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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年9月4日水曜日

新着論文(Ngeo#Sep2013)

Nature Geoscience
September 2013 - Vol 6 No 9

Insight – Marine cycles in flux
理解 – 流れの中の海のサイクル

Editorials
Landscape of the lost giants
失われた巨大動物の風景
更新世には多くの大型動物が絶滅した。それに人類が関与したかどうかが議論を呼んでいるが、環境に大きく左右された可能性が次第に高まりつつある。

Marine cycles in flux
流れの中の海のサイクル
Anna Armstrong

Correspondence
Permafrost-carbon complexities
永久凍土の炭素の複雑さ
Jorien E. Vonk & Örjan Gustafsson

Commentary
Where the genes flow
遺伝子が流れる場所
Frank J. Stewart
海洋の有機物粒子は多様な微生物を支えている。そうした粒子がバクテリアの遺伝子交換のホットスポットとなっており、進化の機会をもたらしている。

In the press
A river ran through it
川がそこを通った
Emily Lakdawalla
キュリオシティーが発見した、火星をかつて流れていた河川について。

Research Highlights
Titan’s evaporites
タイタンの蒸発岩
Icarus http://doi.org/ngw (2013)
土星の衛星タイタンの表面には炭化水素の湖が存在する。モデルシミュレーションから、そうした乾燥した湖の底がブタンやアセチレンに富むことが示された。

Snowball synchroneity
雪玉の同時性
Geology http://doi.org/ng2 (2013)
タスマニアで採取された岩石のU-Pb年代決定から、Marinoanスノーボールアースの終結のタイミングが南中国やナミビアから示されている年代と一致し、全球的に同時(100万年以内)であったことが示された。

Glacial magma
氷河のマグマ
J.Geophys. Res. http://doi.org/ngz (2013)
温暖化によってアイスランドの氷河が後退しているが、それによってマントルに対する圧力が低下し、マグマが生成されやすくなることが数値シミュレーションから示された。1890年以降、氷河の後退は地殻だけでなくマントルの圧力をも低下させていると考えられている。7年に1回、2010年に起きたEyjafjallajökull噴火と同程度の規模のマグマが生成されると推定されている。

Ozone-induced extremes
オゾンが招く異常
Geophys. Res. Lett. http://doi.org/ng3 (2013)
過去数十年間に南半球の嵐や降水バンドが南へとシフトしているが、それは南極のオゾン層と深く関係していることがモデルシミュレーションから明らかに。1970年代以降、南半球の亜熱帯域の大雨の頻度と強度が増加していることが示された。一方で中緯度のそうした現象は減っているらしい。
>話題の論文
Modeling evidence that ozone depletion has impacted extreme precipitation in the austral summer
S. M. Kang, L. M. Polvani, J. C. Fyfe, S.-W. Son, M. Sigmond, G. J. P. Correa

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Research
News and Views
Palaeoecology: Megafauna as a nutrient pump
古生態学:栄養塩ポンプとしての巨大生物
Tanguy Daufresne
Doughty et al.の解説記事。
更新世の終わりには大型の草食動物が世界中で絶滅した。数値モデルから大陸規模で絶滅が栄養塩輸送にまで影響していたことが示された。
>関連した記事(Nature姉妹紙 注目のハイライト)
古代巨型動物類絶滅の現代への影響

