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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年8月14日水曜日

新着論文(GBC, PO, QSR)

Global Biogeochemical Cycles
Global trends in surface ocean pCO2 from in situ data
A. R. Fay, G. A. McKinley
近年の気候変動・変化に対して海の炭素吸収がどのように応答しているかを調べるために、全球を16の渦スケールのbiomeに分けてそれぞれ評価。1981-2010年に十年〜数十年の傾向が確認された。十年規模の傾向は、観測の始まりと終わりの年に強く依存した。より長い時間スケールでは熱帯・亜熱帯域のpCO2は大気と同じかやや遅い速度で上昇している(大気からの大きな取り込みと深層からのわずかな供給)。高緯度域はデータが不足しており長期傾向はよく分からない。気候変動に関連して大気pCO2よりもはるかに早く上昇する傾向を示すような海域もあった。南大洋ではSAMによって吸収能は2000年代初頭から強化されている。一方北大西洋の熱帯・亜熱帯域では温暖化によって2000年代半ば頃からpCO2は上昇傾向にあり(pCO2は温度と正相関するため)、このまま長期的に温暖化すると、炭素の取り込み能力が低下すると思われる。
>関連した記事(Nature Climate Change#August2013 "Research Highlights")
Ocean carbon
海の炭素

1981-2010年における海洋観測記録から、海水のpCO2が大気のCO2濃度とほぼ同程度の早さか、やや遅く上昇していることが示された。短い時間スケールでは上昇速度に地域性が大きいという。また北大西洋の温暖化に伴うCO2の溶解度低下によって海のCO2吸収力が弱まることが懸念されている。

Annual cycle of air-sea CO2 exchange in an Arctic Polynya Region
B. G. T. Else, T. N. Papakyriakou, M. G. Asplin, D. G. Barber, R. J. Galley, L. A. Miller, A. Mucci 
カナダ北極圏のCape Bathurst地域のポリニヤにてpCO2などの変動を観測し、2007-2008年のCO2フラックスを推定。総じて吸収源として寄与している。最も大きなCO2の取り込みは海氷の形成が始まる、風速が最大となる秋であった。観測期間の風速は平年値よりは25-35%強く、また東風が卓越しており、結氷時期が早まり、ポリニヤが開く時期がそれぞれ1ヶ月ほど早まったらしい。その結果、CO2の吸収能力は強まったと考えられる。冬のCO2吸収のうち50%はleadやポリニヤの小さな隙間から生じている。

The influence of net community production and phytoplankton community structure on CO2 uptake in the Gulf of Alaska
Hilary I. Palevsky, Francois Ribalet, Jarred E. Swalwell, Catherine E. Cosca, Edward D. Cokelet, Richard A. Feely, E. Virginia Armbrust, Paul D. Quay
海洋のCO2吸収能力は生物活動によって支配されているが、その力学はよく分かっていない。アラスカ湾にて行われたCO2フラックス・生産性・植物プランクトンの豊富度などの連続観測の結果について。「Alaskan GyreのHNLC海水」と「アリューシャン諸島の沿岸部からもたらされる海水」との境界でもっとも大きなCO2の吸収が確認された。境界では2つの小さな(<20μm)植物プランクトンが卓越していた。鉄に富んだ沿岸水と鉄に枯渇したAlaskan Gyre水との混合が生物活動やCO2吸収を刺激していると考えられる。

On the potential role of marine calcifiers in glacial-interglacial dynamics
Anne Willem Omta, George A. K. van Voorn, Rosalind E. M. Rickaby, Michael J. Follows
アイスコアから南極の気温と大気中CO2濃度変動とのきわめて良い相関が確認されており、ともにノコギリ型の変動を示す。生態学的プロセスが大きく寄与している可能性をモデルから示す。

A joint atmosphere-ocean inversion for the estimation of seasonal carbon sources and sinks
K. Steinkamp, N. Gruber
モデルの逆解析を利用して大気-海洋-陸域の炭素の1992-1996年の収支を推定。海洋の炭素吸収は年間1.8 PgCで、陸域の取り込みは1.3 PgCと推定された。熱帯雨林からの炭素放出は年間1.1 ± 0.9 PgCと推定され、森林破壊の速度からの推定値と整合的である。ただし、熱帯雨林ごとに吸収・放出の方向が異なる。

Paleoceanography
Planktonic foraminiferal area density as a proxy for carbonate ion concentration: A calibration study using the Cariaco Basin Ocean Time Series
Brittney J. Marshall, Robert C. Thunell, Michael J. Henehan, Yrene Astor, Katherine E. Wejnert 
カリアコ海盆にて行われた2005-2008年のセジメントトラップから、G. ruber (pink)とG. saccliferの断面密度(area density)が炭酸イオン濃度の指標になるかどうかを評価。種ごとに傾きは異なるものの、有為な相関が確認された。
※炭酸系そのものが他の変数(温度・栄養塩)などと似たような変動を示すため、本当に炭酸イオンだけが独立に石灰化プロセスに作用しているのだろうか??

