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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年7月13日金曜日

新着論文(Nature#7406)

Nature
Volume 487 Number 7406 pp139-266 (12 July 2012)

Research Highlights
Planet gas vanishes
惑星の気体が消える
Astron. Astrophys. http:// dx.doi.org/10.1051/0004- 6361/201219363 (2012) 
ハッブル宇宙望遠鏡が木星状の系外惑星の大気中の水素が宇宙に消失している姿を捉えた。恒星から強いX線が出ていることを別の観測衛星が捉えていることから、フレアが大気(特に水素)を一部蒸発させていると考えられる。

Why Antarctica is melting
なぜ南極が融けているのか

Geophys. Res. Lett. http://dx.doi.org/10.1029/2012GL051012 (2012)
南極のFimbul氷床の基部が融解しているのは、表面を流れる暖かい水と深層水から渦を介してパルス的にやってくる暖かい水が原因らしい。南極の氷床は従来考えられてきたよりも複雑な機構で融解しているらしい。

Two-faced cuttlefish 
二つの顔を持つコウイカ
Biol. Lett. http://dx.doi. org/10.1098/rsbl.2012.0435 (2012)
コウイカは求愛中、片側はメスに向けて求愛用の模様を見せており、もう片側はライバルに見つからないようにメスの模様を見せているらしい。138個体のオスのうち、約4割がこのような行動をしたという。
右がオスのコウイカ。左側は求愛、右側はメスの真似をした模様。

Seven days
Arsenic life
ヒ素生命体

カリフォルニアのMono湖から見つかった高濃度のヒ素中で生きるバクテリアについて。高濃度のヒ素中でリンを使ってDNAや生体高分子を合成していると考えられていたが、2つの新しい研究からヒ素そのものは生体内には取り込まれていないことが分かった。

Reefs at risk
脅威にさらされているサンゴ礁
’サンゴ三角地帯(インドネシア、マレーシア、パプアニューギニア、フィリピン)’の世界平均と比較してはるかに珊瑚礁が脅威にさらされているらしい。原因は沿岸部の汚染や破壊的な漁業などによる地域的な人間活動の影響。

Korean whaling
韓国の捕鯨
先日の国際捕鯨会議にて韓国は調査目的での捕鯨を開始すると宣言した。韓国は周辺海域のミンククジラの頭数を把握するためだとしているが、捕鯨に反対する団体は商業目的の捕鯨を正当化するためだとして糾弾している。現在’科学的な’捕鯨を行っている国は世界で日本だけである。

Nuclear inquiry
核の調査
福島第一原発のメルトダウンの事故は人為的な事故で、予測可能であったし、防げたと最近日本の議会から提出された報告書は痛烈に批判している。また安全装置は津波によってではなく、地震によって損傷を受けていた可能性がある。業界は原発の再稼働を急ぐあまりこの事実を過小評価していた可能性がある。

Endangered species
絶滅危惧種
アメリカのFish and Wildlife Service (FWS) が設置した42の生物保護区の調査から、専門家が保護区を広げるようアドバイスした地域のうち、92%の地域がアドバイスを無視していることが分かった。

Deep-sea mining
深海の採鉱
インドが海底下の鉱物資源(レアアースなど)を採鉱する計画を立てているらしい。インドのNational Institute of Ocean Technologyはすでに採鉱用の潜水艇を備え付ける船を一隻所持しており、7/31には2隻目の船が出来上がるらしい。さらにもう2つの船が建造中なのだとか。

CHINA TO LEAD RENEWABLE ELECTRICITY SURGE
再生可能エネルギーのうねりを中国が先行する
2015年までの世界の再生可能エネルギーのうち、40%は中国によって占められるだろうという予測がIEAから出された。再生可能エネルギーのうち現在80%が水力発電であるが、2017年には70%が水力発電、17%が風力、5%が太陽光発電になるだろうと予測されている。

News in Focus
NASA set to choose low-cost Solar System mission
NASAは低価格の太陽系ミッションを選択することにした
Eric Hand
プロポーザルを書く科学者たちは上がり続けるコストと複雑さを心配している。

Books and arts
Depth charge
深さの説明
Cecily Wolfeは地図製作者としてのMarie Tharpの生涯と彼女がプレートテクトニクスに与えた影響について述べる。

Correspondence
A bleak day for the environment
環境に対する暗い日々
カナダ政府は環境問題に対して非常に消極的である。British Columbiaで見つかったAlberta oil sand(石油砂?)のパイプラインが環境に与える影響についても法的に非常に緩い規制しか設けられていない。漁業は擁護する一方で、魚の居住域には保護されていない。こうした姿勢は京都議定書を批准しなかった点にも垣間見える。

Evolution blackout in South Korea
韓国の進化に対する記憶喪失
creationist(創造説論者)が韓国政府に学校や大学での進化論教育を減らすよう要請し、説得に成功した。韓国政府は新しい教科書の導入を検討しており、その査読には科学者の有識者会議も含まれている。科学者や教育者を始めとして、進化論を教育することの科学的な重要性について正しく認識し、教育機関のカリキュラムに含められるよう戦う必要がある。

Letters
Deglacial rapid sea level rises caused by ice-sheet saddle collapses
Lauren J. Gregoire, Antony J. Payne & Paul J. Valdes
最終退氷期は氷床融解に伴う大規模な海水準上昇で特徴づけられるが、その中でも最大の氷床融解はMWP-1A(350年間で14-18mの海水準上昇)に起きている。しかしMWP-1Aを引き起こした氷床がどの氷床であるかなどの理解は未だ不足している。氷床のモデリングからMWP-1Aの原因はLaurentide氷床とCordilleran氷床の分断であり、8.2kaイベントの原因はLabradorアイスドームとBaffinアイスドームが分断されたことであることが分かった。アイスドームの鞍部が急激に崩壊することが大規模な海水準上昇に寄与していると考えられる。
MWP-1A(14.6ka)の原因となった北米氷床の崩壊のシナリオ。

8.2ka eventの原因となった北米氷床の崩壊のシナリオ。
※補足
最終退氷期の海水準上昇にどの氷床が・どの時期に・どれほど寄与したかについてはまだ議論が分かれていると思います。氷床は北米だけではなく、スカンジナビアと南極にもあったと考えられており、すべてを併せて考える必要があると思われます。また氷床モデルもまだまだ開発途上の段階です。どのルートで融解した水が大西洋に流れ込んだかについてもそれを制約する証拠が不足している状況です。
参考までに、Dechamps et al. (2012, nature)ではMWP-1Aの海水準上昇の原因となったのは西南極の氷床であったと主張しています。