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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年6月11日火曜日

新着論文(GRL, GBC, JC)

GRL
Tropical coral reef habitat in a geoengineered, high-CO2 world
E. Couce, P. J. Irvine, L. J. Gregorie, A. Ridgwell, E. J. Hendy
太陽放射を制限する(Solar Radiation Management; SRM)ことで地球温暖化を食い止めるという手段が考案されているが、人為起源のCO2放出が止まらない限り海洋酸性化やその他の問題は残ると思われる。モデルシミュレーションを用いてインド・太平洋のサンゴ礁とSST上昇、海洋酸性化との関係を評価したところ、放射強制力が3W/m2を超すと将来大きなサンゴ礁の悪影響が生じること、SRMによって熱帯域が過度に冷却する可能性を考慮すると理想的には1.5W/2程度に抑えることが望ましいことが示された。

Reduced carbon uptake during the 2010 Northern Hemisphere summer from GOSAT
S. Guerlet, S. Basu, A. Butz, M. Krol, P. Hahne, S. Houweling, O. P. Hasekamp, I. Aben
温室効果ガスを観測する人工衛星(Greenhouse Gases Observing Satellite; GOSAT)による観測記録から、2009年〜2010年における北半球の炭素吸収量を推定したところ、2010年の吸収量は2009年に比べて北米とユーラシア大陸でそれぞれ2.4ppm、3.0ppm減少していることが示された。主として夏の熱波が原因と考えられる。地上観測記録とも併せて考察したところ、地上観測だけでは過小評価している可能性があり、人工衛星観測の重要さが浮き彫りになった。

Role of mode and intermediate waters in future ocean acidification: analysis of CMIP5 models
L. Resplandy, L. Bopp, J. C. Orr, J. P. Dunne
海洋酸性化はモード水・中層水で顕著に起きると考えられている。7つの地球システムモデルを用いたシミュレーションから、亜表層水の酸性化は主として大気中のCO2濃度の上昇によって起きており、物理・生物的なフィードバックは全体の10%程度であることが分かった。亜表層水のCO2取り込み量は表層水の5~10倍と推定され、そうしたpHの低い水が輸送されることで湧昇域の表層水のpHに数十年というラグをもって大きく影響すると思われる。

Independent Confirmation of Global Land Warming without the Use of Station Temperatures
Gilbert P. Compo, Prashant D. Sardeshmukh, Jeffrey S. Whitaker, Philip Brohan, Philip D. Jones, Chesley McColl
人為起源の地球温暖化の確実性、気温観測所に関連する様々な不確実性(土地被覆の変化、観測機器の変更、ヒートアイランドなど)によって歪められてしまう。そうした影響が最小限に抑えられていると思われる、気圧計・海水温・海氷量などの物理データのみを使用して再解析を行ったところ、温度の年変動や100年スケールの変化傾向が見られ、地球温暖化が確かに生じていることの厳密性が実証された。

GBC
Atmospheric Δ14C reduction in simulations of Atlantic overturning circulation shutdown
Katsumi Matsumoto, Yusuke Yokoyama
最終退氷期の特にHS1とYDにおけるCO2濃度の上昇と、Δ14C減少のメカニズムは分かっていない。中でもAMOCの弱化のタイミングとの一致から、深層水と大気の炭素交換に影響があったと考えられている。しかし、AMOCが減少することで深層への炭素輸送が抑制され、Δ14Cは逆に’増加’すると思われ、観測事実とは食い違いが見られる。モデルシミュレーションを用いて、大西洋のバイポーラーシーソーによって、南大洋における気体交換の強化によって、観測されているΔ14Cの’減少’が説明できることを示す。南大洋の過程が北大西洋の過程よりも勝っていることが必要と思われる。北大西洋への擾乱が海を介してテレコネクションしたのか、或いは大気を介してテレコネクションしたのかについてはまだ不明瞭なままである。

