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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年2月19日火曜日

新着論文(GRL, JGR, PO, CP, BG)

○G3
Investigating δ13C and ∆14C within Mytilus californianus shells as proxies of upwelling intensity
J. E. Ferguson, K. R. Johnson, G. Santos, L. Meyer, A. Tripati
カリフォルニア沿岸部に生息するイガイ(Mytilus californianus)の殻のδ13CとΔ14Cが湧昇の指標になるかを評価。Δ14Cは使えそうだが、δ13Cは代謝起源の炭素が入ってくるため解釈が難しそう。

Early Aptian paleoenvironmental evolution of the Bab Basin at the southern Neo-Tethys margin: Response to global carbon-cycle perturbations across Ocean Anoxic Event 1a
Kazuyuki Yamamoto, Masatoshi Ishibashi, Hideko Takayanagi, Yoshihiro Asahara, Tokiyuki Sato, Hiroshi Nishi, Yasufumi Iryu
カタールのBab Basinから得られたOAE-1aの地層のδ13C・δ18O・87/86Sr測定などからOAEのメカニズムを推定。OAEの開始時にδ13C・δ18Oが低下するのは「火山性のCO2が長期的にもたらされ、温暖化が起きた」とする仮説と整合的。同時に起きた温暖化が風化を促進し、Sr同位体比にも影響した。

○GRL
Variability in the Surface Temperature and Melt Extent of the Greenland Ice Sheet from MODIS
Dorothy K. Hall, Josefino C. Comiso, Nicolo E. DiGirolamo, Christopher A. Shuman, Jason E. Box, Lora S. Koenig
近年のグリーンランド氷床の表面温度と氷床量の変化について。南西部がもっとも融解しており、季節を通じて気温の上昇(~0.55℃/10年)が起きている。2000年以降では2002年と2012年の融解が顕著であった。

Terrestrial effects of possible astrophysical sources of an AD 774-775 increase in 14C production
Brian C. Thomas, Adrian L. Melott, Keith R. Arkenberg, Brock R. Snyder
木の年輪に記録されているAD774-775の14C生成率のスパイクの原因を考察。solar proton events (SPEs)も考えられるかも?

The role of land use change in the recent warming of daily extreme temperatures
Nikolaos Christidis, Peter A. Stott, Gabriele C. Hegerl, Richard A. Betts
モデルを用いて近年の異常な暑さの原因を推定。産業革命以降の土地利用変化(森林が減少し、草原が増加)は’寒冷化’の効果があることが示された。

The gravitationally consistent sea-level fingerprint of future terrestrial ice loss
G. Spada, J. L. Bamber, R. T. W. L. Hurkmans
質量収支のバランスを考えることで、各要因の海水準上昇への寄与率を推定。海水準上昇の予測は地域性が大きい。熱帯域の海水準上昇には氷河・氷帽・氷床の融解が大きく寄与する可能性がある。赤道太平洋は熱膨張が、大西洋は海洋表層循環の変化が大きく影響すると考えられる。

Estimating the effect of Earth elasticity and variable water density on tsunami speeds
Victor C. Tsai, Jean-Paul Ampuero, Hiroo Kanamori, David J. Stevenson
津波の到達時刻の予測には通常浅水近似が用いられるが、2011.3.11の東北沖地震では予測に1%もの誤差が伴っていた。原因としてはモデルで考慮されていない地球の弾性変形が考えられる。そうした効果を津波の速度予測にどのように取り入れるべきかを新たに提案。

Equatorial Upwelling Enhances Nitrogen Fixation in the Atlantic Ocean
Ajit Subramaniam, Claire Mahaffey, William Johns, Natalie Mahowald
これまで栄養に富んだ表層水は窒素固定を抑制すると考えられてきた。東赤道大西洋で湧昇と窒素固定の関係を評価したところ、湧昇時に通常時の2〜7倍もの窒素固定が起きていることが確認された。

Anthropogenic Impact on Agulhas Leakage
Arne Biastoch, Claus W. Böning
近年南半球の風の場が変化したことでAgulhas leakageが増加し、大西洋により塩分の濃い海水が流入していることが示されている。モデルを用いて風の場の変化がもたらす影響を評価したところ、「偏西風が7%増加し、軸が2°極側にシフトすることで、現在の流量(4.5Sv)の3分の1ほどの変化が起きる可能性」が示された。ただしAMOCへの影響は小さいらしい。

Triggering of El Niño Onset Through Trade-wind Induced Charging of the Equatorial Pacific
Bruce T. Anderson, Renellys C. Perez, Alicia Karspeck
観測からENSOのメカニズムを推定。熱容量の増加が北大西洋に海面高度の偏差をもたらし、貿易風に影響するという仮説を提唱。モデルでも整合的な結果が得られた。