Palaeoclimate: East Antarctica's Achilles' heel
古気候:東南極のアキレス腱
Claus-Dieter Hillenbrand
Cook et al.の解説記事。
東南極氷床は地球の氷床の中でもっとも安定だと信じられてきた。東南極沖の堆積物コアの地球化学的な組成の変化から、氷床の縁辺部が5.3-3.3Maの間に350-550kmにわたって繰り返し後退していたことが示唆されている。
>関連した記事(Sciene#6144 "News of the Week")
East Antarctic Ice Sheet Not So Stable?
東南極氷床はそれほど安定でない?
 グリーンランド・南極氷床の融解は海水準上昇へと繋がる。科学者らはこれらの氷床の安定性を評価するために、地球が現在よりも温暖であったPliocene(鮮新世;5.3-2.6Ma)に着目している。当時、海水準は22m高かったと推定されており、氷床が現在よりも大規模に縮小していた可能性を物語っている。
 一般に西南極氷床は不安定で、現在も融解が確認されているが、東南極氷床は安定だと考えられていた。しかしながら、ロンドンのImperial Collegeの学生Carys Cookらの研究グループが東南極氷床沖で採取された堆積物コア中のPlioceneのSr・Nd同位体記録を調べたところ、氷河が大きく後退していたと思われる記録が見つかった。
>より詳細な記事(Science NOW)
East Antarctica's Ice Sheet Not as Stable as Thought
 長く’安定’だと思われていた東南極氷床が温暖化に対して敏感かもしれないことを示唆する研究結果が得られた。British Antarctic SurveyのClaus-Dieter Hillenbrandによれば、「Plioceneは大気中CO2濃度が高く、温暖であった時期のため、地球温暖化の最も最近のアナログとなる」という。
 IODP318が2009年に東南極沖で採取した堆積物コアのSr・Nd同位体記録には、現在は氷で覆われているWilkes Subglacial Basinが浸食を受け、沖まで運ばれていた期間が複数あることが記録されている。これはいくつかのモデルが示唆するような、東南極氷床が安定であることを否定する結果となった。ただし、堆積物コア記録の時間解像度は荒く、現時点では数百年・数千年といった時間スケールで東南極氷床が融解するかは判断がつけられないという。また氷河が前進・後退を繰り返したのか、或いはしばらくの間露出していたのかもまだ分かっていない。より多くの堆積物コアが必要とされている。

Rivers: Building bacterial bridges
河川:バクテリアの橋を造る
Aaron Packman
Vignaga et al.の解説記事。
従来、河川による堆積物輸送を考える上で流れと河床の粒子の物理的な相互作用のみが考慮されていたが、実験と理論研究から微生物によるバイオフィルムが粒子同士をくっつけることで輸送を制限していることが示された。

Solid Earth: Heating glaciers from below
固体地球:氷河を下から暖める
Boris J. P. Kaus
Petrunin et al.の解説記事。
気候変化が雪氷圏を上から暖めているが、地熱フラックスもまた氷床の基底部の状態に寄与していることが示された。

Reviews
Impact of Arctic meltdown on the microbial cycling of sulphur
北極の融解が硫黄の微生物サイクルに与える影響
M. Levasseur
北極圏は世界で最も早く温暖化している。海氷の後退は、海氷に住む藻類や植物プランクトンが放出し、気候にも影響するジメチルスルフィイド(DMS)の増加を招く可能性がある。

Processes and patterns of oceanic nutrient limitation
海洋の栄養塩制限のパターンとプロセス
C. M. Moore, M. M. Mills, K. R. Arrigo, I. Berman-Frank, L. Bopp, P. W. Boyd, E. D. Galbraith, R. J. Geider, C. Guieu, S. L. Jaccard, T. D. Jickells, J. La Roche, T. M. Lenton, N. M. Mahowald, E. Marañón, I. Marinov, J. K. Moore, T. Nakatsuka, A. Oschlies, M. A. Saito, T. F. Thingstad, A. Tsuda & O. Ulloa
海洋の一次生産の大部分は光合成植物プランクトンが担っている。2つの栄養塩制限のレジームが海洋の植物プランクトンの豊富さと活動を決定していることが最近の研究から示されている。

Microbial biogeochemistry of coastal upwelling regimes in a changing ocean
変化しつつある海洋における沿岸湧昇レジームの微生物的な生物地球化学
Douglas G. Capone & David A. Hutchins
東岸境界流の沿岸湧昇域(ペルー・カリフォルニア沖など)は世界でも有数の生物生産が高い地域である。人類がきっかけとなっている変化が一次生産と栄養塩循環に影響している可能性がある。

Microbial control of the dark end of the biological pump
生物ポンプの暗い側の微生物のコントロール
Gerhard J. Herndl & Thomas Reinthaler
海洋表層からもたらされる炭素フラックスは暗い海に住む微生物を養うのに十分でない。そうした需要を満たすのに、沈まない粒子と無機炭素を有機物に変換する微生物が関与しているかもしれない。

