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2012年6月23日土曜日

新着論文(Science#6088)

Science
VOL 336, ISSUE 6088, PAGES 1473-1608 (22 June 2012)

News of the week
Legislating Sea Level Rise
海水準上昇を法規制する

ノースカロライナの議会は、「海水準上昇が直線的に増加する」ことを仮定して将来の変動予測をすることをNorth Carolina’s Coastal Resources Commissionに要求する法案を通した。海水準が直線的に増加するかどうかは分からず、指数関数的に上昇した場合、海水準上昇の脅威を低く評価してしまう可能性がある。モデルシミュレーションによると前者で0.2m、後者で1mの上昇が予測されている。

Australia Creates World’s Largest Network of Marine Reserves
オーストラリアが世界で最も大きな海洋保護のネットワクークを創設する

オーストラリアの海洋保護区は現在の4倍の3100万km2に増加する。しかし3分の1は漁業や天然ガス・石油開発が禁じられるが、残りの3分の2は様々な用途に用いられることになる。漁業可能な区域が狭まるとして、漁業組合からの批判も。

Stem Cell Hope for Vision, Brain 
視覚、脳に有望な幹細胞  
理研が新たに開発した幹細胞は、加齢によってできた網膜の黄斑の治療に有効な網膜細胞へと作り替えることができそうらしい。また Stem Cells Inc. が人間の幹細胞から作成した脳の神経細胞をPMD(Pelizaeus-Merzbacher disease)と呼ばれる致死性の難病の乳児に移植したところ、 病気を改善する効果が得られたらしい。  

Letter Details Einstein’s Post-War Passion
手紙がアインシュタインの戦後の情熱を明らかにする
Jewish Telegraphic Agency(ユダヤ通信機関?)が古文書の掃除をしていたところ、1947年1月20日のアインシュタインとJTAの創設者であるJacob Landauの間でやり取りされた書簡が出てきた。その中でアインシュタインは「戦争研究に対する科学の役割」という当時非常にホットなトピックに触れていた。書簡はオークションで34,375ドルの値がついたらしい。
軍事に非協力であることが基礎科学を研究している研究者の慣例となっているが、新しい発見を隠匿することは科学を害することに繋がる
News & Analysis
NASA's New X-ray Satellite Packs Compact Power
NASAの新しいX線人工衛星はあらゆる力が詰め込まれている
Yudhijit Bhattacharjee
先週NASAが打ち上げたX線天体望遠鏡(NuSTAR)はブラックホール近傍で周回する物質に何が起こるか?などの諸問題に対する答えを導きそうである。

News Focus
Hang On! Curiosity Is Plunging Onto Mars
頑張れ!Curiosityが火星に降り立とうとしている
Richard A. Kerr
今年8月に火星探査機「Curiosity」が火星に降り立つが、このミッションの成功・失敗はNASAの今後の火星探査の生死を分けることとなる。

Could a Whiff of Methane Revive The Exploration of Mars?
メタンのわずかな香りが火星探査を蘇らせるか?
Richard A. Kerr
火星にメタンが存在することを地上探査機が証明できれば、火星の生命存在の大きな証拠になり得る。

Letters
An Eye Toward Iodine in China
ヨウ素へ中国人の目が向く

昔から中国の内陸部の村落ではヨウ素欠乏(土壌にそもそもヨウ素が欠乏しており、作物などからも摂取できない)による子供の身体成長阻害が顕著であった。最近になってヨウ素の重要性が理解され始めた。アメリカと中国の研究チームが一丸となって妊婦にヨウ素サプリメントを投与しているらしい。

Perspectives
Biotic Multipliers of Climate Change
気候変動の生物的な増幅器
Phoebe L. Zarnetske, David K. Skelly, and Mark C. Urban
種間の相互作用に着目することで、気候変動っが生態系に与える影響の予測精度を改善できるかもしれない。

Carbon from Tropical Deforestation
熱帯の森林破壊起源の炭素
Daniel J. Zarin
森林破壊による炭素放出の見積もり量は大きく異なっている。

Reports
Baseline Map of Carbon Emissions from Deforestation in Tropical Regions
Nancy L. Harris, Sandra Brown, Stephen C. Hagen, Sassan S. Saatchi, Silvia Petrova, William Salas, Matthew C. Hansen, Peter V. Potapov, and Alexander Lotsch
人工衛星による観測データを用いて、2000年から2005年にかけて熱帯雨林の破壊に伴う炭素放出は年間およそ0.8PgC(0.57-1.22, 90%信頼区間)であることが分かった。この値は最近報告された値の25-50%ほどらしい。