Main contents


☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年2月6日水曜日

新着論文(NCC#Feb2013)

Nature Climate Change
Volume 3 Number 2 (February 2013)

Editorials
Getting to grips with risk
リスクに真剣に取り組む
気候に関連したリスクを評価し応答するためのより多くの行動が必要とされている。

California dreaming
カリフォルニアの夢
カリフォルニア州が新たに導入したカーボン・トレード・システムはより綺麗で緑の豊かな未来に貢献するだろう。

Commentary
A blind spot in climate change vulnerability assessments
気候変動に対する脆弱性の評価の盲点
アメリカにおいては気候変動の脆弱性の評価が生物保護の支援を決定するのに大きな役割を負っているが、一方で移動性の生物には悪影響かもしれない。

News Feature
Lost in transition
変化の中で迷子
知的所有権を巡る議論は世界を発展させるためのクリーン技術の拡大を遅らせるが、完全に責めるべきものでもない。

Research Highlights
Mitigation cost estimates
気候変動緩和のコスト推定
Nature 493, 79–83 (2013)
10年以上も温暖化を2℃以下に抑えるための議論が行われてきたが、多くのシナリオ分析がこれまでになされてきたにも関わらず、多くの不確定要素によってその目標を達成するための経済的なコストの推定は依然として課題となっている。オーストリアの研究グループによる試算から、排出削減を開始する時期の政治的な決定が最も大きくコストに影響することが示された。国際的な合意は2020年まで得られそうにないため、各地域が自主的に行動を開始し、エネルギー需要が少なくて済むような政策を採用することが必要である。
>問題の論文
Probabilistic cost estimates for climate change mitigation
気候変動の緩和に必要な費用の確率的な見積もり
Joeri Rogelj , David L. McCollum , Andy Reisinger , Malte Meinshausen & Keywan Riahi
10年以上もの間、「温暖化を2度以内に抑える」という目標が掲げられ、その目標を達成するためのコストの推定がなされてきた。しかしコスト推定には異なる分野間の知識を統合することの不確実性や、将来の気候応答の推定における不確実性などが多数存在する。
 「地球物理学的な」「技術的な」「社会的な」「政治的な」4つの要因を考慮し、温暖化をある特定の温度に徐々に抑えることに伴うコスト推定の分布を示す。温暖化抑制を遅らせる政治決定が最もコスト・リスク分布に影響することが分かった。
>その解説記事
All in the timing
すべてはタイミングの中に
Steve Hatfield-Dodds
Rogelj et al.の解説記事。
500ものシナリオに基づいて将来の気候変動緩和政策のコストを推定したところ、国際的な行動開始のタイミングが最も大きな影響を与えることが分かった。しかしタイミングの影響は非線形的で、例えば開始時期が2020年から2025年に5年間遅れただけで、温暖化が2℃以内に抑えられる可能性が著しく低下することが示された。次いで不確実性が大きいのが地球システムの温暖化に対する応答やフィードバックであるが、モデル研究が一般にそうであるように、永久凍土の融解に伴うさらなるCO2やメタンの放出などは考慮できていない。Rogelj et al.の推定はやや楽観的な側面もある。

Preparing for droughts
干ばつへの備え
Climatic Change http://doi.org/j6z (2012)
異常干ばつの頻発が「どのようにして干ばつに適応すれば良いのか」の関心を集めている。干ばつに対する備えが重要であるのは間違いないが、AAASがアリゾナ州とジョージア州における最近の干ばつを評価したところ、備えがあり、柔軟に計画やモニタリングがなされていれば、うまく適応できることが示された。また部門を超えて計画段階から協力することの重要性も明らかになった。

