Claudine H. Stirling
Science 30 March 2012: 1585-1586.
より。
ウランの物質循環とウランの放射改変を利用した年代測定に付随する問題について。
他のアクチノイド系列の元素と同じく、ウランは超新星爆発によって作られ、地球が形成された46億年前に地球に集積したと考えられる。
天然中でウランは3つの同位体を持つ(238U、235U、234U)。238Uと235Uは放射能を持つ親核種で、放射壊変によってやがて安定なPbになる。
この性質を利用してU-Pb系列の年代測定が行われる。
U-Pb系列の年代測定では238U/235U比が137.88の一定値を取ることを仮定するが、これはウランの質量が非常に大きく、質量依存の同位体分別が起こらないという期待に依っている。
しかし、地球の表層においてさえ、238U/235U比は様々な値を取ることが分かってきた。
他のアクチノイド系列の元素と同じく、ウランは超新星爆発によって作られ、地球が形成された46億年前に地球に集積したと考えられる。
天然中でウランは3つの同位体を持つ(238U、235U、234U)。238Uと235Uは放射能を持つ親核種で、放射壊変によってやがて安定なPbになる。
この性質を利用してU-Pb系列の年代測定が行われる。
Stirling (2012) Figを改変。
地球上でのウランの物質循環。火山・熱水活動や地球外からもたらされ、プレートテクトニクスを通してマントルに除去される。酸化還元状態によって様々な配位数をもつ。
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U-Pb系列の年代測定では238U/235U比が137.88の一定値を取ることを仮定するが、これはウランの質量が非常に大きく、質量依存の同位体分別が起こらないという期待に依っている。
しかし、地球の表層においてさえ、238U/235U比は様々な値を取ることが分かってきた。
Hiess et al. (2012, science) Fig. 3を改変。 一定値を取るはずの238U/235U比が様々な値を示した。 |
原因としては’mass-independent nuclear field shift effect’が考えられる。日本語に訳すと「非質量依存原子核場シフト効果」というらしい。
異なる同位体の間で原子核の大きさと電子密度が異なることが原因。
この効果が顕著に現れるための条件としては、「低酸素状態で重い同位体を持つこと」「原子核付近の電子密度が小さいこと」の2つがあり、ウランはこれに当てはまる。
238U/235U比が一定であるとして年代測定がなされるため、この発見により、これまでの年代測定の結果を見直す必要がある。最大で1,000万年の年代誤差が生まれる。
238U/235U比の変動はtitaniteとmonaziteと呼ばれる鉱物において最も大きく、zirconで最も小さいらしい。
低温での同位体分別を支配する要因としては、ウランの酸化還元状態の変化が考えられる。還元状態ではウランが除去されるが、この時にmass-independent nuclear field shift effectによって、U(6価)の238U/235U比が大きく変化するらしい。
この知見を利用して、バイオレメディエーション(※微生物の活動を利用して毒性のある化学物質を分解する)や過去の海洋の酸化還元状態を復元する試みがなされている。
また、この発見からいくつかの重要な知見が得られた。
1、同位体分別は低温だけではなく、高温でも(マグマやマントル活動を通して)起こる。地殻のリサイクル過程においてウランの同位体分別が起きる。
2、低温・高温状態での同位体分別の程度は大差ない。
3、SI単位系での測定値のため、他の研究室でも比較することができる。また238U/235U比の本来の振る舞いが分かった。
また海洋では235Uが238Uに対して0.4‰富んでおり、地殻風化の際に鉱物結晶から235Uが溶出し、河川を通して海洋にもたらされている可能性を示唆している。
また234Uは海洋中で過剰に存在ししかも結晶中には入っていないが、234Uの存在量が235Uの存在量と相関するなど、ウランの酸化還元状態だけでは説明がつかない部分も依然存在し、今度の研究が待たれる。
※コメント
海成炭酸塩のU/Th年代測定の原理の勉強のために、と読んでみた記事だが、あまり関係はなかったかも。