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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年6月3日日曜日

新着論文(Science#6085)

Science
VOL 336, ISSUE 6085, PAGES 1069-1196 (1 June 2012)

Editor's Choice
ECOLOGY: The Power of Pollination 
生態学:受粉の力
Ecology 93, 1036 (2012).
気候変動によって物理条件(気温、降水など)が変化し、それに対して生態がどう適応するかには注意が払われているが、共生関係などがどう変化するかはよく分かっていない。カリフォルニアの固有植物(Clarkia xantiana)に対して4年間に渡って実験をしたところ、受粉を行う昆虫が変化することで、受粉能力が低下し、再生産が行いにくくなることが分かった。昆虫自身気候変動によって(特にこの場合は降水に)影響されているが、間接効果として気候変動を考える上で重要な知見が得られた。

PHYSIOLOGY: Working on Borrowed Time
生理学:借りた時間で働く
Curr Biol. 22, 10.1016/j.cub.2012.03.038 (2012).
近年の労働時間の増加、インターネット/テレビ/ソーシャルネットの普及により、我々の生活リズムは人間本来の体内時計から狂ってきている。ヨーロッパの若者を対象にしたアンケートから、2時間ほど遅れた生活を送っており、それがBMIとも相関している(つまり肥満になりやすい)ことが分かった。夜間の活動が多い、外で日光に浴びないことは糖の代謝に密接な関係があり、それが肥満を誘発するようだ。

Around the World
French GM Concerns Dismissed—Again
フランスの遺伝子組み換えに関する関心が再び棄却される

最新の遺伝子組み換え作物栽培に対するフランスの反対が、ヨーロッパの食品安全局(European Food Safety Authority )によって再び棄却された。フランス側は対象とする昆虫以外や土壌への影響、さらに人間健康に対する影響があるとしている。EFSAは1998年にMON810と呼ばれる遺伝子(トウモロコシを補食する虫を防ぐ)の使用を認めていたが、フランスはMON810の国内使用を2008年に禁止にしている。

Senate Committee Wants to Sink Military’s Biofuels Program
アメリカの議会は軍のバイオ燃料使用プログラムを沈めたいらしい

防衛省はエネルギー資源の調達先を多角化するためにバイオ燃料を50%従来の化石燃料に混ぜる、新たなバイオ燃料精製用の工場を建設するなどのプログラムを進めていたが、議会は予算の関係からそれらの計画を棄却した。

Test Crop Survives Protest
試験作物が抗議に耐える

イギリスにおいて、小麦の遺伝子組み換えの試験生産に対する抗議運動が起こった。警察の協力で抗議運動は平和に終わったが、一方でインターネット上では試験を行う研究機関のウェブサイトが落ちる騒ぎとなった。

Random sample
Hitchhikers From the Deep
深海からのヒッチハイカー
通常深海に生きる生物は圧力差があまりに大きいことから表層では生きられないと考えられていた。しかし、深海の熱水付近に住む巻貝の一種はフランスの潜水艇Alvinに乗ってはるか2,200mから表層まで運ばれ、その後635km運ばれたのちも生きていたらしい。同位体分析から由来が分かったようだ。

Bivalve Digging Inspires ‘RoboClams’
二枚貝の穴掘りが「ロボットの貝」のアイデアを生む

カミソリガイは1cm/sという驚くべき早さで砂に潜ることができるが、MITの研究グループはその潜り方を詳細に観察し、メカニズムを解明することで、穴に素早く潜るロボットの試作機を開発した。将来は錨への応用などが考えられているらしい。

No New Neurons in Adult Olfactory Area
成人の嗅覚野には新たなニューロンはない

成人の神経組織においてニューロンは生成されないというのが長く常識になっていたが、記憶野ではそれが起こることが1990年代に分かった。放射性炭素のボムピーク(1960年に明瞭なピークがある)を利用することで検死体の脳の神経細胞の年代測定を行ったところ、嗅覚野のニューロン(他の動物では活発に生成されているらしい)はすべて同じ年代(それらが取り出された年)を示した。

