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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年9月5日木曜日

新着論文(Nature#7465)

Nature
Volume 501 Number 7465 pp5-130 (5 September 2013)

EDITORIALS
Nuclear error
原子力の過ち
日本は国際協力の中で福島第一原発事故の危機を研究し、危機を軽減する努力をしなければならない。

The nitrogen fix
窒素固定
単純な鉄の複合体が、全球でどのようにアンモニアが供給されているかをアップデートする機会を与えてくれる。

WORLD VIEW
Deep-sea trawling must be banned
深海トローリングは禁止されなければならない
「産業の関心事によって、ヨーロッパ連合が破壊的な漁獲方法を禁止すべきかどうかの投票から脱線することがあってはならない」と、Les Watlingは言う。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Close companion for Uranus
天王星の隣人
Science 341, 994–997 (2013)
天文学者によって天王星と軌道を共有する天体が初めて発見された。2011 QF99と名付けられたこの天体は直径が60km程度で、天王星のやや前を周回している。シミュレーションからは300万年近くその場所に留まっていることが示唆されている。もともと太陽系外の不安定な軌道にあり、巨大惑星の重力に捕獲され、その後一時的に太陽系の最も外の軌道を周回するようになったのではないかと考えられている。
>話題の論文
A Uranian Trojan and the Frequency of Temporary Giant-Planet Co-Orbitals
天王星のトロイと巨大惑星の時間的共軌道の周波数
Mike Alexandersen, Brett Gladman, Sarah Greenstreet, J. J. Kavelaars, Jean-Marc Petit, and Stephen Gwyn
カナダ・フランス・ハワイの共同観測から、天王星と軌道をシェアする天体の存在が明らかに。

Greenland’s Grand Canyon
グリーンランドのグランド・キャニオン
Science 341, 997–999 (2013)
レーダー観測から、グリーンランドの基部を南北750kmにわたって横断する渓谷が発見された。場所によっては800mの深さがある。おそらくグリーンランド氷床が成長し始めた350万年前頃に河川によって下刻されたと考えられている。氷床から水を排出するのに重要な役割を担っていると思われ、南極と異なりグリーンランド氷床に氷底湖がほとんどないことの一つの説明になるかもしれない。
>話題の論文
Paleofluvial Mega-Canyon Beneath the Central Greenland Ice Sheet
グリーンランド氷床中央部の下にある過去の河川性巨大渓谷
Jonathan L. Bamber, Martin J. Siegert, Jennifer A. Griggs, Shawn J. Marshall, and Giorgio Spada
グリーンランド氷床の底には中央部から北縁へと長さ750kmにわたる谷が伸びている。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
グリーンランド氷床の下に巨大峡谷

Geoengineering has its limits
地球工学には限界がある
J. Geophys. Res. http://doi. org/nmz (2013)
12の気候モデルを用いて4倍CO2濃度の状況下で太陽放射管理によって気候がどのようになるかが評価された。北極海の海氷が97%消失しないように全球の平均気温を一定に保つようにしても、地域ごとの気温や降水の変化は免れず、特に北極圏は温暖化し、熱帯域は寒冷化することが示された。温室効果ガス濃度が上昇した状態では、全球を同時に・均質に冷やすことは難しいと思われる。
>話題の論文
Climate model response from the Geoengineering Model Intercomparison Project (GeoMIP)
Ben Kravitz, Ken Caldeira, Olivier Boucher, Alan Robock, Philip J. Rasch, Kari Alterskjær, Diana Bou Karam, Jason N. S. Cole, Charles L. Curry, James M. Haywood, Peter J. Irvine, Duoying Ji, Andy Jones, Jón Egill Kristjánsson, Daniel J. Lunt, John C. Moore, Ulrike Niemeier, Hauke Schmidt, Michael Schulz, Balwinder Singh, Simone Tilmes, Shingo Watanabe, Shuting Yang, Jin-Ho Yoon

Puppeteer squid haunts the deep
操り人形師のイカが深海に現れる
Proc. R. Soc. B 280, 20131463 (2013)
深海に生息するイカの一種(Grimalditeuthis bonplandi)の触腕は普通のイカに比べて吸盤やかぎ爪がなく、非常に脆いことが知られていた。自然の状態で初めてその触腕の使われ方が観察され、小さい生き物を真似て獲物を誘っていることが分かった。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Deep-sea squid uses tentacles to attract prey
Daniel Cressey
※動画あり
>関連した記事(Science#6149 "News of the Week")
Reeling Them In
それらを引き込む
イカは通常1対の長い触手を持っており、それで獲物を捕らえている。しかし、深海に住むイカの一種(Grimalditeuthis bonplandi)の触手は非常に脆く、どのように獲物を捕らえているのかが分かっていなかった。ROVを用いたビデオ撮影から、それが生体発光によって低い振動数の振動を発し、獲物を引き寄せていることが明らかに。PROS Bに論文。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
トックリイカ、華奢な触腕の操り方

Marine plastic fantastic for microbes
微生物にとって素敵な海のプラスチック
Environ. Sci. Technol. http://doi.org/m4q (2013)
海に浮かぶプラスチックゴミが新たな生命圏(プラスチック生命圏; plastisphere)を生み出していることが海洋観測から示された。周囲の海水とは異なる、複雑な食物網を形成しており、多様性も大きいという。

