Main contents


☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年6月4日火曜日

新着論文(Ngeo#June2013)

Nature Geoscience
June 2013, Volume 6 No 6 pp413-503

Editorials
Plants, clouds and climate
植物、雲、そして気候
植物は気候にも影響を与えている。例えば、蒸発散を通じた水循環への影響、炭素循環を通じた温室効果ガスのフラックスへの影響、エアロゾル前駆物質の放出を介した雲への影響などが報告されている。そうした生物による気候への影響が従来考えられていたよりも大きいことを示す論文が2つ今月号に報告されている。一つは半揮発性物質の放出が水滴の成長に寄与しているという報告、もう一つは揮発性有機物が雲の水滴密度や光学特性に影響するという報告である。それが温暖化とともにどう変化するか、またどういったフィードバックを生み出すかについてはまだ議論が分かれている。

[以下は引用文]
When studying the Earth’s climate, biology, chemistry and physics cannot be separated. The interaction between terrestrial plants and the surrounding atmosphere is a case in point.
地球の気候を研究する上で、生物学・化学・物理学は別々に分けることはできない。陸上植物とそれを取り囲む大気がその好例である。

There is clearly much to learn about how plants affect clouds — mediated by water vapour, organic vapours and aerosol particles — in a changing climate.
変化しつつある気候の中で、水蒸気・揮発性有機物・エアロゾル粒子を介して植物がどのように雲に影響するかを知るには明らかに多くのことが残されている。

Double-blind peer review
二重目隠しのピア・レビュー
レフリー(査読者)に対しては論文の執筆者の名前が匿名になるように長い間推奨されてきた。Nature Geoscience誌とNature Climate Change誌は執筆者にレフリーに名前を明かすか・明かさないかを選択できるような制度を試みとして6/10から開始する。

[以下は引用文]
One of our motivations for setting up a double-blind trial is the possibility that female authors are subjected to tougher peer review than their male colleagues — a distinct possibility in view of evidence that subtle gender biases affect assessments of competence, appropriate salaries and other aspects of academic life. If the first author is unknown, this bias will be largely removed.
二重目隠しの試みを設定したことの一つの動機は、女性研究者が男性研究者よりも厳しい査読の対象になる可能性である。わずかな性差が競争力の評価・適切な給料・学術生活における他の側面に影響しているという証拠に基づくと、明らかな可能性と言えよう。もし筆頭著者が匿名であれば、この偏りは大幅に取り除かれると思われる。

Correspondence
Energy budget constraints on climate response
気候の応答に対するエネルギー収支の制約
Alexander Otto, Friederike E. L. Otto, Olivier Boucher, John Church, Gabi Hegerl, Piers M. Forster, Nathan P. Gillett, Jonathan Gregory, Gregory C. Johnson, Reto Knutti, Nicholas Lewis, Ulrike Lohmann, Jochem Marotzke, Gunnar Myhre, Drew Shindell, Bjorn Stevens & Myles R. Allen

Commentary
The fourth food revolution
四回目の食糧革命
Paolo D'Odorico & Maria Cristina Rulli
農業生産の活発化の恩恵をあまり被らない途上国においては、海外からの投資が生産性を強化することが可能である。

In the press
Plumbing Old Faithful's depths
イエローストーン国立公園の間欠泉の深さを測る
Nicola Jones
1992年に得られた微弱振動の測定記録を再解析したところ、イエローストーン国立公園の間欠泉の15m下に車2台ほどの大きさの空洞(約60m3)が空いていることが分かった。間欠泉が噴くメカニズムの解明に繋がるかもしれない。
>話題の論文
The plumbing of Old Faithful Geyser revealed by hydrothermal tremor
J. Vandemeulebrouck, P. Roux, E. Cros

Research Highlights
Central Pacific cyclones
中央太平洋のサイクロン
J.Clim.http://doi.org/mjh(2013)
>話題の論文
North Central Pacific Tropical Cyclones: Impacts of El Niño - Southern Oscillation and the Madden-Julian Oscillation
Philip J. Klotzbach & Eric S. Blake
1974-2010年における観測記録の解析から、エルニーニョの際には中央太平洋北部のサイクロンの発生頻度が上昇していることが示された。特にMadden–Julian Oscillationが大きな役割を負っているらしい。2つの大規模現象を考慮することでサイクロンの発生予測の精度が向上するものと期待されている。