Long-term relationship
長期的な関係性
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://doi.org/j65 (2012)
気候変動の結果、海水準上昇が起きるが、それを正確に予測することは難しい。というのも、現行の気候モデルでは氷床変動の動力学過程がうまく再現できていないからである。新たな研究は地質学時代の海水準変動に着目し、より明瞭に海水準とCO2濃度との関係を示した。それによると、海洋循環や地形の変化は副次的な変動要因であることが示された。結果をそのまま将来予測に外挿すると、温暖化を2℃以下に抑えるというシナリオでも、海水準は長期的には9m上昇することが示された。
(※地質学的な1,000〜10,000年スケールの変動を10〜100年スケールの現在の気候変動に置き換えるのはかなり危険ですが、この推定がある意味もっとも極端な推定値と言えるかもしれません。)
>問題の論文
Relationship between sea level and climate forcing by CO2 on geological timescales
地質学的な時間スケールでの海水準とCO2の気候フォーシングの関係
Gavin L. Foster and Eelco J. Rohling
Ka-Maスケールの海水準上昇変動は主として大陸の氷床量によって決定されている。過去40Maの重要な時期における海水準変動と大気中CO2の変動との間には明確な関係があり(S字状)、地質学時代においてもCO2が地球の気候を決定しており、海洋循環や地形はその次の変動要因であったことを物語っている。CO2と海水準上昇との間の関係から、将来CO2濃度が400 - 450 ppmになった場合、海水準は9 m上昇することが予想される。従って、CO2濃度を産業革命以前の値に戻すことが海水準の急上昇を防ぐためには必要である。

Perception to action
行動するための認識
Risk Anal. http://doi.org/j6x (2012)
気候変動の結果、多くの自然災害に対するリスクも増加すると考えられるが、そうしたリスクを認知することで気候変動に対する適応について思考を促すことができる。「実際に災害を経験した人」や「専門家や権威に信用を置く人」がよりリスク認識に影響することが明らかになった。しかし興味深いことに、リスクを認識していても、リスクを緩和したりリスクに適応するための直接的な行動には結びつかないらしい。

Aerosol impacts
エアロゾルの影響
J. Atmos. Sci. http://doi.org /j63 (2013)
大西洋における将来の気候変動をするためにも、最近の変動を理解する必要がある。最近の研究から、数十年スケールの変動には大気中のエアロゾルが大きな役割を負っていることが示された。他の研究が先行研究に取り入られていなかった過程を新たに導入し分析を行ったところ、モデル結果と観測との間に大きな食い違いが見られ、それはエアロゾルが原因であることが示された。つまり、エアロゾルが数十年変動の第一の変動要因とする先行研究に対して疑問を呈している

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Research
News and Views
Plenty of wind
多くの風
Daniel Kirk-Davidoff
風力発電ではタービンを利用して風の運動エネルギーを電気エネルギーに変換している。新たな研究で、風力発電の利益を見積もるために、モデル上でゆっくりと吹く風により大きな力を加えてみた。

Inducing green behaviour
グリーンな行動を誘引する
John Thøgersen
例えば’エネルギー使用量を減らすことで節約’という経済的な謳い文句を掲げて環境保護行動を促進することがある。しかし、人々の環境保護に対する動機は行動の変化を誘因する上でより良い駆動力になることが新たな研究から示された。

Fluctuating temperature effects
変動する温度の効果
Ross A. Alford
宿主・寄生生物・病原菌の関係性は温度変動のパターンにより大きく影響される。

Perspective
Last chance for carbon capture and storage
炭素捕獲・貯留の最後のチャンス
Vivian Scott, Stuart Gilfillan, Nils Markusson, Hannah Chalmers & R. Stuart Haszeldine
 炭素捕獲・貯留の技術は化石燃料を使って発電する施設や工業施設から大気へと排出されるCO2量を減らすための気候変動緩和策である。エネルギーを大量に消費する産業の増加や新たな化石燃料の登場(シェールガスなど)などの事情があることから、より多くの炭素が排出されることはもはや避けがたいことと思われる。
 しかしながら、これまで実際に行われた炭素捕獲・貯留は非常に限られており、例えば発電所に設置されたものは一つも存在しない。それは科学技術が追いついていないというよりは、政治・経済・社会的な要因の結果である。政府は炭素捕獲・貯留の実現に向けて市場に訴えかけるべきであり、或いはこれまでの失敗をきちんと受け止め、「これからも増え続ける化石燃料燃焼型の発電所が気候変動を緩和する目的を達成する上での大きな障害になること」を認識するべきである。

