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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年4月25日木曜日

新着論文(Nature#7446)

Nature
Volume 496 Number 7446 pp397-542 (25 April 2013)

RESEARCH HIGHLIGHTS
Dogs and owners share microbes
犬と飼い主は細菌を共有する
eLIFE 2, e00458 (2013)
60世帯で人の口内、皮膚、腸内にいる細菌を調査したところ、特に皮膚上の細菌群集は配偶者と子供と共有していることが分かった。さらに、犬を飼っている場合、ペットにもその傾向が見られた。ただし、犬の場合口内と腸内は異なったという。犬を買っている家で子供のアレルギーが少ないことの説明になるかもしれないという。

Babies of stressed squirrels grow faster
ストレスを受けたリスの子供ほど早く育つ
Science http://dx.doi.org/10.1126/science.1235765 (2013)
22年間にわたる研究から、アカリス(red squirrel; Tamiasciurus hudsonicus)は個体数密度が大きい場合、子供の成長がより早まり、冬を生き残る確率が上がっていることが実験から示された。社会ストレスによるホルモンバランスの乱れが原因と考えられている。

‘Hobbit’ brains not so small
'小人族'の脳はそんなに小さくなかった
Proc. R. Soc. B 280, 20130338 (2013)
東京大学の研究グループは、Homo erectusから分岐したと考えられているHomo floresiensisの頭蓋骨から脳のサイズを見積もったところ、従来考えられてきたよりも小さくないことを示した(現生人類の3分の1ほど)。

Seeds travel on unpaved roads
舗装されていない道路における種の旅
J. Appl. Ecol. http://dx.doi. org/10.1111/1365-2664.12080 (2013)
スペインのDoñana国立公園における、動物(ウサギ、肉食動物、有蹄類など)の糞のパターンと植物の種の散らばりの調査から、ウサギや肉食動物は人の作った道で、逆に有蹄類は周囲の薮で糞をする傾向が見られた。前者の方が生きた種が多かったという。つまり、人による道路の舗装が植物の種の散布にも影響を与えていることを示している。それは植物の保全にも寄与する一方、外来種の侵入をも招く可能性がある。

Evolution in acidic oceans
酸性化した海における進化
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://dx.doi.org/10.1073/ pnas.1220673110 (2013)
ムラサキウニ(purple sea urchins; Strongylocentrotus purpuratus)の海洋酸性化実験において、骨格成長自体にはそれほど顕著な変化が見られないが、殻形成や代謝・pH調整に関連した遺伝子に大きな変化が起きていることが示された。たった1世代でも、遺伝的多様性の選択が悪化した環境における生き残りを助けるように働いていることを意味している。
>問題の論文
Evolutionary change during experimental ocean acidification
実験的な海洋酸性化の際の進化的な変化
Melissa H. Pespeni, Eric Sanford, Brian Gaylord, Tessa M. Hill, Jessica D. Hosfelt, Hannah K. Jaris, Michèle LaVigne, Elizabeth A. Lenz, Ann D. Russell, Megan K. Young, and Stephen R. Palumbi
海洋酸性化は生物種ごとに様々な影響を与える。ムラサキウニの幼生を用いた酸性化実験から、ウニの幼生の発達や形態には際立った変化は見られないことが示された。逆に遺伝子に際立った変化が見られ、それは生物硬化作用、脂質代謝、イオン・ホメオスタシス(一定状態に維持する作用)に関連する遺伝子であった。外形に変化が見られないような生物は内部でこうした変化が起きているかもしれず、これまでの研究で見落とされている可能性がある。急速な環境の変化にも潜在的な遺伝的多様性によって進化することで適応できる生物がいることを示している。

Dusty galaxies come into view
埃っぽい銀河がようやく見えた
Astrophys. J. 768, 91 (2013)
より遠くの星ほど古いため、初期宇宙を知るにはより遠くを見る必要があるが、一般に遠くにいくほど電磁波が霞むため、なかなかその姿を捉えることは難しい。チリの宇宙望遠鏡Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA)によって、星ができつつある銀河の姿が初めて信頼できる精度で捉えられた。

SEVEN DAYS
$674 bn
6,740億ドル
去年新たな化石燃料の探査および採掘に使用された金額。

Energy spending
エネルギー使用
国際エネルギー機関(IEA)の報告書によると、気候を安定化させるのに必要な再生可能エネルギーへの投資額は不足している。2012年には太陽光発電と風力発電への世界の投資額は前年比でそれぞれ42%、19%増加したものの、石炭発電所による発電量増加がそれを打ち消しているらしい。

CARBON-MARKET COLLAPSE
炭素市場の崩壊
景気後退を受けて、ヨーロッパにおける二酸化炭素の排出価格が2020年まで低く維持されそうである(1トンあたり2.7ユーロ;3.5米ドル)。これは低炭素エネルギーへの市場の投資が不活性化することを意味する。
>より詳細な記事
Europe’s politicians leave carbon market in coma
ヨーロッパの政治家が炭素市場を昏睡状態に
Richard Van Noorden
景気後退を受けて、ヨーロッパ議会は炭素排出取引価格を2020年まで低く維持するとコンサルタント会社Thomson Reuters Point Carbonは分析している。このような低価格が維持された場合、低炭素エネルギーの開発への投資は見込めないという。価格が高ければ企業が炭素排出を低く抑える方向へと向かうことが期待されるが、低ければそうしたインセンティブは生まれない。

NEWS IN FOCUS
Experiment aims to steep rainforest in carbon dioxide
熱帯雨林を二酸化炭素で満たすことを目的とした実験
Jeff Tollefson
アマゾンの熱帯雨林にセンサーを多数設置することで、二酸化炭素による森林の肥沃化の効果を見積もることができる。

Moon and planet names spark battle
月と惑星の名前をめぐる闘いが激化
Alexandra Witze
系外惑星の名称をめぐって、企業が国際宇宙連合(International Astronomical Union)と争いを繰り広げている。

Japanese test coaxes fire from ice
日本の試験によって氷から火がもたらされる
David Cyranoski
日本近海の海底下からハイドレートを採掘する世界初の試みが成功し、資源採掘の可能性が約束された。

Ancient crust rises from the deep
古代の地殻が深部から沸き上がる
Sid Perkins
地表岩石の残存物が長い時間をかけて地球の内部から出てきた。

COMMENT
Hurricane Sandy: After the deluge
ハリケーンSandy: 大洪水の後
ハリケーンSandyによってもたらされた破壊の後、Gordon Fishellがいかにしてネズミ研究プログラムを再建したかを述懐する。

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RESEARCH
LETTERS
Anomalous sulphur isotopes in plume lavas reveal deep mantle storage of Archaean crust
上昇する溶岩の異常な硫黄同位体がマントル深部に始生代の近くが保存されていることを示している
Rita A. Cabral, Matthew G. Jackson, Estelle F. Rose-Koga, Kenneth T. Koga, Martin J. Whitehouse, Michael A. Antonelli, James Farquhar, James M. D. Day & Erik H. Hauri
Cook諸島における玄武岩の硫黄同位体の非質量依存同位体分別(MIF)は、始生代(24億5千万年前以前)に沈み込んだ海洋地殻とリソスフェアが、ホットスポット火山の下にまだ残っていることを示唆している。「海洋地殻がリサイクルされる時間」や「マントル対流の時間スケール」を推定するのにも新たな知見が得られる可能性がある。

The global distribution and burden of dengue
デング熱の全球分布と負担
Samir Bhatt et al.
デング熱の全球・地域的分布と各国に与える負担が推定された。年間3億9千万人が感染しており、WHOの推定値の3倍の数値となっている。