Cold and dry
冷たく乾燥した
Geochem. Geophys. Geosys. http://doi.org/mjd (2013)
東南極沖で採取された堆積物コア中の元素分析から、54-13Maにおける風化を復元したところ、温暖で湿潤な状態から、34Ma頃に東南極氷床の成長とともに降水量の大きな低下が生じていたことが示唆された。またそのタイミングは大気中のCO2濃度が低下した時期とも一致している。氷床の成長は大陸のアルベドを増加させ、極域の高気圧システムを作り出し、さらなる北向きの冷たく乾燥した風を生み出したと思われる。
>話題の論文
Early Eocene to middle Miocene cooling and aridification of East Antarctica
S. Passchier, S. M. Bohaty, F. Jiménez-Espejo, J. Pross, U. Röhl, T. van de Flierdt, C. Escutia, H. Brinkhuis
過去54-13Maの南極近傍における細粒のsiliciclasticな堆積物の元素分析記録と、化石の木・葉・花粉記録から得られている過去の気温・降水量の推定とを比較したところ、始新世の温暖期から中新世中期にかけて8℃を超すほどの寒冷化が起きていたことが示された。始新世/中新世境界において氷床の発達とともに高緯度域の大気循環パターンが形成されたと思われる。

Wet martian mantle
湿った火星のマントル
Earth Planet. Sci. Lett. http://doi.org/mjf (2013)
地球の玄武岩と比較すると、火星の玄武岩質隕石の水は少ないが、それが火星のマントルに水が少ないことの証拠と言えるかどうかは議論の余地がある。火星の隕石(NWA 6234)の水和鉱物(apatite)の分析から、脱ガスがほとんど起きておらず、さらに揮発性物質を多く含んでいることが示された。さらにその性質は地球の中央海嶺の玄武岩と非常に類似していた。この結果は火星のマントルが地球のそれと同程度に水を含んでいることを示唆しており、それは火星の水循環に寄与していたと思われる。火星探査機が近年になって火星の表層に水がふんだんに存在したことの証拠を積み上げていることとも整合的である。

Failed break-up
失敗した破壊
Geophys. Res. Lett. http://doi.org/mjg (2013)
現在北米のスペリオール湖を形成する地形的な低地は数十億年前の火山活動によって形成されたものであるらしい。おそらく小さなプレートが分裂する際の拡大軸のすぐそばでできたものと考えられる。ただしプレートは完全に分裂することはできなかったものと思われる。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Research
News and Views
Go and catch a falling star 
落ちてゆく星に行き捕まえる
Erik Asphaug
月の巨大な隕石孔の周辺には通常考えられないほど苦鉄質の鉱物を含んだ堆積物が散り散りに分布している。数値シミュレーションから、そうした隕石孔のうちもっとも遅い(衝突エネルギーが小さいということ?)ものの中には、月とは異質の天体物質が残されている可能性があるという。Yue et al.の解説記事。

When the dust settles
ダストが沈降するとき
Eun Young Kwon & Eric D. Galbraith
氷期-間氷期を通して深海に貯蔵される炭素の量は変化してきたと考えられる。過去360kaにわたる南大洋の堆積物記録から、氷期においても風成塵による施肥とともに炭素貯蔵量が変化していた可能性が示唆されている。Ziegler et al.の解説記事。

Variable rotation
変動的な回転
Kenneth C. Creager
地球の内核の回転の仕方の推定は手法ごとに異なっている。地震波の測定から、内核の回転速度が数十年周期で変動していることが示唆されている。Tkalčić et al.の解説記事。

Subsurface sustenance
地下の維持
Steven D'Hondt
高温の水-岩石反応においては大量の水素が発生するが、それはより冷たい場所に運ばれ、生命を育んだ可能性がある。低温の水素放出はその場の生命を支え、地下生物が光合成を必要としなくて済んだのかもしれない。Mayhew et al.の解説記事。

Progress Article
A middle Eocene carbon cycle conundrum
始新世中期の炭素循環の難問
Appy Sluijs, Richard E. Zeebe, Peter K. Bijl & Steven M. Bohaty
 始新世における50万年間にも及ぶ温暖期(Middle Eocene Climatic Optimum; MECO; ~40Ma)には、大気中のCO2濃度が高く、深層の生態系が変化し、海洋底堆積物の炭酸塩が大幅に溶解していたと考えられている。しかし温暖であったことによって風化が促進され、海洋の炭酸系を変化させ、堆積物への炭酸塩埋没量を増加させたと理論的な予測とは完全に食い違っている。
 数値モデルを用いて様々なシナリオを試してみたところ、海水準を上昇させ、炭酸塩埋没を外洋ではなく大陸棚で起こさせたものだけがMECOをうまく再現できた。しかしながら、それを示唆する地質記録は今のところ不足している。より統合的なアプローチが必要とされている。

