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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年6月8日土曜日

新着論文(NCC#Jun2013)

Nature Climate Change
Volume 3 Number 6 (June 2013)

Editorials
Blind faith
盲目の真実
ピア・レビューの二重チェック法がレフリーのバイアスを軽減させると多くの人が考えている。

Positive intentions
ポジティブな意図
国連は4/29にBonnにおいて気候変化に関する会合を開いた。今回は比較的楽観的なムードに包まれたが、いまだ棚上げにされている課題も多い。一つには’CO2削減の負担を誰が負うか’という問題がある。他にも、’途上国の女性が男性よりも直接的に気候変化の影響を負うと思われる(水・食料・燃料の確保や家事など)’問題などである。
[以下は引用文]
It has long been debated — including at the Conference of the Parties in Doha last December — whether industrialized countries responsible for historical emissions should continue to bear the largest proportion of mitigation costs in the future. The most contested view is that poor and emerging economies are increasing carbon emissions and therefore should intensify their efforts to mitigate.
「先進国がこれまでのCO2排出の責任を負い、将来の削減コストについても大部分を負担するべきか否か」については、昨年12月のドーハにおける会合を含め、長いこと議論されてきた。もっとも論争されている観点は、「貧困国・発展途上国はどんどんCO2を排出しているため、削減する努力を強化すべきである」というものである。

The international community has to support developing nations as poverty undoubtedly increases susceptibility to climate-related risks. But vulnerability to climate change has several dimensions that depend on a combination of economic and social factors.
貧困は気候に関連したリスクを確実に大きくするため、国際社会は発展途上国を支援しなければならない。しかし、気候変化に対する脆弱性は社会・経済的要因の組み合わせに依存するいくつかの次元を持っている。

Commentaries
Call to protect all coral reefs
すべてのサンゴ礁を保護するための要請
Tom C. L. Bridge, Terry P. Hughes, John M. Guinotte & Pim Bongaerts
世界中のサンゴ礁が減少しており、数百万人の人の食料安全を脅かしている。浅い海のサンゴ礁と同様に深い海のサンゴを保護する生態規模のアプローチを採用することで、いくつかの社会学的・経済学的恩恵が生まれると思われる。

Framing biological responses to a changing ocean
変わりゆく海に対する生物学的な応答を枠にはめる
Philip W. Boyd
気候変化が仲介する海の特性の変化に対して、海洋生物がどのように応答しそうかを理解するために、研究者は実験方法や環境操作を調和させ、参考となる生物をより上手に利用する必要がある。

Market Watch
Holding out hope
希望を約束する
「ヨーロッパの炭素価格は低いレベルに留まろうとしているが、それを埋め合わせする計画の主任は新たな市場がじきに生まれるよう祈っている」と、Anna Petherickは報告する。

Research Highlights
Costume change
衣装替え
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://doi.org/mgz (2013)
多くの哺乳類が毛の色を季節によって変えることで、風景にとけ込み、よりカムフラージュをしやすくしている(例えば冬は雪に合わせる、夏は緑・茶に合わせるなど)。しかし、気候変化によって毛の色と季節とのミスマッチが生じる可能性がある(例えば春の雪解けが早まるなどして)。アメリカにおけるウサギの一種(snowshoe hare)を用いた研究から、冬の時期が短くなっているのに対して、彼らが毛の色を変えるのが追いついていないことが示された。今後ますますミスマッチは助長され、補食のリスクが高まると思われる。

China’s green jobs
中国のグリーン・ジョブ
Energy Policy http://doi.org/mgx (2013)
クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism; CDM)は持続可能な発展を加速させると期待されているが、その効果は見えにくく、恩恵を被った地域の成功の証拠は限られている。中国においては、従来型の化石燃料燃焼型の火力発電所から、バイオ燃料型の発電所(+作物生産も)へと変える計画においては、9万9千人の失業者が出た一方で、308万人もの間接的な雇用が生まれたと試算されている。太陽光発電もまた多くの恩恵を生み出すと期待されているが、水力発電の期待は薄い。