○JGR-Oceans
On the response of Southern Hemisphere subpolar 1 gyres to climate change in coupled climate models
Zhaomin Wang
CMIP3と5のモデルを用いて21世紀の南半球の亜寒帯流(subporlar gyre)がどのように変化するかを評価。すべてのモデルで偏西風が強化されることが予想されたが、渦の変化は食い違いが見られた。特に南極周回流地域の渦によって駆動される循環を表現することが難しい。現行のモデルでは再現は難しいかもしれない。

Water Column Iron Dynamics in the Subarctic North Pacific Ocean and the Bering Sea
Ren Uchida, Kenshi Kuma, Aya Omata, Satoko Ishikawa, Nanako Hioki, Hiromichi Ueno, Yutaka Isoda, Keiichiro Sakaoka, Yoshihiko Kamei, Shohgo Takagi
47ºN線に沿って北太平洋のFeの水柱分布を調査。西部の深層で溶存Fe濃度が高く、人為起源の鉄が大気と水平輸送でもたらされた結果と考えられる。ベーリング海では中層水(1.5 - 2.25 km)に濃度の極大が見られ、生物生産で生じた有機物が活発に中層で分解されていることが原因と考えられる。また大陸棚の堆積物からもかなりFeが供給されているかも?

Sea level and heat content changes in the western North Pacific
Jae-Hong Moon, Y. Tony Song
1993-2010年にかけて、西太平洋北部(東シナ海や日本沿岸を含む)の海水準は年間5mmの速度で上昇していることが海面高度観測から分かっている(全球平均の1.5倍)。複数の観測データ(熱・重力・海洋物理など)を組み合わせて、モデルでうまく再現することができた。北東貿易風の強化に伴って熱と水塊の分布が変化していることが過去20年間の変化の原因と考えられる。

Increased CO2 outgassing in February-May 2010 in the tropical Atlantic following the 2009 Pacific El Niño
Nathalie Lefèvre, Guy Caniaux, Serge Janicot, Abdou Karim Gueye
2010年春に赤道大西洋でfCO2の大きな増加が確認された。表層水温が上昇し、ITCZがより北に変化し、降水量の変化に伴い塩分が減少したことが原因と考えられ、2009年の太平洋のエルニーニョ強く影響したと考えられる。またNAOの寄与は小さいが、AMOも大きく寄与していたと考えられる。

○Paleoceanography
Late Quaternary climatic and oceanographic changes in the Northeast Pacific as recorded by dinoflagellate cysts from Guaymas Basin, Gulf of California (Mexico)
Andrea M. Price, Kenneth N. Mertens, Vera Pospelova, Thomas F. Pedersen, Raja S. Ganeshram
カリフォルニア湾から採取された堆積物コア中のdinoflagellate cystから過去30kaの生物生産を復元。YDには暖かい環境を好む種が確認された。

Seasonal patterns of shell flux, δ18O and δ13C of small and large N. pachyderma(s) and G. bulloides in the subpolar North Atlantic
Lukas Jonkers, Steven Heuven, Rainer Zahn, Frank J.C. Peeters
北大西洋のセジメント・トラップから、N. pacydermaG. bulloidesのδ18O・δ13Cの差の原因を考察。深度よりはむしろ成長する季節が大きく影響しているかも。δ13CはDICのδ13C変動とも差が見られるため、温度(代謝)も大きく影響していると考えられる。

○Climate of the Past
Greenland ice sheet contribution to sea level rise during the last interglacial period: a modelling study driven and constrained by ice core data
A. Quiquet, C. Ritz, H. J. Punge, and D. Salas y Mélia
氷床モデルを用いて最終間氷期の温暖期のグリーンランド氷床の応答を調査。グリーンランド氷床はあまり融けておらず、0.7 - 1.5 m程度の寄与であったと考えられる。従って、南極氷床がもっと融解していたということになる。

A new global reconstruction of temperature changes at the Last Glacial Maximum
J. D. Annan and J. C. Hargreaves
MARGOなどを初めとする間接指標に基づいたLGMの全球の表層温度推定と、PMIP2のモデル予測結果とを比較。全球平均気温は「4.0 ± 0.8 ℃」低かったと考えられる。

○Biogeosciences
Glacial-interglacial variability in ocean oxygen and phosphorus in a global biogeochemical model
V Palastanga, C. P. Slomp, and C. Heinze
生物地球化学モデルを用いて、LGMに大陸棚から海へ供給された粒子状有機物が生物地球化学に与えた影響を評価。間氷期と比べて氷期にはリンの埋没量が増加し、深層の酸素濃度は低下する傾向が見られた。ただし酸素濃度の低下は堆積物のリンのサイクルに影響を及ぼすほどのものではなかったと考えられる。