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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2012年6月15日金曜日

新着論文(Nature#7402)

Nature
Volume 486 Number 7402 pp157-286 (14 June 2012)

World View
Researchers can’t regulate climate engineering alone
研究者だけでは気候工学を規制できない
「気候変動を打ち消すための気候工学に影響するのは研究者や発明家ではなく、政治家の関心である。」とJason Blackstockは言う。
GEOENGINEERING WILL ALTER THE GEOPOLITICS OF CLIMATE CHANGE AND THIS CANNOT BE IGNORED.
地球工学は気候変動に対する地政学を変え、そしてこれは為政者によって無視され得ない

Research Highlights
Synthetic silk inspired by insect 
昆虫に発想を得た無機的なシルク
Angew. Chem. Int. Edn. http://dx.doi.org/10.1002/ anie.201200591 (2012)
クサカゲロウのメスは卵を保護するために絹状の繊維を作ることが知られている。クサカゲロウから同定した遺伝子を大腸菌に植え付けることで、絹状の繊維を再現することができた。本物よりやや湿っぽく、弾力性があるらしい。

Weighing extinct animals 
絶滅した動物の体重を測定する
Biol. Lett. http://dx.doi.org/10.1098/rsbl.2012.0263 (2012)
生物の骨格から質量を求めるのには、従来体積と密度を仮定して質量を求める方法が取られてきた。しかし現存する複数のほ乳類に対してレーザースキャンを用いて骨格と質量の関係を求めてみたところ、従来の方法では20%ほど体重を軽く見積もっていることが分かった。新しい方法でブラキオサウルスの体重を見積もったところ、23.2トンという推定値が得られた。

Ship GPS could flag tsunamis 
船のGPSが津波の到達を合図できるかもしれない
Geophys. Res. Lett. http://dx.doi. org/10.1029/2012GL051367 (2012)
2010年のチリ沖地震の際に発生した津波をハワイ大の観測船のGPSが偶然捉えていたらしい。海面高度の10cmほどの上昇が捉えられており、将来の津波警報の精度向上に繋がる可能性がある。ただし1000隻ほどの船のデータを集約する必要があると筆者らは考えているらしい。

Comment
Uncertainty: Climate models at their limit?
不確実性:気候モデルは限界に来ている?
「気候モデルを用いた将来予測の不確実性はこれ以上良くなるというよりも寧ろ悪くなるかもしれない。」と Mark MaslinとPatrick Austin は言う。 

Sanitation for all
皆のための下水設備
インドにおいては下水による汚染が大問題となっている。インド政府はゴミ処理とトイレの設備を整えなければならない。

News & Views
Microbiology: Learning about who we are
微生物学:我々は何者なのかを知る

David A. Relman
我々の体に定住している微生物の数は、体を構成する細胞の数のほぼ10倍程度という圧倒的な多さである。このような常在菌について、集中的な研究が行われるようになってきており、健康な、また病気の状態でのその役割の解明が始まりつつある。

Letters
Possible tropical lakes on Titan from observations of dark terrain
Caitlin A. Griffith, Juan M. Lora, Jake Turner, Paulo F. Penteado, Robert H. Brown, Martin G. Tomasko, Lyn Doose & Charles
土星の衛星であるタイタンには地球と同じように雲や雨、湖があるが、その成分は水ではなくメタンである。北緯20度から南緯20度の間にある地域の近赤外スペクトル画像の分析から、表面に液体のメタンが存在することが分かった。地下から供給されている可能性が高い。

A signature of cosmic-ray increase in AD 774–775 from tree rings in Japan
Fusa Miyake, Kentaro Nagaya, Kimiaki Masuda & Toshio Nakamura
木の年輪中での 14 Cの増加は、氷床コア中の 10 Beや硝酸塩の増加と同様に宇宙線事象に起因する可能性がある。日本の杉について、西暦750~820年までの年輪中の 14 Cを1年および2年の分解能で測定したところ、西暦774~775年までに 14 C含有量が約12 ‰も急増したことがわかった。この現象は通常の太陽変調による変化の約20倍であるが、太陽フレアや超新星爆発の影響ではなさそうである。