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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2013年6月7日金曜日

新着論文(Science#6137)

Science
VOL 340, ISSUE 6137, PAGES 1133-1256 (7 JUNE 2013)

Editors' Choice
Hop to Evolution
進化への一飛び
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 10.1073/pnas.1301657110 (2013).
種分化(speciation)とは非常に不思議な現象である。というのも、生物種が多様化し、繁殖的に孤立したのちに最も強く現れるからである。ハワイの洞窟内に生息する昆虫の一種(cave hopper)を用いて遺伝学的な分化を調べたところ、洞窟の年代や位置とは関係なく分化が起きていることが示され、確率論的な現象である可能性が示唆されている。

The Nd of the Innocence
無垢なネオジウム
Earth Planet Sci. Lett. 10.1016/j.epsl.2013.04.016 (2013).
45億年前からプレートテクトニクスが始まるまでの地質学記録は非常に限られている。カナダ・オンタリオ州における、27億年前の層状の溶岩流の過剰142Nd(146Smの娘核種)分析から、もしマントルが現在よりも高温でより対流が活発であったとすると、かなり不均質であった可能性が示唆されている。数値モデルから、当時の沈み込みは短く、断続的であったとも推定されている。およそ30-27億年前にプレートテクトニクスが始まったという地質記録とも整合的である。

News of the Week
Furor Over U.S. GM Wheat
アメリカの遺伝子組み換え小麦に対する大騒ぎ
アメリカ・オレゴン州にて発見された、認可されていない遺伝子組み換え小麦が世界中に大きな話題を呼んでいる。日本はオレゴン州からの小麦の輸入を停止し、韓国やEUは検査を強化した。1998-2005年にかけて他の州で行われた野外実験の小麦が混入していた。実験を手がけたMonsanto社はアメリカでは遺伝子組み換え小麦の需要が小さいとして既に事業から撤退しており、さらにEUでも認可を求める書類を提出しないことにしている。
>関連した記事
Wandering wheat
さまよう小麦
Nature 498, 5-132 (6 June 2013) "Seven days"
アメリカ・オレゴン州において認可されていないはずの遺伝子組み換え小麦が発見された。1998年から2005年に野外実験されたものが紛れ込んだ可能性がある。食の安全には影響はないと伝えられている。

Storm Chasers Killed in Tornado
嵐の追跡者が竜巻に殺される
竜巻研究者で竜巻追跡者としても有名なTim Samarasが5/31にオクラホマ州にて発生した竜巻集団によって他の12人の犠牲者とともに死亡した。犠牲者の中には息子のPaulや研究者のCarl Youngも含まれていた。

‘Crucial Link’ in Primate Evolution
霊長類の進化の’必要不可欠なリンク’
知られている中では最古となる霊長類の化石が中国中央部で発掘された。Archicebus achillesと名付けられたこの生物は55Maのもので、重さは約30g以下と非常に小さかった。サルはアジアで生まれ、その後アフリカに渡ったとする仮説を支持する結果となった。
>より詳細な記事
Early Primate Weighed Less Than an Ounce
1オンス以下の体重の初期の霊長類
Lizzie Wade
>話題の論文
The oldest known primate skeleton and early haplorhine evolution
知られている中で最古の霊長類の骨格と初期の直鼻猿亜目の進化
Xijun Ni, Daniel L. Gebo, Marian Dagosto, Jin Meng, Paul Tafforeau, John J. Flynn & K. Christopher Beard
Nature (6 June 2013)
霊長類の最も初期のフェーズの理解は、化石記録が得られていないことによって妨げられていた。これまで得られているものの中では最古となる、始新世初期のほぼ完全な、小さな霊長類の化石は、両方の特徴を有していることから、メガネザル(tarsier)と類人猿(anthropoid)がちょうど分岐する頃のものと思われる。

News & Analysis
Authenticity of China's Fabulous Fossils Gets New Scrutiny
中国のすばらしい化石の信憑性が新たな検査の対象に
Michael Balter
中国北東部からは非常に保存状態の良い、羽の生えた恐竜や初期の鳥の化石がこれまで多く得られてきたが、記録の保管が杜撰であったり、模造品の手が込んでいたりと、古生物学者が化石の出自や年代、その信憑性を評価するのを妨げている。

