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2013年2月15日金曜日

気になった一文集(日本語 ver. No.6)

ウェザー・オブ・ザ・フューチャー
〜気候変動は世界をどう変えるか〜

ハイディー・カレン 著
大河内直彦 解説

気象学者は主に大気のことを考えているが、気候学者は大気に影響するすべてのことに夢中になっているといえるという言い方もできるだろう。しかし結局のところ、気象学者も気候学者も、未来を予測することに一生懸命である。(pp. 3)

天気予報は大気の短期的な変動に焦点を当てるものだが、気候予測は、海、陸地、氷まで含めた気候システム全体の長期的変動を中心にしている。(pp. 5)

「多くの人々は、不動産などの長期的投資を通してしか、気候変動の問題と自分とを結びつけられない」(pp. 7)

地球温暖化は、「完全な問題」と呼ばれている。「完全」というのは、地球温暖化が気付きにくく、解決するのが困難な問題であるという意味だ。(pp. 15)

脳を使って慎重な分析を行えば、当然ながら、長期にわたる干ばつや大量絶滅、海面の上昇は深刻な問題だということになる。しかし直感的にはそうは思えない。地球温暖化はあまりに遠く、個人には関係ない話に思えるのだ。(pp. 18)

人間の脳は、緊急性が一番高い脅威を認識するようになっているのと同時に、気候より、天気の心配のほうにエネルギーを多く注ぐようにできている。(pp. 20)

気候予測を「逆予報」だと言うのは、私たちは予報された事態を回避できるからだ。気候予測は、私たちが現状レベルの化石燃料使用を続けた場合に行き着く可能性がある、一つの未来の姿に過ぎない。結局、未来は私たちの手の中にあるのだ。そして事態は急を要する。(pp. 22)

炭素循環は、ある種の輪廻転生にも例えられる。この循環は、炭素原子を相手にする、自然界の偉大なリサイクル業者なのだ。(pp. 38)

最初の天気予報は結果的には、大失敗として歴史に刻まれることになった。しかし、この失敗と引き換えに、「予測の精度はデータによって決まる」という、天気予報と気候予測の鉄則が得られたのである。(pp. 51)
世界で初めて数値解析を用いて気象予測を行ったルイス・フライ・リチャードソンの失敗

ハインドキャスト実験に成功すれば、過去の出来事を表せる気候モデルには、未来を指し示す役割も果たせるという確証が高まってくる。(pp. 60)

モデルが示す予測は不吉なものだ。たとえ地元のニュースで毎晩取り上げられなくても、それを無視することはできない。(pp. 70)

2003年の夏の熱波は、ヨーロッパで観測史上最悪の自然災害だと言われている。(pp. 73)

こうした予測がありながら、人々がその警告を聞く耳を持っていないらしいのは、悲劇の種であり、ギリシャ神話の逸話を思い起こさせる。気候学者は、まるでカサンドラになったかのようだ。(pp. 78)

数学やモデル、物理学の知識などが、さまざまなことを教えてくれるのは確かだ。しかしその土地に関連した具体的なリスクを理解するためには、その地域の気候を研究する科学者たちこそがもっとも価値あるツールだと言える。(pp. 79)

正確に見積もることのできない、本当の意味での変数は、私たち自身の行動だ。(pp. 81)

多くの科学者は、乾燥化の問題を、これまで世界で起こった気候変動の中で、もっとも顕著な例に数えている。(pp. 91)

「…もちろん、ただ何もせず、何が起こるのかを見守り、予測が正しいのかを確かめることもできる。しかし、それは恥ずべきことです。」(pp. 147)
海洋生物学者 ジョーニー・クレイパスの言葉。世界のサンゴ礁が気候変動の結果、激減していることをうけて。

現在の状況を、気候モデルによる未来予測と比較している間に、気候変動は急速に進んでいるのである。イヌイットが言う通り、地球の動きは早くなっている。(pp. 229)
北極圏の海氷が急速に失われていることを受けて。

「かつて自然の力で気候変動が起こったことがあるにしても、私たち自身が気候システムを蹴飛ばすような立場になるべきではありません。」(pp. 242)

「気候モデルを使う時には、モデルには自分の知らない物事は含まれていないことに気をつけなくてはいけないんだ。気候システムでは起こっているのに、気候モデルでは今のところ捉えられていない現象もある。」(pp. 242-243)
氷床・気候学者 J. P. Stephansen

氷床コアが一冊の本だとしたら、今回の本は「戦争と平和」くらいに分厚く、約2.6キロメートルもある。(pp. 244)
2007年から開始されたNEEMによるグリーンランド氷床掘削

