Main contents


☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年6月7日木曜日

新着論文(Nature#7401)

Nature
Volume 486 Number 7401 pp5-152 (7 June 2012)

Research Highlights
ANTHROPOLOGY: Rich milk for poor girls
人類学:貧しい娘に豊かなミルクを

Am. J. Phys. Anthropol. http:// dx.doi.org/10.1002/ajpa.22092 (2012)
83人のケニアの母親の調査から、貧しい母親は息子に授乳する時より娘に授乳する時の方が脂肪に富んだ母乳を出しているらしい。将来結婚によって貧困から抜け出せる可能性があるため?一方で裕福な母親は息子により脂肪に富んだ母乳を飲ませるらしい。将来複数の妻を持つ可能性が高いため?

GLACIOLOGY:Greenland glacier map
氷河学:グリーンランド氷河の地図

Geophys. Res. Lett. http://dx.doi. org/10.1029/2012GL051634 (2012)
2008-2009年の「国際極の年」の際に、衛星観測によってほぼ完璧なグリーンランド氷床の地図が描かれた。レーダー観測も組み合わせることで、より厳密な観測を行ったところ、グリーンランド氷床の流速が地域ごとに大きく異なることが分かった(年間に数cm〜13km)。主に降水量がコントロールしているらしい。

Seven Days
Golden age of gas 
ガスの黄金期
2035年には天然ガスの消費量が石炭を上回ることが予測されているが、より炭素放出量の少ないエネルギー源への転換だけは温暖化を2℃以内に食い止めることはできない。

Venus crosses the Sun 
金星の太陽面通過
生涯に一度しかない金星の太陽面通過に科学者だけでなく世界中の人々が魅了された。この現象を通して、これまでVenus Expressによってしか直接観測されていない金星大気の組成や、系外惑星の大気組成の推定に対する新たな知見が得られるだろう。

NOAA funding row 
NOAAの財政法
5/24に行われた調査によって、財政における不正が暴かれた。

Dragon returns
ドラゴンの帰還
民間のロケットによるISSへの物資輸送というミッションを負ったドラゴンは無事仕事を終え、太平洋に着水した。NASAによる打ち上げは1回に16億ドル使うのに対し、ドラゴンをはじめとする民間プロジェクトでは1億ドル程度で済む。

News in Focus
Japan considers nuclear-free future
日本が原子力発電からの脱却を考えている
二酸化炭素排出目標を達成するためにも、再生エネルギーへの大きな転換が迫られている。

Features
Return to Rio: Second chance for the planet
リオに戻る:地球のための2度目のチャンス

20年前に行われたリオデジャネイロ・サミットでは人為的な気候変動を押さえることは簡単なことだと思われていたが、当時370ppmしかなかった大気中のCO2濃度は今や400ppmに達し、今なお上がり続けている。また次々と生物が絶滅している。

Earth summit: Rio report card
地球サミット:リオデジャネイロの報告カード
20年前に決められた気候変動を防ぎ、生物を保全するための約束事はほとんど守られないまま20年が過ぎた。今や世界は先進国と途上国に二分され、議論が前に進まない状態にある。何をどう良くするか、についての議論が今月末行われる(Rio+20)

Comments
Lead by example 
先陣を切る
Rio+20の開催国として、ブラジルは先陣をきらなければならない。国内のダム建設反対問題など。

The corporate climate overhaul
気候を修復するための協力
「地球を守るためにはビジネスのルールを変える必要がある」とPavan Sukhdevは言う。

Correspondence
Value of submerged early human sites
初期の人類の海に沈んだ遺跡の価値 

Nicholas Flemming, Geoffrey N. Bailey & Dimitris Sakellariou
海に沈んだ遺跡は大きな価値がある。場合によっては陸よりも食料の遺物、野菜、骨などが良い状態で保存され、DNAを抽出することだってできる。さらにそれらの遺跡は現在の大陸棚に位置する場合が多く、後背地の味気ない遺跡に比べて交易などという点でも古代人を魅了していた場所でもある。「海底考古学」が現代の海洋調査技術に支えられて発展しつつある。

Two faces of marine ecology research
海の生態調査の二面性

Juerg Brunnschweiler
科学者は今や海洋生物(マグロ、サメ、カメ)などの回遊を3次元で追うことができる。それにより生物多様性が豊かな海域が明らかになり、保全と乱獲という2面性へと繋がってしまっている。

News & Views
Biodiversity: Remote responsibility
生物多様性:原因は離れたところに
世界的な商品供給網と消費パターンが生物多様性に及ぼす影響についてのモデル解析から、絶滅危惧動物種の絶滅の30%を引き起こした原因は国際貿易であることが、明らかになった。

Geochemistry: A dash of deep nebula on the rocks
地球化学:岩の上に残ったひとはけの星雲
アイスランドの岩から得られた希ガス同位体混合物は、上部マントルはこれまで、また現在でも、より深部のマントル供給源から気体を供給されたことがないことを示唆している。これは、地球深部の挙動と形成についての考えに難問を投げかけるものだ。

