◎Journal of Climate
Decadal freshening of the Antarctic Bottom Water exported from the Weddell Sea
Jullion, L., A. Naveira Garabato, M. Meredith, P. Holland, P. Courtois, and B. King
人為起源の気候変化に伴い、南極周回流が南極の氷を融解させていると考えられているが、その観測的な証拠はほとんど得られていない。南極半島の東部において、南極底層水(AABW)がより低塩分化していることが確認された。
If anthropogenic CO2 emissions cease, will atmospheric CO2 concentration continue to increase?
MacDougall, A., M. Eby, and A. Weaver
急激にCO2排出がゼロになったら何が起きるかを、最近永久凍土の炭素も組み込まれた地球システムモデル(UVic ESCM)を用いて評価。CO2排出が止まっても、CO2以外の温室効果ガスによる放射強制力、陸上生物圏からのCO2排出、海洋のCO2吸収が釣り合って、大気中のCO2濃度が少なくとも100年間は一定となることが示された。CO2以外の温室効果ガスによる放射強制力が大きい場合には、大気中のCO2濃度は増え続けることから、これらのガスの削減なしには永久凍土の正のフィードバックによって温暖化が進行し続けると思われる。
Drake Passage oceanic pCO2: Evaluating CMIP5 Coupled Carbon/Climate Models using in-situ observations
Jiang, C., S. Gille, J. Sprintall, and C. Sweeney
ドレーク海峡において観測されているpCO2変動がCMIP5の地球システムモデルで再現できているかどうかを評価。年平均はうまく再現できているが、季節変動の幅は大きく異なった。
◎Earth and Planetary Science Letters
Reconciling discrepancies between Uk37 and Mg/Ca reconstructions of Holocene marine temperature variability
Thomas Laepple , Peter Huybers
堆積物コアを用いた古水温復元で多用される円石藻アルケノンと浮遊性有孔虫Mg/Caの食い違いは、それぞれの生物種の生息環境を反映しているというよりは、プロキシ特有のものである可能性がある。補正の方法を提案。
The influence of kinetics on the oxygen isotope composition of calcium carbonate
James M. Watkins , Laura C. Nielsen , Frederick J. Ryerson , Donald J. DePaolo
炭酸塩のδ18Oは水のδ18Oと必ずしも平衡にない。無機カルサイト沈殿実験から、炭酸脱水酵素(CA)のもとでは各炭酸系構成イオン間の同位体非平衡が抑制されることが示された。天然状態ではこうした非平衡は稀であると思われる。
Cosmogenic nuclide enhancement via deposition from long-period comets as a test of the Younger Dryas impact hypothesis
Andrew C. Overholt , Adrian L. Melott
地球への隕石の飛来量の増加が、大気上層における銀河線フラックスと宇宙線生成核種(14C・10Be・26Al)の生成量を増加させる可能性がある。またその量はアイスコアなどから得られているYDにおける14Cや10Beの増加を説明できるかもしれず、YDが隕石衝突によって起きたとする説を検証できるかもしれない。
Glacial deep ocean sequestration of CO2 driven by the eastern equatorial Pacific biologic pump
Whitney Doss , Thomas M. Marchitto
パナマ海盆から得られた堆積物コア中の底性有孔虫(Cibicidoides wuellerstorfi)のB/Caを用いて過去50kaの東赤道太平洋の底層水(2.2 - 3.6 km)のカルサイト飽和状態を推定。完新世と比較して氷期にはΩが低下しており、鉄やシリカの濃度が変化したことによって、より生物ポンプが活発化していた可能性がある。またδ13Cも軽い値を示し、解釈を支持している。しかし、期待に反して、Globorotalia menardii殻の破砕度は逆に氷期に増加しており、底層水の化学と生物遺骸埋没フラックスの関係が単純でないことを物語っている。
The influence of water mass mixing on the dissolved Si isotope composition in the Eastern Equatorial Pacific
Patricia Grasse , Claudia Ehlert , Martin Frank
世界でも有数の酸素極小層(OMZ)が発達する海域である、東赤道太平洋〜ペルー沿岸部の水柱のケイ素の同位体(δ30Si)を測定。最も南の観測点でδ30Siが最小となり、また濃度も0.2μmol/Kgと小さいことから、生物によって活発に利用されていることを反映していると思われる。中層水のδ30Siは水塊混合・生物源オパールの溶解などによって複雑な挙動を示す。深層水のδ30Siは複数の端成分(NPDWやLCDWなど)の混合で説明できそう。
