Volumes 327–328, in progress, 15 April 2012
Evaluation of atmospheric carbon dioxide concentrations during the Cretaceous
Sung Kyung Hong, Yong Il Lee
古土壌から白亜紀中期の大気中二酸化炭素濃度を復元。白亜紀の二酸化炭素濃度が高かった(温暖化も起こっていた)のは海洋地殻形成が早かったことが原因として考えられていたが、今回韓国から得られたデータからは、二酸化炭素濃度上昇期と地殻形成量上昇期のタイミングがずれているので、カリブ海とマダガスカルの火山活動(RIPs)が活発化していたことも二酸化炭素濃度の増加に寄与していたものと考えられる。
Biogeosciences
15 Feb 2012 - 16 March 2012
15 Feb 2012 - 16 March 2012
The metabolic response of pteropods to acidification reflects natural CO2-exposure in oxygen minimum zones
A. E. Maas, K. F. Wishner, and B. A. Seibel
Biogeosciences, 9, 747-757, 2012
翼足類の殻はアラゴナイトでできており、海洋酸性化に対して非常に脆弱であると考えられている。5種類の太平洋熱帯域に棲息する翼足類を1000ppmの二酸化炭素濃度の海水にさらして生理学的な応答を検査。もともと酸素極小層に回遊をする4種には特に変化が見られなかったが、回遊をしない1種は酸素消費量とアンモニア排出量に変化が見られた。
Use of a process-based model for assessing the methane budgets of global terrestrial ecosystems and evaluation of uncertainty
A. Ito and M. Inatomi
Biogeosciences, 9, 759-773, 2012
全球の陸域のメタン収支をモデルシミュレーション。陸域のメタン放出量は合計で308.3 ± 20.7 Tgと見積もられ、そのうち湿地と家畜の反芻が主な放出源であった。メタンの吸収源・放出源は地域ごとにバリエーションがあり、季節変動・経年変動も見られた。温度とメタン放出量との相関がみられることから、温暖化した世界ではメタン放出量が増加すると考えられる。
Revisiting four scientific debates in ocean acidification research
A. J. Andersson and F. T. Mackenzie
Biogeosciences, 9, 893-905, 2012
「海洋酸性化」が広く科学者や政策決定者の関心を集めているが、誤解も多い。これらの研究について、以下の4つが要点として挙げられる。
- 沿岸域の表層海水は大気中二酸化炭素濃度よりも高い二酸化炭素分圧が見られるが、これは生物活動の寄与が原因である。
- 酸・アルカリ添加やCO2バブリングなどによって海水の炭酸系を変化させることは、海洋酸性化した世界の炭酸系を研究するのに有用である。
- 石灰化量や溶解量の見積もりは、両方の影響の総合計を見ていることに注意が必要である。
- 準安定な炭酸塩結晶の溶解によってアルカリ度が増すとpHのバッファーとして働くことが期待されるが、10年とか100年とかいう時間スケールでこれらの効果を期待することはできない。
J. F. Tjiputra, A. Olsen, K. Assmann, B. Pfeil, and C. Heinze
Biogeosciences, 9, 907-923, 2012
モデルで大西洋の海洋表層水のpCO2変動を再現。海域によって季節変動・経年変動が見られるが、主にNAOなどの変動によって水温・DICの異なる水塊が混合することが原因として考えられる。
Anderson & Mackenzie (2012)に関連して。
「海洋酸性化」が徐々に注目を浴びつつある。しかしながら、その振る舞いは複雑であり、「海流の変化」「生物活動の変化」「温度変化」などと切り分けて大気中二酸化炭素濃度の上昇由来の成分を見積もる必要がある。
世間から注目を浴び、そして重大な影響を与える環境問題であるからこそ、正しい知識を身につけることが必要不可欠である。
地球温暖化とともに生半可な知識で軽々しく語っていい話題ではない。