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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年9月26日木曜日

新着論文(Nature#7468)

Nature
Volume 501 Number 7468 pp461-584 (26 September 2013)

EDITORIALS
Counting the cost
コストを計算する
海洋科学に対する予算はオペレーションやメンテナンスのコストによってますます食い尽くされている。アメリカ科学財団は大型プロジェクトに投資をする際には長い視点を持つようになるべきだ。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Cool eggs make for longer legs
冷たい卵がより長い足を作る
Am. Nat. http://dx.doi. org/10.1086/673299 (2013)
熱帯に棲息するトカゲの一種(Carlia longipes)を異なる温度で孵化させたところ、足の長さが変化することが分かった。森林土壌(28.5℃)や岩の上(~23.5℃)などを想定した温度区に設定したところ、より低い温度で孵化したトカゲはより足が長く、より素早く跳ねたり登ったりする能力が備わっていた。また生息地の好みも自らが適する環境に偏ることが分かった。

Waiting to reduce emissions is costly
排出を削減するために待つことはコストが高い
Environ. Res. Lett. 8, 034033 (2013)
温暖化を産業革命前の2℃上昇に抑えるという政策が達成されたとして、モデルを用いてその後数年間のコストが推定された。政策の開始時期が2030年よりも遅くなった場合、エネルギーのコストは80%増加するのに対し、世界の経済成長率は7%低下するため、結果として2015年に政策が開始された場合に比べ、3倍にもコストが膨れ上がることが示された。

SEVEN DAYS
Climate closures
気候の閉鎖
オーストラリアの新政府はClimate Commissionを閉鎖しようとしている。2011年に設立された独立機関で、気候変化に関する情報を提供していた。機関の代表であるTim Flanneryは私的基金によって運営を継続すると言っている。他にも炭素の価格や排出削減をアドバイスする機関であるClimate Change Authorityも閉鎖しようとしている。

US power plants
アメリカの発電所
アメリカのEnvironmental Protection Agencyによって提案された規制によって、アメリカ国内において新たに建設される発電所においてはCO2排出が制限されることになる(炭素捕獲貯留設備の設置が義務化される)。現行の発電所についても2014年7月までに規則が準備される予定となっている。

Arctic ice low
北極の氷が少ない
アメリカのNational Snow and Ice Data Centerによると、北極の海氷量が9/13に最低値に達した。今回は2012年の記録的な低下と比べると小さいが、それでも1979年以来では6番目に小さいと報告されている。
>より詳細な記事(NATURE NEWS BLOG)
Arctic sea-ice minimum is sixth smallest on record
北極の海氷の最大値は観測史上6番目に小さい
Lauren Morello

NEWS IN FOCUS
Drilling hit by budget woes
掘削が予算的困難にぶち当たる
Alexandra Witze
先日アメリカが所有する大型掘削船Joides Resolution号が日本海の掘削を終え、韓国の港に入港した。国際統合深海掘削プログラム(Integrated Ocean Drilling Program; IODP)の再編成を受けて、JRに対してアメリカが今後も資金援助するかどうかが不確かとなっている。

FEATURES
Marine science: Oceanography's billion-dollar baby
海洋科学:海洋学のビリオン・ダラー・ベイビー
Alexandra Witze
AUVやグライダーなどの投入を含む、北米・南米沖の海洋観測の大型プロジェクトがアメリカにてまもなく始まり、大量のデータが海洋学者にもたらされることになる。しかし、中にはそれほどの観測体制が大量の資金をかけるに値するかどうか疑うものもいる。

COMMENT
Ecology: Gene tweaking for conservation
生態系:保全のための遺伝子の微調整
「生物種を絶滅から守るために、賛否両論ある遺伝子工学技術を考慮する時かもしれない」と、Michael A. Thomasほかは言う。

CORRESPONDENCE
Global hunger: Food crisis spurs aid for poverty
世界的な飢餓:食料危機が貧困の救済に拍車をかける
Mara P. Squicciarini, Andrea Guariso & Johan Swinnen

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SPECIALS <Open>
〜AGRICULTURE AND DROUGHT〜
〜農業と干ばつ〜
Climate change means the coming decades are likely to bring more frequent episodes of severe drought, with potentially devastating impact on the world's ability to feed a growing population. We therefore need a sustainable agricultural system that makes the most efficient use of water and reduces expensive and environmentally challenging inputs such as fertilizer and pesticides.
気候変化が意味するのは、今後数十年間にわたってひどい干ばつが頻発化すること、それが増え続ける人口を養うための我々の能力に破壊的な影響を与える可能性が高いことである。そのため、水の利用効率を最大化し、肥料や農薬といった高価で環境に影響を与える添加物の使用量を減らすことで、持続可能な農業システムを構築する必要がある。
※最近の’干ばつと農業’関係でNature関連誌に掲載された論文も多数紹介されています。