「私たちが進む先にあるのは、氷床コアにも示せないようなところにある気候なんです。」(pp. 250)
コロラド大学 ヴァシリー・ペトレンコ

未来に関して、そしてこれから書かれる気候の歴史のページに関して、過去のデータから分かることは限られている。(pp. 250)
完全な温暖化のアナログは過去には実在しない

「地球というシステムを実験対象にするべきではない。母なる自然自身が過去に行った実験を見て、その結果を調べるほうがいいんです。」(pp. 250)
コロラド大学 ヴァシリー・ペトレンコ

「私たちはこの『変化』という言葉に慣れなければならないんだ。変化があるからこそ、私たちには過去があり、未来があるのだよ。過去を蘇らせようともがくのは良くない。不可能だ。変わらないものはないのだから。」(pp. 250-251)
氷床・気候学者 J. P. Stephansen

非常に進歩的な国でさえ、長期的な脅威に理性的に対応するより、短期的なチャンスをつかみ取るほうが得だと考えているということである。(pp. 254)
海氷後退によって北極圏の地下・海底資源の領有権をめぐる議論が激化する

彼らにとって、気候変動は自由への道だといえる。新しいグリーンランドは富を生む。問題は、その富を手にするのが誰かということだけだ。(pp. 254)
グリーンランド氷床が融解したほうがいいという人たちもいる

世界中で発生しうる「気候難民」(政治的かつ道義的な意味合いが強い用語だ)の人数としてもっとも広く言われているのは、2050年までに2億人という概算だ。pp. 274)

国家安全保障の専門家から見れば、移住というのは、気候変動の一つの側面としては本当に恐怖を感じるものだと言える。世界レベルで考えれば理由は簡単である。(pp. 277)
気候変動によって大量の環境難民が生まれる

気候変動は限られた分野だけで解決できる問題ではない。(pp. 289)

「気温だけでなく、海面の上昇や、北極の海氷の衰退、世界中の氷河の後退、水蒸気の増加などは、それぞれ独立に観測されています。その観測結果はすべて、温暖化が進む地球ではこうなるはずだ、という私たちの知識と一致します。だからこそ、『疑う余地がない』という言葉を使うことができたのです。」(pp. 356)
IPCC AR4の共同議長も務めたNOAAのスーザン・ソロモン

「この話をややこしくしているのは、酸性雨とか、スモッグ、DDTといったほかの公害はだいたいどれも、影響のしかたが単純で、排出をやめれば問題は解決する点です。ここで本当に大変なのは、地球温暖化はそう単純にはいかないのが既に分かっていることです。私たちは、まるで家電のサーモスタットのように、地球の気温のダイアルを回しています。でもそれは決まった方向にしか回らない。ダイヤルを戻したりはできないんです。」(pp. 356)
同じくスーザン・ソロモン
気候のヒステレシスについて。ある閾値を超えると気候は異なる安定状態へとジャンプする。

今では、イースター島は、歴史上もっとも極端な森林破壊の例の一つとされている。(pp. 357)

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大河内直彦 氏による解説〜真に恐れるべきもの

こういった話は、いろんな書物や雑誌に書かれてきたし、あらゆるメディアを通して飽き飽きするほど報道されてきた。それでも、どこか遠い国で起きる話のように感じていないだろうか?それとも、誰かがそのうちに何とかしてくれるだろうと漠然と考えていないだろうか?(pp. 365)

一線を超えてしまった気候は、救い様がないくらいお手上げなのである。(pp. 367)

詳しいメカニズムはいまだ不明なものの、こういった過去の履歴が将来を予測する科学者の心を曇らせ、気候変動の脅威を社会に訴える重要な動機となっている。(pp. 368)
急激な気候変動は過去に何度も繰り返され、モデルでも未だに再現できていない。

幸か不幸か科学者たちは、人類の歩みの先に潜む危険を知ってしまった。危険なシグナルを察知しながら警告を発しないのは、それ自体が罪である。温暖化懐疑派が糾弾する科学の詳細における不正確な一面は、この際そもそも問題ではない。(pp. 368)

地球温暖化の真の怖さは、実は「地球温暖化」という言葉の中には含まれないところにこそ潜んでいる。(pp. 370)

化石エネルギーというパンドラの箱を開けてしまった人類は、もはやこれなしに暮らすことは不可能になってしまった。(pp. 371)

2011年3月11日の昼下がりに起きたマグニチュード9.0の大地震と、それに続く津波、そして福島の原子力発電所の事故は、そういった思考回路が、ある種の問題に対してきわめて無力であることを改めて示した。それと同時に、少なくとも私にとって、気候変動という問題について考え直す契機になった。(pp. 372)

地球温暖化問題の真の怖さは、「地球温暖化」という言葉が直接的にもつ意味の外にこそある。私たちは、うんざりするほどやっかいな問題を、子供や孫の世代に残しつつある。(pp. 374)