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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年2月10日日曜日

新着論文(EPSL, QSR, GPC, Ncom)

◎EPSL
Seasonally resolved diatom δ18O records from the West Antarctica Peninsula over the last deglaciation
George E.A. Swann, Jennifer Pike, Andrea M. Snelling, Melanie J. Leng, Maria C. Williams
南極半島の近くから得られた堆積物コア中の個々の珪藻δ18Oから季節ごと(特に夏と春)の環境復元。最終退氷期に季節差が大きくなる時期があることが分かり、氷河からの融水の流出増大と関連?

◎QSR
The Last Glacial Maximum at 44 S documented by a 10Be moraine chronology at Lake Ohau, Southern Alps of New Zealand
Aaron E. Putnam, Joerg M. Schaefer, George H. Denton, David J.A. Barrell, Sean D. Birkel, Bjørn G. Andersen, Michael R. Kaplan, Robert C. Finkel, Roseanne Schwartz, Alice M. Doughty
ニュージーランドのLGMにおける氷河の位置を10Beを用いて決定。また雪線高度から気温も推定。LGMには雪線高度は920m下がっており、気温は6.25℃低かったと推定される。また18-13kaの間に雪線高度/気温が520m/3.6℃上昇したと考えられる。

Extensive recession of Cordillera Darwin glaciers in southernmost South America during Heinrich Stadial 1
Brenda L. Hall, Charles T. Porter, George H. Denton, Thomas V. Lowell, Gordon R.M. Bromley
南米パタゴニアのCordillera Darwin氷河の後退のタイミングについて。HS1には南米の南部とニュージーランドで同時に氷河の後退が起きており、南大洋の海洋物理や大気中CO2の上昇とリンクしていると考えられる。

◎GPC
When did modern rates of sea-level rise start?
W. Roland Gehrels, Philip L. Woodworth
潮位計からだけでは人為起源の海水準の上昇を特定することは難しい。北米・オーストラリア・ニュージーランドの潮位計の記録とプロキシを用いたより長い時間(〜完新世)の記録との比較から、人為起源の海水準上昇率とその開始時期を推定。おおよそ「1925年」から影響が出始めていた。地域ごとに見られるわずかな違いはどこの氷が融けたかに依存するため、グリーンランドと北極周辺の氷が特に融けていることが示唆される。

The phase relation between atmospheric carbon dioxide and global temperature
Ole Humlum, Kjell Stordahl, Jan-Erik Solheim
アイスコアの記録によると、千年〜百年スケールでは大気中CO2濃度は気温の上昇に遅れて上昇していたことが知られているが、もし現在の温暖化が人為起源のCO2であれば逆にCO2が先に上昇しているはずである。8つのデータセットを使って評価を行ったところ、「CO2の変化が気温の変化に9.5-12ヶ月遅れていること」が示された。1980年以降、大気中のCO2濃度の変動は人間活動と言うよりもむしろ南半球の温度が主に支配していると考えられる。

◎Nature Communications
Climate change patterns in Amazonia and biodiversity
Hai Cheng, Ashish Sinha, Francisco W. Cruz, Xianfeng Wang, R. Lawrence Edwards, Fernando M. d’Horta, Camila C. Ribas, Mathias Vuille, Lowell D. Stott and Augusto S. Auler
アマゾンで得られた鍾乳石δ18Oから過去250kaの降水を復元。軌道スケールではアマゾンの東西で準ダイポール状の降水の変動が見られる。最終氷期には西は降水量が比較的増加するが、一方で東は極端に減少していた。そのため、水気候が大きく変化したことで東側の生物多様性も減少していたと考えられる。

Caribbean-wide decline in carbonate production threatens coral reef growth
Chris T. Perry, Gary N. Murphy, Paul S. Kench, Scott G. Smithers, Evan N. Edinger, Robert S. Steneck and Peter J. Mumby
全球規模でサンゴ礁の健康悪化が報告されており、サンゴの石灰化量の低下は生態系の悪化だけでなく最終的には礁そのものの浸食につながると考えられる。カリブ海の19のサンゴ礁について石灰化量や浸食を調査したところ、完新世に比べて近年は大きく石灰化量が低下していることが示された。サンゴ被覆が10%を下回れば石灰化量が浸食に打ち負けると考えられる。