Impacts on roads
道路への影響
Glob. Environ. Change http://doi.org/mgw (2013)
道路は現代の経済を維持する上で必要不可欠なものであるが、気候変化が道路インフラに与える影響はよく分かっていない。アメリカにおける将来の気候変化(特に降水と温度ストレス)による道路整備の負担額を見積もった研究では、2050年に全球平均気温が1.5℃上昇すると仮定すると、舗装・未舗装道路を維持するのに7億8,500万ドルが必要であると推計された。気候変化緩和によって2億8,000万ドルに軽減できるらしい。

Glacier to sea
氷河から海へ
Nature 497, 235-238 (2013)
海水準上昇に対するグリーンランド氷床の寄与が近年増加している。地球温暖化は氷河流出量の増大と氷床表面の融解を招くが、将来の海水準上昇への寄与を推定することは難しい。グリーンランド氷床から流出する氷の22%に相当する量を排出する4つの主要な氷河を数値モデル化したところ、2200年までに19-49mm海水準を上昇させるという予測がなされた。
>話題の論文
Future sea-level rise from Greenland’s main outlet glaciers in a warming climate
温暖化した気候におけるグリーンランドの主要氷河河口が招く将来の海水準上昇
Faezeh M. Nick, Andreas Vieli, Morten Langer Andersen, Ian Joughin, Antony Payne, Tamsin L. Edwards, Frank Pattyn & Roderik S. W. van de Wal
ここ数十年間、主として表面の融解と氷河流出が原因となってグリーンランド氷床の氷が失われている。将来の海水準上昇におけるグリーンランド氷床の寄与を見積もるのは、氷河流出のメカニズムがまだあまり理解できていないことから、大きな課題となっている。4つの主要な氷河(全体の22%を担う)を対象としたモデルシミュレーションから、「2100年に2.8℃温暖化するシナリオ」ではグリーンランド氷床の融解が2200年までに海水準を19-30mm上昇させることが示された。「4.5℃温暖化するシナリオ」では海水準を29-49mm上昇させると考えられる。

Tropical connections
熱帯域とのつながり
J. Clim. http://doi.org/mgs (2013)
過去50年間、南極半島は世界で最も早く温暖化してきた。その原因としては南極を周回する偏西風が人為的に強化されたことが考えられている。特に南半球の秋には海氷量が著しく後退していることが分かった。南極半島における1979-2009年における気温の観測記録と熱帯域のSST記録とを比較したところ、大気循環を介して海水温偏差が南極気温に影響していることが示された。
>話題の論文
Temperature change on the Antarctic Peninsula linked to the tropical Pacific
Qinghua Ding and Eric J. Steig

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Research
News and Views
New climate alliances
新たな気候アライアンス
Craig A. Johnson
都市部が気候変化を緩和し、適応する能力を改善することがますます世界的な優先事項の一つになりつつある。都市部のリーダーが取るべき姿勢を示す研究がなされた。

Winds of change
変化しつつある風
Matthew Newman
気候モデルや理論によって、温暖化によって赤道域の貿易風が弱化し、さらに西赤道太平洋太平洋の降水が増加するという予測がなされている。観測記録に基づいた新たな研究は、また別の予測を行った。

Concerns over Arctic warming grow
北極圏の温暖化の成長に対する不安
Peter K. Snyder
北極圏の緑化の観測記録から、季節が変化している可能性が示されている。

Perspectives
Contribution of anthropology to the study of climate change
気候変化研究に対する人類学の貢献
Jessica Barnes, Michael Dove, Myanna Lahsen, Andrew Mathews, Pamela McElwee, Roderick McIntosh, Frances Moore, Jessica O'Reilly, Ben Orlove, Rajindra Puri, Harvey Weiss & Karina Yager
人類学がいかに気候科学の理解に貢献できるかについて。

