Main contents


☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年6月21日金曜日

新着論文(Science#6139)

Science
VOL 340, ISSUE 6139, PAGES 1365-1488 (21 JUNE 2013)

Editors' Choice
Reading the Bones
骨を読む
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 10.1073/pnas.1300213110 (2013).
大規模な漁業活動が海洋生態系に与える影響を評価するために、ウミドリの食性の変化に着目した研究が行われた。過去4,000年間のハワイのウミツバメの骨や羽の窒素同位体を測定したところ、3,000年間は安定していたが、過去50-100年間に急激な減少が見られ、工業的漁業の開始時期と一致しているという。漁業に伴う食物網レベル(trophic level)の変化が原因と思われ、太平洋北東部で海洋の食物網に変化が生じていると考えられる。
>話題の論文
Millennial-scale isotope records from a wide-ranging predator show evidence of recent human impact to oceanic food webs
Anne E. Wiley, Peggy H. Ostrom, Andreanna J. Welch, Robert C. Fleischer, Hasand Gandhi, John R. Southon, Thomas W. Stafford, Jr., Jay F. Penniman, Darcy Hu, Fern P. Duvall, and Helen F. James
人類が外洋域の生態系に影響を及ぼし始めたのはごく最近のことであるが、技術が進展した今となってもその影響についてはよく分かっていない。ハワイのウミツバメの骨の放射性炭素および窒素同位体分析から、過去3,000年間の食物網の変化を復元。過去100年間にδ15Nが1.8‰減少していることが示され、漁業によって食物網が減少したことが可能性として考えられる。補食行動にも変化が見られることから、太平洋北東部の海洋食物網が急速に変化している可能性がある。獲物の生息域が大きく変化することを防ぐことが、海鳥といった捕食者の保全に繋がると考えられる。

Spinning Iron in the Mantle
マントルの中で回転する鉄
Phys. Rev. Lett. 110, 228501 (2013).
地球内部では高温高圧状態によって鉄の電子配置が変移する。そのため、深さ方向の変化は鉄を含んだ鉱物の物理特性を変化させ、それは地震波の解釈にも影響する。シンプルな理論に基づいたモデル研究から、下部マントルに富むferropericlase [(Mg, Fe)O]に対しては電子配置の変移はそれほどの影響はないものの、ferropericlase中の鉄濃度そのものが地震波速度に大きく影響することが示された。

News of the Week
Did Inbreeding Bind Early Farmers Together?
近親交配が初期の農業民族を一つにしたのだろうか?
1万年前、近東に狩猟採集民族が定住し、農業を開始して村が形成された。ヨルダンの遺跡の調査から、近親相姦ではないものの、近親交配が生じていた可能性が指摘されている。かなりの割合の人々が共通して上の前歯が欠落していることからその可能性が浮上した。当時は他の村との交易が既にあった証拠が得られていることから、近親交配はやむを得なかったというよりは、計画的に行われていた可能性があるという。
>より詳細な記事
First Farmers Were Also Inbred
Michael Balter

Ocean Models Help Swimmer Navigate Florida Straits
海洋モデルがスイマーがフロリダ海峡横断を手伝う
オーストラリア人女性スイマーのChloe McCardelがフロリダ海峡横断に成功した。これまでに何人ものスイマーがフロリダ海峡を横断しようとしたが、中にはフロリダ海流が作り出す渦に阻まれて失敗するものも多かった。マイアミ大の気象学者Villy Kourafalouによれば、成功するかは海洋の状態に大きく依存するという。Kourafalouは海洋モデル・シミュレーションによって得られたデータとリアルタイムの人工衛星観測データをMcCardelの応援グループに提供した。そうしたデータをもとに横断するには6/12が最適だろうという予測がなされ、今回の成功に繋がった(実際には毒クラゲの予期せぬ発生で到着が大幅に遅れたらしい)。

