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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年9月16日月曜日

新着論文(NCC#Sep2013)

Nature Climate Change
Volume 3 Number 9 (September 2013)

Editorials
Carbon fix
炭素の修正
依存症から学ぶことのできる教訓(神経学・心理学的な意味において)が我々の多く炭素を放出するライフスタイルからの転換を助けるかもしれない。

Water forecasts
水の予報
気候変化が降水と洪水に与える影響が世界中の関心事となっている。

Correspondence
Field tests of solar climate engineering
太陽-気候エンジニアリングの野外実験
Stefan Schäfer, Peter J. Irvine, Anna-Maria Hubert, David Reichwein, Sean Low, Harald Stelzer, Achim Maas & Mark G. Lawrence
気候変化が人類共通の関心ごととなった今、気候工学のガバナンスに対して国際協力が必要とされている。鉄肥沃実験のように既に実行されたものもあれば、小さなスケールであれば太陽光反射の野外実験を行うべきだという意見も出てきている。しかしながら、国際的な同意が得られない限りは野外実験はなされるべきでない。

Commentaries
Overestimated global warming over the past 20 years
過大評価された過去20年間の地球温暖化
John C. Fyfe, Nathan P. Gillett & Francis W. Zwiers
最近の温暖化は気候モデルが予測していたものと比べるとはるかに小さい。それは外部強制力・モデル応答・気候そのものの変動性に伴う誤差の蓄積が原因と考えられる。

Uncertainty analysis in climate change assessments
気候変化アセスメントの不確実性分析
Richard W. Katz, Peter F. Craigmile, Peter Guttorp, Murali Haran, Bruno Sansó & Michael L. Stein
最新の統計法を用いることで、気候変化アセスメントに伴う不確実性の定量化を大きく改善できる可能性がある。

Powering Los Angeles with renewable energy
ロサンゼルスのエネルギーを再生エネルギーで賄う
Mayor Antonio R. Villaraigosa, Varun Sivaram & Ron Nichols
ロサンゼルスの街は「2020年までに電気の3分の1を再生エネルギーで賄う」という目標の3分の2を達成しつつある。世界のその他の大都市もロサンゼルスの例から技術的・経済的・政治的教訓を得ることができる。

News Feature
The pleasure principle
喜びの原則
Elisabeth Jeffries
依存症治療から学べる教訓から、人々の自然に対する姿勢を変える手助けが得られるかもしれない。

Snapshot
Flooding costs
洪水のコスト
Bronwyn Wake
近年、世界各地(東オーストラリア・インド・カナダ・中国など)で発生している洪水とそのコストについて。
>関連した記事(Nature#7445 "SEVEN DAYS")
The costs of storms
嵐のコスト
アメリカにおける巨大な雷雨(2億5千万ドル以上の被害をもたらすもの)の経済損失は1970年から2009年にかけて2倍に増加したことが、ドイツの保険会社Munich ReによってEGUにて報告された。雷雨へと繋がる気象状態の頻度が増していることが原因だと彼らは主張している。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Climate change brings stormier weather to the US
気候変化がアメリカにより嵐的な気象をもたらす
Quirin Schiermeier

Policy Watch
The nuclear paradox
原子力の矛盾
「低炭素エネルギー政策の一部としての、原子力発電所を新設するための補助金は果たして正当化されるのか?」をSonja van Renssenは評価している。

Research Highlights
Genetic pinch
遺伝的な苦境
Ecol. Lett. http://doi.org/ndr (2013)
環境変化を考える上で、遺伝的多様性(Genetic diversity)は耐性や適応にとって重要であるものの、見過ごされることが多い。ヨーロッパコウモリ(Plecotus austriacus)のニッチのモデリングと遺伝学的データについて。

Food miles debated
議論される食べ物のマイル
Environ. Resour. Econ. http://doi.org/ndv (2013)
食糧の輸送に伴うCO2排出(food miles)の削減が重要な関心事になっている。特に反芻動物に着目して世界中の食糧の消費に伴うCO2排出量が推定された。

