Main contents

☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2012年6月23日土曜日

新着論文(PO)

Paleoceanography
12 May 2012 - 21 June 2012

Rapid switches in subpolar North Atlantic hydrography and climate during the Last Interglacial (MIS 5e)
Irvalı, N., U. S. Ninnemann, E. V. Galaasen, Y. Rosenthal, D. Kroon, D. W. Oppo, H. F. Kleiven, K. F. Darling, and C. Kissel
1つ前の間氷期(MIS5)は現在世の間氷期よりも温暖で、グリーンランド氷床が消失していたため、今後の温暖化世界の鑑になる可能性がある。堆積物から得られた有孔虫Mg/Ca-SSTやIRDなどを駆使してMIS5eの古環境を復元したところ、北大西洋の環境がグリーンランドの気候と密接に関係していることが分かった。MIS5eの直後(~125ka)に訪れる寒冷化と淡水化はおそらくEGC海流の変化によってもたらされ、グリーンランド氷床の融氷水の影響が原因として考えられる。

North Atlantic ventilation of “southern-sourced” deep water in the glacial ocean
Kwon, E. Y., M. P. Hain, D. M. Sigman, E. D. Galbraith, J. L. Sarmiento, and J. R. Toggweiler
氷期にCO2濃度が100ppm低かった原因として、北大西洋におけるCO2の取り込みの強化という説がある。しかしデータは北大西洋の深層水はd13Cが低く、14C/Cが低い(古い)ことを示していることから、これらの深層水はNADW(比較的新しい深層水であるため)ではなく、南大洋が起源と考えられている。モデルを用いた感度実験から、AABWの形成が妨げられ、それが子午面循環を弱化させたことで、相対的にNADWによるCO2取り込みが強化され表層とのコンタクトを絶ったまま南大洋をはじめとする世界の海の深層へ広がったことがCO2低下に寄与した可能性が示された。データとも食い違わない説である。

Campanian-Maastrichtian intermediate- to deep-water changes in the high latitudes: Benthic foraminiferal evidence
Koch, M. C., and O. Friedrich
大西洋の堆積物コア(65ºS付近)の底性有孔虫のd18Oから白亜紀後期(Campanian-Maastrichtian)の中層・深層水の変化を復元。CMBEと呼ばれる寒冷化は海洋循環の変化によって引き起こされたかも?

A precise search for drastic temperature shifts of the past 40,000 years in southeastern Europe
Ménot, G., and E. Bard
黒海から得られた堆積物コアのTEX86を用いて過去40,000年間のSSTを復元。想像以上に氷期の黒海の環境は安定していたが、H2とH3に2℃ほどの寒冷化が確認された。最終氷期の温暖化は10℃ほどで、ヨーロッパの先行研究と整合的。YDの寒冷化は5-6℃ほどだった。DOイベントはほとんど確認されなかった。

Modeling evidences for global warming, Arctic seawater freshening, and sluggish oceanic circulation during the Early Toarcian anoxic event
Dera, G., and Y. Donnadieu
ジュラ紀初期のTortianのOAEは海洋無酸素、海水準上昇、海洋酸性化、炭酸塩生成危機、大量絶滅を伴っており、強烈な地球温暖化によってもたらされた可能性が高い。モデルシミュレーションでpCO2を上昇させることで、OAEなどが再現できるかを検証。北極海の海氷が融解したことで、深層水形成が滞り、OAEへと繋がった。北極海の栄養塩に富んだ表層水がViking Corriderを通してテチス海に流れ込み、一次生産を強化したことで、テチス海低層のOAEがさらに進行した?

Ostracode Mg/Ca paleothermometry in the North Atlantic and Arctic oceans: Evaluation of a carbonate ion effect
Farmer, J. R., T. M. Cronin, and G. S. Dwyer
深層水の温度を復元するために底性有孔虫や貝形虫の殻のMg/Caが使われるが、この手法は深層水の炭酸イオン濃度にも影響されてしまうと考えられている。北大西洋と北極海の表層堆積物から得られた686個体の底性貝形虫のMg/Caと深層水の温度を比較することで、BWT-Mg/Ca関係式を作成。Kritheという種のMg/Caは炭酸イオン濃度との間に明瞭な相関は見られす、古水温推定に有望であることが分かった。