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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年8月29日木曜日

新着論文(Nature#7464)

Nature
Volume 500 Number 7464 pp501-618 (29 August 2013)

EDITORIALS
Hidden heat
隠れた熱
 近年、赤道太平洋はラニーニャ様のフェーズに入っており、全球の温暖化を寒冷化させている(温暖化のハイエタス)。1980年代は逆にエルニーニョ様であったが、1999年以降ラニーニャが卓越している。
 それが温暖化理論を覆すことに繋がるわけではないが、最近になって気候感度(CO2が倍増した時に地球がどれほど温暖化するか)の見直しもなされている。前回のIPCC第4次報告書では気候感度は2.0-4.5℃と推定されたが、最新の政策決定者向けの草稿では1.5-4.5℃と、やや下向きに修正された。
[以下は引用文]
Although scientists understand the basic physics, nobody can know how the numbers will turn out, as shown by the various temperature projections. Plenty of other lines of evidence, including palaeoclimate data and modern modelling experiments, support the higher end of these.
科学者は基本物理を理解しているものの、温度上昇予測のばらつきに示されているように、誰にも正確な数字は分からない。古気候データや数値モデル実験を含む、豊富にある他の証拠は、こうした気候感度のうち高い方の値を支持している。

WORLD VIEW
A coordinated approach is key for open access
うまくコーディネートされた方法がオープンアクセスには重要だ
「ヨーロッパがオープンアクセスで世界を牽引するには協力と明確な目標設定が必要不可欠だ」、とChristoph Kratkyは言う。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Australia’s record rains lowered sea level
オーストラリアの記録的な雨が海水準を下げる
Geophys. Res. Lett. http://doi.org/ngx (2013)
人工衛星と潮位計の記録から、2010年初頭から2011年後半にかけて、海水準が7mm低下しており(年間3mmの早さで上昇しつつある)、同時に特にオーストラリア大陸の水量が増加していることが示された。土地が平坦であることが海への水の流出を抑えているらしい。クイーンズランドで発生した大規模な洪水などはラニーニャの影響が大きいと考えられている。
>話題の論文
Australia's unique influence on global sea level in 2010–2011
John T. Fasullo, Carmen Boening, Felix W. Landerer, R. Steven Nerem

Whales hear the noise
鯨はノイズを聞く
Proc. R. Soc. B 280, 20130657 (2013)
カリフォルニア南部におけるシロナガスクジラ(blue whales; Balaenoptera musculus)の調査から、軍事ソナーを真似たノイズを発すると、特に深場にいる鯨が餌をとるのをやめ、泳ぎ去ることが分かった。ヒゲクジラもまたこうした人為的な影響を受けている可能性があるという。

SEVEN DAYS
Telescope strike
望遠鏡のストライキ
チリのALMA宇宙望遠鏡で働く労働者がストライキを起こし、稼働が停止している。195人の、現地で雇われた技術者や事務職員が中心となり、給料・ボーナスの値上げやシフトを短くすることなどを訴えている。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
ALMA observatory halts work amid labour dispute
Alexandra Witze

WISE up again
WISEが復活
NASAのWide-field Infrared Survey Explorer (WISE)が月の近くにある小天体を追跡するためのミッションのために復活することに。

Old globe
古い地球儀

新大陸を描いた最も古い地球儀が発見された。グループフルーツほどの大きさのダチョウの卵に描かれたもので、放射性炭素年代測定からAD1504のものであると推定されている。これまで最も古いと考えられていたAD1510の銅製のLenox Globeはこれをモデルにして作られたと思われる。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
ダチョウの卵に描かれた小さな北米大陸

Fukushima leak
フクシマの漏れ

福島第一原発から汚染された冷却水が30万リットル漏れ出したことを受け、原子力規制委員会は深刻度のレベルを1から3へと引き上げた。汚染水は海水面より50m高いところに漏れたと考えられており、いずれ海へと流出することが懸念されている。

Wildfires rage
森林火災が猛威を振るう
8/23のヨセミテ国立公園のものを含め、40の大規模森林火災がアメリカ西部を襲っている。これを受けてカリフォルニア知事のJerry Brownは8/22に緊急事態宣言を発令した。アメリカ政府は森林火災に立ち向かうために今年で既に12億ドル以上を費やしているという。