Humic substances may control dissolved iron distributions in the global ocean: Implications from numerical simulations
Kazuhiro Misumi, Keith Lindsay, J. Keith Moore, Scott C. Doney, Daisuke Tsumune, Yoshikatsu Yoshida
モデルシミュレーションを用いて海水中の、特に深層水中の鉄と結合した配位子(iron-binding ligand)が鉄の物質循環に与える影響を評価。配位子が全球的に不均質に分布していることを考慮することで、観測されている鉄の分布をうまく表現できることが示され、鉄循環において腐植物質(humic substances)が重要であることを物語っている。

Journal of Climate
Projection of global wave climate change towards the end of the 21st century
Semedo, A., R. Weisse, A. Behrens, A. Sterl, L. Bengtsson, and H. Günther
A1B排出シナリオに基づいて将来の風波の変化の予測を行った。21世紀末には波の高さは小さくなるか控えめになると予想され、中緯度帯の年平均波高や最大波高はより極側へとシフトすると思われる。
>関連した論文
Projected changes in wave climate from a multi-model ensemble
複数モデルのアンサンブルによって予想される波気候の変化
Mark A. Hemer, Yalin Fan, Nobuhito Mori, Alvaro Semedo & Xiaolan L. Wang
Nature Climate Change (May 2013)
風波による沿岸部の変化は海水準の影響を打ち消すか、或いはさらに悪化させる可能性を秘めている。しかしながら波の変化はほとんど関心を寄せられていない。気候モデルを用いたアンサンブル・シミュレーションから、全球の波の高さが25.8%低下することが示された。両半球の冬季には波は高くなることが予測され、特に南大洋を起源とするうねりが原因と考えられる。予測の不確実性はモデル内のダウンスケール法によるところが大きい。

Paleoclimate data- model comparison and the role of climate forcings over the past 1500 years
Phipps, S., H. McGregor, J. Gergis, A. Gallant, R. Neukom, S. Stevenson, D. Ackerley, J. Brown, M. Fischer, and T. van Ommen
過去1,500年間の古気候記録とモデルシミュレーション結果との比較検証を行った。産業革命以降は人為起源の放射強制力が卓越していること、火山噴火によるフォーシングは南半球では顕著だが、北半球にはあまり顕著には見られないことが示された。産業革命以前の寒冷化の傾向はプロキシが代表する季節や地理的なバイアスによって、過大評価されている可能性がある。またサンゴδ18Oとモデルシミュレーションの結果から、中部赤道太平洋では温室効果ガス・太陽活動・火山噴火のフォーシングのすべての影響が確認され、ENSOに対する系統的な影響は確認されなかった。しかし、プロキシを解釈する上での「安定状態の仮定」が成り立たないことも示され、古気候記録-モデルシミュレーション結果の比較研究は重要なアプローチであるものの、現在の技術の限界が浮き彫りになり、別の手段を考案する必要があると言える。

Control of decadal and bidecadal climate variability in the tropical Pacific by the off- equatorial South Pacific Ocean
Tatebe, H., Y. Imada, M. Mori, M. Kimoto, and H. Hasumi
モデルシミュレーションを用いて、赤道太平洋のNINO3.4地域の20年周期のSST変動が熱帯域の外の、特に南太平洋の東亜熱帯モード水(Eastern Subtropical Mode Water)の亜表層水の温度偏差によって支配されていることが示された。10年周期の変動は南太平洋の風応力カールによって駆動される波調整(wave adjustment)が原因と思われる。

Antarctic Bottom Water warming and freshening: Contributions to sea level rise, ocean freshwater budgets, and global heat gain
Purkey, S., and G. Johnson
南極底層水(Antarctic Bottom Water; AABW)は南極周辺で沈み込み、世界の深層水を覆う最も冷たく、塩分の高い水塊である。近年AABWの温暖化と低塩分化が報告されており、またその形成速度も低下しており、形成域に対する融氷水の流入が原因と考えられている。そうしたAABWの水塊特性の変化はWeddel海を除くとあらゆる南極周辺の大陸棚で確認されており、南太平洋や南インド洋でも確認されている。低塩分化を招いた淡水不ラックスは73 ± 26 Gt/yrに相当し、大ざっぱに見積もると、近年西南極氷床から失われた淡水量の半分に相当する。また熱としては34 ± 3 TWがAABWに過剰に吸収されており、熱膨張によって海水準を0.37 ± 0.15mm/yr押し上げているものと推定される。