Transport Studies, Earth Modeling Earn Blue Planet Prizes
輸送研究と地球モデリングがブルー・プラネット賞を受賞
旭硝子財団が賞金を出しているブルー・プラネット賞は’環境学分野のノーベル賞’としても知られるが、今年はJAMSTECの気候学者である松野太郎氏と環境技術者であるカリフォルニア大の教授Daniel Sperlingに与えられた。松野氏は特に熱帯域の大気海洋循環モデルの発展(Gill-Matsuno patternなど)に大きく寄与した。Sperling氏は環境に優しく、効率の良い輸送手段の開発に寄与した。それぞれ$527,000ドル(約5,000万円)を手にする。過去に受賞した気候科学分野の著名人としては

  • ジェームズ・ハンセン(2010年)
  • ニコラス・スターン卿(2009年)
  • ニコラス・シャックルトン(2005年)
  • スーザン・ソロモン(2004年)
  • グロ・ハルレム・ブルントラント(2004年)
  • ジェームズ・E・ラブロック(1997年)
  • ウォーレス・S・ブロッカー(1996年)
  • チャールズ・D・キーリング(1993年)
  • 真鍋淑郎(1992年)
などが挙げられる。
>旭硝子財団のプレスリリース

News & Analysis
Iranian 'Medical' Reactor Stokes Search for Alternatives
イランの医療用核反応炉が代替物を探している
Richard Stone
ウランやプルトニウムを避けた医療用同位体製造法がイランで模索されている。

Global Gamma Observatory Looks for (Two) Homes
全球のγ線観測所が(2つの)ホームを探している
Nuno Dominguez
天文学者達は全天のγ線を観測するための2つの観測所を建設することを計画しているが、その前に可能性が高い候補地を絞る必要がある。

News Focus
Monsoon Melee
モンスーンを巡る混戦
Jane Qiu
南アジアの生命のリズムはインド・モンスーンによって支配されている。気候科学者達は夏の洪水をもたらす原因を巡って争いを繰り広げている。

Letters
Risks of Neonicotinoid Pesticides
ネオニコチノイド殺虫剤のリスク
Guangming Zeng, Ming Chen, and Zhuotong Zeng
現在世界中で広く使用されているネオニコチノイド殺虫剤は受粉媒介者にとって有害であるばかりか、脊椎動物や環境汚染への影響も見過ごしてはならない。アメリカ鳥類保護団体によれば、作物に付着した殺虫剤が原因でスズメ・歌鳥をはじめとする鳥類の重大な影響が生じている。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Research
Research Article
Pliocene Warmth, Polar Amplification, and Stepped Pleistocene Cooling Recorded in NE Arctic Russia
北東北極圏ロシアで記録された鮮新世の温暖化・極増幅と段階的な更新世の寒冷化
Julie Brigham-Grette, Martin Melles, Pavel Minyuk, Andrei Andreev, Pavel Tarasov, Robert DeConto, Sebastian Koenig, Norbert Nowaczyk, Volker Wennrich, Peter Rosén, Eeva Haltia, Tim Cook, Catalina Gebhardt, Carsten Meyer-Jacob, Jeff Snyder, and Ulrike Herzschuh
北極圏の古気候記録は非常に限られている。ロシア北東部に位置するEl’gygytgyn湖から得られた堆積物記録から、3.6-3.4Ma (Pliocene; 鮮新世)には夏の気温が8℃ほど高く、大気中CO2濃度は400ppmであったと考えられている。他のプロキシとも併せて解釈すると、北半球の氷河化(Northern Hemispheric Glaciation)ののち、2.2Maまでは現在よりも温暖で、更新世には段階的な急激な寒冷化が何度か起きたことが示唆される。北極圏の寒冷化だけでは大規模な氷床の成長が起きたことを説明できない。
>参考(以前書いた論文概説)
ロシアの湖堆積物から推定される北極の古環境(将来の温暖化した世界の鑑?)
>論文概説
鮮新世の北極圏の気温とその後の寒冷化(Brigham-Grette et al., 2013, Science)