Seafloor oxygen consumption fuelled by methane from cold seeps
メタンと冷水の沸き出しによって支えられる海底の酸素消費
Antje Boetius & Frank Wenzhöfer
海の底から沸き出す冷たくメタンに富んだ水は豊かな生態系を支えている。微生物によるメタンの消費は、沸き出しのない生態系に比べて2倍の酸素を消費していることを意味する。

Letters
Remote detection of magmatic water in Bullialdus Crater on the Moon
月のBullialdusクレーターにおけるマグマ水の遠隔からの検出
R. Klima, J. Cahill, J. Hagerty & D. Lawrence
月に元々存在した水を遠隔から検出することは、別のソースである太陽風の存在によって困難となっている。Chandrayaan-1によるBullialdusクレーターにおけるヒドロキシ基を持つ鉱物のスペクトル観測は、隕石衝突によって月内部からマグマ水が表面に露出したことを物語っている。

Rising river flows throughout the twenty-first century in two Himalayan glacierized watersheds
2つのヒマラヤ氷河水系における21世紀を通して上昇する河川流量
W. W. Immerzeel, F. Pellicciotti & M. F. P. Bierkens
ヒマラヤ氷河は後退しつつあり、質量が失われつつある。気候モデルのアンサンブルから、ヒマラヤ山脈の対照的な2つの水系において、少なくとも2050年までは、氷河は後退しても流量は増加する傾向にあることが示された。

Heat flux variations beneath central Greenland’s ice due to anomalously thin lithosphere
異常に薄いリソスフェアが原因で生じる、グリーンランド中央部の氷の下の熱フラックスの変動
A. G. Petrunin, I. Rogozhina, A. P. M. Vaughan, I. T. Kukkonen, M. K. Kaban, I. Koulakov & M. Thomas
通常、地表の温度は地熱よりもむしろ気候(太陽の熱)によって支配されている。新たな数値モデルから、グリーンランド氷床の基底部の中でも異常にリソスフェアが薄い地域においては地熱フラックスが氷の融解に寄与していることが示された。

Oxidation and methylation of dissolved elemental mercury by anaerobic bacteria
嫌気的バクテリアによる溶存水銀の酸化とメチル化
Haiyan Hu, Hui Lin, Wang Zheng, Stephen J. Tomanicek, Alexander Johs, Xinbin Feng, Dwayne A. Elias, Liyuan Liang & Baohua Gu
メチル水銀は人間の神経系に対する毒性が強い。室内実験から、嫌気的な環境下ではメチル化をするバクテリアもメチル化をしないものもともにメチル水銀の生成を促進していることが示された。
>関連した記事(Nature姉妹紙 注目のハイライト)
外洋の水銀源

Formation of carbonate chimneys in the Mediterranean Sea linked to deep-water oxygen depletion
深層の酸素濃度低下と関連した地中海の炭酸塩チムニー形成
Germain Bayon, Stéphanie Dupré, Emmanuel Ponzevera, Joël Etoubleau, Sandrine Chéron, Catherine Pierre, Jean Mascle, Antje Boetius & Gert J. de Lange
大陸縁辺部の湧水域(Submarine seeps)においてはかなりの量のメタンが底層水に放出されており、炭酸塩の沈殿へとつながっている。ナイル三角州におけるメタンがもとになって形成された炭酸塩構造物の分析から、それが深層水の低酸素/無酸素水の発展と関連していることが明らかに。

The legacy of the Pleistocene megafauna extinctions on nutrient availability in Amazonia
アマゾン地域における栄養塩の利用度に対する更新世の大型動物絶滅の名残
Christopher E. Doughty, Adam Wolf & Yadvinder Malhi
50-10kaの間に100種類もの大型動物が絶滅した。数値モデルから、アマゾン地域においてはそうした絶滅によって制限栄養塩(limiting nutrient)であるリン酸の水平輸送が98%低下したことが示された。

