23 July 2012 - 29 July 2012
Tightened constraints on the time-lag between Antarctic temperature and CO2 during the last deglaciation
J. B. Pedro, S. O. Rasmussen, and T. D. van Ommen
南極アイスコアは南極の気温と大気中の二酸化炭素濃度が氷期間氷期サイクルのうち少なくとも過去80万年間は非常に良く相関していることを明瞭に示している。この関係に関与している物理プロセスを理解するために、両者の時間的な差異を明らかにすることが重要である。最終退氷期には南極の気温が10℃、二酸化炭素濃度が80ppm上昇している。非常に高精度に年代決定がなされている5つの沿岸に近い地域のアイスコアと2つのアイスコアから、二酸化炭素濃度の上昇は南極の気温上昇に対して少なくとも’400年’遅れていることを示す。ただし、二酸化炭素が先行している可能性も否定しきれない。1,000年程度の遅れを認めていた先行研究に比べて、より遅れが少ないことが分かった。
Pedro et al. (2012)を改変。 南極アイスコアから得られている最終退氷期の大気中の二酸化炭素濃度の変化。下のグラフは温度上昇に対して二酸化炭素濃度の上昇が何年遅れているかの頻度分布を表す。 |
Biogeosciences
23 July 2012 - 29 July 2012
Role of sediment denitrification in water column oxygen dynamics: comparison of the North American East and West Coasts
L. Bianucci, K. Fennel, and K. L. Denman
人為起源・自然起源の貧酸素状態は生態系に大きく影響し、海水中の酸素濃度のダイナミクスを理解することは重要である。物理・生物モデルシミュレーションを用いて大陸棚において堆積物の脱窒が低層水の酸素濃度に与える影響を評価。堆積物中の脱窒に伴い、生物が利用可能な窒素濃度の低下が生じ、一次生産は低下する。一次生産の低下と海底への有機物の堆積が減少すると堆積物中の酸素消費が抑えられ、低層水の酸素濃度は上昇する。しかしバンクーバー大陸棚においては夏の湧昇が効果的に新しい栄養塩をもたらすため、この大陸棚においては脱窒が一次生産に与える影響はそれほど大きくない。大陸棚の酸素ダイナミクスに着目したモデル実験では堆積物中の脱窒をモデルに組み込むことを推奨する。
Bianucci et al. (2012)を改変。 海水中と堆積物における有機物・窒素循環と酸素濃度の関係の模式図。 |
A high-resolution record of carbon accumulation rates during boreal peatland initiation
I. F. Pendea and G. L. Chmura
北半球の泥炭地は炭素の吸収源として機能しており、気候に対してフィードバックを持っていると考えられる。10-7kaの二酸化炭素濃度の低下は温暖な気候に依って生物生産が増加した結果、泥炭地の炭素集積が増加したために生じたとも考えられている。他にも湖の形成や海岸の露出によって泥炭地の面積そのものが増加したことも寄与していた可能性がある。ケベックのJames湾は氷期の氷床解放後のリバウンドによって隆起している。ここ70年間にsalt marshから沼へと変化した地域の堆積物コアから非常に高時間解像度の記録を得、10年スケールの変動を復元した。炭素の埋没速度は非常に大きく、通常の泥炭地の6倍程度であった。Holocene初期の氷床解放リバウンドによって新しくできた泥炭地が部分的に二酸化炭素のフラックスに寄与していた可能性がある。将来の海水準上昇によってこの湿地面積の増加が抑制されることで、炭素固定能力は低下するかもしれない。