Flood aftermath
洪水の余波
スーダンを襲った大雨と洪水によって48人が死亡し、70人以上がケガをした。洪水による衛生悪化が懸念されている。53,000カ所の野外トイレが破壊され、ここ二週間でマラリアの数も増加している。

NEWS IN FOCUS
Green fuels blast off
グリーンな燃料が噴出
Alexandra Witze
ヒドラジンよりも推進燃料を使用することによって人工衛星の効率が上がり、毒性も低くなる。

Summer storms bolster Arctic ice
夏の嵐が北極圏の氷を促進する
Lauren Morello
今年のサイクロンは北極圏の氷に執行猶予を与えた。

African genes tracked back
アフリカの遺伝子がトラックバックされる
Erika Check Hayden
初期人類の移動を追跡することで、考古学的・言語学的記録が広がりを見せる。

CORRESPONDENCE
Arctic: Speed of methane release
北極圏:メタン放出の速度
Frans-Jan W. Parmentier & Torben R. Christensen
Whitemanらは北極海が開けることは、50Gtものメタンが急激に大気へと放出されるため、恩恵よりも損失のほうが大きいと指摘しているが、北極海からのメタン放出はよりゆっくりしたものである可能性が高いため(Parmentier et al., 2013, NCC)、彼らの指摘は間違っている。
>話題の論文(Nature Climate Change#March 2013 "Review")
The impact of lower sea-ice extent on Arctic greenhouse-gas exchange
より少ない海氷範囲が北極の温室効果ガス交換に与える影響
Frans-Jan W. Parmentier, Torben R. Christensen, Lise Lotte Sørensen, Søren Rysgaard, A. David McGuire, Paul A. Miller & Donald A. Walker
2012年9月に北極の海氷範囲は記録的な減少を示し、1979-2000年平均の半分にまで減少した。海氷減少は人為起源の気候変動の結果と考えられているものの、それが大気-海洋間の温室効果ガスの交換にどのような影響をもたらすかについてはよく分かっていない。多くの研究が陸・海洋・大気の相互作用を見落としている。このレビュー論文では、現在の北極圏や高緯度の生態系に関する知識が、海氷後退が温室効果ガスの交換にどのような影響を与えるかの予測にどれほど役立つかについて評価する。

Arctic: Uncertainties in methane link
北極圏:メタンのリンクの不確実性
Dirk Notz, Victor Brovkin & Martin Heimann
Whitemanらが指摘するような、海洋底堆積物の温暖化が原因で起きる急激なメタン放出は地質学記録からは支持されない。最終退氷期に放出されたメタンは海からのものではないことが同位体記録から指摘されている。近年の大気中のメタン濃度増加も必ずしも北極圏の海から放出されるものとは限らない。確かに北極圏の大陸棚からメタンが放出されている証拠はあるが、温暖化が原因なのか自然変動かはまだ解決していない。

Gail Whiteman, Chris Hope and Peter Wadhams respond:
Gail Whiteman、Chris Hope、Peter Wadhamsの返答:
2005年以降、海氷後退は加速しており、シベリア沖の夏の海水温は0℃を数℃上回っている(Bates et al., 2013, BG)。それが原因となって大陸棚の永久凍土が急速に融け始めている。
>話題の論文
Summertime calcium carbonate undersaturation in shelf waters of the western Arctic Ocean – how biological processes exacerbate the impact of ocean acidification
N. R. Bates, M. I. Orchowska, R. Garley, and J. T. Mathis
Biogeosciences, 10, 5281-5309 (2013).

Arctic: Warming impact is uneven
北極圏:温暖化の影響は一様でない
Janis Hoberg & Francisco Ascui
Whitemanらが指摘するように、永久凍土の融解はコストの高いメタン排出に繋がる。しかし海氷の後退は新たな輸送航路、石油・ガス・鉱物資源を生み、それらの恩恵に浴する国は一様ではないだろう。先住民はますます困窮すると思われる。こうしたコスト/恩恵の不平等性は北極圏のガバナンスにおいて新たなアプローチを要請している。

>話題の記事(Nature#7459 "COMMENT")
Climate science: Vast costs of Arctic change
気候科学:北極圏の変化の莫大なコスト
「北極圏の永久凍土の融解によって放出されるメタンは将来への悪影響をもたらす」と、Gail Whiteman、Chris Hope、Peter Wadhamsは言う。