Dynamic behaviour of the East Antarctic ice sheet during Pliocene warmth
鮮新世の温暖期における東南極氷床の動的な振る舞い
Carys P. Cook et al.
IODP318が東南極のAdélie Landで採取した堆積物コアから、5.3-3.3Maに南大洋のSSTが上昇し、高い生物生産を伴っていたことが示された。また同時にWilkes Subglacial Basinの浸食が強化されており、氷床が数100m内陸に後退していた可能性が示唆される。鮮新世の温暖期には東南極氷床は温暖化に対して敏感であったと考えられる。

Erosion of biofilm-bound fluvial sediments
バイオフィルムで繋がった河川性堆積物の浸食
Elisa Vignaga, David M. Sloan, Xiaoyu Luo, Heather Haynes, Vernon R. Phoenix & William T. Sloan
河川の堆積物粒子はしばしばバクテリアフィルムによって結合・安定化されている。実験と数値モデルから、バイオフィルムによって結合した堆積物が一つの弾性的な皮膜として振る舞い、あまりに河川の流速が大きい際には急激に避けることが示された。

Slow-spreading submarine ridges in the South Atlantic as a significant oceanic iron source
重大な鉄のソースとしての南大西洋の低速拡大軸
Mak A. Saito, Abigail E. Noble, Alessandro Tagliabue, Tyler J. Goepfert, Carl H. Lamborg & William J. Jenkins
海水中にわずかに含まれる鉄が全球の多くの部分の一次生産や窒素固定を支配している。南大西洋で行われた測定から、低速で拡大する海底の海嶺が海洋の鉄の重要なソースとなっていることが示された。

The proportionality between relative plate velocity and seismicity in subduction zones
沈み込み帯における相対的なプレート速度と地震の間の比例関係
Satoshi Ide

Structure of orogenic belts controlled by lithosphere age
リソスフェアの年齢によってコントロールされる造山帯の構造
Frédéric Mouthereau, Anthony B. Watts & Evgueni Burov

Articles
Taxon-specific response of marine nitrogen fixers to elevated carbon dioxide concentrations
上昇した二酸化炭素濃度下における海洋の窒素固定者の分類群ごとの応答
David A. Hutchins, Fei-Xue Fu, Eric A. Webb, Nathan Walworth & Alessandro Tagliabue
海洋のシアノバクテリアが供給する窒素が外洋の食物網や生物地球化学循環をさせる窒素の大部分を担っている。実験から、窒素固定と二酸化炭素濃度との関係性がシアノバクテリアの種別ごとに異なることが示された。

Ice sheet collapse following a prolonged period of stable sea level during the last interglacial
最終間氷期における長期間の海水準の安定化に続く氷床の崩壊
Michael J. O’Leary, Paul J. Hearty, William G. Thompson, Maureen E. Raymo, Jerry X. Mitrovica & Jody M. Webster
最終退氷期には全球的な海水準が現在よりも5-9m高かったことが示唆されているものの、どの氷床がどれほど融解していたかはよく分かっていない。西オーストラリアの古代のサンゴ礁のU/Th年代測定と地球物理モデリングから、127-119kaには海水準は現在よりも3-4m高い位置で安定していたが、118.1±1.4 kaに9.5m高い位置まで急速に上昇したことが示された。ローカルなテクトニクスの変化を補正することで、海水準の上昇は「9 m」であったと結論づけられた。間氷期におけるある閾値を超えたことで急激な氷床の崩壊へと繋がった可能性が示唆される。
>関連した論文
Ice Volume and Sea Level During the Last Interglacial
最終間氷期における氷床体積と海水準
A. Dutton and K. Lambeck
Science 337, 216-219 (2012) 
将来の海水準上昇を予測するためにも過去の氷床の安定性(特に西南極氷床)を評価することは重要である。最終間氷期(MIS5, ~125ka)の海水準をサンゴ(U/Thで年代決定)やアイソスタシーを組み込んだモデルを用いて求めたところ、現在よりも5.5 - 9.0 m 高かったことが分かった。グリーンランドと南極の氷床はともに縮小していた可能性がある。放射強制力の増加に対して、両氷床の感度は高いかもしれない(温室効果ガス濃度増加で融けるということ)。