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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年9月14日土曜日

新着論文(Science#6151)

Science
VOL 341, ISSUE 6151, PAGES 1141-1312 (13 SEPTEMBER 2013)

Editors' Choice
Habitat Histories
生息地の歴史
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 12715 (2013); Ecol. Lett. 16, 10.1111/ele.12160 (2013).
生物の保全には、対象となる生物がこれまでどのように地理的に散逸してきたのかまで考慮し、将来予測する必要がある。

News of the Week
New Curbs on Greenhouse Gases
温室効果ガスに関する新たな束縛
G20は1987年に採択されたモントリオール議定書に基づいて、温室効果の一種である、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)の排出削減を行うことに同意した。HFCsはフロンガスの代替物質として近年排出量が増加しつつあり、オゾン層を破壊する化学物質である。
>関連した記事(Nature#7566 "SEVEN DAYS")
Gas phase-down
ガスの段階的縮小
9/6に、G20がモントリオール議定書のもとHFCsの排出削減に同意することを決定した。バンコクにおいて10月に開かれる会議にて条約の修正がさらに議論されることとなっている。

Seeking a Simpler Solar Cell
よりシンプルな太陽電池を探す
現在の太陽電池と同程度のコストで、さらに簡単に導入することができる新たな生産方法が開発された。非晶質シリコンの代わりにペロブスカイトを用い、発電効率は前者の10%から15%に、1Wあたりのコストも4分の1に改善した。Natureに論文が公表される。
>より詳細な記事(Science NOW)
A Flat-Out Major Advance for an Emerging Solar Cell Technology

News & Analysis
It's Official—Voyager Has Left the Solar System
これは公式です—ボイジャーが太陽系を離れる
Richard A. Kerr
ボイジャーが太陽系をついに脱したが、その所在が議論を呼んでいる。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
ボイジャー1号の太陽系外到達を確認
[以下は引用文]
「人工物を初めて星間空間に送り出したというのは途方もないことだ」
ドナルド・ガーネット(Donald Gurnett)

「このミッションのこれまでの40年間は本当にワクワクしたし、今後の10年も同様にワクワクするものになるはずだ。私たちがこれまで到達したことのない領域を探査しているのだ」
エド・ストーン(Ed Stone)

Researchers Wary as DOE Bids to Build Sixth U.S. Climate Model
DOEのアメリカの6つ目の気候モデルの製作の試みに対して研究者は慎重である
Eli Kintisch
アメリカエネルギー庁(DOE)が国内では6番目となる気候モデルを新たに制作しようとしているが、気候学者の中にはそれに対して慎重な姿勢を示すものもいる。より高解像度のものを開発することが目的で、エアロゾル-気候フィードバックやENSOなどもモデルに組み込むことが期待されている。これまでのモデルとしては、NSF-DOEが1つ(Community Earth System Model; CESM)、NOAAが2つ、NASAが2つ開発している。

Novel Craft Sets Out to Probe the Mysteries of Moondust
革新的な宇宙線が月のダストの謎を明らかにするために出発した
Yudhijit Bhattacharjee
NASAによる新たなロボミッションは、月に関する古い謎に対する答えを探す。
>関連した記事(Nature#7566 "SEVEN DAYS")
Lunar orbiter up
月の人工衛星が打ち上がる
月の大気分子とダストを観測するAtmosphere and Dust Environment Explorer(LADEE)が9/6にNASAによって打ち上げられた。30日後には月に到達し、地表から20-50kmを飛行し、試料を採取する。
>より詳細な記事(NATURE NEWS)
Moon mission to suck up lunar dust
Devin Powell

Letters
Turkey's Biodiversity Funding on the Rise
トルコの生物多様性に対する基金が増加しつつある
Anthony Waldron, Çağan Hakki Şekercioğlu, Daniel C. Miller, Arne O. Mooers, J. Timmons Roberts, and John L. Gittleman

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Research
Perspectives
EVOLUTION: What, Where, and When?
進化:何が、どこで、いつ?
Sandra Knapp
アルフレッド・ラッセル・ウォレス(Alfred Russel Wallace)が提唱した生物分布の科学が生物地理学(biogeography)の基礎を作り出した。

Research Article
Quantifying the Influence of Climate on Human Conflict
気候が人類の争いに与える影響を定量化する
Solomon M. Hsiang, Marshall Burke, and Edward Miguel
気候変化が人類の争いの発生頻度に影響するかが関心を集めている。そうした関係性が確かに存在することの証拠が世界の主要な地域で得られた。気候が1σの範囲を超えてより温暖になったり、極端な降水現象が起きると、個人間の争いが4%、集団間の争いが14%増加することが示された。2050年には人類が住む場所の気候が2σ〜4σの範囲で平均値から逸脱すると予想されているため、人類の争いの発生頻度が増加すると思われる。
>関連した記事(Nature Climate Change#Sep2013 "Research Highlights")
Climate-driven conflicts
気候がきっかけとなる争い
考古学・犯罪学・経済学・地理学・歴史学・政治学・心理学などの総合的な観点から、世界各国で気候変化と争いや政治的不信の発生頻度に関連があるかどうかが評価され、関連性が確認された。気候がより1σの範囲を超えてより温暖になったり、極端な降水現象が起きると、個人間の争いが4%、集団間の争いが14%増加することが示された。従って、2050年に期待される温暖化もまた人々の争いを増加させると思われる。

Reports
Slow Earthquakes, Preseismic Velocity Changes, and the Origin of Slow Frictional Stick-Slip
Bryan M. Kaproth and C. Marone

HONO Emissions from Soil Bacteria as a Major Source of Atmospheric Reactive Nitrogen
大気中の反応性の高い窒素の主要な放出源としての土壌微生物によるHONO排出
R. Oswald, T. Behrendt, M. Ermel, D. Wu, H. Su, Y. Cheng, C. Breuninger, A. Moravek, E. Mougin, C. Delon, B. Loubet, A. Pommerening-Röser, M. Sörgel, U. Pöschl, T. Hoffmann, M.O. Andreae, F.X. Meixner, and I. Trebs
非生物的な亜硝酸(HONO)の放出が大気中のHONOに占める役割と生物地球化学・窒素循環における役割について。

Channelized Ice Melting in the Ocean Boundary Layer Beneath Pine Island Glacier, Antarctica
南極Pine Island氷河の下の海洋境界層にけるチャネル化した氷の融解
T. P. Stanton, W. J. Shaw, M. Truffer, H. F. J. Corr, L. E. Peters, K. L. Riverman, R. Bindschadler, D. M. Holland, and S. Anandakrishnan
棚氷の特性は南極氷床の質量収支(つまり海水準)に影響する。棚氷は海水とも接しているため、海水温の影響もまた大きい。西南極氷床の主要な溢流氷河の一つであり、近年加速的に薄くなりつつあるPine Island氷河における現地調査から、氷河の下のチャネルの複雑な挙動が明らかに。

Marine Taxa Track Local Climate Velocities
海洋生物が地域的な気候の速度について行く
Malin L. Pinsky, Boris Worm, Michael J. Fogarty, Jorge L. Sarmiento, and Simon A. Levin
生物は気候変化に適応するか、或いは移動すると考えられているものの、観察されているシフトはあらゆる方向・速度を持っている。それらを説明するのに、”地域的な気候変化の速度(local climate velocities)の違い”という概念が役に立つかもしれない。1968-2011年にかけて北米沿岸部にて得られた、360種の海洋生物のデータベースを解析したところ、生物の緯度方向・深さ方向の移動がこの概念によってよりうまく説明できることが示された。