Climate-driven conflicts
気候がきっかけとなる争い
Science http://doi.org/ncd (2013)
考古学・犯罪学・経済学・地理学・歴史学・政治学・心理学などの総合的な観点から、世界各国で気候変化と争いや政治的不信の発生頻度に関連があるかどうかが評価され、関連性が確認された。気候がより1σの範囲を超えてより温暖になったり、極端な降水現象が起きると、個人間の争いが4%、集団間の争いが14%増加することが示された。従って、2050年に期待される温暖化もまた人々の争いを増加させると思われる。
>話題の論文
Quantifying the Influence of Climate on Human Conflict
気候が人類の争いに与える影響を定量化する
Solomon M. Hsiang, Marshall Burke, Edward Miguel
気候変化が人類の争いの発生頻度に影響するかが関心を集めている。そうした関係性が確かに存在することの証拠が世界の主要な地域で得られた。気候が1σの範囲を超えてより温暖になったり、極端な降水現象が起きると、個人間の争いが4%、集団間の争いが14%増加することが示された。2050年には人類が住む場所の気候が2σ〜4σの範囲で平均値から逸脱すると予想されているため、人類の争いの発生頻度が増加すると思われる。

Soil in the wind
風の中の土壌
Glob. Change Biol. http://doi.org/nds (2013)
土壌の風化によって生じる塵が風によって運ばれることで、有機炭素が陸-大気-海の間を移動する。しかしながら、そうした塵の炭素循環はほとんど定量化されておらず、塵そのものの分解に伴うCO2排出もまた過小評価されている。シミュレーションでオーストラリアにおける塵の炭素循環をモデル化したところ、放牧地から放出される塵が大部分を占め、年間5.83 TgCO2相当の排出であることが示された。他の塵を多く排出する国においても正しく評価を行う必要がある。

State of knowledge
知識の状態
Bull. Am. Meteorol. Soc. http://doi.org/ndt (2013)
気候変化とともに異常気象の発生頻度も上昇傾向にあるように思われる。アメリカの冬季にそうした異常気象が沿岸部に与える影響が評価された。1950年代以降、熱帯低気圧をはみ出した嵐の発生頻度と強度とがともに上昇しており、さらにより沿岸部から離れつつあることが示された。物理的な原因の理解はまだ不足しているらしい。

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Research
News and Views
Game theory: Building up cooperation
ゲーム理論:協力を作る
Alessandro Tavoni
Vítor V. Vasconcelos et al.の解説記事。
危険な地球温暖化を避けるための野心的な排出削減目標は達成できるのだろうか?世界的な同意の達成に失敗した地域においては、ローカルな制裁機関の存在が成功に繋がることが新たな研究から示された。

Hydrology: Seasonal rain changes
水文学:季節的な降水の変化
Praveen Kumar
Xue Feng et al.の解説記事。
気候変化の結果、降水の異常や洪水・干ばつなどの極端な現象が増加することが示されている。新たな研究から、熱帯域の降水の季節性もまた変化しつつあることが示された。生態系と人間圏の両方に影響すると思われる。

Agricultural Impacts: Multi-model yield projections
農業への影響:複数のモデルが予測を行う
Timothy R. Carter
S. Asseng et al.の解説記事。
気候モデルを用いて将来の気候変化に対する作物生産の応答を調べ、予測することが可能であるが、それには国際協力体制と質の高いデータをモデル間で比較することが必要となる。

Perspectives
Coastal adaptation with ecological engineering
生態工学に対する沿岸部の適応
So-Min Cheong, Brian Silliman, Poh Poh Wong, Bregje van Wesenbeeck, Choong-Ki Kim & Greg Guannel
気候変化は沿岸部の管理に対して実用的・理論的問題を投げかけ、不確実性の大きな(だからこそリスクが大きいのだが)将来の問題に対して対処する計画を立てる必要性をもたらしている。塩沢・マングローブ・カキ礁における生態工学(ecological engineering)の3つの例を挙げて、この手法の相乗効果と利点とを示す。