Letters
Projectile remnants in central peaks of lunar impact craters
月の隕石孔の中央頂部の衝突体の名残
Z. Yue, B. C. Johnson, D. A. Minton, H. J. Melosh, K. Di, W. Hu & Y. Liu
月の隕石孔周辺に見られる異質な鉱物は月の内部からもたらされたものと考えられてきた。しかし数値シミュレーションから、衝突してきたものは揮発せずに隕石孔内部に残っている可能性が示唆されている。つまり月に固有の物質ではなく、月の外からもたらされたものであることを示している。

Warming-induced increase in aerosol number concentration likely to moderate climate change
温暖化によるエアロゾル密度の増加が気候変化を緩和させそう
Pauli Paasonen, Ari Asmi, Tuukka Petäjä, Maija K. Kajos, Mikko Äijälä, Heikki Junninen, Thomas Holst, Jonathan P. D. Abbatt, Almut Arneth, Wolfram Birmili, Hugo Denier van der Gon, Amar Hamed, András Hoffer, Lauri Laakso, Ari Laaksonen, W. Richard Leaitch, Christian Plass-Dülmer, Sara C. Pryor, Petri Räisänen, Erik Swietlicki, Alfred Wiedensohler, Douglas R. Worsnop, Veli-Matti Kerminen & Markku Kulmala
 ブラック・カーボンと異なり、一般的な大気中のエアロゾルは負の放射強制力を持ち、地球を寒冷化させると考えられている。つまり人為起源のエアロゾルの排出削減によって空気が清浄化すると、気候変化緩和としての役割が弱められることになる。
 大陸の中緯度・高緯度における生物源エアロゾルの密度および組成の長期観測記録から、温度上昇とともに雲凝結核が急増することが示された。したがって、温暖化とともに生物源のエアロゾル放出量が増加し、大きな負のフィードバック(つまり寒冷化)が生まれると思われる。エアロゾルの雲や気候への影響において、生物圏と大気の相互作用が重要であることを物語っている。

Cloud droplet number enhanced by co-condensation of organic vapours
有機蒸気の共凝縮によって促進される雲の水滴数
David Topping, Paul Connolly & Gordon McFiggans
雲の明るさや寿命は水滴数密度によってコントロールされており、それはさらに雲の種となる凝結核の密度にもコントロールされている。モデルシミュレーションから、半揮発性の有機物が雲の水滴の成長を促進し、雲の力学にも影響することが示された。

Robust direct effect of carbon dioxide on tropical circulation and regional precipitation
熱帯域の大気循環と地域的な降水に対する二酸化炭素の厳密な直接効果
Sandrine Bony, Gilles Bellon, Daniel Klocke, Steven Sherwood, Solange Fermepin & Sébastien Denvil
温暖化によって熱帯域の降水がどのように変化するかについてはよく分かっていない。温暖化によって気温が上昇し、大気中の水蒸気保有量は増加すると思われるが、一方で大気循環は弱化すると考えられており、それが地域的な降水過程にどのように影響するかを予想することは非常に難しい。CMIP5の気候モデルの結果から、人類がCO2を出し続けた場合(RCP8.5; 4 × CO2 )、地域的な降水の変化は地表気温の変化には依存せず、逆に熱帯域の大気循環の変化とそれによる放射強制力の変化(雲のフィードバックなど)によってもたらされることが示された。つまり、例えば地球工学によって大気中のCO2濃度を下げずに放射強制力だけを変化させた場合でも、熱帯域の降水の変化を緩和することは難しいことを暗示している。

Boreal carbon loss due to poleward shift in low-carbon ecosystems
低炭素生態系の極側へのシフトによる北方の炭素消失
Charles D. Koven
気候変化は「気温や降水量を維持するための生態系のシフト」や「新たな生態系の登場あるいは消失」といった、地理的な観点から捉えることができる。気候モデルを用いて代表的な気候場の変化を追跡したところ、ほとんどの炭素-気候結合モデルが、北半球亜寒帯域全体の植生が炭素を獲得する一方で、低炭素型の生態系へのシフトに伴って南半球の炭素が失われ、全体としては亜寒帯域の炭素が失われることを予想した。

