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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2012年6月10日日曜日

新着論文(Ngeo#June 2012)

Nature Geoscience
June 2012, Volume 5 No 6 pp365-432

Editorial
Flip sides of exploration
探検の裏面

1930年代にデンマーク人によって撮影された写真によって、過去のグリーンランド氷床の姿が明らかになった。地政学と科学的な野心の両方が探検を駆り立てたようだ。

In the press
Heat, floods and special reports
熱波、洪水、特別報告
Alexandra Witze
近年頻発する異常気象。IPCCでも異常気象を取り上げるだけでなく、それに対する適応の提案も行われている。3月に出された報告書(IPCC Special Report Managing the Risks of Extreme Events and Disasters to Advance Climate Change Adaptation; Cambridge Univ. Press, 2012)では、熱波と洪水のような人為起源の気候変動の可能性が高いものもあれば、巨大台風のように簡単に人為的な影響と結びつけにくいものもあることが指摘されている。メカニズムは簡単には解明できないが、こうした異常気象に対処するためにも、地域レベルで適したモニタリングを正しい場所・時間・人々に対し行うことが重要である。

Research Highlights
ATMOSPHERIC SCIENCE: Low-level clouds 
大気科学:低層雲
Geophys. Res. Lett. http://doi.org/hwk (2012)
北極海の低層雲の高度が変化している。雲底が500mよりも低いものが30%減少し、逆に高いものが20%増加しているらしい。北極海では海氷の隙間を通して大気と海の熱のやり取りが行われるが、近年の海氷減少が雲底の高さに影響している可能性がある。

PALAEOCEANOGRAPHY: North to south
古海洋学:北から南へ
Paleoceanography http://doi.org/hwm (2012)
氷期にCO2濃度を100ppm低下させた原因として大西洋における深層水の沈み込みが着目されている。海洋循環モデルから、氷期の深層水は現在と同じく南大洋を起源とした深層水であるものの、北大西洋を起源とする深層水もかなりの割合で含まれている可能性が示唆された。

TECTONICS: Slippery fractures
テクトニクス:滑りやすい構造
Earth Planet. Sci. Lett. 331–332, 164–176 (2012)
海洋プレートの沈み込み帯では海水が潤滑油の役目を果たして摩擦を低減させることで、巨大地震を引き起こすような応力の蓄積を防いでいると考えられている。南部〜中部のチリの沈み込み帯の滑っている部分を特定したところ、水によって大きく変質を受けていることが分かった。少なくともこの地域では応力の蓄積を防ぐ役割を持っていそう。

Planetary science: Smoothed by dust
惑星科学:塵によって滑らかにされる
Icarus http://doi.org/hwn (2012)
土星の衛星の1つである「Atlas」の地表面をカッシーニの観測データから解析したところ、表面が非常に滑らかであることが分かった。表面には隕石孔もほとんど見られず、表面を吹きすさぶ砂嵐が表面を研磨している可能性が高い。

News and Views
Glaciology: Repeat warming in Greenland
氷河学:グリーンランドにおいて繰り返していた温暖化
Benjamin E. Smith
眠っていた写真から復元されたグリーンランド氷床の縁辺部は温暖化によってかなり後退していたことが分かった。特に南東部は1930年に過去最大の温暖化を経験したらしい。

Cryospheric science: Vulnerable ice in the Weddell Sea
雪氷圏科学:ウェッデル海の脆弱な氷
Angelika Humbert
西南極の棚氷の安定性に関して注目が集まっている。モデルシミュレーションと詳細な観測から、もうまもなく不安定化する可能性が指摘された。

Earthquakes: Casting stress shadows
地震:応力の影に光を当てる
Andrew M. Freed
地震は近くの断層の地震によって影響されたり逆に他の断層の地震を引き起こしたりするが、その関係を評価することは難しい。カリフォルニアのLanders地震の観測がその関係を評価するカギになるかも。

Climate science: Methane uncovered 
覆われていないメタン
Giuseppe Etiope
天然のガス放出場はこれまでかなり見過ごされてきた。雪氷圏における有機物分解由来のメタン放出場が発見されたことで、全球の温室効果ガスの収支に大きく影響する可能性がある。

Eocene climate: Summer rains
始新世の気候:夏の雨
Alicia Newton
現在北半球の66º以北ではほとんど植生は見られず、針葉樹があるのみだが、Eoceneの温暖期には現在の温帯に見られるような植生が分布していたと考えられる。環境的には東アジアの植生が一番似ているらしい。化石化した木の年輪に沿ってd13Cを測定し降水量の指標としたところ、夏は冬の3倍の降水があったことが示唆される。緯度が高いので日射量が夏に限定されることで、植物の成長も夏に限定的だった?

