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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年9月19日木曜日

新着論文(Nature#7467)

Nature
Volume 501 Number 7467 pp282-454 (19 September 2013)

The final assessment
最終評価
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が政策決定者に向けての大きな価値のある証拠を提示するが、その報告書は極めて分厚いもので、また近年ますますページ数が増え続けており、研究者にしか簡単には理解できないだろう。その内容が一般に知れ渡る頃には時代遅れになっている可能性すらある。
IPCCの取り組みは23年前に始まったが、その最新版である第5次報告書は来週ストックホルムにて第一グループ(WGⅠ)のものが公表される予定となっている。第2・第3グループの報告書の公表は来年を予定している。
残念なことに気候感度(CO2倍増で何℃温暖化するか)に関する推定値は「1.5 – 4.5 °C」となる予定で、このばらつきは前回の報告書や1990年の最初の報告書のものよりも大きい。
[以下は引用文]
Most importantly, the panel has increased its confidence in the underlying message — that greenhouse gases are altering Earth’s climate. No serious politician on the planet can now dispute that.
もっとも重要なことに、パネルはその下に潜む「温室効果ガスが地球の気候を変えている」というメッセージの信頼度を増してきた。地球上においてそれに異を唱える熱心な政治家はもはやいない。

The governments of the world, to whom the IPCC reports, have made precious little headway in reducing emissions. And they appear in little hurry to do so. For all of these reasons, it would seem that a little reform is in order.
IPCCが報告書を提出する先の世界中の政府はほんのちょっとしか排出量を減らす方向へと向かっていない。またそれを急いでいるようにも見えない。こうしたすべての理由から、ほんのちょっとの改革しか準備ができていないように思われる。

>Natureハイライト
地球の行く末:IPCCが発表する気候予測の次期報告書

WORLD VIEW
The Himalayas must be protected
ヒマラヤは守られなければならない
「気候変化と人間活動によって、壊れやすい生態系がこれまででもっとも不安定な状態へと追い込まれている」とMaharaj K. Panditは警告する。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Another killer fungus hits amphibians
別の殺人菌が両生類を殺す
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://doi.org/nrz (2013)
オランダのファイアサラマンダー(Salamandra salamandra)の個体数は過去3年間で96%も低下した。新種のツボカビ(chytrid fungus; Batrachochytrium salamandrivorans)の感染がその原因と特定された。他のツボカビ類とは異なるホストを持ち、また生息に適した温度も異なっているらしい。

Fertility smells like preen spirit
妊娠は毛繕いの熱意のように匂う
Anim. Behav. http://doi.org/nr3 (2013)
ユキヒメドリ(dark-eyed juncos; Junco hyemalis)が毛繕いをする際に発する脂っこい分泌物を分析したところ、オスとメスとで異なることが示された。またより多くの物質を分泌するメスほどより多くの卵を産むことも分かった。身体の大きさや羽の美しさよりも、匂いが生殖の成功を現しているらしい。

Ancient bear bone yields a sequence
古代の熊の骨がシーケンスを生む
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://doi.org/nr4 (2013)
30万年以上も昔のホラアナグマ(Pleistocene cave bear; Ursus deningeri)の骨から抽出されたDNAのシーケンスがなされた。30の塩基配列という極めて短いシーケンスであるが、これまで続成・劣化作用で分析が難しかったものも測定できるようになるかもしれない。

Fruits shrink diabetes risk
果物が糖尿病のリスクを小さくする
Br. Med. J. 347, f5001 (2013)
フルーツジュースではなく、果物(リンゴ・ナシ・ブドウ・レーズン、とりわけブルーベリー)を丸まる食べる人は糖尿病のリスクが軽減されることが示された。ジュースの場合、果物に比べて果物起源の化学物質が少なく、より多くの糖分が血液へともたらされることが原因かもしれない。

Eruption sent microbes flying
噴火が微生物を飛ばす
Geology http://doi.org/nr8 (2013)
ニュージーランドにおける火山噴火の噴出物の特定に、かつて湖に生息していて、噴火の際に湖ごと吹き飛ばされた珪藻の骨格が使えることが示された。