Accelerator Leak Halts Japanese Physics Experiments
加速器からの放射線漏れが日本の物理実験を中断
Dennis Normile
J-PARC加速器施設はわずかな放射線漏れの報告が遅れ、その後は無期限に停止したままである。研究者の中にはそれが物理研究に与える影響を心配するものもいる。

News Focus
The Cyborg Era Begins
サイボーグの時代が始まる
Robert F. Service
柔軟な電気部品の進展によって、今や電子回路と細胞を統合することが可能になっている。

Letters
Rhino Poaching: Supply and Demand Uncertain
サイの密猟:需要と供給の不確実性
Alan Collins, Gavin Fraser, and Jen Snowball

Rhino Poaching: Unique Challenges
サイの密猟:独特な課題
Herbert H. T. Prins and Benson Okita-Ouma

Rhino Poaching: Apply Conservation Psychology
サイの密猟:保護の心理学を適用せよ
Carla A. Litchfield

Rhino Poaching: Supply and Demand Uncertain—Response
サイの密猟:「需要と供給の不確実性」に対する応答
Duan Biggs, Franck Courchamp, Rowan Martin, and Hugh P. Possingham

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Research
Perspectives
Seas of Superoxide
超酸化物の海
Yeala Shaked and Andrew Rose
海水中の超酸化物は従属栄養細菌によって生成されているかもしれない。海水中の微量金属循環にも示唆を与えるものである。Diaz et al.の解説記事。

A Trap for Planet Formation
惑星形成の計略
Philip J. Armitage
捕獲された粒子のポケットを検出することで、惑星形成のメカニズムの理解のヒントが得られるかもしれない。van der Marel et al.の解説記事。

What the Bomb Said About the Brain
核爆弾が脳のことについてなにを語るか
Gerd Kempermann
脳の細胞の放射性炭素年代測定から、新しいニューロンが生涯を通してかなり多く作り出されていることが明らかに。

Reports
Probing the Solar Magnetic Field with a Sun-Grazing Comet
太陽をかすめる隕石によって太陽の磁場を検出する
Cooper Downs, Jon A. Linker, Zoran Mikić, Pete Riley, Carolus J. Schrijver, and Pascal Saint-Hilaire
太陽コロナ中の隕石の動きを観測することで、磁場とプラズマ粒子を制約することが可能に。

A Major Asymmetric Dust Trap in a Transition Disk
変遷円盤の中の主要な非対称ダスト捕獲
Nienke van der Marel, Ewine F. van Dishoeck, Simon Bruderer, Til Birnstiel, Paola Pinilla, Cornelis P. Dullemond, Tim A. van Kempen, Markus Schmalzl, Joanna M. Brown, Gregory J. Herczeg, Geoffrey S. Mathews, and Vincent Geers
Radio interferometry観測から、若い星を取り囲むmmスケールの粒子がかなり非対称に分布していることが明らかに。

Density Triggers Maternal Hormones That Increase Adaptive Offspring Growth in a Wild Mammal
野生のほ乳類においては個体密度が適応的な子孫の成長を促進する母ホルモンを駆動する
Ben Dantzer, Amy E. M. Newman, Rudy Boonstra, Rupert Palme, Stan Boutin, Murray M. Humphries, and Andrew G. McAdam
個体密度が大きいときほど、赤リスの母親が受けるストレスが子の成長を増加させることが明らかに。
>関連した記事
Babies of stressed squirrels grow faster
ストレスを受けたリスの子供ほど早く育つ
Nature 496, 397-542 (25 April 2013) "RESEARCH HIGHLIGHTS"
22年間にわたる研究から、アカリス(red squirrel; Tamiasciurus hudsonicus)は個体数密度が大きい場合、子供の成長がより早まり、冬を生き残る確率が上がっていることが実験から示された。社会ストレスによるホルモンバランスの乱れが原因と考えられている。

Widespread Production of Extracellular Superoxide by Heterotrophic Bacteria
従属栄養細菌による細胞外超酸化物の広い生産
Julia M. Diaz, Colleen M. Hansel, Bettina M. Voelker, Chantal M. Mendes, Peter F. Andeer, and Tong Zhang
バクテリアの広い種が水生態系において反応性の高い超酸化物をかなり多く生産していることが明らかに。