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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2012年7月8日日曜日

新着論文(GPC)

Global and Planetary Change
Volumes 92–93, Pages 1-286 (July 2012)

Estimate of calcification responses to thermal and freshening stresses based on culture experiments with symbiotic and aposymbiotic primary polyps of a coral, Acropora digitifera
Mayuri Inoue, Kotaro Shinmen, Hodaka Kawahata, Takashi Nakamura, Yasuaki Tanaka, Aki Kato, Chuya Shinzato, Akira Iguchi, Hironobu Kan, Atsushi Suzuki, Kazuhiko Sakai
Acropora digitiferaのポリプ(褐虫藻を持つものと持たないもの)を異なる温度(27, 29, 31, 33℃)・塩分(26, 28, 30, 32, 34‰)で飼育し、石灰化に対する影響を評価。温度に対する閾値が29-31℃付近に存在し、白化が起きる。また一方で塩分増加とともに成長率は増加。温暖化はポリプの段階でサンゴと褐虫藻との関係性を悪化させることが分かった。また淡水化もまた石灰化に影響することが分かった。

Possible changes in the characteristics of Indian Summer Monsoon under warmer climate
P. Parth Sarthi, S.K. Dash, Ashu Mamgain
インドモンスーンはアラビア海とアジア大陸の熱の違いと大気循環によって駆動されているため、これらの定性的・定量的な理解が将来のモンスーン予測にとっても重要である。 IPCC AR4の際に用いられた気候モデル(MIROC含む)を用いてモンスーン性の降水を予測。降水が東部と西部で増えるものと逆に減るものが見られた。

Changes in the frequencies of northeast monsoon rainy days in the global warming
C.V. Naidu, G.Ch. Satyanarayana, K. Durgalakshmi, L. Malleswara Rao, G. Jeevana Mounika, A. Dharma Raju
インドの1951-2008年において得られた降水のデータと風の東西分布のデータをもとに、温暖化前(1951-1969年)と温暖化後(1970-2008年)に分けて解析を行ったところ、特に温暖化後に北東モンスーンの時期のインド半島の降水が強化されており、降水がない日数が減少していることが分かった。

Annual ice volume changes 1976–2008 for the New Zealand Southern Alps
T. Chinn, B.B. Fitzharris, A. Willsman, M.J. Salinger
ニュージーランドの南部の山岳地帯には1977年から現在にかけて3,000個もの山岳の雪線をモニタリングした記録が充実している。全体の傾向を見積もるための一つの手法は雪線の変化を氷河量の変化に置き換える方法で、もう一つの手法は12個の比較的大きな氷河の変化を代表値として見なす方法である。氷河の量は54.5から45.1km2へと減少したらしい。うち71%は先の12個の代表的な氷河の減少。

Increased rainfall remarkably freshens estuarine and coastal waters on the Pacific coast of Panama: Magnitude and likely effects on upwelling and nutrient supply
Ivan Valiela, Luis Camilli, Thomas Stone, Anne Giblin, John Crusius, Sophia Fox, Coralie Barth-Jensen, Rita Oliveira Monteiro, Jane Tucker, Paulina Martinetto, Carolynn Harris
東赤道太平洋のパナマ湾においては2010年に前例をみないほどの降水によって表層水の淡水化が起きた。陸からの大量の淡水流入に伴いマングローブが根こそぎひっくり返されたり、ラニーニャに匹敵する栄養塩が供給されたらしい。将来の熱帯域のアナログになるか。生態系や生物地球化学的な循環も変化する模様。

The relative age of mountain permafrost — estimation of Holocene permafrost limits in Norway
Karianne S. Lilleøren, Bernd Etzelmüller, Thomas V. Schuler, Kjersti Gisnås, Ole Humlum
スカンジナビアの永久凍土では掘削孔を用いて孔内温度のモニタリングなどが充実してきたが、例えばHoloceneを通しての永久凍土の変化についてはほとんど知られていない。高度が高い地域の永久凍土は退氷期から存在し続けているが、低い地域はHoloceneの温度極大期には一度後退していたことが分かった。最も寒く、永久凍土が拡大していたのは小氷期の時代だったと考えられる。
Lilleoren et al. (2012)を改変。完新世の温度極大期と小氷期の寒冷化が顕著に現れている。

A short-term climate oscillation during the Holsteinian interglacial (MIS 11c): An analogy to the 8.2 ka climatic event?
Andreas Koutsodendris, Jörg Pross, Ulrich C. Müller, Achim Brauer, William J. Fletcher, Norbert Kühl, Emiliya Kirilova, Florence T.M. Verhagen, Andreas Lücke, André F. Lotter
ドイツ北部(Koutsodendris)の湖の年縞堆積物の花粉分析からHolsteinian間氷期(MIS11、二つ前の間氷期)の環境を復元。“Older Holsteinian Oscillation” (OHO)と名付けられた220年間継続する気候変動が見られた。また花粉だけでなく湖に生息していた珪藻のd18Oにも変動が見られた。OHOはヨーロッパ各地で認識されており、寒冷化と乾燥化が特徴らしい。偏西風の影響の低下とシベリア高気圧の影響力増大が原因?8.2kaイベントと非常に類似している。原因は北大西洋高緯度域への淡水流入によるAMOCの弱化か。間氷期においては一般的な現象だった?また夏の日射量の増加が先行して起きており、日射量がカギになっていた可能性がある。
Koutsudendris et al. (2012)を改変。OHOの概念図。