What caused the long duration of the Paleocene-Eocene Thermal Maximum?
Richard E. Zeebe
PETMによる5℃を超す温暖化は少なくとも5万年間は継続したと推定されている。しかし従来の炭素循環・気候モデルはそうした長期的な温暖化をうまく再現できていない。堆積物への熱の伝播を考慮し、モデルにメタンハイドレートへの影響を取り入れたところ、1万年間以上にわたってゆっくりと炭素が放出される減少が確認された(bleeding)。深層水の温度上昇による、「海洋堆積物中の微生物活動の代謝過程の促進」と「メタンハイドレートが蓄積しなかったこと」の2つがPETMの温暖化の継続に重要だったのではなかろうか。

Agulhas salt-leakage oscillations during abrupt climate changes of the Late Pleistocene
Gianluca Marino, Rainer Zahn, Martin Ziegler, Conor Purcell, Gregor Knorr, Ian R. Hall, Patrizia Ziveri, Henry Elderfield
南アフリカ沖で採取された堆積物コアからMIS8-5(255-75ka)のAgulhas海流の塩分変動を復元。AMOCの変動に対応していると思われる千年スケールの塩分変動が確認された。AMOCが弱化することによってハドレー循環と南半球の偏西風の位置が変化し、それがAgulhus海流にも影響したと考えると整合的である。Agulhus海流の強化は北大西洋への熱塩供給を強化するため、一度弱化したAMOCの回復過程に重要であったと思われる。AMOCの調節器としてインド洋から大西洋への塩分輸送が重要であったと考えられる。

A record of the last 460 thousand years of upper ocean stratification from the central Walvis Ridge, South Atlantic
Paolo Scussolini, Frank J. C. Peeters 
大西洋南東部(南アフリカの西沖)で採取された堆積物コアの浮遊性有孔虫δ18Oを用いて過去460kaのAgluhas塩分流出を復元し、AMOCへの影響を評価。表層・温度躍層水に棲息する有孔虫のδ18Oの差を成層化の指標したところ、氷期-間氷期サイクルが確認された。風系かAMOCの変化が原因?またδ13Cも似た変動を示し、間氷期に差が最大値を示した。中層水の水塊構造の変化と生物ポンプの効率が増したことが原因?

Quaternary Science Reviews
Twentieth century sea-level rise inferred from tide gauge, geologically derived and thermosteric sea-level changes
Masao Nakada , Jun'ichi Okuno , Masayoshi Ishii
世界の検潮所の記録と塩沢の堆積物記録を用いて21世紀の海水準上昇の速度と原因を推定。地域ごとに異なる熱膨張的な海水準の変化と山岳氷河・氷床からの融水の影響も考慮している。IPCC AR4に整合的な結果が得られたが、グリーンランド氷床の融解はそれほど必要でない可能性が示唆された。山岳氷河と南極氷床の寄与が大きい?
※以前AORIでセミナーしていただいた内容の一部。

An alternative suggestion for the Pliocene onset of major northern hemisphere glaciation based on the geochemical provenance of North Atlantic Ocean ice-rafted debris
Ian Bailey , Georgia M. Hole , Gavin L. Foster , Paul A. Wilson , Craig D. Storey , Clive N. Trueman , Maureen E. Raymo
2.72Maの北大西洋高緯度域へのIRDの供給は北半球の氷河化(NHG)の証拠と考えられる。しかしNordic Seaで得られた堆積物記録と表面照射年代から復元された北米氷床の範囲との間には年代値の食い違いが確認されており、またIRDの起源も不確かなままである。IRD中の長石をLA-ICPMSで測定し、起源を推定したところ、北米氷床が2.52Maには拡大していたことが示された。最古のIRDの証拠は2.64Maとわずかに古く、グリーンランドやスカンジナビア氷床由来の可能性がある。
>関連した論文
Flux and provenance of ice-rafted debris in the earliest Pleistocene sub-polar North Atlantic Ocean comparable to the last glacial maximum
Ian Bailey, Gavin L. Foster, Paul A. Wilson, Luigi Jovane, Craig D. Storey, Clive N. Trueman, Julia Becker
Earth and Planetary Science Letters 341–344, 222–233 (2012).
北大西洋(52ºN)の堆積物コアから得られたIRDのfelspar(長石)中の鉛同位体をLA-ICPMSで測定し、IRDの起源となった母岩を推定。特に北半球の氷河化が始まった最初の頃に対応するMIS100(~2.52Ma)に注目。氷期初期と極大期とでIRDの起源が変化。LGMの時のIRDと似た性質のものが運搬されていたことが分かった。またMIS100には氷山が多く発生していたことが示唆される。

Responses of the deep ocean carbonate system to carbon reorganization during the Last Glacial–interglacial cycle
Jimin Yu , Robert F. Anderson , Zhangdong Jin , James W.B. Rae , Bradley N. Opdyke , Stephen M. Eggins
太平洋・大西洋熱帯域で得られた堆積物コアの底性有孔虫のB/Caを用いて氷期-間氷期サイクルの深層水の炭酸イオン濃度を復元。大西洋熱帯域の炭酸イオン濃度は~65μmol/kg変化し、原因としては北大西洋でNADWが形成される際の表層水の炭酸イオン濃度の変化(preformed)が考えられる。一方の太平洋の深層水にはあまり変化が見られない(<15μmol/kg)。LGMにおける炭酸イオン濃度と炭酸塩フラックスとの類似性は、深層水の炭酸塩の溶解が保存をコントロールしていることを強く物語っている。
>関連した論文
Loss of Carbon from the Deep Sea Since the Last Glacial Maximum
Jimin Yu, Wally S. Broecker, Harry Elderfield, Zhangdong Jin, Jerry McManus, Fei Zhang
Science 330, 1084-1087 (2010).
※この間、目からウロコが出た論文。