Millennial-scale changes in atmospheric CO2 levels linked to the Southern Ocean carbon isotope gradient and dust flux
南大洋の炭素同位体の傾きとダストフラックスに関連した大気中のCO2濃度の千年スケールの変化
Martin Ziegler, Paula Diz, Ian R. Hall & Rainer Zahn
 最終退氷期には氷期に蓄えられた深層の炭素が南大洋で湧昇史、それが大気中のCO2濃度の上昇の一部を担ったと考えられているが、その程度は湧昇によってもたらされたDICが生物ポンプによって有機物として深層へと再び戻される過程によってもコントロールされている。そうした生物生産は大気中からのダストの沈降によってコントロールされる、栄養塩利用効率とも密接に関連している。
 中層および低層に生息する底性有孔虫の殻δ13Cを用いて過去36kaの南大洋における栄養塩の利用効率を復元したところ、南大洋大西洋セクターの亜南極帯(subantarctic zone)における温度躍層水と深層水のδ13Cの傾きが千年スケールで変動していることが示された。南極のアイスコアから復元されているダストとCO2濃度の変動と同期していることから、ダスト性の鉄の供給が生物生産を支配していることを示唆している('鉄肥沃')。また相関関係は指数関数的であることから、特にダストフラックスが小さいときに生物生産の鉄肥沃に対する感度は大きくなると思われる。

Andean structural control on interseismic coupling in the North Chile subduction zone
チリ北部の沈み込み帯における地震波内部の結合に対するアンデスの構造のコントロール
Marta Béjar-Pizarro, Anne Socquet, Rolando Armijo, Daniel Carrizo, Jeff Genrich & Mark Simons

Slip weakening as a mechanism for slow earthquakes
低速地震のメカニズムとしての滑りの弱化
Matt J. Ikari, Chris Marone, Demian M. Saffer & Achim J. Kopf
南海トラフの岩石を用いた室内実験から、一部の低速地震は通常の速い地震の未熟なものである可能性が示唆されている。

Graphite formation by carbonate reduction during subduction
沈み込みの際の炭酸塩還元によるグラファイトの形成
Matthieu E. Galvez, Olivier Beyssac, Isabelle Martinez, Karim Benzerara, Carine Chaduteau, Benjamin Malvoisin & Jacques Malavieille
沈み込み帯を通して炭素が地球内部に供給されている。フランスのCorsicaに露出した沈み込んだ堆積物の地球化学分析から、浅い沈み込みの際にグラファイト(炭素)が形成されていることが分かった。炭酸塩がグラファイトに変化することがより深部へと炭素が輸送される過程で重要であると考えられる。

Articles
Hydrogen generation from low-temperature water–rock reactions
低温の水-岩石反応による水素生成
L. E. Mayhew, E. T. Ellison, T. M. McCollom, T. P. Trainor & A. S. Templeton
水素は一般的に高苦鉄質・苦鉄質岩石が高温で水和することで生じると考えられている。室内実験から、低温でもそうした水素生成が起きることが示唆された。海洋地殻や大陸地殻中の超苦鉄質水に生息する微生物の生命を支えている可能性がある。

The effect of sea level on glacial Indo-Pacific climate
海水準が氷期のインド-太平洋の気候に与えていた影響
Pedro N. DiNezio & Jessica E. Tierney
 インド-太平洋温暖域(Indo-Pacific warm pool)は世界の熱と水蒸気の主要な生成域である。最終氷期には温度が低く、降水パターンも変化していたと考えられているものの、そうしたシフトの原因となったメカ荷積みについてはよく分かっていない。
 間接指標による水循環の復元例とモデルシミュレーションから、海水準の低下に伴うSunda大陸棚(Sunda Shelf)の露出が暖水域の対流を弱化させ、ウォーカー循環を変化させたことが降水パターンの変化に大きく寄与していた可能性が示唆される。従って、海水準の変化を通じて、氷期-間氷期スケールの高緯度域の氷床の成長と後退が低緯度域の気候を支配していたことになる。

Permanent deformation caused by subduction earthquakes in northern Chile
チリ北部における沈み込み地震によって引き起こされる永続的な破壊
A. Baker, R. W. Allmendinger, L. A. Owen & J. A. Rech
地殻は地震の後にイベント的に跳ね返ると考えられているため、破壊は永続的ではない。しかし、アタカマ砂漠における野外調査から、地殻に多数の大型の割れ目が見つかり、過去数百万年間に数千回の地震を永続的に経験したことが示唆されている。

The shuffling rotation of the Earth’s inner core revealed by earthquake doublets
地震の対から明らかになる地球の内核のごちゃ混ぜになった回転
Hrvoje Tkalčić, Mallory Young, Thomas Bodin, Silvie Ngo & Malcolm Sambridge
地球の内核はマントルとは異なる速度で回転しているということが地球物理観測とモデルシミュレーションから推定されている。過去50年間に繰り返された地震の地震波の逆解析から、内核の回転速度が数十年の時間スケールで振動していることが示唆されている。