V. Brovkin, A. Ganopolski, D. Archer, and G. Munhoven
Climate of the Past 8, 251-264 (2012)
使ったモデルはCLIMER-2と呼ばれるモデルで、セッティングとしては
気候モデルと炭素循環モデルを切り離した、所謂’off line’実験と言うもの。
気候モデルは予めアイスコアから復元されたCO2を利用して気温、降水量、氷床量などを計算。一方で炭素循環モデルは炭素(CO2を含む)の収支を計算。またδ13Cや[CO32-]なども計算。
もちろん'on line'のほうが優れているけれど、計算コストを下げるという利点があるらしい。
ただし、人為起源のCO2放出がないことを仮定。
モデル内で重要な構成要素は6つ
で、これらは基本的に
によって駆動されている。
モデルで再現できた重要な現象は
以下簡単にそれぞれの現象の原因とモデルの限界を紹介
1、最終間氷期のやや高いCO2(現在の間氷期と比較して)
北半球の「亜熱帯の森林の乾燥化」と「亜寒帯の森林の南下」によって陸域の炭素貯蔵量が低下したことが原因。
2、最終間氷期から氷期に突入する際の50ppmのCO2低下(「glacial onset」)
「温度低下」と「NADWに南極由来の深層水(より冷たく、塩分が濃く、DIC多い)が流入したことで深海の炭素貯蔵量が増加したこと」が原因
(物理過程が支配的。’Standing volume effect’)。
3、ハインリッヒイベントによる一時的なCO2上昇(10~20ppm)
AMOCの停止と主に南大洋からのCO2放出が原因。Indo-Pacific Oceanから炭素が放出(表層というよりはむしろ深層水のDICの低下)
4、最終氷期の100ppmのCO2低下(現在の間氷期と比較して)
特に南極周辺の海域(sub-Antarctic Atlantic Ocean)の生物生産の強化(風成塵の供給量の強化)
※鉄による生産強化は他のモデルではうまく再現できない。
※LGMのCO2濃度は現実より少しだけ高い(~10ppmほど)
5、最終退氷期の急激なのCO2上昇(~80ppm)
sub-Antarctic Atlantic Oceanにおける生物生産の低下(~20ppmほどを説明)が主な原因?
※現実よりやや傾き小さい(ゆっくりCO2濃度上昇)。
6、完新世のCO2上昇(~20ppm)
主にサンゴ礁形成によるCO2放出(アルカリ度の低下)
(ただし陸域の炭素貯蔵量の増加の効果が打ち消されている)
※コメント
最終退氷期のCO2濃度上昇はあまりうまく再現できていないか。abbysal reservoirの話がほとんど出てこないが、D. ArcherとD. Sigmanは仲悪い?Archerの主張を要確認。
風化量やツンドラの影響がまだうまくモデルで再現できていない模様。やはりツンドラは重要な要素。
物理と生物化学的な側面を結びつけることがやはり難しく、モデル間で食い違う部分。
炭素循環に関わるそれぞれの構成要素についてもっと勉強しなければ…深層水の炭酸系の仕組みについてもまた然り。
ただし、人為起源のCO2放出がないことを仮定。
モデル内で重要な構成要素は6つ
- 大気
- 海洋
- 海氷
- 陸域(ツンドラはうまく取り入れていられていない)
- 植生
- 氷床
で、これらは基本的に
- 軌道要素に支配される日射量の変動
- CO2を含む温室効果ガスによる放射強制力
- 氷の量
- 風成塵の量(鉄などを含み、生物生産に影響)
によって駆動されている。
モデルで再現できた重要な現象は
- 最終間氷期のやや高いCO2(現在の間氷期と比較して)
- 最終間氷期から氷期に突入する際の50ppmのCO2低下(「glacial onset」)
- ハインリッヒイベントによる一時的なCO2上昇(10~20ppm)
- 最終氷期の100ppmのCO2低下(現在の間氷期と比較して)
- 最終退氷期の急激なのCO2上昇(~80ppm)
- 完新世のCO2上昇(~20ppm)
Brovkin et al. (2012, CP) Fig 2を改変。 AMOCの変動によって大気CO2が変化する。またb・d・eから分かるように、EMICsでうまく過去の大気CO2濃度や深層水のδ13Cが再現できている。P・PC・PCB・PCBLはそれぞれ炭素循環で考慮している構成要素の違い (P: 物理、C: 炭酸系化学、B: 海洋生態系による栄養塩利用効率、L: 陸域の炭素循環) |
1、最終間氷期のやや高いCO2(現在の間氷期と比較して)
北半球の「亜熱帯の森林の乾燥化」と「亜寒帯の森林の南下」によって陸域の炭素貯蔵量が低下したことが原因。
2、最終間氷期から氷期に突入する際の50ppmのCO2低下(「glacial onset」)
「温度低下」と「NADWに南極由来の深層水(より冷たく、塩分が濃く、DIC多い)が流入したことで深海の炭素貯蔵量が増加したこと」が原因
(物理過程が支配的。’Standing volume effect’)。
3、ハインリッヒイベントによる一時的なCO2上昇(10~20ppm)
AMOCの停止と主に南大洋からのCO2放出が原因。Indo-Pacific Oceanから炭素が放出(表層というよりはむしろ深層水のDICの低下)
4、最終氷期の100ppmのCO2低下(現在の間氷期と比較して)
特に南極周辺の海域(sub-Antarctic Atlantic Ocean)の生物生産の強化(風成塵の供給量の強化)
※鉄による生産強化は他のモデルではうまく再現できない。
※LGMのCO2濃度は現実より少しだけ高い(~10ppmほど)
5、最終退氷期の急激なのCO2上昇(~80ppm)
sub-Antarctic Atlantic Oceanにおける生物生産の低下(~20ppmほどを説明)が主な原因?
※現実よりやや傾き小さい(ゆっくりCO2濃度上昇)。
6、完新世のCO2上昇(~20ppm)
主にサンゴ礁形成によるCO2放出(アルカリ度の低下)
(ただし陸域の炭素貯蔵量の増加の効果が打ち消されている)
※コメント
最終退氷期のCO2濃度上昇はあまりうまく再現できていないか。abbysal reservoirの話がほとんど出てこないが、D. ArcherとD. Sigmanは仲悪い?Archerの主張を要確認。
風化量やツンドラの影響がまだうまくモデルで再現できていない模様。やはりツンドラは重要な要素。
物理と生物化学的な側面を結びつけることがやはり難しく、モデル間で食い違う部分。
炭素循環に関わるそれぞれの構成要素についてもっと勉強しなければ…深層水の炭酸系の仕組みについてもまた然り。