SEVEN DAYS
More protection for endangered rhinos
絶滅危惧のサイをもっと保護せよ
アメリカのFish and Wildlife Serviceはミナミシロサイ(southern white rhinoceros; Ceratotherium simumsimum)を絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律(Endangered Species Act)に基づいて保護するようリストに加えた。角の売買の規制に繋がることが期待されている。

Biofuels overhaul
バイオ燃料の修理
ヨーロッパ議会は、化石燃料よりも多くの温室効果ガスを排出する可能性があり、さらに森林破壊や食料価格の上昇に繋がる可能性があるとして、作物から生産されるバイオ燃料を制限することに関する投票を行った。2020年までにエネルギー全体に占めるバイオ燃料の割合は6%以下になると思われる。
>より詳細な記事(NATURE NEWS BLOG)
European Parliament votes to limit crop-based biofuels
ヨーロッパ議会は作物に基づいたバイオ燃料を制限するように投票した
Richard Van Noorden
>関連した記事(Nature#7456 "NEWS IN FOCUS")
EU debates U-turn on biofuels policy
EUがバイオ燃料政策に関するUターンを議論している
Richard Van Noorden
バイオ燃料は種類によっては化石燃料よりも多くのCO2を排出する。

Voyager breakaway
ボイジャーが離脱
ボイジャー1号が打ち上げから36年経って、太陽系外の星間へと突入した。プラズマ密度の分析から太陽の影響圏を抜けたことが分かった。
>より詳細な記事(NATURE NEWS)
Voyager 1 has reached interstellar space
ボイジャー1号が星間宇宙に到達
Ron Cowen
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
ボイジャー1号の太陽系外到達を確認

Kenya strikes water
ケニアが水に当たる
人工衛星と地震波を用いた探査によって、ケニア北部で2,500億立方メートルの莫大な地下水貯蔵庫が発見された。うち持続利用が可能なものは34億立方メートルと推定されており、ケニアが利用可能な持続性の水資源が17%増加したことになる。

Flash flooding
急に現れる洪水
9/11-17の間に起きた前例のない大雨がもたらした洪水によってコロラド川が氾濫し、1,500棟の家屋が破壊され、少なくとも8人が死亡した。11,750人が避難している。

Fracking laws
フラッキングの法律
カリフォルニア州はフラッキングを行う石油・ガス会社に対して、「フラッキングを行う際には認可が必要とされ、使用するすべての化学物質の開示が求められる」という法律を通した。カリフォルニア南部のサンホアキンとロサンゼルスにはアメリカが採掘可能なシェール・オイルの64%が眠っていると推定されている。

NEWS IN FOCUS
Grass gets greener
草原をより緑化する
Nicola Jones
植物の分泌によって、土壌からの温室効果ガスの放出が抑制されている。

ALMA strike stirs up Chilean labour unions
ALMAのストライキがチリの労働組合をかき回す
Alexandra Witze
他の観測所も次第に強まる労働者の要求を監視している。

Progress stalled on coronavirus
コロナウイルスに対する進展が失速
Declan Butler
徹底的な研究の不足がソースを特定する努力を妨げている。

FEATURES
Global warming: Outlook for Earth
地球温暖化:地球の見通し
IPCCが次の大きな評価書を最終提出することを受けて、Nature誌がこの監視機関の歴史と今後の見通しを語る。

Climate assessments: 25 years of the IPCC
気候アセスメント:IPCCの25年間
Nicola Jones
IPCCの歴史とその下を支える科学を図解する。

Climate science: Rising tide
気候科学:上昇する潮位
Nicola Jones
研究者はどれくらい早く・どれくらいの大きさで・どれくらいの範囲、海の潮位が増加するかを予測しようと苦心している。

IPCC: The climate chairman
IPCC:気候の委員長
Quirin Schiermeier
数百人にわたる専門家の同意を得ることは決して簡単なことではない。

