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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年8月30日金曜日

新着論文(Science#6149)

Science
VOL 341, ISSUE 6149, PAGES 929-1032 (30 AUGUST 2013)

EDITORIAL:
Accelerating Ocean Exploration
海洋探査を加速させる
Marcia McNutt
海洋探査は従来型の船で行ってサンプルを採取して実験室に持ち帰る方法から、無人探査機(AUV)を活用した方法へとシフトさせるべきである。また衛星通信などの通信システムも最大限活用すべきだ。特に温暖化と海洋酸性化の影響が懸念されているサンゴ礁と北極海・南大洋などのホットスポットは優先して探査すべきなのだろうか?
[以下は引用文]
Recently, however, exploration has taken on a more urgent imperative: to record the substantial changes occurring in largely undocumented regions of the ocean. With half of the ocean more than 10 kilometers from the nearest depth sounding, ecosystem function in the deep sea still a mystery, and no first-order baseline for many globally important ocean processes, the current pace of exploration is woefully inadequate to address this daunting task, especially as the planet responds to changes in climate.
しかしながら、最近では海洋探査は喫緊の課題の様相を呈している。ほとんど記録されていない海域で起きている大きな変化を記録する必要がある。半分以上の海は深さ10km以内であるが、深海の生態系機能はいまだ謎であり、海洋の重要なプロセスの一次近似的な基礎も分かっておらず、特に地球が気候の変化に応答しつつある中、この難しい課題を解決するには現在の探査のペースは嘆かわしいほどに不適切である。

Although the southern oceans are still largely unexplored, and coral reef hot spots for biodiversity are gravely imperiled by ocean warming and acidification, there was much support by Long Beach participants for prioritizing the Arctic, a region likely to experience some of the most extreme climate change impacts. An ice-free ocean could affect weather patterns, sea conditions, and ecosystem dynamics and invite increases in shipping, tourism, energy extraction, and mining. Good decisions by Arctic nations on Arctic stewardship, emergency preparedness, economic development, and climate change adaptation will need to be informed by good science.
南大洋がいまだほとんど探査されておらず、サンゴ礁の生物多様性ホットスポットが海の温暖化と酸性化によって脅かされている一方で、北極海(最も極端な気候変化の影響を経験すると思われる地域)を優先することに対するLong Beach会合の参加者の支持は大きかった。海氷が消失した北極海は天気のパターン・海の状態・生態系動態に影響し、一方で航行・観光・エネルギー資源採取・鉱物資源採掘の増加を招くだろう。北極圏の管理・緊急時の備え・経済発展・気候変化に対する適応に対する北極圏の国家の優れた判断は優れた科学の情報に基づくべきである。

Editors' Choice
About FACE
FACEについて
J. Ecol. 101, 10.1111/1365-2745.12149 (2013).
 森林とその下の土壌には大気中のCO2濃度の2倍に相当する量の炭素が保管されているため、森林の大気中のCO2濃度増加に対する応答は全球の炭素循環にとって重要な要素となっている。
 成熟した森林における8年間にわたる野外のCO2添加実験から、「硝化の促進」や「根からの水吸収の低下」などの変化が確認された。単に炭素の保存量が増加するというよりは、土壌の過程や栄養塩循環に変化が生じると思われる。

Which Emissions to Reduce?
どの排出を減らすべき?
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 10.1073/ pnas.1308470110 (2013).
 長期間大気中に残留して温室効果を発揮するCO2に対し、滞留時間が短いメタンやブラックカーボンといった放射強制力(すなわち気候)に影響する排出をどのように・どういった比率で削減するかといった議論が活発になされている。
 気候モデルシミュレーションから、メタンやブラックカーボンの排出削減が2050年の温暖化緩和に対して従来考えられてきたよりもそれほど大きな効果がない(従来の推定値の半分程度)ことが示された。削減の効果がすぐに期待でき、またコストも大きくないことで注目を浴びていたが、温暖化の特効薬にはならなさそうである。
>話題の論文
Near-term climate mitigation by short-lived forcers
Steven J. Smith and Andrew Mizrahi
比較的大気中の滞留時間が短い気候変化の要因(メタンやブラックカーボンなど)の削減による影響を評価。炭素質エアロゾル排出やエアロゾルのフォーシングの不確実性から、これらの削減が近未来の気候変化緩和(near-term climate mitigation)にそれほど大きく寄与しないことが示された(2050年で0.04 - 0.35 ℃の温暖化の緩和)。

News of the Week
Panel Picks Possible Collider Site
パネルが衝突型加速器の候補地をピックアップ
衝突型加速器(International Linear Collider; ILC)の建設に九州と東北が候補地として挙げられていたが、岩手県の北上山地が最有力候補となったことが8/23に公表された。
>より詳細な記事(Science Insider)
Japan Picks Tohoku Site for International Linear Collider