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Forum
Biogeochemistry: Ancient algae crossed a threshold
生物地球化学:古代の藻類は閾値を超えた
Richard D. Pancost, Marcus P. S. Badger & John Reinfelder
Bolton & Stollの解説記事。
過去700万年間にわたる堆積物コアから得られた円石藻の殻のδ13C記録から、大気中CO2濃度が低い時には、円石藻は石灰化よりも光合成に用いるために重炭酸イオンを取っておくことが分かった。

Climate lessons
気候の教訓
Richard D. Pancost, Marcus P. S. Badger

Sea changes
海の変化
John Reinfelder

Astrophysics: Radioactive glow as a smoking gun
宇宙物理学:動かぬ証拠としての放射光
Stephan Rosswog
Tanvir et al.の解説記事。
持続時間の短いγ線バーストに続いて赤外線放射が観測されたことは、コンパクトな連星系の合体が原因であり、宇宙で最も重い原子核が形成されるという2つの仮説を裏付けるものだ。

Astrophysics: A dark cloud unveils its secrets
宇宙物理学:自らの秘密を明かす暗い雲
Jonathan C. Tan
我々の宇宙では太陽の数十倍を超える質量を持つ星が支配的である。しかし、収縮している最中のガス雲と塵の観測から、このような星の形成理論に疑問が投げかけられている。

LETTERS
A ‘kilonova’ associated with the short-duration γ-ray burst GRB 130603B
短期間のγ線バースト(GRB 130603B)に伴う’キロノヴァ’
N. R. Tanvir, A. J. Levan, A. S. Fruchter, J. Hjorth, R. A. Hounsell, K. Wiersema & R. L. Tunnicliffe
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
ハッブル、「キロノヴァ」の存在を確認

A rigid and weathered ice shell on Titan
タイタンに存在する硬く風化した氷殻
D. Hemingway, F. Nimmo, H. Zebker & L. Iess
土星最大の衛星タイタンには厚さ40kmもの厚い氷の地殻が存在する。

Late Miocene threshold response of marine algae to carbon dioxide limitation
中新世後期の海洋性藻類の二酸化炭素制限に対する閾値応答
Clara T. Bolton & Heather M. Stoll
 新生代を通して大気中のCO2濃度は低下してきたが、石灰化や光合成に炭素を用いる海洋の藻類はそれに併せて石灰化部位のCO2濃度を自発的に増加させることで適応してきた。
 化石殻のδ18O・δ13Cと石灰化のモデルシミュレーションから、CO2濃度が低下するにつれて、円石藻が石灰化に重炭酸イオンを用いる割合を低下させてきたことが分かった。特にCO2濃度低いときにのみ、大きな殻を持つものと小さな殻を持つものとの間で炭素同位体の大きな差が見られ、それは中新世後期から鮮新世初期(7〜5 Ma)にかけて見られ始めることから、ここに細胞の炭素獲得戦略の閾値が存在すると考えられる。またこのタイミングは陸上植生の低CO2濃度への適応や全球の寒冷化・氷河化のタイミングとも一致している。

Rapid, climate-driven changes in outlet glaciers on the Pacific coast of East Antarctica
東南極の太平洋沿岸部の溢流氷河における急速で、気候によって駆動される変化
B. W. J. Miles, C. R. Stokes, A. Vieli & N. J. Cox
グリーンランドと西南極氷床では海へと流出する氷河(ocean-terminating outlet glacier)の速度が加速し、海水準上昇を招いていることが知られているが、東南極の溢流氷河が前進しているのか後退しているのかははっきりとしていない。
 東南極沿岸部における175地点の溢流氷河の観測から、同期した変化が確認された。1974-1990年には63%の氷河が後退、1990-2000年には72%が前進、2000-2010年には58%が後退していた。こうした傾向は南太平洋に面したより温暖な地域で顕著で、逆により寒冷なロス海では有為な変化は見られなかった。太平洋に面した地域の変化はSAM(Southern Annular Mode)による大気の変動モードの影響が大きいと思われる。従来考えられてきたよりも、東南極氷床(世界最大の氷床)は外部強制力に対して脆弱である可能性がある。

Anaerobic oxidation of methane coupled to nitrate reduction in a novel archaeal lineage
新規古細菌系統における硝酸還元と共役した嫌気的メタン酸化
Mohamed F. Haroon, Shihu Hu, Ying Shi, Michael Imelfort, Jurg Keller, Philip Hugenholtz, Zhiguo Yuan & Gene W. Tyson