dave S. Reay,  Eric A. Davidson,  Keith A. Smith,  Pete Smith,  Jerry M. Melillo,  Frank Dentener &  Paul J. Crutzen
主要な温室効果ガスである窒素酸化物の放出源として農業がはたしている役割についての現在の知識をレビューする。「将来バイオ燃料の使用が増えることによる結果」「栽培漁業」「排出量削減のオプション」などについての将来の発展に向けた期待を提示する。

Evaluation of climate models using palaeoclimatic data
古気候データを用いた気候モデルの評価
Pascale Braconnot,  Sandy P. Harrison,  Masa Kageyama,  Patrick J. Bartlein,  Valerie Masson-Delmotte,  Ayako Abe-Ouchi,  Bette Otto-Bliesner &  Yan Zhao
PMIP(Palaeoclimate Modelling Intercomparison Project)の仕事に焦点を当て、古気候記録が気候モデルを検証する手段を提供することで現在の気候変動の理解に役立っていることを示す。

Letters
135 years of global ocean warming between the Challenger expedition and the Argo Programme
Challenger航海とアルゴ計画の間の135年間における全球の海の温暖化
Dean Roemmich,  W. John Gould &  John Gilson
 1960年代以降の温暖化の熱の9割は海洋が吸収していると推定されている。海洋はその熱容量の大きさと海流や水塊混合によって熱を移動させる役割を負っており、それによって大気・陸域・雪氷圏などを支配している。海洋観測記録で最も長いものは135年前まで遡る。
 1872 - 1876年に行われたChallenger号の航海の際のデータと、2004 - 2010年における最新のArgoフロートによる観測データとを比較することで、少なくとも19世紀後半〜21世紀初頭以来、海洋が「0.59 ± 0.12 ℃」温暖化していることを示す。深さが増すごとに温暖化は抑えられ、366m深で「0.39 ± 0.18 ℃」、914m深で「0.12 ± 0.07 ℃」と推定される。温暖化は北大西洋のほうが太平洋よりも早いらしい。

Multistability and critical thresholds of the Greenland ice sheet
グリーンランド氷床の複数の安定解と臨界的な閾値
Alexander Robinson,  Reinhard Calov &  Andrey Ganopolski
グリーンランド氷床の崩壊を引き起こす臨界温度は、産業革命以前の気温に比べて「たった1〜2℃」の温度上昇であることを示す。これは従来信じられていたよりもはるかに低い数字である。

Do alternative energy sources displace fossil fuels?
代替エネルギー源は化石燃料に置き換わるだろうか?
Richard York
アナリストは将来代替エネルギーが化石燃料によるエネルギーに同程度に置き換わることを暗に仮定している。しかし社会経済の複雑なシステムのせいで、過去50年間にわたって、化石燃料以外のエネルギー源は化石燃料起源のそれに比べて4分の1しか実質的に置き換わっていないことを示す。

Plot-scale evidence of tundra vegetation change and links to recent summer warming
ツンドラの植生変化の区画スケールの証拠と近年の夏の温暖化との関係性
Sarah C. Elmendorf et al.
人工衛星観測から北極圏の生物生産と低木のバイオマスが温暖化によって増加したことが既に分かっているが、新たな研究から、夏の温暖化によって全球的に維管束植物がツンドラに広がりつつあることが分かってきた。