The Incredible Shrinking Springtail
驚くほど縮むトビムシ
実験から、トビムシ(springtail; Folsomia candida)が高温時に縮む能力があることが分かった。個体差はあるものの、最大で30%縮小した。高温だと代謝が活発となりエネルギーを多く使うため、小さい方がエネルギーを節約する上で有利なのかもしれない。

Reeling Them In
それらを引き込む
イカは通常1対の長い触手を持っており、それで獲物を捕らえている。しかし、深海に住むイカの一種(Grimalditeuthis bonplandi)の触手は非常に脆く、どのように獲物を捕らえているのかが分かっていなかった。ROVを用いたビデオ撮影から、それが生体発光によって低い振動数の振動を発し、獲物を引き寄せていることが明らかに。PROS Bに論文。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
トックリイカ、華奢な触腕の操り方

Slower Warming Tied To Pacific Cooling
遅い温暖化は太平洋の寒冷化と関係している
温室効果ガスが上昇しているにもかかわらず過去15年間に地球の気温はそれほど上昇していない(温暖化のハイエタス)。研究者によってはそれと太陽活動の弱化やエアロゾル量の増加とを結びつけるものもいるが、スクリップス海洋研究所の小坂優(東大 地球惑星科学専攻OB)らはモデルシミュレーションから赤道太平洋のラニーニャ様の状態がハイエタスの原因である可能性を指摘している。
>より詳細な記事(Science NOW)
A Reprieve From Warming, Thanks to the Pacific
>話題の論文
Recent global-warming hiatus tied to equatorial Pacific surface cooling
Yu Kosaka &  Shang-Ping Xie
Nature (advanced online publication)
21世紀における温暖化の停止の原因については複数の案が提示されているものの、それぞれの寄与については定量化されていない。気候シミュレーションと観測から、原因が東赤道太平洋の寒冷化(ラニーニャ)にあることを示す。モデルでは相関関数(r)が0.97という精度で全球の気温の変動をうまく再現できている。またウォーカー循環の強化、アメリカ北西部の寒波、アメリカ南部の干ばつといった現象も再現できている。同様のハイエタスは赤道太平洋の自然現象であり、将来も起きる可能性があるが、温室効果ガス濃度が上昇し続けることで温暖化が進行する可能性が高い。
>関連した記事(Nature#7464 "EDITORIALS")
Hidden heat
隠れた熱
近年、赤道太平洋はラニーニャ様のフェーズに入っており、全球の温暖化を寒冷化させている(温暖化のハイエタス)。1980年代は逆にエルニーニョ様であったが、1999年以降ラニーニャが卓越している。

>’温暖化のハイエタス’に関連した論文
Strengthening of ocean heat uptake efficiency associated with the recent climate hiatus
Masahiro Watanabe, Youichi Kamae, Masakazu Yoshimori, Akira Oka, Makiko Sato, Masayoshi Ishii, Takashi Mochizuki, Masahide Kimoto
Geophys. Res. Lett. 10.1002/grl.50541 (2013).
近年温暖化の進行速度は低下している。GCMを用いてそのハイエタスの原因を調べたところ、海洋の熱吸収が原因であることが示された。海洋の熱吸収効率(κ)が低下していることが分かり、それがモデルが地表温度の上昇を高く見積もっていることの原因であることも分かった。じきにハイエタスが終了し、温暖化に向かうと予測される。

>’温暖化のハイエタス’に関連した記事(Science#6129 "Editors' Choice")
Where’s Warming?
どこが温暖化している?
Geophys. Res. Lett. 10.1002/grl.50382 (2013).
地表温度は1975年頃から2000年頃にかけて急速に温暖化したが、ここ10年間は顕著には温暖化していない。問題は「温暖化が停止したかどうか」ではなく、「どこへ過剰の熱が吸収されたか」にある。1958年から2009年にかけての海水温の観測記録を解析したところ、表層よりも700mよりも深い部分での温暖化が顕著に起きていることが示された。従って、最近の温暖化は我々の知らないところで進行しているということになる。
>話題の論文
Distinctive climate signals in reanalysis of global ocean heat content
Magdalena A. Balmaseda, Kevin E. Trenberth, Erland Källén
1958年〜2009年にかけての海水温の観測をもとに、温暖化の傾向と2004年以降の表層水の温暖化の停止(the recent upper-ocean-warming hiatus)の原因を評価。ここ10年間は700mよりも深い部分で温暖化が起きており、風の変化に伴う海洋鉛直構造の変化が原因と考えられる。

