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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2013年8月22日木曜日

新着論文(Nature#7463)

Nature
Volume 500 Number 7463 pp377-496 (22 August 2013)

RESEARCH HIGHLIGHTS
Soil life predicts nutrient flow
土壌生物が栄養塩の流れを予測する
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://dx.doi.org/10.1073/ pnas.1305198110 (2013)
小麦栽培などの激しい土地利用はあらゆる種類の土壌生物を減らすことが知られている。土地利用よりも、土壌中のバイオマスが栄養塩サイクルをよく予測できることがヨーロッパの野外調査から分かった。

Global heat waves on the rise
全球的な熱波が増加
Environ. Res. Lett. 8, 034018 (2013)
Potsdam Institute for Climate Impact ResearchとComplutense University of Madridによるモデルシミュレーションから、排出されるCO2の量がどうあれ、2040年には月々の地表面温度が平均値から3σの範囲を超えるものが20%に達することが示された。今の段階で既に5%に達している(2012年のアメリカ全土、2011年のテキサス州の熱波など)。排出量が抑えられた場合、2040年以降に温度は安定化するが、現在の排出が維持された場合は熱波はさらに頻発化すると考えられている。

Bone-eating worms in icy seas
凍える海に住む骨食いワーム
Proc. R. Soc. B 280, 20131390 (2013)
研究グループが南極の海底に置いた鯨の骨に対して巣食っていた新種のワーム(Osedax antarcticus)が確認された。同じところに置いたマツやオークの厚板は通常の場合と異なりほとんど手つかずのまま残されていた。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Bone-eating worms thrive in the Antarctic
Amanda Mascarelli

SEVEN DAYS
Amazon drilling
アマゾンの掘削
エクアドルの大統領Rafael Correaはアマゾン熱帯雨林における石油掘削に着手することを決定した。

Space dust trails
宇宙ゴミの足跡
2月にロシアのChelyabinskで空中爆発した隕石が成層圏にもたらしたダストの雲がどのように広がったかがNASAによって追跡された。爆発から数時間以内には40kmの高度に達し、その後数日間に渡って北半球の大気上層へと拡散したことが人工衛星観測と大気循環モデルから分かった。

Kepler kaput
ケプラーのおしまい
NASAは故障したケプラー宇宙望遠鏡の復旧作業を中止することを公表した。方向を安定させるための車輪の故障が原因で、観測ができなくなっていた。本来は2012年までのミッションであったが、2016年まで延期されていた。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
修復不能のケプラー、成果はこれから

Hydroelectric halt
水力発電の中断
7月に発生した洪水によって数千人が死亡した事件の要因が水力発電用のダム建設であるという環境団体の主張をうけて、インド最高裁判所は新たなダム建設を中断することを命令した。専門家による精査がなされる予定となっている。
>より詳細な記事(Nature NEWS BLOG)
Indian court halts projects in wake of calamitous monsoon
Davide Castelvecchi

Carnivore misidentified for decades
何十年ものあいだ特定されなかった肉食動物
オリンギート(olinguito; Bassaricyon neblina)と名付けられた新種のほ乳類がエクアドルのアンデス山脈にて発見された。100年以上の間、近縁のolingoと取り違えられていた。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Cute mammal is first carnivore discovered in Western Hemisphere for 35 years
Beth Mole
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
新種の肉食哺乳類、オリンギート

NEWS IN FOCUS
Forecasts turn tide on silt
予報は泥を逆転させる
Jeff Tollefson
ハリケーン・アイリーンが2011年8月にアメリカ東海岸を襲ったとき、洪水がもたらした泥が飲料水を引いている河川水をひどく濁らせた。それを受けて、ニューヨーク州は飲み水を守る革新的なシステムを開発しようとしている。

Half of 2011 papers now free to read
2011年の論文の半分は今は無料で読めるように
Richard Van Noorden
オープンアクセスの研究論文の擁護を加速せよ。

Big horns clash with longevity in sheep
羊においては大きな角は寿命と衝突する
Ewen Callaway
小さな角の遺伝子は性的な適合度(sexual fitness)を低くするが、一方で寿命を伸ばす。

US regulation misses some GM crops
アメリカの規制がいくつかの遺伝子組み換え作物を見落とす
Heidi Ledford
遺伝子組み換え技術の監視システムに穴が見つかったことを受けて、科学者は特産物の予備調査を行う。

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Astrophysics: Twinkling stars
天文物理学:きらめく星々
Jørgen Christensen-Dalsgaard
Bastien et al.の解説記事。
>関連した記事(Nature注目のハイライト)
太陽類似星の表面重力の測定

LETTERS
An observational correlation between stellar brightness variations and surface gravity
星の光度変動と表面重力の観測的な相関
Fabienne A. Bastien, Keivan G. Stassun, Gibor Basri & Joshua Pepper
星の表面重力を正確に計測することは難しい。新たに見い出された相関関係から、可視光の光度変動から非常に良い精度で表面重力を推定することが可能に。

Onset of deglacial warming in West Antarctica driven by local orbital forcing
地域的な軌道要素フォーシングによって引き起こされる西南極氷床の最終退氷期の温暖化の始まり
WAIS Divide Project Members
 最終退氷期における南半球の温暖化の原因については2つの対立仮説がある。一つは「北半球の温暖化がきっかけとなり、熱が南半球へと伝播した」というもの(東南極氷床の温暖化は18ka頃で北半球より後であったことが観察されている)。もう一つは「ローカルな日射量変動がきっかけであり、北半球とは独立していた」というものである。
 西南極氷床から得られた1年ごとの解像度を持つアイスコアから、降水量の増加はCO2濃度や北半球の寒冷化・東南極氷床の温暖化と一致して18ka頃から増加し始めるが、温度はそれに2,000年先だって上昇していたことが示された。おそらく南極をとりまく海氷がローカルな日射量の増加によって減少したことが原因と思われる。
>関連した記事(Nature注目のハイライト)
南極の退氷を駆動する局地的な条件

Digit loss in archosaur evolution and the interplay between selection and constraints
主竜類進化における指の消失と、選別と制約の間の相互作用
Merijn A. G. de Bakker, Donald A. Fowler, Kelly den Oude, Esther M. Dondorp, M. Carmen Garrido Navas, Jaroslaw O. Horbanczuk, Jean-Yves Sire, Danuta Szczerbińska & Michael K. Richardson
進化には自然選択と発生的制約との相互作用が関与している(例えば、進化の過程で肢から指が失われる場合など)。ナイルワニおよび5種の鳥類の指の減少について。