SEVEN DAYS
Japan’s rocket woes
日本のロケットの悲痛
JAXAはイプシロン-1ロケットが打ち上げの直前に中止となった原因を探っている。

Fukushima fixes
フクシマの修理
日本政府は福島第一原発の安全性を高めるために470億円を投入することを決断した。
>より詳細な記事
Fukushima leaks 18 times worse than first thought
Quirin Schiermeier& Jay Alabaster

China Moon rover
中国の月探査機
中国は今年の終わりに月の探査機(Chang'e-3)を打ち上げることを公表した。

Dolphins infected
感染したイルカ
ニューヨーク州とノースカロライナ州との間の海岸に打ち上げられた大量のバンドウイルカ(bottlenose dolphins; Tursiops truncatus)の死因はウイルスが原因と考えられている。ウイルス感染はあと数ヶ月は続くと推定されている。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
米でイルカの大量死、原因はウイルス

Green institute
グリーン機関
ドイツのErlangenに再生可能エネルギーに対する研究機関が創設された。ドイツの野心的なエネルギー政策を支える予定となっている。
>関連した記事(Nature#7444 "FEATURES")
Germany’s energy gamble
ドイツのエネルギー・ギャンブル
Quirin Schiermeier
>関連した記事(Nature#7444 "EDITORIALS")
Energy crossroads
エネルギーの分かれ道
ドイツは今世紀中頃までに自国のエネルギー生産の80%を再生可能エネルギーで賄う目標を立てている。国民の理解や技術進展の早さを考えると、目標は計画よりも早く実現するかもしれない。現在は福島第一原発事故を受けて原発は次々に閉鎖され、ドイツは火力発電に頼っているため、短期的な排出削減目標は達成することは難しいだろうが、長期的には可能かもしれない。ただし一方で懐疑的な人は「ドイツがグリーン化に成功できなければ、世界全体がグリーン化に向かうことは難しい」とも指摘している。また国民に対して自宅の屋根に太陽光パネルを設置し、電気自動車に切り替えるなどのインセンティブをどのように与えるかについても明確な見通しは立っていない。

NEWS IN FOCUS
Brazil delays stargazing pact
ブラジルが天体観測の取り決めを遅らせる
Rafael Garcia

Floods spur mountain study
洪水が山の研究を加速させる
Jane Qiu
気候変化とその致命的な影響予測を受けて、ヒマラヤ地域の国家が行動を開始した。

Forest management plans in a tangle
森林管理計画がもつれている
Danielle Venton
外来種のカリフォルニア・ユーカリに対する保全努力が激化している。

NASA ponders Kepler’s future
NASAがケプラー宇宙望遠鏡の将来を熟考している
Ron Cowen
ケプラー宇宙望遠鏡は系外惑星探査を継続するか、或いは地球に接近する天体の位置を把握するために使われるか、岐路に立たされている。

FEATURE
Systems ecology: Biology on the high seas
システム生態学:外洋の生物学
Claire Ainsworth
いかにしてEric Karsentiが微生物を理解するために世界一周旅行に旅立ったかについて。
※写真多数
Tara Expeditions

COMMENT
Earth science: How plate tectonics clicked
地球科学:どのようにプレートテクトニクスが受け入れられたか
海底の磁気模様が大陸の移動と結びつけられた論文が公表されてから50年間たってようやく科学的なコンセンサスが得られたことについてNaomi Oreskesが説明する。

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Biogeochemistry: As different as night and day
生物地球化学:夜と昼と同じくらい違う
Christopher Still
Peng et al.の解説記事。
北半球の生態系の解析から、夜間の気温上昇が植物の成長に与える影響は、昼間の気温上昇が与える影響とは対称的であることが分かった。

LETTERS
Catalytic conversion of nitrogen to ammonia by an iron model complex
モデル鉄錯体による窒素からアンモニアへの触媒変換
John S. Anderson, Jonathan Rittle & Jonas C. Peters

Asymmetric effects of daytime and night-time warming on Northern Hemisphere vegetation
昼と夜の温暖化の非対称性が北半球の植生に与える影響
Shushi Peng, Shilong Piao, Philippe Ciais, Ranga B. Myneni, Anping Chen, Frédéric Chevallier, Albertus J. Dolman, Ivan A. Janssens, Josep Peñuelas, Gengxin Zhang, Sara Vicca, Shiqiang Wan, Shiping Wang & Hui Zeng
北半球において確認されている植生指数と昼間の気温の最高・最低値との相関関係は、温暖化が昼と夜で異なることで(夜間の温暖化が昼間のそれよりも大きい)、植生と炭素貯蔵とに影響が生じることを示唆している。
>関連した記事(Nature ハイライト)
植生の夜と昼の生産力

Evolutionary origins of the avian brain
鳥類の脳の進化学的な起源
Amy M. Balanoff, Gabe S. Bever, Timothy B. Rowe & Mark A. Norell

Video game training enhances cognitive control in older adults
ビデオゲーム・トレーニングが老人の認識能力を促進する
J. A. Anguera, J. Boccanfuso, J. L. Rintoul, O. Al-Hashimi, F. Faraji, J. Janowich, E. Kong, Y. Larraburo, C. Rolle, E. Johnston & A. Gazzaley