Findings
Tippy-Top Target for Next Mars Rover
次の火星探査機の不安定な頂上を持った標的

次の火星探査機が8月6日に火星に着陸するが、その第一候補の調査対称はGaleクレーターの中心に位置する高さ5kmの謎の高まりである。地質学者の中にはそれは古代の火星(38億年ほど前?)において噴火した火山ではないかと考えている人がいる。

News and Analysis
ARCHAEOLOGY: Early Dates for Artistic Europeans
考古学:芸術的なヨーロッパ人の始まり
Michael Balter
ドイツ南西部で発見された壁画の放射性炭素年代から、初期の人類の芸術行動はアフリカというよりもむしろヨーロッパで発現したことが示唆される。

News Focus
Mysteries of Astronomy
天文学の謎
Robert Coontz
近いうちに解ける謎ではなく、簡単な説明では記述できそうのない謎を8つまとめてみたそうだ。

1、What Is Dark Energy?
ダークエナジーとは何か?
Adrian Cho
2、How Hot Is Dark Matter?
ダークマターはどれほど熱いのか?
Adrian Cho
3、Where Are the Missing Baryons?
失われたバリオンはどこにあるのか?
Yudhijit Bhattacharjee
4、How Do Stars Explode?
どのようにして星は爆発するのか?
Yudhijit Bhattacharjee
5、What Reionized the Universe?
何が宇宙を再びイオン化させたのか?
Edwin Cartlidge
6、What's the Source of the Most Energetic Cosmic Rays?
最もエネルギーの大きな宇宙線の由来は何か?
Daniel Clery
7、Why Is the Solar System So Bizarre?
何故太陽系はこんなにも変わっているのか?
Richard A. Kerr
8、Why Is the Sun's Corona So Hot?
何故太陽のコロナはこれほど熱いのか?
Richard A. Kerr

Letters
Biosecurity on Thin Ice in Antarctica
南極の薄い氷の上での生物保全
Philip E. Hulme, Petr Pyšek, and Marten Winter
南極を訪れる人の数は10倍にまで膨れ上がり、南極固有の生態系が侵されつつある。調査によると、観光客よりも科学者の訪問の方が一人当たりのリスクは大きいらしい。南極の生態系を保護するための機関を設立し、訪問者から徴税することが第一のステップになると考えられ、イニシアチブはニュージーランドやオーストラリアがとるべきだろう。

Perspectives
GEOCHEMISTRY: Tracking the Fukushima Radionuclides
地球化学:福島の放射性元素を追う
Naohiro Yoshida and Jota Kanda
福島第一原発から放出された放射性元素をモニタリングする試みに関して。

GEOLOGY: Understanding Sediments—Reducing Tsunami Risk
地質学:堆積物を理解する、津波のリスクを減らす
Robert Weiss and Joanne Bourgeois
津波堆積物の堆積と浸食のプロセスの理解が津波のリスク低減に繋がる。

GEOPHYSICS: A Rogue Earthquake Off Sumatra
地球物理学:スマトラ沖地震のゴロツキ
Jeffrey J. McGuire and Gregory C. Beroza
海洋地殻内部で起きたスマトラ沖地震(M8.6)のメカニズムは地震物理学の基礎に対する疑問を投げかけている。

ASTRONOMY: Evidence of Things Not Seen
天文学:見えないものの証拠
Norman W. Murray
ケプラー宇宙望遠鏡は遠くの星の周りをまわっている見えない惑星の質量や周期を見ることができる。

Reports
The Detection and Characterization of a Nontransiting Planet by Transit Timing Variations
David Nesvorný, David M. Kipping, Lars A. Buchhave, Gáspár Á. Bakos, Joel Hartman, and Allan R. Schmitt
ケプラー望遠鏡は系外惑星の恒星前の通過をモニタリングしている。3つの有力な星が発見された。特に3つ目の惑星は地球半径の1.7倍の半径を持ち、6.8日の周期で恒星の前を通過している。太陽系の最初の頃の惑星配置を想起させる?

Evolution of a Vertebrate Social Decision-Making Network
Lauren A. O’Connell and Hans A. Hofmann
脊椎動物の遺伝子解析から、適応行動に関する脳の部位は4億5千万年間そのままであることが分かった。どの遺伝子が保存されているかで、脊椎動物の社会的な行動を一部説明できるかもしれない。