Reviews
Approaching a state shift in Earth’s biosphere
地球の生物圏に迫りくる状態シフト
Anthony D. Barnosky et al.
ローカルな生態系は閾値を超えると別の状態にシフトすることが知られているが、こうした現象は全球的にも同じように起こる可能性があり、人類の影響によって地球規模のシフトが迫りつつあることを示す証拠について再検討する。早期に兆候を見つけ出しメカニズムを理解するだけでなく、その根本的な問題の解決に取り組むことも大切である。

Biodiversity loss and its impact on humanity
生物多様性の減少とそれが人類に及ぼす影響
Bradley J. Cardinale et al.
地球のきわめて独特な特徴は生物の存在であり、生物の顕著な特徴はその多様性である。地球上に生息する植物、動物、原生生物、および菌類は、約900万種類に上る。そして70億人の人類も地球上で生活している。20年前に初めて開かれた地球サミットで、世界の国々の大多数が、人類の活動が地球の生態系を破壊しつつあり、遺伝子、種、および生物学的形質をすさまじい速度で消失させていることを言明した。そうした事情のもと、「生物多様性の減少が、生態系そのものの機能や人類の繁栄に必要な物品やサービスを社会に提供する能力をどう変化させてしまうのか」という疑問が生まれた。

Securing natural capital and expanding equity to rescale civilization
文明の規模縮小のための自然資本の確保と公平性の拡大
Paul R. Ehrlich, Peter M. Kareiva & Gretchen C. Daily
生物物理学の観点からすると、人類が現在ほど持続可能性から急速に遠のいていることはこれまでなかった。人口規模や1人当たりの環境に与える影響が増大していることから、我々人類の最も基本的な要求に地球がどれだけ応えられるかが厳しく試されている。このような状況に対する認識が非常に高まるとともに、この状況に対処するための努力もきわめて精巧になっている。しかし、この難題の複雑さは解決の見通しを今なお暗いものにしている。我々は、持続可能な発展の3つの重要領域、すなわち、持続可能な人口規模の達成と不可欠な自然資本の確保(どちらにも不公平の緩和が一部関与する)、および大学・研究機関による社会的リーダーシップの強化における変革の可能性を探究した。

Letters
Ultraviolet-radiation-induced methane emissions from meteorites and the Martian atmosphere
Frank Keppler, Ivan Vigano, Andy McLeod, Ulrich Ott ,Marion Früchtl & Thomas Röckmann
火星の隕石に火星の表面における状態下で紫外線を照射することでメタンが発生することが分かった。火星の大気にメタンが多いことの大部分を説明できるかも?

Late Miocene decoupling of oceanic warmth and atmospheric carbon dioxide forcing
Jonathan P. LaRiviere,A. Christina Ravelo, Allison Crimmins, Petra S. Dekens, Heather L. Ford, Mitch Lyle & Michael W. Wara
Miocene後期はCO2濃度が低いにも関わらず北半球に氷床がなく、温暖な状態が維持されていた。新たに得られた北太平洋中緯度域と北西太平洋の堆積物コアから同時期の温度と温度躍層の深度を復元。1300万年前から温度躍層が浅くなっており、温度躍層の浅化や水蒸気フィードバックなどによって温暖な地球を説明できるかも?

Early differentiation and volatile accretion recorded in deep-mantle neon and xenon
Sujoy Mukhopadhyay
アイスランドの海洋島玄武岩(OIB)の希ガスの同位体測定から、地球マントルは少なくとも2つの別個の供給源から揮発性物質を集積しており、ジャイアントインパクトや4.45 Gyrにわたるマントル対流のどちらもが、地球の不均一な集積と初期の分化の痕跡を消し去らなかったことが分かった。

A global synthesis reveals biodiversity loss as a major driver of ecosystem change
David U. Hooper, E. Carol Adair, Bradley J. Cardinale, Jarrett E. K. Byrnes, Bruce A. Hungate, Kristin L. Matulich, Andrew Gonzalez, J. Emmett Duffy, Lars Gamfeldt & Mary I. O’Connor
公表されているデータの一連のメタ解析を行うことで、局所的な種消失が生態系にもたらす影響が、全球規模の環境変動要因(CO2濃度上昇、栄養塩汚染など)による直接的影響と同程度に大きいことが分かった。

International trade drives biodiversity threats in developing nations
M. Lenzen, D. Moran, K. Kanemoto, B. Foran, L. Lobefaro & A. Geschke
人類の活動は、地球史上6番目の大量絶滅事象を引き起こしつつあり、世界の生物多様性が人類出現以前の100~1,000倍の速度で加速度的に失われている。グローバル化が進む現代の経済では、国際貿易網が、消費地から遠く離れた場所にある生息地の崩壊を加速している。世界の生物種が直面している絶滅の脅威の30%が国際貿易によるものであることがわかった。輸入されるコーヒー、茶、砂糖、織物、魚介類、およびそのほかの製品の消費が生物多様性への影響の原因となっている。