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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年6月9日土曜日

新着論文(Science#6086)

Science
VOL 336, ISSUE 6086, PAGES 1197-1352 (8 June 2012)

Editors' Choice
Ocean Science:Acid Test
海洋科学:酸性化実験 
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 109, 10.1073/pnas.1117508109 (2012).
Biscay湾において1年間に渡って詳細に採取された円石藻(E. huxley)はこれまでの予想に反して、冬期のpHが下がる(飽和度が下がる)時期にむしろ殻を厚くしていることが分かった。必ずしも原因はpHだけではなさそうだが、従来の単純なモデルでは将来予測が難しいことが浮き彫りになった。

News of the Week
Drill Ship Nabs Fault Zone Cores
掘削船が断層帯のコアを引き抜いた

日本の掘削船「ちきゅう」が東北沖地震を引き起こした断層の掘削を成功させた。水深7,000mでの海底下845mの掘削であった。温度計の設置はシステムの不具合で決行することができなかったため、夏に再度設置のための公開が予定されている。

Disputed Islands Could Be Marine Research Site
論争を巻き起こしている島々が海洋研究拠点になるかも
日本、台湾、中国によって領有権が主張されている尖閣諸島は海洋研究にはもってこいと石原東京都知事は発言した。東海大の岡本氏によれば、尖閣諸島は黒潮が豊かなサンゴ礁生態系を形成している場所であるが、その地理的な要因から訪れることが難しい島の1つであるという。

Raindrops Don’t Swat Down Mosquitoes
雨粒は蚊を撃ち落とさない
蚊にとって雨粒は自らの体の数倍の大きさ、重さを持った物体の衝突であるにも拘らず、雨粒が衝突しても蚊は死なない。実験室で蚊に水のジェットを当てて(雨を想定)ビデオカメラで観測したところ、蚊の質量が小さいことで運動エネルギーが伝わりにくいこと、蚊の外骨格が比較的固く、臓器が保護されることが理由として考えられるらしい。

Life Blooms Under Arctic Ice
北極の氷の下で生命が芽吹く
「氷が溶けると生命が一気に花開く」とこれまで考えられてきたが、チュクチ海の大陸棚における調査で厚さ1mの氷の下でも光合成植物プランクトンが増殖していることが分かった。
氷の中には「melt pond」と呼ばれる箇所があり、そこでは光の50%は下部に到達しているらしい。北極海において生物生産が低く見積もられている可能性がある。

News & Analysis
OCEAN SCIENCE: Oil Spill Researchers Lose Fight to Protect Documents
海洋科学:石油流出の調査員が文書を守る戦いに負けた
Eli Kintisch
「Deepwater Horison」石油流出事故の流出量の見積もりに関する内部メールが訴訟を受けて外部に公開されることとなった。

JAPAN: Growing Distaste for Nuclear Power Dims Prospects for R&D
日本:日々大きくなる原発への嫌悪感が将来の研究開発の可能性を霞めている
Dennis Normile
日本の諮問機関は予測される経済発展と二酸化炭素排出規制に見合った2030年までにエネルギー資源の確保先を多角化するオプションを発表した。

News in Focus
PUBLIC HEALTH: Do Sports Events Give Microbes a Chance to Score?
公衆衛生:スポーツのイベントは病原菌が蔓延するきっかけになるか?
Kai Kupferschmidt
多くの人が集まることは感染の中核をなすが、リスクはそれほど大きくないことが分かった。

Letters
Climate's Role in Polar Bear Past
過去のホッキョクグマに対する気候の役割
Kurt E. Galbreath, Joseph A. Cook, and Eric P. Hoberg
Plioceneに入り気候が寒冷化し、海氷が北極海を一年中覆い始めるまでシロクマは北極には生息することができなかったかもしれない。気候と生物進化を直接結びつけることは難しいが、シロクマに関してはある程度当てはまるかも?

Water Cycle Varies over Land and Sea
陸と海とで水循環は異なる
Michael L. Roderick, Fubao Sun, and Graham D. Farquhar
最近、海洋での水循環が強化されているという観測結果が提示されたが、海と陸の水循環は全く異なることに注意が必要である。海においては絶えず蒸発が水を大気に供給するが、陸では陸水の量に依存する。もとから乾燥した地域は乾燥を維持し続けるが、一方で湿潤地域は湿潤化したり乾燥化したりする(洪水や干ばつの発生)。そのため、海の知見を陸にそのまま当てはめて考えるのは早計である。

The Cost of Open Access
オープン・アクセスの価格

科学雑誌のオープン・アクセス(誰でも無料で記事を閲覧できる仕組み)に関するコメント集。メリット・デメリット。

Perspectives
CLIMATE CHANGE: Dancing to the Tune of the Glacial Cycles
気候変動:氷期のサイクルに合わせてダンスする
Naoyuki Kurita
鍾乳石の酸素同位体が過去60万年間の熱帯域の水循環を明らかにする。

ASTRONOMY: Gathering Interstellar Gas
天文学:星間ガスを集める
Seth Redfield
IBEX宇宙船による観測から、太陽系と宇宙との境界にあたる「Heliosphere」の詳細が明らかになった。

Letters
Interglacial Hydroclimate in the Tropical West Pacific Through the Late Pleistocene
A. N. Meckler, M. O. Clarkson, K. M. Cobb, H. Sodemann, and J. F. Adkins
インドネシアのボルネオ島から得られた鍾乳石のd18Oから過去570-210kaの水循環を復元。pCO2や高緯度の気温にはあまり敏感に応答していなかったことが分かる。退氷期には高緯度の寒冷化に対応して熱帯域の乾燥化の傾向が確認された。従って、熱帯のヒートエンジンは全球の気候を安定化・増幅という2つの相反する効果を持っていたと考えられる。