Letters
Model estimates of sea-level change due to anthropogenic impacts on terrestrial water storage
Yadu N. Pokhrel, Naota Hanasaki, Pat J-F. Yeh, Tomohito J. Yamada, Shinjiro Kanae & Taikan Oki
海水準変動の要因は「熱膨張」「氷床・氷河融解」「陸水の変化」が考えられるが、3つ目の陸水の変化は人為的な影響が大きく評価が難しかった。モデルシミュレーションから、ダム建設や地下水の過剰利用、灌漑などの影響が、1961-2003年における海水準上昇の42%に寄与している可能性があることが示唆された。

Steep reverse bed slope at the grounding line of the Weddell Sea sector in West Antarctica
Neil Ross, Robert G. Bingham, Hugh F. J. Corr, Fausto Ferraccioli, Tom A. Jordan, Anne Le Brocq, David M. Rippin, Duncan Young, Donald D. Blankenship & Martin J. Siegert
西南極氷床の崩壊は全球の海水準を3mも上昇させるほどの影響力を持つ。西南極氷床のウェッデル海セクターの海底面のマッピングから、棚氷の縁辺部の背後すぐに大きな傾斜があり、その背後にはさらに平地が広がっていることが分かった。この地域の棚氷の安定性にこの地形効果が大きく効くことが予想され、棚氷の安定性は今がちょうど閾値にある可能性がある。

Regional atmospheric circulation shifts induced by a grand solar minimum
Celia Martin-Puertas, Katja Matthes, Achim Brauer, Raimund Muscheler, Felicitas Hansen, Christof Petrick, Ala Aldahan, Göran Possnert & Bas van Geel
完新世において数百年スケールの気候変動は「太陽」の変動によって支配されていたと考えられているが、太陽の変動はそれだけでは影響力が小さく、フォーシングに対する気候フィードバックを評価することが難しい。ドイツのMeerfelder湖の年縞堆積物から3.0 - 2.2kaの風力と10Be(太陽活動の指標と考えられている)を復元したところ、2759年に風力の低下と10Beの濃度上昇(太陽活動の低下)が同時に起きていたことが分かった。太陽活動の低下が大気循環を通して気候に影響を与えた証拠?

Tsunamigenic potential of the shallow subduction plate boundary inferred from slow seismic slip
Hiroko Sugioka, Taro Okamoto, Takeshi Nakamura, Yasushi Ishihara, Aki Ito, Koichiro Obana, Masataka Kinoshita, Kazuo Nakahigashi, Masanao Shinohara & Yoshio Fukao
プレート沈み込み帯の浅部は地震発生場にはならないと考えられてきたが、南海トラフの沈み込み帯の低周波地震の観測から、浅部でも滑りが起きており、津波を伴う地震が起きる可能性があることが分かった。

Articles
Geologic methane seeps along boundaries of Arctic permafrost thaw and melting glaciers
Katey M. Walter Anthony, Peter Anthony, Guido Grosse & Jeffrey Chanton
北極海周辺には1200PgCものメタンのリザーバー(大気中には5PgC)があるが、永久凍土や海氷がその大気放出を抑えている。メタンは強烈な温室効果ガスでもあるため、わずかな流出でも気候システムに大きな影響を与えるものとして注目されている。アラスカやグリーンランドで発見された放出場のメタンの14Cや同位体はこれらが非常に古く、地下で熱分解により生成されたメタンであることを示唆している。温暖化によってこうした古いメタンがより出やすくなる環境になると考えられる。

An aerial view of 80 years of climate-related glacier fluctuations in southeast Greenland
Anders A. Bjørk, Kurt H. Kjær, Niels J. Korsgaard, Shfaqat A. Khan, Kristian K. Kjeldsen, Camilla S. Andresen, Jason E. Box, Nicolaj K. Larsen & Svend Funder
1930年代初頭まで遡ることができる昔のグリーンランドの空中写真から特に南東部におけるグリーンランド氷河の縁辺の位置を復元。また近年の衛星観測記録とも併せて過去80年間のグリーンランド氷河の変動を議論。氷河は陸に流れ込むものと海に流れ込むものとあり、陸に流れ込む氷河は現在よりも寧ろ1930年代の方が後退が早く、一方で海に流れ込む氷河は現在が最も早く後退しているらしい。