COMMENT
Climate change: A patchwork of emissions cuts
気候変化:排出削減のパッチワーク
「もし各国が規則に同意し、信頼を築くことができれば、気候変化緩和に向けたホームメイドの国家的取り組みも効果的になる可能性がある」と、Elliot Diringerは語る。

History: Pushing the climate frontier
歴史:気候のフロンティアを押す
「アメリカの乾燥地で行われた最初の大規模な環境調査は今日でも役に立つ、政策決定に関する科学的な教訓を持っている」と、K. John Holmesは説明する。

CORRESPONDENCE
Ecuador: Yasuní oil plans call for vigilance
エクアドル:Yasuní 石油計画は警戒に値する
Kelly Swing

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Climate science: The cause of the pause
気候科学:一時停止の原因
Isaac M. Held
Kosaka & Xieの解説記事。
全球気候モデルを用いた海洋表層水温の再現から、東赤道太平洋の変動が最近の温暖化のハイエタスの原因を担っていることが示された。
>関連した記事(Nature#7464 "EDITORIALS")
Hidden heat
隠れた熱
近年、赤道太平洋はラニーニャ様のフェーズに入っており、全球の温暖化を寒冷化させている(温暖化のハイエタス)。1980年代は逆にエルニーニョ様であったが、1999年以降ラニーニャが卓越している。
>関連した記事(Science#7464 "News of the Week")
Slower Warming Tied To Pacific Cooling
遅い温暖化は太平洋の寒冷化と関係している
温室効果ガスが上昇しているにもかかわらず過去15年間に地球の気温はそれほど上昇していない(温暖化のハイエタス)。研究者によってはそれと太陽活動の弱化やエアロゾル量の増加とを結びつけるものもいるが、スクリップス海洋研究所の小坂優(東大 地球惑星科学専攻OB)らはモデルシミュレーションから赤道太平洋のラニーニャ様の状態がハイエタスの原因である可能性を指摘している。
>より詳細な記事(Science NOW)
A Reprieve From Warming, Thanks to the Pacific
温暖化の執行猶予、太平洋のおかげ

Oceanography: Mountain waves in the deep ocean
海洋学:深海の山岳波
Jennifer MacKinnon
内部山岳波は深層水の混合過程において重要な役割を果たしている。こうした波を次世代の気候モデルに組み込むことを真剣に考慮しても良いかもしれない。

LETTERS
A strong magnetic field around the supermassive black hole at the centre of the Galaxy
銀河中心の超巨大ブラックホール周辺の強い磁場
R. P. Eatough et al.
>Natureハイライト
銀河系中心の強力な磁場

Recent global-warming hiatus tied to equatorial Pacific surface cooling
赤道太平洋の表層水の寒冷化と繋がった最近の温暖化のハイエタス
Yu Kosaka &  Shang-Ping Xie
21世紀における温暖化の停止の原因については複数の案が提示されているものの、それぞれの寄与については定量化されていない。気候シミュレーションと観測から、原因が東赤道太平洋の寒冷化(ラニーニャ)にあることを示す。モデルでは相関関数(r)が0.97という精度で全球の気温の変動をうまく再現できている。またウォーカー循環の強化、アメリカ北西部の寒波、アメリカ南部の干ばつといった現象も再現できている。同様のハイエタスは赤道太平洋の自然現象であり、将来も起きる可能性があるが、温室効果ガス濃度が上昇し続けることで温暖化が進行する可能性が高い。
>Natureハイライト
太平洋の寒冷化が地球温暖化を休止させる

Rapid cross-density ocean mixing at mid-depths in the Drake Passage measured by tracer release
トレーサーの放出によって測定されたドレーク海峡の中層における等密度面を横切る急速な海洋混合
Andrew J. Watson, James R. Ledwell, Marie-José Messias, Brian A. King, Neill Mackay, Michael P. Meredith, Benjamin Mills & Alberto C. Naveira Garabato
南極と南米大陸を隔てるドレーク海峡にけるトレーサー(五フッ化トリフルオロメチル硫黄)の放出・追跡観測から、海底の荒い地形によって、1,500m深における内部混合が20倍ほど増加していることが示された。