◎Chemical Geology
Structural limitations in deriving accurate U-series ages from calcitic cold-water corals contrasts with robust coral radiocarbon and Mg/Ca systematics
Marcus Gutjahr, Derek Vance, Dirk L. Hoffmann, Claus-Dieter Hillenbrand, Gavin L. Foster, James W.B. Rae, Gerhard Kuhn
南極Amundsen海から採取された深海サンゴ(Coralliidae spp.、カルサイトの骨格)のLi/Ca・B/Ca・Mg/Ca・Sr/Ca・Ba/CaをLA-ICPMSで測定。Mg/Caは水温計として使えるかもしれない。
また14CやU/Th年代なども併せて測定。14C年代は海水のΔ14Cを反映しているものの、U/Th年代はばらつきが大きく解釈が難しい。αリコイルによってサンゴ骨格内での拡散が起き、閉鎖系が保たれていないことが原因と思われる。従って、カルサイトの骨格を作る深海サンゴはU/Th年代には適さないと思われる。
Interlaboratory comparison of boron isotope analyses of boric acid, seawater and marine CaCO3 by MC-ICPMS and NTIMS
Gavin L. Foster , Bärbel Hönisch , Guillaume Paris , Gary S. Dwyer , James W.B. Rae , Tim Elliott , Jérôme Gaillardet , N. Gary Hemming , Pascale Louvat , Avner Vengosh
4つの異なる研究機関による様々な炭酸塩・海水試料に対するδ11Bの測定値を比較(N-TIMSとMC-ICPMS)。マトリックスがない綺麗な標準試料や海水については、報告されている誤差を大きく外れたような差異は認められなかった。一方でマトリックスの大きい炭酸塩試料については1.46‰(2σ)もの差異が確認され、サンプルサイズとB/Ca比の違いが原因かもしれない。従って、δ11Bの絶対値よりも、相対比のほうが信頼度が大きいと思われる。
Seasonal variability of rainfall recorded in growth bands of the Giant African Land Snail Lissachatina fulica (Bowdich) from India
Ravi Rangarajan , Prosenjit Ghosh , Fred Naggs
インドにおいて得られたカタツムリ(Giant African Land Snail)の殻δ18Oが降水量の指標になるかを検証。週〜月レベルで降水量を反映している可能性があり、観測のギャップを埋めることが可能かもしれない。
High resolution coral Cd measurements using LA-ICP-MS and ID-ICP-MS: Calibration and interpretation
Andréa G. Grottoli , Kathryn A. Matthews , James E. Palardy , William F. McDonough
パナマ湾で採取されたPorites lobata、Pavona gigantea、Pavona clavusの3種のサンゴのCdをLA-ICPMSで測定し、湧昇の指標になるかどうかを評価。同位体希釈法のデータと比較したところ、希釈法はCdを低く見積もっていたことが示された。LA-ICPMSの測定値の変動は大きいが、平均値は概ね海水の値を反映していると思われる。
P. clavusについては、湧昇のピークと骨格中のCdのピークには1ヶ月のラグがあり、おそらくCdは生体によって速やかに取り込まれるため、それが抑えられた時に海水のCd濃度が上昇するのかもしれない。P. clavusのCdは海水のCd変動の良い指標になりそうであるが、少なくとも3つのコロニーについて、最低3測線は測定する必要がありそう。
◎Radiocarbon
The Ocean Bomb Radiocarbon Inventory Revisited
Anne Mouchet
海洋の核実験由来14Cの取り込み量は観測とモデルとで大きく食い違っており、その理由はCO2のピストン速度の再現にあるかもしれない。
SHCal13 Southern Hemisphere Calibration, 0–50,000 Years cal BP
Alan G Hogg, Quan Hua, Paul G Blackwell, Mu Niu, Caitlin E Buck, Thomas P Guilderson, Timothy J Heaton, Jonathan G Palmer, Paula J Reimer, Ron W Reimer, Christian S M Turney, Susan R H Zimmerman
南半球の放射性炭素較正曲線(SHCAL)にYDのHuon Pineのデータを追加し、SHCAL13として公表。北半球と南半球の14C年代の違いは「43 ± 23年」と推定される。