Review
Cultural dimensions of climate change impacts and adaptation
気候変動の影響や適応に対する文化的な側面
W. Neil Adger, Jon Barnett, Katrina Brown, Nadine Marshall & Karen O'Brien
気候変動に対する社会的な応答は文化によって影響を受けることは避けがたい。これまでの社会学的な重要な研究をレビューした研究から、気候変動が人々の暮らしの大切な文化的側面を大きく脅威にさらすことが示された。

Letters
Geophysical limits to global wind power
全球の風力発電に対する地球物理学的な限界
Kate Marvel, Ben Kravitz & Ken Caldeira
風力発電は排出がほとんどゼロのエネルギー源であり、高層の強い風を利用したほうが発電力は上がると考えられる。気候モデルを用いて地表と高層の風力発電を比較したところ、後者は発電力は大きいがコストが高いことが示された。しかし現在のエネルギー需要を賄うために設置を行ったとしても、気候への影響は少ないと思われる。

Self-interest and pro-environmental behaviour
自身の興味と環境保護行動
Laurel Evans, Gregory R. Maio, Adam Corner, Carl J. Hodgetts, Sameera Ahmed & Ulrike Hahn

Robust projections of combined humidity and temperature extremes
湿度と温度の異常を結びつけた厳密な予測
E. M. Fischer & R. Knutti
気候モデルを用いてなされる影響評価の不確実性に関して。

El Niño and health risks from landscape fire emissions in southeast Asia
エルニーニョと東南アジアのlandscape火災排出物による健康リスク
Miriam E. Marlier, Ruth S. DeFries, Apostolos Voulgarakis, Patrick L. Kinney, James T. Randerson, Drew T. Shindell, Yang Chen & Greg Faluvegi
landscape火災は気候と空気の質の両方に影響を与える。1997年から2006年にかけての人工衛星による観測と大気モデリングを組み合わせて、東南アジアにおける火災排出物が健康に与える影響を評価。人為起源の土地改変に加えて、エルニーニョの年にはさらに火災が増加し、結果としてWHOが定める健康基準を超え、成人の死亡率が2%増加することが示された。人為起源の土地改変(焼き畑など)を抑えることで健康被害は改善すると思われる。

Major flood disturbance alters river ecosystem evolution
大きな洪水の擾乱が河川生態系の進化を変える
Alexander M. Milner, Anne L. Robertson, Michael J. McDermott, Megan J. Klaar & Lee E. Brown
気候変動に関連した洪水が河川流路や河川生態系にどのような影響を与えるかは長期的な観測記録がなくよく分かっていない。徐々に氷河が後退し、環境が大きく変わりつつある河川における30年間のモニタリング記録から、大きな洪水イベントに対してサケ・大型無脊椎動物・微生物群集が大きく異なる応答を示すことが示された。

Climate-driven changes in northeastern US butterfly communities
アメリカ北東部のチョウのコミュニティーにおける気候が駆動する変化
Greg A. Breed, Sharon Stichter & Elizabeth E. Crone
ヨーロッパにおいては気候によって生物の生息地の変化が起きていることが長期的なモニタリングのおかげでよく分かっている。アメリカの市民科学者(citizen scientists)によってなされた観測がアメリカ北東部のチョウの生息地のシフトが起きつつあることを実証している。

Disease and thermal acclimation in a more variable and unpredictable climate
より変動的でより予測が難しい気候における病気と熱への順応
Thomas R. Raffel, John M. Romansic, Neal T. Halstead, Taegan A. McMahon, Matthew D. Venesky & Jason R. Rohr
気候変動が病気の発生にどう影響するかを考慮した研究は少ない。ラテンアメリカにおける野外調査と飼育実験から、カエルの感染症に対する脆弱性は温度変化に影響されることが示された。