>’温暖化のハイエタス’に関連した記事(Science#6143 "Editors' Choice")
Heating the Deep Ocean
深海を暖める
Geophys. Res. Lett. 40, 1754 (2013).
 温暖化による熱は大気と海の両方に取り込まれている。2000年代から海洋上層(~700m)の温暖化は停止しているが、700-2,000mの深層水に主として取り込まれていることが示された。貿易風の強化による表層風の変化が熱の分布を変えたことが原因として考えられている。1997-1998年のエルニーニョの際には全球的に寒冷化が起きていた。また大きな火山噴火の直後にも寒冷化が起きている。
>話題の論文
同上

>’温暖化のハイエタス’に関連した記事(Nature Climate Change#May 2013 "Research Highlights")
Warming seas
温暖化する海
Geophys. Res. Lett. http://doi.org/k5s (2013)
近年海洋表層水の温暖化が停止した(surface-warming hiatus)ことが話題を呼んでいた。1958-2009年における異なる深さの温暖化を再解析した研究から、海洋表層の温暖化は一時的に停止したものの、深層水が熱を吸収しており、過去10年間には30%を説明することが分かった。火山噴火や大きなエルニーニョも海の熱量を変える効果がある。
>話題の論文
同上

News & Analysis
Taking the Life Out of Titan
タイタンから生命を取り出す
Richard A. Kerr
土星最大の衛星である、もやで覆われたタイタンに生命はいるのだろうか?いないのだろうか?

European Hunter-Gatherers Dined on Domestic Pigs
ヨーロッパの狩猟採集民族は家畜化した豚を食べていた
Michael Balter
先史時代の豚のDNA分析から、8.5kaに中東の農夫がヨーロッパへと移動した際、ヨーロッパ土着の漁民は豚を飼うという中東の習慣を引き継いだらしい。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
中石器エルテベレ文化に家畜ブタ

Letters
Evidence-Based Environmental Laws for China
中国に対する証拠に基づいた環境法
Xiushan Li, Josef Settele, Oliver Schweiger, Yalin Zhang, Zhi Lu, Min Wang, and Juping Zeng

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Research
Perspectives
The Curious Behavior of the Milky Way's Central Black Hole
天の川銀河の中心のブラックホールの興味深い振る舞い
Jeremy D. Schnittman
Wang et al.の解説記事。
天の川の中心に存在する超巨大ブラックホールのX線の観測から、例になく効率の悪い周囲のガスの集積を説明する手だてが得られるかもしれない。

Minimizing Caribbean Tsunami Risk
カリブ地域の津波のリスクを最小化する
Christa von Hillebrandt-Andrade
カリブ地域の津波に対するリスクを理解し備えようとする努力が実り始めている。

Reports
Dissecting X-ray–Emitting Gas Around the Center of Our Galaxy
我々の銀河の中心付近のX線を放出するガスを分析する
Q. D. Wang, M. A. Nowak, S. B. Markoff, F. K. Baganoff, S. Nayakshin, F. Yuan, J. Cuadra, J. Davis, J. Dexter, A. C. Fabian, N. Grosso, D. Haggard, J. Houck, L. Ji, Z. Li, J. Neilsen, D. Porquet, F. Ripple, and R. V. Shcherbakov
ブラックホールと周囲のガスとの相互作用がX線の分析から明らかに。

Electron Acceleration in the Heart of the Van Allen Radiation Belts
ヴァン・アレン放射帯の中心部における電子の加速
G. D. Reeves, H. E. Spence, M. G. Henderson, S. K. Morley, R. H. W. Friedel, H. O. Funsten, D. N. Baker, S. G. Kanekal, J. B. Blake, J. F. Fennell, S. G. Claudepierre, R. M. Thorne, D. L. Turner, C. A. Kletzing, W. S. Kurth, B. A. Larsen, and J. T. Niehof
地球の放射帯であるヴァン・アレン帯における電子の加速の証拠が人工衛星観測から得られた。

A Uranian Trojan and the Frequency of Temporary Giant-Planet Co-Orbitals
天王星のトロイと巨大惑星の時間的共軌道の周波数
Mike Alexandersen, Brett Gladman, Sarah Greenstreet, J. J. Kavelaars, Jean-Marc Petit, and Stephen Gwyn
カナダ・フランス・ハワイの共同観測から、天王星と軌道をシェアする天体の存在が明らかに。

Paleofluvial Mega-Canyon Beneath the Central Greenland Ice Sheet
グリーンランド氷床中央部の下にある過去の河川性巨大渓谷
Jonathan L. Bamber, Martin J. Siegert, Jennifer A. Griggs, Shawn J. Marshall, and Giorgio Spada
グリーンランド氷床の底には中央部から北縁へと長さ750kmにわたる谷が伸びている。

Social Learning of Migratory Performance
渡り行動の社会的学習
Thomas Mueller, Robert B. O’Hara, Sarah J. Converse, Richard P. Urbanek, and William F. Fagan
アメリカシロヅルは毎年の渡りの道筋を隣の鳥から学んでいる。