First signs of carbon sink saturation in European forest biomass
ヨーロッパの森林バイオマスにおける炭素吸収飽和の最初の兆候
Gert-Jan Nabuurs, Marcus Lindner, Pieter J. Verkerk, Katja Gunia, Paola Deda, Roman Michalak & Giacomo Grassi
1950年代以降、ヨーロッパの森林は回復し、それまでの森林破壊によるバイオマス量の低下から炭素吸収源となっていた。それは今後数十年にわたって継続すると予測されていたものの、吸収能力が飽和に達している兆候が確認された。森林とその炭素吸収能力を持続させるためにも、政策決定者や森林管理者の迅速な対応が必要とされている。
>関連した記事(Nature姉妹紙 注目のハイライト)
重圧を受けているヨーロッパの森林

Letters
A bottom-up institutional approach to cooperative governance of risky commons
リスクの高い一般大衆の協力的ガバナンスに対するボトムアップ的な機関のアプローチ
Vítor V. Vasconcelos, Francisco C. Santos & Jorge M. Pacheco
気候変化に対する協力体制は、同意を守れない国家に対する制裁措置メカニズムがないことによって制限されている。新たな研究から、世界的な制裁機関を作るというこれまで通りのトップダウン的なアプローチではなく、”地域的な”制裁機関を作るというボトムアップ的なアプローチが広い協力体制を促進することが示された。

Future flood losses in major coastal cities
主要な沿岸都市部における将来の洪水の損害
Stephane Hallegatte, Colin Green, Robert J. Nicholls & Jan Corfee-Morlot
都市部の人口・資産増加が原因で、将来の沿岸部の洪水被害は増加すると思われる。136の地域に対する予測シミュレーションから、2005年には60億米ドルと推計されている被害額が、2050年には520億米ドルへと増加することが示された。この数値は社会経済的なものだけを考慮したものである。気候変化や土地沈降の影響をさらに考慮すると、許容可能な被害額を超えるため、護岸などを強化する必要がある。
>関連した記事(Nature姉妹紙 注目のハイライト)
世界の洪水損害の増加予測

Anthropogenic impact on Earth’s hydrological cycle
地球の水循環に対する人為的な影響
Peili Wu, Nikolaos Christidis & Peter Stott
陸上の降水量や河川流量は想像していたほど増加していないため、全球の水循環に対する人為的な影響ははっきりとしていない。モデルシミュレーションから、1950年代と1980年代の間には、対流圏のエアロゾル量の増加によって水循環が弱化したことが示された。1980年代以降は温室効果ガス濃度の増加によって逆に強化されているという。現在の傾向が続けば、将来も降水量は増加すると思われる。

Changes in rainfall seasonality in the tropics
熱帯域の降水の季節性の変化
Xue Feng, Amilcare Porporato & Ignacio Rodriguez-Iturbe
気候変化の結果、降水の年々変動や季節性が変化している。熱帯域の降水の観測記録から、変動の増加が季節間の振幅・開始時期・継続期間のシフトを伴っていることが示された。
>関連した論文
Patterns of the seasonal response of tropical rainfall to global warming
地球温暖化に対する熱帯域の降水の季節応答のパターン
Ping Huang, Shang-Ping Xie, Kaiming Hu, Gang Huang & Ronghui Huang
Nature Geoscience 6, 357–361 (2013)
地球温暖化に対する熱帯域の降水の変化予測は不確実性が大きい。現在2つの観点が存在する。一つは「湿潤な地域がより湿潤になる」、もう一つは「暖かい地域がより湿潤になる」である。CMIP5に使用されている気候モデルを用いて、両方のパターンが見られることを示す。

Global flood risk under climate change
気候変化の下での全球の洪水リスク
Yukiko Hirabayashi, Roobavannan Mahendran, Sujan Koirala, Lisako Konoshima, Dai Yamazaki, Satoshi Watanabe, Hyungjun Kim & Shinjiro Kanae
温暖化とともに洪水に対するリスクが増加すると考えられている。気候モデルを用いて今世紀末の全球の洪水リスクを推定したところ、ある地域は洪水の頻度が増加するが、他の地域は逆に減少することが示された。それぞれの地域がどれほど脆弱かどうかは、温暖化の規模と降水の年々変動に依存すると思われる。
>関連した記事(Nature姉妹紙 注目のハイライト)
将来の温暖化で洪水が激化する見通し