Agriculture and drought
農業と干ばつ
Michelle Grayson
各記事の紹介とまとめ。

The dry facts
乾燥の事実
Olive Heffernan
干ばつは、作物を破壊し、飢饉を引き起こし、暴動を誘発するなど、歴史を通して悲惨な出来事をもたらしてきた。そしてそれは今後も悪化する可能性がある。図や年表を通して説明。
※出典
Global hot-spots of heat stress on agricultural crops due to climate change
Edmar I. Teixeira et al.
Agricultural and Forest Meteorology 170, 206-215 (2013).

Water: The flow of technology
水:技術の流れ
Katherine Bourzac

Plant breeding: Discovery in a dry spell
植物の品種改良:乾燥期の中の発見
Michael Eisenstein

Modelling: Predictive yield
モデリング:予測的な生産量
Neil Savage

Perspectives: Legislating change
観点:変化に備える

Crop pests: Under attack
作物害虫:攻撃の最中
Amy Maxmen

Microbiome: Soil science comes to life
微生物:土壌科学が息を吹き返す
Roger East

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Research
NEWS & VIEWS
Biodiversity: Temperate hotspots
生物多様性:温帯域のホットスポット
Derek P. Tittensor
Stuart-Smith et al.の解説記事。
礁に生息する魚の全球的調査で得られた大量のデータを取り込むことで、生物の機能的多様性の新たなホットスポットが明らかになった。こうしたホットスポットは、必ずしも種数が豊富というわけではない。この発見は、保全の優先度に影響を与えるかもしれない。

Earth science: A resolution of the Archaean paradox
地球科学:太古代のパラドックスの解決
Louis Moresi
Moore & Webbの解説記事。
地球内部の熱が火山を介して表層へともたらされていたような、地球の初期のモデリングから、40億年前の地球は木星の衛星イオとの共通点が多数あったことが示唆される。

ARTICLES
Heat-pipe Earth
ヒートパイプ地球
William B. Moore & A. Alexander G. Webb
地球のヒートパイプモデル(地球内部の熱がある地域の流路を通して表面へともたらされる)から、これまでの観測事実をうまく説明するような予測結果が得られた。
>Natureハイライト
初期地球の大陸ダイナミクス

LETTERS
Swings between rotation and accretion power in a binary millisecond pulsar
連星系のミリ秒パルサーにおける回転による駆動と降着による駆動の間の揺れ動き
A. Papitto et al.
>Natureハイライト
ミリ秒パルサーの交互に入れ替わるエネルギー源

Atmospheric oxygenation three billion years ago
30億年前の地球大気の酸化
Sean A. Crowe, Lasse N. Døssing, Nicolas J. Beukes, Michael Bau, Stephanus J. Kruger, Robert Frei & Donald E. Canfield
 地球大気は地球が誕生してからおよそ20億年間はほとんど酸素を含んでいなかったが、約23億年前に急に上昇したと考えられている(GOE; Great Oxidation Event)。
 南アフリカから得られた地層中のクロム同位体と還元状態に敏感な金属の濃度の分析から、30億年前にすでに酸素が現在の0.0003倍の濃度で存在し、酸化的な風化が起きていた可能性が示唆される。この値はこれまで考えられていたGOEよりも6億年ほど古いものであり、別の地球化学的な証拠が示唆する年代よりもさらに3-4億年ほど古い。

Integrating abundance and functional traits reveals new global hotspots of fish diversity
豊富さと機能的な種とを統合することで新たに全球的な魚類の生物多様性のホットスポットが明らかに
Rick D. Stuart-Smith et al.
 これまで生物多様性というと種数ばかりが着目され、それによって保全の対象が設定されてきた。しかし、今では生態的機能(ecological function、バイオマス生産量や栄養塩循環など)もまた重要な構成要素であるという認識が広まりつつある。
 全海洋における豊富なデータをもとに生物多様性の評価をやり直したところ、温帯域や太平洋東部もまた新たなホットスポットとして認められた。また種数が圧倒的に多い熱帯域においては、温帯域に比べて、それぞれの種がコミュニティー・レベルでの生態学プロセスに対して均等に関与していることが示された。こうした知見は保全努力に役に立つと思われる。
>Natureハイライト
温帯海域にも見つかった生物多様性ホットスポット