The UN's 'Sustainable Energy for All' initiative is compatible with a warming limit of 2 °C
国連の'すべての人に持続可能なエネルギーを'イニシアチブは温暖化を2℃以下にすることと両立する
Joeri Rogelj, David L. McCollum & Keywan Riahi
Rio+20で、国連は「持続可能な成長・貧困の根絶・気候変化リスク緩和」という文脈において「エネルギーアクセス・再生可能エネルギー・エネルギー効率」に関する世界目標を設定した。そうした目標が地球温暖化を2℃以下に抑えるという重要な課題と整合的であるかどうかを議論。3つのエネルギー目標の達成が気候変化リスク緩和に重要であること、持続可能性と貧困の根絶が気候変化のリスク緩和と並行できることを示す。

Untangling the confusion around land carbon science and climate change mitigation policy
陸域炭素の科学と気候変化緩和政策をめぐる混乱を紐解く
Brendan Mackey, I. Colin Prentice, Will Steffen, Joanna I. House, David Lindenmayer, Heather Keith & Sandra Berry
 気候変化緩和政策の中の2つの重要な目標は、「陸上炭素量を維持すること」と「陸域生態系からの排出量を削減すること」である。特に陸域に焦点をあてて、全球炭素循環とそれに対する人類の影響をレビュー。
 国連気候変動枠組み条約を初めとする種々の政策においては、陸域炭素は化石燃料燃焼のCO2排出を打ち消すとされているが、それは科学的に間違っている。現在の炭素貯蔵能力はすでに過去の土地利用変化によって影響をこうむっており、貯蔵能力は有限である。陸域炭素の排出を回避し、失われた炭素を補うことで大気中のCO2量を減らすことは可能であるものの、それは化石燃料燃焼によるCO2排出量に比べれば微々たるものである。

Letters
A coupled physical and economic model of the response of coastal real estate to climate risk
気候リスクに対する沿岸部の不動産の結合された物理・経済モデル
Dylan E. McNamara & Andrew Keeler
気候モデルの予測結果をあまり信用しない人々と比較して、より情報を開示された土地所有者は守備的な投資をすることが示された。

Reductions in labour capacity from heat stress under climate warming
気候の温暖化の下での熱ストレスによる労働能力の低下
John P. Dunne, Ronald J. Stouffer & Jasmin G. John
過去数十年間において、温暖化によって個人の労働能力が最高で90%低下してきた。最も大きく温暖化するシナリオのもとでは、2,200年までに40%以下労働力が低下することが示された。特に熱帯域や中緯度域が大きな熱ストレスを被るという。

Attribution of historical ozone forcing to anthropogenic emissions
過去のオゾンによる放射強制力が人為的な排出に与えた寄与
Drew Shindell, Greg Faluvegi, Larissa Nazarenko, Kevin Bowman, Jean-Francois Lamarque, Apostolos Voulgarakis, Gavin A. Schmidt, Olga Pechony & Reto Ruedy
現在の大気下層における人為起源の放射強制力の理解は誤解を招きやすい。対流圏のオゾンの前駆物質が従来考えられていたよりも正の放射強制力に寄与しており、一方でハロカーボン類は負の放射強制力に寄与していたことが示された。

Recent multidecadal strengthening of the Walker circulation across the tropical Pacific
近年の赤道太平洋域のウォーカー循環の数十年規模の強化
Michelle L. L’Heureux, Sukyoung Lee & Bradfield Lyon
 赤道太平洋域のウォーカー循環は西で上昇し、東で下降する大気の流れを意味する。その変化は熱の分配を意味するため、全球に影響を及ぼす。ENSOは数年スケールでウォーカー循環に影響するが、人為起源の気候変化を含むより長い時間スケールでの変化やその変動要因についてはよく分かっていない。
 1900-2011年の再解析データを含む、10の独立した海面気圧データセットを用いて解析を行った。1950年よりも前のデータは不足しているためにシグナル/ノイズ比が極めて小さく、変化傾向を一般化することは危険である。一方で1950年以降は西部のインドネシアで負の有為な偏差が確認され、東部では正の偏差が確認された。全体的な傾向としてはウォーカー循環が強化されており、よりラニーニャ的になっていることが示された。
 この結果は赤道太平洋域のデータをより厳密に評価することが必要であることを示しており、さらにモデルによる予測結果(温暖化でよりエルニーニョ的になる)と相反するものである。