El Niño modulations over the past seven centuries
過去7世紀にわたるエルニーニョの修正
Jinbao Li, Shang-Ping Xie, Edward R. Cook, Mariano S. Morales, Duncan A. Christie, Nathaniel C. Johnson, Fahu Chen, Rosanne D’Arrigo, Anthony M. Fowler, Xiaohua Gou & Keyan Fang
ENSOは数十年から数百年の時間スケールで自然変動しているため、過去数十年に限られた観測記録からは、気候変化がそれに与える影響を理解することは難しい。2,222の木の年輪に基づく過去700年間のENSOの復元から(サンゴδ18Oとも整合的らしい)、ENSOの活動度が20世紀後半に過去700年間と比較して増加していたことが示された。多くの気候モデルでは再現されていないが、温暖化に対する応答を示唆している。また大きな火山噴火に対するENSOの応答も確認された。

Uncertainty in simulating wheat yields under climate change
気候変化の下での小麦生産量をシミュレーションすることの不確実性
S. Asseng et al.
モデル比較プロジェクトから、気候変化が穀物生産に与える影響が比較された。作物モデル間の違いが不確実性を生む原因らしい。

Woody plant encroachment facilitated by increased precipitation intensity
降水強度の増加によって容易となる木本植物の侵食
Andrew Kulmatiski & Karen H. Beard
気候変化の結果、多くの地域で降水が強まると予測されている。サバンナ地域における実験から、降水量の増加ではなく、降水の強度のわずかな増加によって、水が土壌に染み込む深さがより深まり、草よりも木がより成長しやすくなることが分かった。

Clouds and temperature drive dynamic changes in tropical flower production
雲と温度が熱帯域の花の生産の動的な変化を駆動する
Stephanie Pau, Elizabeth M. Wolkovich, Benjamin I. Cook, Christopher J. Nytch, James Regetz, Jess K. Zimmerman & S. Joseph Wright
熱帯雨林の生産性に対する温度・光・降水の変化の影響を分けることは難しい。2つの熱帯雨林を対象にした調査から、温度・雲・降水が花の生産に与える影響を評価したところ、特に温度が重要な変数であることが示された。

Risk maps for Antarctic krill under projected Southern Ocean acidification
予測される南大洋の海洋酸性化のもとでのナンキョクオキアミのリスク・マップ
S. Kawaguchi, A. Ishida, R. King, B. Raymond, N. Waller, A. Constable, S. Nicol, M. Wakita & A. Ishimatsu
南大洋の海洋生態系は漁業資源としても重要であるが、海洋酸性化に対して特に脆弱であると考えられている。ナンキョクオキアミ(Antarctic krill; Euphausia superba)は中でも食物網において重要な役割を占めている。オキアミは海水中を水平・鉛直方向に活発に移動しており、海洋酸性化に対する脆弱性はあまりよく分かっていない。またその卵は密度の影響で沈降し、700-1,000m深で孵化すると考えられており、そこはもとより酸性度が高く、さらに酸性化の影響も大きいところでもある(AAIWの沈み込みによる)。
 酸性化海水を用いた飼育実験とモデリングから、卵の孵化率が酸性化で低下すること、予測される大気中CO2濃度上昇シナリオの下では孵化が海洋酸性化の脅威にさらされることが示された。Weddell SeaとHaakon VII Seaが特にリスクが大きいと思われる。このまま排出が削減されないようなシナリオ(RCP 8.5)の下では、オキアミ生態系が崩壊し、さらにそれに支えられる上位生態系にも甚大な影響が生じると思われる。
>関連した記事(Nature Climate Change#October 2010 "Research Highlights")
Oceanography: High acid kills krill
Shanta Barley
>関連した記事(Nature Climate Change誌 リサーチハイライト)
海洋学:海洋酸性化でオキアミが死滅する