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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2012年7月17日火曜日

新着論文(Ngeo#July2012)

Nature Geoscience
Vol 5 No 7 (July 2012)

Editorial
Beyond forest carbon 
森林の炭素を超えて
生物的な炭素貯留域として陸上及びマングローブの森林の保全に注目が寄せられている。目に見えにくい生物コミュニティーほど詳しく調べる必要がある。

Correspondence
Circadian control of global isoprene emissions
Trevor F. Keenan & Ülo Niinemets

Reply to 'Circadian control of global isoprene emissions'
C. N. Hewitt, K. Ashworth, A. Boynard, A. Guenther, B. Langford, A. R. MacKenzie, P. K. Misztal, E. Nemitz, S. M. Owen, M. Possell, T. A. M. Pugh, A. C. Ryan & O. Wild
「全球のイソプレン排出量が日周期で変動していること」に対するコメントとその返答。

Commentary
The dilemma of mountain roads
山道のジレンマ
Roy C. Sidle & Alan D. Ziegler
東南アジアの発展途上国において山道の数が増えつつある。地滑りや浸食が下流の水生生態系に与える影響は長期的な視点では重大であると考えられるが、広く認知されていない。

In the press
Nuances of glacier speed
氷河の速度の陰影
Mark Schrope
グリーンランド氷河は従来考えられてきたほど早くは融けていないらしい。2008年には間違ったデータに基づいて急速に融ける危険があると認識されていた。

Research Highlights
Drying times
乾燥した時代
Geol. Soc. Am. Bull. http://doi.org/hzg (2012)
現在アタカマ砂漠は地球上で最も乾燥した地域の一つである。乾燥化(年降水量が125から3mm以下に低下)は200万年前に始まったと考えられる。乾燥化する前の水系は10倍もの浸食・堆積が起きていたらしい。乾燥化のタイミングは、アンデスの隆起が気候変化の第一の駆動力であるというよりは、赤道東太平洋の湧昇の強化によって冷たい水が表層にもたらされ、降水のもととなる水蒸気の形成が低下したことが乾燥化の駆動力になっていたと考えられる

Emissions from ponds
沼からの排出
Glob. Biogeochem. Cycles http://doi.org/ hx4 (2012)
シベリア北東部のツンドラに広がる沼地は陸起源の二酸化炭素の量としてかなりの割合を負っている。沼と湖の水系が74-81%を負っており、そのうち沼の割合が50-70%であるという。研究チームは永久凍土地形の水系は二酸化炭素排出のホットスポットであると考えている。

Orbital assist
軌道的な手助け
Icarus http://doi.org/hzj (2012)
多くの天体(惑星・衛星)の地軸は公転面に対し垂直ではなく、傾いている。数理モデルを用いて木星の衛星の回転運動をモデリングした。一つのモデルではすべての衛星が均質な個体であることを仮定し、もう一つのモデルでは様々な厚さを持った固体と液体の層構造を採用した。液体の海があることがエウロパ・ガニメデ・カリストの地軸傾動に大きな影響を及ぼしていることが分かった。イオにはそれほど大きな影響は見られなかったらしい。系外惑星の海の存在や地下の海の深さを推定し、生命存在可能性を考える上で助けとなるかもしれない。

News and Views
Unexpected uptake
予想外の取り込み
Jayne Belnap
地衣類・シアノバクテリア・コケは地表の様々な部分を覆っているが、これらの生物が地球化学的に炭素と窒素の循環に重要な役割を負っていることが分かった。

Mercury in flux
流れの中の水銀
Jeroen E. Sonke & Lars-Eric Heimbürger
北極の大気中の水銀量は夏に極大となる。モデルシミュレーションから夏に河川から大量の水銀が供給されれば説明可能であることが分かった。

Dirtier air from a weaker monsoon
弱いモンスーンがもたらすより汚い空気
Mian Chin
中国のエアロゾルの量は少なくとも地域的には人体に害を与えるレベルに達している。モデルシミュレーションから過去数十年間にモンスーンが弱まってきたことが、汚染物質を陸に滞留させる原因として重要であることが分かった。

Analogue complexity
アナログの複雑さ
Dorothy Pak
カリフォルニア湾は最終退氷期の寒冷化が起きていた時期(YD?)には湧昇が弱化していたらしい。これは現在見られる季節変動をもとになされる予想とは反対の変化であることが分かった。

Progress Article
The contribution of organics to atmospheric nanoparticle growth
Ilona Riipinen, Taina Yli-Juuti, Jeffrey R. Pierce, Tuukka Petäjä, Douglas R. Worsnop, Markku Kulmala & Neil M. Donahue
エアロゾルは気候に大きな影響を与えていると考えられているが、あまり定量化がなされていない。ナノメートルサイズの粒子が雲の凝結核になり得るサイズの粒子まで成長する過程を理解することはエアロゾル・雲の形成過程・気候との関係を知る上で重要である。自然界では炭化水素起源の有機物を取り込んで成長しているが、いくつかのメカニズムが考えられる。成長を支配するメカニズムは粒子のサイズに強く影響されるため、よりシステマティックに研究をする必要がある。
Riipinen et al. (2012)を改変。
揮発性有機物(VOC)・エアロゾルの成長とその起源・影響などの模式図。

Letters
Contribution of cryptogamic covers to the global cycles of carbon and nitrogen
Wolfgang Elbert, Bettina Weber, Susannah Burrows, Jörg Steinkamp, Burkhard Büdel, Meinrat O. Andreae & Ulrich Pöschl
地上の多くの部分(土壌・岩石・植物)は光合成自家栄養生物(光から栄養を作る)によって覆われている。これらの生物は隠花植物カバーと呼ばれており、大気中の二酸化炭素と窒素を固定できる能力がある。これらのコミュニティーが陸域の炭素固定の7%を負っており、窒素固定のほとんど半分を負っている可能性があることが分かった。
Elbert et al. (2012)を改変。
様々な環境中の隠花植物。

Articles
Riverine source of Arctic Ocean mercury inferred from atmospheric observations
Jenny A. Fisher, Daniel J. Jacob, Anne L. Soerensen, Helen M. Amos, Alexandra Steffen & Elsie M. Sunderland
メチル水銀は水生生物の体内に蓄積する神経毒を持った物質である。工業や鉱業などの人間活動によって無機的な水銀の陸域への流入量が増加してきた。北極の大気中の水銀量は夏にピークを迎える(北半球の中緯度では逆に低くなる)ことが知られているが、3次元のモデルシミュレーションから水銀は北極周辺の河川から特に夏に流入している可能性が示された。しかし河川流量の変化や土壌中での水銀の移動性(例えばツンドラの融解や森林火災など)に強く依存することが分かった。

Seagrass ecosystems as a globally significant carbon stock
James W. Fourqurean, Carlos M. Duarte, Hilary Kennedy, Núria Marbà, Marianne Holmer, Miguel Angel Mateo, Eugenia T. Apostolaki, Gary A. Kendrick, Dorte Krause-Jensen, Karen J. McGlathery & Oscar Serrano
炭素固定に森林やマングローブの保全が重要であることは広く認識されているが、海で炭素固定を担っている海草類の炭素固定能(地球で最も大きな炭素固定能をもつものの一つ)はあまり定量化されていない。これまで得られたデータと新しく得たデータをもとに、海草類とその下の土壌中の炭素量を推定。4.2-8.4PgCほどの炭素量に相当するらしい。現在の速度で海草類が失われてしまうと、年間299TgCが放出されることになるらしい。