Trends in hourly rainfall statistics in the United States under a warming climate
温暖化したアメリカにおける1時間ごとの降水統計量の傾向
T. Muschinski & J. I. Katz
アメリカの13の地点においてこれまでに得られてきた1時間ごとの降水量の観測記録を解析したところ、アメリカ全土で温暖化とともに嵐の頻度(storminess)が上昇したという統計学的な証拠は見られなかった。

Temperature and vegetation seasonality diminishment over northern lands
北方地域の温度と植生の季節性の消失
L. Xu, R. B. Myneni, F. S. Chapin III, T. V. Callaghan, J. E. Pinzon, C. J. Tucker, Z. Zhu, J. Bi, P. Ciais, H. Tømmervik, E. S. Euskirchen, B. C. Forbes, S. L. Piao, B. T. Anderson, S. Ganguly, R. R. Nemani, S. J. Goetz, P. S. A. Beck, A. G. Bunn, C. Cao & J. C. Stroeve
 温暖化は特に北半球高緯度の陸域で顕著である(極増幅メカニズム)。冬の気温上昇は気温の季節性が低下することを意味し、それは植生の季節性や光合成活動にも影響すると思われる。温度の季節性は次第に熱帯域様に変化すると思われる。
 地上観測記録と衛星観測記録から気温と植生の季節性を評価したところ、それぞれの減少は過去30年間に4º、7º緯度がより南下したことに相当する規模のものであることが示された。17の気候モデルを用いて将来予測を行ったところ、21世紀の末には20ºに相当するほどの変化が起きると予想された。温度の変化に対する植生の変化の理解はまだ不足しているため、今後もモニタリングを継続する必要がある。

Mussel byssus attachment weakened by ocean acidification
海洋酸性化によって弱まるムール貝の足糸
Michael J. O’Donnell, Matthew N. George & Emily Carrington
 生体素材は生物と周囲の環境とを繋ぐものであるが、それが作られるとき、または生物の生涯を通じて、生物的・化学的・環境的要因によって支配される。海洋酸性化は海水の化学を大きく変化させるため、そうした生体素材に何らかの影響を及ぼすと思われるが、石灰化作用と異なり、あまり研究がなされていない。
 生態学的にも商用的にも重要な二枚貝であるムール貝に対して酸性化実験を行ったところ、殻や組織の成長は1,200μatmを超す極端な酸性化でも影響が見られなかったものの、タンパク質で構成される足糸の機能が低下していることが示された。貝が岩場に付着する能力が40%低下することが数値モデルから示された。吊り下げ式のムール貝の養殖やムール貝礁生態系への影響が危惧される。

Article
Mixed responses of tropical Pacific fisheries and aquaculture to climate change
熱帯太平洋の漁業と養殖の気候変化に対する混在した応答
Johann D. Bell, Alexandre Ganachaud, Peter C. Gehrke, Shane P. Griffiths, Alistair J. Hobday, Ove Hoegh-Guldberg, Johanna E. Johnson, Robert Le Borgne, Patrick Lehodey, Janice M. Lough, Richard J. Matear, Timothy D. Pickering, Morgan S. Pratchett, Alex Sen Gupta, Inna Senina & Michelle Waycott
熱帯・亜熱帯太平洋の島国は漁業や養殖に強く依存している。気候変化が大気海洋に与える影響が、さらに食物網・生物の生息域・漁業資源量にどのように影響するかを評価した。勝者と敗者が生じると思われ、例えばマグロは太平洋の東部でより豊富になり、淡水の漁業や養殖がより生産性が高まることなどが予想される。逆に、サンゴ礁の漁業は2050年までに20%衰退し、沿岸の養殖も効率が低下すると思われる。