Blanket peat biome endangered by climate change
気候変動に脅かされる覆われた泥炭地
Angela V. Gallego-Sala & I. Colin Prentice
Blanket bog(分解されていない泥炭で覆われた土地)はhyperoceanic気候帯にのみ生息する生物種で特徴付けられる。生物・気候モデリングから、そうしたBlanket bogは気候変動に伴い縮小し、一部しか生き残らないことが示された。

Ocean acidification causes ecosystem shifts via altered competitive interactions
海洋酸性化が競争の相互作用の変化を介して生態系のシフトを引き起こす
Kristy J. Kroeker, Fiorenza Micheli & Maria Cristina Gambi
「種間の相互作用が海洋酸性化の個々の生物への影響をさらに弱める・悪化させる」という仮説を検証することを試みた。低いpHでははじめ石灰化生物が海草類と同程度の速度で成長するが、その後海草類のほうがよりよく成長することが示された。海草類へのシフトは野外でも実際に確認されており、海洋酸性化に対する個々の生物の生理学的な応答が相互作用して、集団間の競争力のバランスが変化することで、生態系全体のシフトへと繋がることが示された。

Nutrient enrichment can increase the susceptibility of reef corals to bleaching
富栄養化が造礁サンゴを白化に対する脆弱性を増加させる可能性がある
Jörg Wiedenmann, Cecilia D’Angelo, Edward G. Smith, Alan N. Hunt, François-Eric Legiret, Anthony D. Postle & Eric P. Achterberg
 サンゴと褐虫藻の共生関係の崩壊を意味する白化現象は全球スケールでサンゴ礁の最大の脅威となっている。地域的なスケールでは富栄養はサンゴ被覆や多様性の減少に繋がることもある。また「溶存無機窒素量の増加がサンゴの白化が起きる温度の閾値を下げる」という報告もなされているが、そのメカニズムについてはよく分かっていない。
 リン酸濃度が低い状態で溶存無機窒素濃度の上昇が起きると、温度上昇と強い光が原因で起きる白化現象に対してより弱くなることを示す。

Article
Limiting global warming to 2 °C is unlikely to save most coral reefs
温暖化を2℃以下に抑えることはほとんどのサンゴ礁を救うことにはならない
K. Frieler, M. Meinshausen, A. Golly, M. Mengel, K. Lebek, S. D. Donner & O. Hoegh-Guldberg
温暖化とともに白化現象はより深刻化し、より頻繁に起きると考えられる。排出シナリオとモデルを用いて、全球の平均気温の変化とサンゴの白化現象を評価。世界の10%以上のサンゴ礁を保護するには温暖化を「1.5℃」に抑える必要があることを示す。サンゴの温度上昇に対する適応・進化を考慮した最も楽観的な推定でも、IPCCの新たなシナリオ(RCP3-PD)のもとでも3分の1は長期的な劣化は免れないと考えられる。RCP4.5シナリオの場合、3分の2にさらに悪化すると考えられる。温暖化を大きく抑えないことにはサンゴの未来は危ういようである。
※以下は結論からの引用
There is little doubt from our analysis that coral reefs will no longer be prominent within coastal ecosystems if global average temperatures exceed 2 ºC above the pre-industrial period.
我々の分析から、産業革命以前に比べて全球平均気温が2℃上昇した場合にサンゴ礁が沿岸生態系で卓越することはないことに対する疑いはほとんどない。

There is little precedent for the rate and magnitude of warming in the recent geological history of corals, including the transition into the warm Eemian period.
温暖なEemian期への移行過程を含め、サンゴにとって最近の地質学的な歴史上、現在のような速度と規模で温暖化が起きた前例はほとんどない。

Despite these uncertainties, the window of opportunity to save large fractions of coral reefs seems small and rapidly closing.
これらの不確実性はあるものの、サンゴ礁の大部分を保護する機会に対する窓は小さく、急速に閉じつつあるようである。